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No.1 震災廃棄物処理特集(1)
 

No.1 震災廃棄物処理特集(1)

平成24年1月  第23巻 第1号

目次

巻頭言

震災後1年――廃棄物資源循環学会と国際協力――……北脇 秀敏 1

特集 震災廃棄物処理特集(1)

東日本大震災における災害廃棄物量の推定と災害対応……平山 修久・河田 惠昭・奥村与志弘 3
災害廃棄物分別・処理戦略マニュアルの概要と今後の課題……浅利 美鈴・吉岡 敏明・酒井 伸一 10
震災時におけるし尿・生活排水処理の実情と今後の課題――石巻市を事例として――……岡山 朋子・神本 祐樹 22
仙台市における震災廃棄物処理対応……吉岡 敏明・遠藤 守也 31
岩手県における災害廃棄物処理――処理計画を中心に――……佐々木秀幸・颯田 尚哉・東條 安匡・鈴木 拓也 40
東日本大震災とアスベスト対策……寺園 淳・遠藤 和人・山本 貴士 47
津波堆積物の化学性状把握に向けた土地利用・施設立地情報の活用……小口 正弘・大迫 政浩・滝上 英孝・東 博紀・遠藤 和人・水谷千亜紀 60

平成23年度研究発表会報告

研究発表会概要…… 72
特別プログラム報告…… 75
国際セッション報告…… 79
施設見学会報告…… 82
市民展示…… 83
企画セッション報告…… 84

支部だより

関西支部「技術セミナー (講演会・施設見学会)」開催報告…… 96

支部特集

東北支部 東北の復興に向けて――東北支部研究発表会より――…… 99

書評

原田幸明,醍醐市朗 著:図解 よくわかる「都市鉱山」開発――レアメタルサイクルが拓く資源大国への道――……田中 綾子 101
尹 鐘進 著:循環型社会の廃棄物マネジメントと静脈物流――ゴミから資源へ――……田崎 智宏 102

要旨

東日本大震災における災害廃棄物量の推定と災害対応

平 山 修 久*・河 田 惠 昭**・奥 村 与志弘***

【要 旨】 津波災害では,津波廃棄物対策・処理システムは災害初動期から復旧・復興でのさまざまな災害対応や市民生活状況と関連するものであり,環境衛生面での安全・安心を供与する都市インフラである。この津波廃棄物に対する対応計画策定システムにおける,初動時での津波廃棄物発生量の推定手法を示す。そのうえで,災害初動時より災害廃棄物マネジメントを構築するという観点から,東日本大震災での津波廃棄物発生量の推定を行った。その結果,津波廃棄物発生量は,東日本の被災6県で合計約2,700万tonと推定された。また,被災市町村の災害対応力からは,宮城県では16.5年,岩手県では11.7年と,平常時のごみ総排出量の10年分以上の津波廃棄物が発生しており,これは被災自治体の対応力を超えた津波災害であり,広域連携等の対応が求められる国難ともいえるスーパー広域災害であることを示しえた。


キーワード:津波災害,津波廃棄物,発生量測定,災害廃棄物マネジメント,ICS

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.3-9, 2012
原稿受付 2012.2.13

* 京都大学大学院工学研究科
** 関西大学大学院社会安全研究科
*** 人と防災未来センター

連絡先:〒615-8540 京都市左京区京都大学桂C1-3-182
京都大学大学院工学研究科  平山 修久

災害廃棄物分別・処理戦略マニュアルの概要と今後の課題

浅 利 美 鈴*・吉 岡 敏 明**・酒 井 伸 一*

【要 旨】 東日本大震災に際して,廃棄物資源循環学会内に立ち上げられたタスクチームでは,「災害廃棄物分別・処理戦略マニュアル」(JSMCWMマニュアル) の作成と発信を進めた。その概要を整理すると同時に,今後の展開を検討することを目的に,既存の国内外の指針類をレビューした後,JSMCWMマニュアルの概要を紹介した。

