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2019.12.3 災害廃棄物処理に係る交流セミナー開催報告

2019.12.3 災害廃棄物処理に係る交流セミナー開催報告

テーマ:災害時における人的ネットワークの醸成を目指して

開催報告

令和元年12月3日(火)に災害廃棄物処理に係る交流セミナー(JR博多シティ10階大会議室)を開催しました。

セミナーには自治体関係者や研究者、民間事業者など81名(自治体:35名、研究機関:25名、民間:21名)が参加しました。

当学会九州支部の染谷支部長の挨拶に始まり、3名の講師の方々から災害廃棄物処理に係る事例紹介等の講演をいただきました。講演後の後半の部では、日常的にそれぞれの立場で廃棄物処理に従事しているセミナー参加者が10のグループに分かれ、災害廃棄物処理に関する悩みや課題について、ワークショップ形式で議論し、人的ネットワークの醸成を目的とした交流を行いました。

ご参加頂いた参加者の皆様、ご講演頂いた講師の皆様、ご後援頂いた環境省九州地方環境事務所に厚く御礼を申し上げます。

プログラム

・開会挨拶  佐賀大学:染谷孝 氏
・プログラム内容説明およびD.Waste-Netについて  福岡大学:鈴木慎也 氏
・講演1 廃棄物資源循環学会九州支部が実施した災害廃棄物処理に係る技術的支援・調査  九州大学:小宮哲平 氏
・講演2 平成30年7月豪雨災害による災害廃棄物の処理について  広島県環境県民局循環型社会課:桐山慧大 氏
・講演3 体験に基づく災害廃棄物処理計画のあり方の視点  朝倉市保健福祉部子ども未来課:上村一成 氏
・ワークショップ グループテーマ:仮置き場の設置と運営、災害廃棄物処理計画の策定と見直し、災害廃棄物発生量の推計、処理困難物・危険物への対応、し尿対策
・閉会挨拶  環境省九州地方環境事務所:白迫正志 氏

講演1:廃棄物資源循環学会九州支部が実施した災害廃棄物処理に係る技術的支援・調査 小宮哲平 氏(九州大学)

小宮氏の講演は、当学会による災害時の支援内容について紹介することで、当学会の活動に対する自治体の理解を深め、今後の円滑な支援の実現に繋げることを目的として行われた。
講演では、平成28年熊本地震に伴い発生した災害廃棄物の処理において当学会が実施した支援内容の紹介として、仮置場管理、処理実行計画策定、環境測定に関する技術的支援の具体的な内容や、全壊家屋の解体に伴い発生する廃棄物の発生原単位及び組成の調査結果について紹介いただいた。また、令和元年8月の前線に伴う大雨による大規模水害に伴い発生した流出油が付着した災害廃棄物の処理状況の調査結果について講演いただいた。
家屋解体廃棄物の調査により得られた廃棄物の発生原単位及び組成は、熊本県災害廃棄物処理実行計画の見直しの基礎情報として活用され、円滑な災害廃棄物処理の実現に貢献した。
小宮氏は、当学会の活動の成果として、災害廃棄物処理に関する知見を集積することができたこと、災害廃棄物の円滑な処理に貢献することができたこと、今後の災害廃棄物処理対策の改善のための課題を見出すことができたことを紹介し、セミナー参加者に対して当学会の活動に対する理解と協力を要望された。

講演2:平成30年7月豪雨災害による災害廃棄物の処理について 桐山慧大 氏(広島県環境県民局循環型社会課)

桐山氏の講演では、平成30年7月に発生した豪雨災害における広島県の災害廃棄物処理の概要について紹介いただいた。災害廃棄物は一般廃棄物であり、一般廃棄物の処理責任は市町村にある。今回の豪雨災害によって発生した災害廃棄物の処理は、地方自治法に基づく事務委託によって、県による処理の代行が行われ、廃家財等や建物解体廃棄物について二次仮置き場以降の処理を県が実施することとなった。
広島県の豪雨災害によって発生した災害廃棄物処理においては、災害発生後18日後に災害廃棄物発生推計量(約200万t、後に策定された実行計画において約140万tに見直し)の公表がなされ、発災後の1ヶ月後に災害廃棄物処理に係る県基本方針を策定した。災害廃棄物の処理期間としては、令和元年12月までに処理完了、平成30年12月までに一次仮置場からの搬出完了といった目標が掲げられた。
災害廃棄物処理に係る事務においては、国や災害廃棄物処理経験を有する他自治体からの応援派遣を受けて実施されたことなどが紹介され、今後の見通しとしては、県基本方針として掲げた令和元年12月までの処理が概ね完了する見込みであることが紹介された。広島県では、今回の災害を受けて災害廃棄物処理に係る課題と改善策を取りまとめた初動対応マニュアルを作成(令和元年5月)している。

講演3:体験に基づく災害廃棄物処理計画のあり方の視点 上村一成 氏(朝倉市保健福祉部子ども未来課)

上村氏からは、平成29年7月に起こった九州北部豪雨における災害廃棄物処理の体験を基にした災害廃棄物処理計画のあり方について講演いただいた。
上村氏の講演は、河川の氾濫状況の動画や上村氏の当時のメモなどの紹介によって、災害時の様子や初期対応の慌ただしさを感じることのできる講演であった。
朝倉市における災害廃棄物処理量の実際のデータでは、発災直後と数ヶ月経った時期では、発生する災害廃棄物の種類が変化してくることなどが紹介されたほか、災害廃棄物処理に係る平時、初期、応急期において重要となるポイントを紹介いただいた。
災害廃棄物処理計画のあり方の視点としては、仮置き場確保や分別に係る情報発信のあり方、収集運搬に係る平時の備え、処理施設の余力や処理方式の把握、組織体制・指示命令系統(人員確保・業務の所管など)における留意事項等について、実体験を基にした貴重なアドバイスを紹介いただいた。

ワークショップ セミナー参加者

ワークショップでは、日常的にそれぞれの立場で廃棄物処理に従事しているセミナー参加者が10のグループに分かれ、災害廃棄物処理に関する悩みや課題について議論し、人的ネットワークの醸成を目的とした交流を図った。

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