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2021.5.27 令和3年度 春の研究討論会 災害廃棄物研究部会企画セミナー 開催報告

2021.5.27 令和3年度 春の研究討論会 災害廃棄物研究部会企画セミナー 開催報告

開催報告

令和3年5月27日に令和3年度 春の研究討論会において、災害廃棄物研究部会企画セミナー「みんなで改めて考える「災害廃棄物」~助け・助けられる立場から~」をオンラインにて開催いたしました。約200名の皆様にご参加いただきました。

-当日のセミナーのアーカイブ動画はこちら

-2021年8月刊行予定の「災害廃棄物管理ガイドブック ―平時からみんなで学び,備える―」のページ

プログラム

総合司会 鈴木慎也(福岡大学)

1.災害廃棄物ことはじめ(書籍紹介を兼ねて) 奥田哲士及び渡邊麻莉子(朝倉書店)

2. 災害廃棄物研究部会の活動概要紹介 多島良(国立環境研究所)

3.座談会

登壇者

廃棄物計画研究部会 石井一英(北海道大学)

リサイクルシステム・技術研究部会 加茂徹(早稲田大学)

産廃研究部会 穂積篤史(都築鋼産株式会社)

情報技術活用研究部会 松岡浩史(一般社団法人資源循環ネットワーク)

環境学習施設研究部会 花嶋温子(大阪産業大学)

コーディネーター:部会長 浅利美鈴(京都大学)

概要

東日本大震災から10年が経過し、災害廃棄物管理に関する取り組みも進展してきた。約半分の自治体が発災前から災害廃棄物に対応するための計画を策定し、多様な関係者による支援・連携体制の構築が進み、防災分野との連携も始まり、徐々に市民権を得てきた感がある。しかしながら、毎年のように全国各地で発生する災害の度に、様々な課題が浮き彫りになり、対応者や復旧プロセスにダメージを与えているのも事実である。

本研究部会では、平時に関連研究を進めるのみならず、発災時に現地に赴き、支援にあたりながら、現場の課題を観察し、解決に向けた短期及び中長期的な取り組みを検討する試みを始めている。今回は、その活動の現状や展望について、様々な視点からご意見を頂き、今後につなげるため、座談会を含めたウエブ会議システムでの部会の活動紹介等を行った。以下に概要をまとめる。

部会長の浅利美鈴(京都大学)からの挨拶、総合司会の鈴木慎也(福岡大学)からの趣旨説明の後、奥田哲士(龍谷大学)からは、「災害廃棄物ことはじめ」と題して、災害廃棄物の特殊性の紹介、また平時より学会内外で協力者や力を強化していく必要性や課題が紹介された。

次に、朝倉書店の渡邊麻莉子からは、2021年8月刊行予定の書籍「災害廃棄物管理ガイドブック」の詳しい内容が紹介された。災害廃棄物管理に関して、一般市民も知りたいことや知ってほしいことをわかりやすくまとめた書籍であるが、自治体や関連企業の方、研究者にとって有用なコンテンツも紹介された。

国立環境研究所の多島良からは、部会の目的等の紹介の後、平時の訓練や信頼関係構築の重要性が指摘された。関連研究者に「求められていること」、研究者が「できること」の調査結果も紹介され、さらに現地支援の実例としてweb会議室を利用した取り組みなどが紹介された。

後半は「座談会」と称して、部会長からの趣旨説明の後、廃棄物計画研究部会、リサイクルシステム・技術研究部会、産廃研究部会、情報技術活用研究部会、環境学習施設研究部会から参加いただき、各研究部会から災害廃棄物との関連が紹介された。

廃棄物計画研究部会の北海道大学 石井一英からは、「計画づくり」は「連携づくり」であり、計画の完成度も重要であるが多くの方を巻き込んで平時の課題の共有も含めてのネットワークをつくることが、災害廃棄物の計画にも重要であるという視点が紹介された。

リサイクルシステム・技術研究部会の早稲田大学 加茂徹からは、大きく災害事前・事後に分け、リサイクルを考える上で、事前において課題になる点として、有害物・危険物の事前予測、や各種リサイクル施設の弾力的な運用が重要であること、事後として、精度を優先した初期分別の徹底や再利用し易い金属や木材の優先回収が重要である。その他として現場で臨機応変に対応できる人材の確保、訓練が必要、などの指摘があった。また、災害廃棄物を処理するためには、廃棄物処理施設そのもののレジリエンスを高めることも大切であり技術・法律面で整理が必要とのコメントがあった。

産廃研究部会の都築鋼産株式会社 穂積篤史からは、実際の災害廃棄物の受け入れ例や活用例が具体的に紹介された。また、仮置場の運営から処理リサイクルまで産業廃棄物業界を頼っていただきたいこと、災害の発生以前に災害協定の締結を推奨すること、事前に自治体と産業廃棄物業界の情報交換が重要であるとのコメントがあった。

情報技術活用研究部会の一般社団法人資源循環ネットワーク 松岡浩史からは、東日本大震災時の災害廃棄物の広域処理時の情報公開、その他の災害時の取り組み例が紹介された。さらに最先端の取り組みとして、災害廃棄物報告書の作成(管理)システム(アプリ)の紹介などもされ、情報プラットフォームやIoTの活用、発災時までの取り組みの重要性、廃棄物全般として情報の標準化、共有化が重要性に言及頂いた。

環境学習施設研究部会の大阪産業大学 花嶋温子からは、伝えることの大切さや今後のアクションについての提言があった。具体的には、災害廃棄物処理にも活用される焼却処理施設およびそれに併設されている環境学習施設には様々な災害対策や準備がされているにもかかわらず、平時における「災害時(について)の情報提供」やそのプログラムは皆無であるなどの指摘がされた。

本セミナーにおいて、災害廃棄物研究の今後について「人材育成」「続けることの大切さ」「状況に合わせた対応」「情報の共有」「協力」「IoTの利活用」「有害危険物優先」といったキーワードが挙がり、活発な議論がされた。共通して、平時の取り組み、協働の重要性が言及され、いくつかの具体的な提案もなされた。

セミナー登壇者の集合スクリーンショット

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