 海外では,米国のガイド類が充実しており,情報が体系化されている。国際機関もガイドラインを出しており,要点が簡潔に整理されている。しかし,アジアを含む各国との情報共有に向けて,取組体制や幅広い選択肢の検討等が必要と考えられた。

 JSMCWMマニュアルは,東日本大震災を受けて,現地での対応を記録しつつ,全国の専門家等から知見を集約し,解決策や選択肢を提示することを目的としたものだ。分別・リサイクルを基軸とし,具体的な選択肢を詳細に示したものとなっている。しかし,事前の計画立案を支援するためには,さらなる知見が必要と考えられた。


キーワード:災害廃棄物,マニュアル,ガイドライン,分別,リサイクル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.10-21, 2012
原稿受付 2011.12.4

* 京都大学環境科学センター
** 東北大学大学院環境科学研究科

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学環境科学センター  浅利 美鈴

震災時におけるし尿・生活排水処理の実情と今後の課題――石巻市を事例として――

岡 山 朋 子*・神 本 祐 樹*

【要 旨】 本研究は,2011年3月11日の東日本大震災の被災地において,生活排水処理,特にし尿の処理に関してどのような問題が起こり,またその問題にどのように対応し,現在どのような課題が残されているかについて,宮城県石巻市を例にとって検証することを目的とする。石巻市は約16万 (震災前) の人口を擁する港町であるが,東日本大震災において最大の被害を受けた都市である。合併前の旧石巻市内に2カ所ある下水処理施設 (農業集落排水処理施設および漁業集落排水処理施設を含めない) のうち,沿岸部にあった石巻東部浄化センターが壊滅的な被害を受けた。また,震災直後にはおよそ3万7,000人が旧石巻市内の避難所等に避難したため,そこでのトイレ使用は大きな問題となった。そこで本稿は,石巻市の被災前と被災後のし尿処理 (汚水処理) の状況を説明し,特に被災者のし尿処理への対応の経緯を報告し,石巻市における汚水処理の課題を抽出するとともに今後の復旧方針への考察を加えるものである。


キーワード:東日本大震災,石巻市,し尿・生活排水処理,仮設トイレ,避難所

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.22-30, 2012
原稿受付 2011.12.19

* 名古屋大学エコトピア科学研究所

連絡先:〒464-8603 名古屋市千種区不老町
名古屋大学エコトピア科学研究所  岡山 朋子

仙台市における震災廃棄物処理対応

吉 岡 敏 明*・遠 藤 守 也**

【要 旨】 東日本大震災に際して,国をはじめ多くの自治体が震災によって発生した廃棄物処理について早急な対応が要求された。震災復興には廃棄物の撤去・処理が重要な第一歩である。廃棄物資源循環学会「災害廃棄物対策・復興タスクチーム」では,仙台市との協力・連携の下で迅速に震災廃棄物処理に対応するために情報共有をし,先進事例として仙台市の対応を反映させながら災害廃棄物処理のマニュアル化を行ってきた。
 本稿では,震災廃棄物の撤去・保管・搬入・リサイクル・焼却やマネジメント等について,リサイクルを念頭に入れた処理を実践した仙台市におけるこれまでの対応経過を紹介する。


キーワード:震災廃棄物処理,リサイクル,仙台市,自治体対応

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.31-39, 2012
原稿受付 2012.1.19

* 東北大学大学院環境科学研究科
** 仙台市環境局

連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-07
東北大学大学院環境科学研究科  吉岡 敏明

岩手県における災害廃棄物処理――処理計画を中心に――

佐々木 秀 幸*・颯 田 尚 哉**・東 條 安 匡***・鈴 木 拓 也****

【要 旨】 岩手県は,東日本大震災の津波による県内の災害廃棄物435万tonを処理するために,災害廃棄物の塩素濃度,放射能濃度,燃焼時の挙動を把握した上で処理計画を策定した。仮置場に集積された災害廃棄物は県内6カ所の破砕・選別施設で処理され,太平洋セメント(株)大船渡工場,市町村の焼却施設,仮設焼却炉および民間施設で処理されるが,県内施設のみでは処理しきれないため広域処理が必要になる。
 太平洋セメント(株)大船渡工場は2011年11月にセメント焼成による廃棄物処理を開始し,すべての破砕・選別施設が2012年2月に稼働する予定である。内陸市町村の焼却施設や仮設焼却炉も2013年度中に処理可能となる見込みである。
 広域処理先はいまだに東京都の民間施設だけだが,通常の廃棄物と同様に処理できることが確認され,他地域での広域処理が進むことを期待する。


