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2024.5.30 2024年度春の研究討論会にてセミナーを行政研究部会との共催にて開催(川崎)

2024.5.30 2024年度春の研究討論会にてセミナーを行政研究部会との共催にて開催(川崎)

開催報告

2024年5月30日に2024年度 廃棄物資源循環学会 春の研究討論会にて、セミナー「災害廃棄物研究の動向と今後の展開」を行政部会との共催にて開催いたしました。約150名の皆様にご参加いただきました。

プログラム

司会:田畑 智博(神戸大学)
1. 開会挨拶
2. 話題提供「災害廃棄物研究部会のこれまでとこれから」 鈴木 慎也(福岡大学)「発表資料」
3. 話題提供「災害廃棄物研究の動向」 坂井 友里江(国際航業株式会社)「発表資料」
4. パネルディスカッション「行政視点から今後求められるもの」
コーディネーター 渡辺 浩平(帝京大学)
パネリスト 高田 光康(株式会社東和テクノロジー)
岡山 朋子(大正大学)
宇田 仁(環境省関東地方環境事務所)
荒井 和誠(東京都環境局)
5.閉会挨拶

概要

1995年の阪神・淡路大震災を契機に災害廃棄物研究が進展し、東日本大震災や西日本豪雨災害などの経験を通じてさらなる発展を見せている。しかし、災害の種類や被害の大きさ、地域性などの要因により、災害廃棄物の発生量や種類は異なる上、自治体の規模によって担当課の組織体制も大きく異なるため、画一的な対応では不十分なケースが多い。同様に、学術論文も実務での活用が難しいため、今後の研究や現場のニーズを整理する必要がある。このため、行政研究部会、災害廃棄物研究部会と共催で「災害廃棄物研究の動向と今後の展開」というセミナーが開催され、これまでの研究動向を整理し、有益な情報や求められる研究、研究成果の実務への活用方法について参加者と情報共有を行い、今後の研究の方向性や災害廃棄物処理支援の最適な方法について議論された。以下に概要をまとめる。

セミナーに先立ち、災害廃棄物研究部会長の鈴木慎也氏(福岡大学)および行政研究部会長の渡辺浩平氏(帝京大学)からの挨拶、総合司会の田畑智博氏(神戸大学)から趣旨説明があったあと、鈴木慎也氏より「災害廃棄物研究部会のこれまでとこれから」と題し、災害廃棄物研究部会の設立以降の活動・支援内容と今後の展開について説明があった。次に坂井友里江氏(国際航業株式会社)より「災害廃棄物研究の動向」と題してその説明があった。これまでの災害廃棄物研究においては、災害廃棄物発生量推計や処理計画といった事前の備えに関する文献が多い傾向にあったことが示された。それを踏まえた今後の展望として、「実務にすぐに活かせるもの」、「公的な根拠資料に基づくもの」、「過年度の災害における知見や教訓に基づくもの」、「体系的に整理されており、全体的な理解につながるもの」であることが、実務者にとって有用な情報となる可能性が示された。また、一過性の研究で終わらぬよう、継続的かつ社会情勢を踏まえた研究テーマの設定が重要であることが示された。

セミナー後半では、「行政視点から今後求められるもの」と題したパネルディスカッションを開催した。はじめにコーディネータの渡辺浩平氏より、パネルディスカッションのテーマについて説明があったあと、各パネラーから災害廃棄物が発生した現場における現状と課題について説明があった。

まず岡山朋子氏(大正大学)からは、災害廃棄物を処理するための処理費用の見積り、補助金請求等の整理の重要性について言及があった。災害廃棄物の円滑な処理には適正な補助金が不可欠であり、その補助金額の見積もりには災害廃棄物発生量推計が必須となることから、発生量推計の研究および発展が重要であることが改めて示された。
東京都の荒井和誠氏(東京都環境局)からは実際の被災地における行政側の現状について報告があった。被災現場の職員として災害廃棄物を処理しなくてはいけないという意識付けを行うことが重要であること、その意識付けのためには災害廃棄物発生量推計を実施し、廃棄物量のイメージを把握することが、災害廃棄物処理を開始するうえで一番重要なファクターになっていると説明があった。

また、宇田仁氏(環境省関東地方環境事務所)からは、国の災害報告書の作成にあたり、画一的な発生量推計ではなく、災害の種類、地域性などを勘案した推計、災害廃棄物発生量原単位の修正を行っていくことの重要性に言及頂いた。加えて、高田光康(株式会社東和テクノロジー)からは、発生量推計以外にも課題は山積みであり、例えば仮置き場の適地選定手法や仮設焼却炉導入にあたってのレビューの必要性について、学術的な視点で検討していく必要があるとの指摘があった。

このほか、災害廃棄物発生量推計と実発生量との比較、空き家・退蔵品の事前処理による災害廃棄物発生量の低減化など、今後の災害廃棄物研究向けた具体的な提言がなされた。

パネルディスカッション登壇者

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