令和7年1月 第36巻 第1号
目次
年頭所感
資源循環から拓く健やかな社会……袖野 玲子 1
特集 廃棄物の中間処理を支える焼却技術の最新動向と将来展望
2050年に向けた一般廃棄物焼却施設への二酸化炭素回収設備の導入の可能性 [1]……皆川 雅志・池田 聡・高岡 昌輝・大下 和徹 3
脱炭素社会に向けた2030年から2050年の一般廃棄物焼却施設のあり方 [2]……森岡 泰樹・大下 和徹・高岡 昌輝 14
廃棄物焼却施設におけるCCUS技術の開発状況 [3]……喜多山周平・谷垣 信宏・福田 尚倫・中田谷直広・坂元真理子・重政 祥子・
大地佐智子・清水 俊樹・遠藤 雄樹・藤原 大・森岡 泰樹・清水 正也 26
廃棄物焼却施設へのAI,センサ技術の活用事例 [4]……平林 照司・小浦 洋平・古林 通孝・江草 知通・清水 俊樹・富岡 修一・
三輪 佳祐・長 洋光・井原 貴行・高岡 昌輝 37
廃棄物焼却排ガス処理を巡る技術の現状と課題 [5]……黄 仁姫・鮫島 良二・川本 克也 48
焼却残渣の適正管理から見た焼却処理 ──焼却飛灰を中心に── [6]……水谷 聡・肴倉 宏史 58
第35回廃棄物資源循環学会研究発表会報告
研究発表会概要…… 68
特別プログラム報告…… 71
国際シンポジウム報告…… 72
施設見学会報告…… 74
市民展示・環境学習施設展示報告…… 76
市民フォーラム・環境学習フォーラム報告…… 78
企画セッション…… 81
令和6年度廃棄物資源循環学会セミナー報告
令和6年度 第1回セミナー ファッションと循環経済 ──持続可能な未来をデザインする──……中山 育美 91
廃棄物資源循環学会研究部会報告
ごみ文化・歴史研究部会「バングラデシュ廃棄物セミナー ──プロジェクトの自助努力による自立発展の支援──」報告……石井 明男 94
環境学習施設研究部会「秋の視察研修会2024」報告……三好 裕司 96
環境学習施設研究部会「日帰り視察研修会2024」報告……鈴木 榮一 98
支部特集/支部だより
支部だより:関東支部「2023(令和5)年度の講演会・研究発表会」開催報告…… 100
支部だより:関西支部「廃棄物法制度に関するセミナー及び支部総会」開催報告…… 102
書評
佐藤秀平 著:リユースビジネスの教科書……吉田 綾 104
竹村眞一 著,佐藤 卓 アートディレクション:ゴミうんち ──循環する文明のための未来思考──……釜田 陽介 105
要旨
2050年に向けた一般廃棄物焼却施設への二酸化炭素回収設備の導入の可能性
皆 川 雅 志*・池 田 聡*・高 岡 昌 輝**・大 下 和 徹**
【要旨】 本稿では2050年カーボンニュートラルに向けて,一般廃棄物焼却施設への二酸化炭素 (CO₂)回収設備導入の可能性を検討した。CO₂回収設備を導入した際にエネルギー的に自立可能な施設規模は375 t-ごみ/日以上であり,カーボンニュートラル化達成には33か所以上の施設にCO₂回収設備の導入が必要と試算された。広域化による施設の集約化シナリオを3ケース検討した結果,大都市圏での広域化や都道府県内での広域化により,カーボンニュートラル達成が可能であることが示された。また,CO₂回収設備導入の経済性評価を行い,一定のCO₂排出権売却単価であれば,投資回収が可能であることを確認した。
キーワード:一般廃棄物焼却施設,カーボンニュートラル,高効率発電,熱供給,二酸化炭素回収
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.3-13, 2025
原稿受付 2024.12.2
* JFEエンジニアリング㈱ 環境本部,** 京都大学大学院 工学研究科
連絡先:〒230-8611 神奈川県横浜市鶴見区末広町2-1
JFEエンジニアリング㈱ 環境本部 エンジニアリングセンター プロセス設計部 皆川 雅志
脱炭素社会に向けた2030年から2050年の一般廃棄物焼却施設のあり方
森 岡 泰 樹*・大 下 和 徹**・高 岡 昌 輝**
【要 旨】 本稿では,2050年カーボンニュートラルの実現に向け,一般廃棄物焼却施設における二酸化炭素(CO₂)排出削減方策を検討した。基準年となる2013年のCO₂排出量をもとに,2030・2040・2050年の削減目標を設定し,高効率発電・熱供給・CO₂回収を含む複数の削減シナリオを比較評価した。その結果,現行の対策の延長である発電効率向上や電力消費削減のみでは目標達成が困難であることが示され,大規模な熱供給の導入やCO₂回収施設の導入が必要であることが明らかとなった。また,エネルギー分野のCO₂排出係数やバイオマスプラスチック割合に関する感度分析を行い,これらの外部要因がCO₂削減方策の有効性に影響を与えることが確認された。
キーワード:一般廃棄物焼却施設,カーボンニュートラル,高効率発電,熱供給,二酸化炭素回収
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.14-25, 2025
原稿受付 2024.12.2
* ㈱タクマ 環境技術1部2課,** 京都大学大学院 工学研究科