キーワード:災害廃棄物,処理計画,焼却,放射能,広域処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.40-46, 2012
原稿受付 2011.12.2

* 岩手県庁環境生活部資源循環推進課
** 岩手大学農学部
*** 北海道大学大学院工学研究院
**** 八戸工業大学工学部土木建築工学科

連絡先:〒020-8570 岩手県盛岡内丸10-1
岩手県庁環境生活部資源循環推進課  佐々木秀幸

東日本大震災とアスベスト対策

寺 園   淳*・遠 藤 和 人*・山 本 貴 士*

【要 旨】 2011年3月11日に発生した東日本大震災では,津波による被害が大きく,多量の津波被害物を混合状態で撤去せざるを得なくなった。災害廃棄物分別・処理戦略マニュアルのとりまとめと,現地調査などを通じて,被災地におけるアスベスト対策の現状と課題を報告した。同マニュアルにおいては,災害廃棄物にアスベストが混入されないよう,できるだけ除去・分別を行い,アスベストの飛散・曝露防止の措置を図ることが重要であると強調した。限られた調査からは吹付けアスベストはさほど多く確認されていないが,破砕された成形板は多数見られ,アスベスト含有の判別は困難であった。偏光顕微鏡法による迅速分析は現場で極めて有用であり,少なくとも災害時に用いられる方法として位置づけることが望ましい。建築物の解体に関して,飛散防止措置の徹底が必要であるとともに,解体前調査としての迅速分析とマッピングの組合せは有力と考えられる。


キーワード:東日本大震災,災害廃棄物,アスベスト,偏光顕微鏡法,建築物解体

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.47-59, 2012
原稿受付 2012.1.6

* (独)国立環境研究所

連絡先:〒305-8506 つくば市小野川16-2

(独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター  寺園 淳

津波堆積物の化学性状把握に向けた土地利用・施設立地情報の活用

小 口 正 弘*・大 迫 政 浩*・滝 上 英 孝*・東   博 紀**・遠 藤 和 人*・水 谷 千亜紀***

【要 旨】 2011年3月11日の東日本大震災で生じた大量の津波堆積物の存在は,被災地の復旧・復興に向けて大きな課題となっている。津波堆積物は事業所等の被災に由来して化学物質等の有害物質を含む可能性もあり,有効利用や処理処分に際してその化学性状の把握が必要である。本稿では,津波堆積物の効率的な化学性状把握に資するため,津波堆積物の化学性状を浸水域の土地利用や施設立地状況から考察した。その結果,有害物質が高濃度で検出された地点はいずれも付近に関連する施設が立地していたことなどがわかり,土地利用や施設立地情報に基づいて津波堆積物の汚染可能性を分類 (ゾーニング) できる可能性が示された。考察に基づいてゾーニングの流れを案として示すとともに,より適切なゾーニングのためには有害物質の流出源となり得る施設の網羅的な把握が重要であること,有害物質存在量等の施設情報整備が課題であることなどを述べた。


キーワード:東日本大震災,津波堆積物,有害物質,地理情報システム (GIS),ゾーニング

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.1, pp.60-71, 2012
査読付展望論文
原稿受付 2011.11.9  原稿受理 2011.12.21

* (独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター
** (独)国立環境研究所 地域環境研究センター
*** 筑波大学大学院生命環境科学研究科

連絡先:〒305-8506 つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター  小口 正弘

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