連絡先:〒660-0806 兵庫県尼崎市金楽寺町2丁目2番33号
㈱タクマ 環境技術1部2課 森岡 泰樹
廃棄物焼却施設におけるCCUS技術の開発状況
喜多山 周 平*・谷 垣 信 宏**・福 田 尚 倫**・中田谷 直 広***・坂 元 真理子***・重 政 祥 子***・大 地 佐智子****・清 水 俊 樹*****・遠 藤 雄 樹*****・藤 原 大******・森 岡 泰 樹*******・清 水 正 也********
【要 旨】 2050年カーボンニュートラルの実現に向け,廃棄物・資源循環分野においてもさまざまな脱炭素型資源循環技術の社会実装に向けた開発,実証が進められている。本稿では,まず,最近の廃棄物焼却施設から排出される焼却排ガスからの二酸化炭素 (CO₂) 分離回収技術の実証事例として,クリーンプラザふじみおよび板橋清掃工場での取組状況を紹介する。続いて,回収したCO₂の利用技術として,小田原市清掃工場および横浜市鶴見工場でのメタネーション実証試験のほか,高速飛灰炭酸化,農業利用,固体炭素化技術の開発状況について述べる。最後に,CO₂回収・有効利用・貯留(CCUS)の構成要素技術の一つである,ごみの炭化燃料化技術について取組状況を紹介する。
キーワード:CCUS,廃棄物焼却施設,二酸化炭素分離回収,二酸化炭素利用,炭化燃料化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.26-36, 2025
原稿受付 2024.12.2
* JFEエンジニアリング㈱ 環境本部,** 日鉄エンジニアリング㈱ プラント本部,*** カナデビア㈱ 環境事業本部,**** カナデビア㈱ 品質保証統括部,***** 三菱重工環境・化学エンジニアリング㈱ エンジニアリング統括部,****** ㈱神鋼環境ソリューション 技術開発センター,******* ㈱タクマ 環境技術1部2課,******** 川崎重工業㈱ エネルギーソリューション&マリンカンパニー
連絡先:〒804-8505 福岡県北九州市戸畑区大字中原46-59
日鉄エンジニアリング㈱ プラント本部 福田 尚倫
廃棄物焼却施設へのAI,センサ技術の活用事例
平 林 照 司*・小 浦 洋 平**・古 林 通 孝***・江 草 知 通****・清 水 俊 樹****・富 岡 修 一*****・三 輪 佳 祐******・長 洋 光******・井 原 貴 行*******・高 岡 昌 輝********
【要 旨】 本稿では,近年の国内廃棄物焼却施設プラントメーカ各社による廃棄物焼却技術の最新動向について述べる。具体的には,まず,廃棄物焼却施設の安定操炉と自動化の事例として,ごみピット3Dシステムとごみクレーンの遠隔運用(カナデビア㈱の取り組み)について紹介する。続いて,高度な自動運転,遠隔監視を行なっている事例として,三菱重工環境・化学エンジニアリング㈱の遠隔監視・AIの活用による運転支援システム「MaiDAS®」について,また,日鉄エンジニアリング㈱の自立型プラント「Think Plant®」と,それを支える統合プラットフォーム「Think Platform®」について述べる。最後に,廃棄物焼却施設の長期運営を可能とするための取り組みとして,高度なAtmospheric Corrosion Monitor (ACM) センサを活用した低温腐食評価事例(荏原環境プラント㈱の取り組み)について報告する。
キーワード:廃棄物最終処分場の廃止,埋立地ガス,ガス放出量,埋立地温度
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.37-47, 2025
原稿受付 2024.12.2
* カナデビア㈱ 機械・インフラ事業本部,** カナデビア㈱ 環境事業本部,*** カナデビア㈱ 開発本部,**** 三菱重工環境・化学エンジニアリング㈱ エンジニアリング統括部,***** 日鉄エンジニアリング㈱ デジタル・トランスフォーメーションセンター,****** 荏原環境プラント㈱ 共通基盤本部,******* 荏原環境プラント㈱ エンジニアリング本部,******** 京都大学大学院 工学研究科
連絡先:〒144-0042 東京都大田区羽田旭町11-1
荏原環境プラント㈱ エンジニアリング本部 井原 貴行
廃棄物焼却排ガス処理を巡る技術の現状と課題
黄 仁 姫*・鮫 島 良 二**・川 本 克 也***
【要 旨】 廃棄物の中間処理を支える焼却は,排ガス中のばい煙,水銀,ダイオキシン類等の公害物質処理技術とともに発展してきた。本稿では,排ガス処理システムの原型がほぼ完成した2000年代前半以降の窒素酸化物,酸性ガス(塩化水素および硫黄酸化物),水銀,有機化合物の処理と排出抑制に関する技術変遷と動向について紹介する。窒素酸化物に関しては,燃焼技術や無触媒脱硝技術の発展と新たな技術展開を述べる。酸性ガス処理においては,乾式法を中心に未反応アルカリ剤に対する課題を論じ,対策技術を紹介する。水銀除去に関しては,活性炭利用の制御技術を取りあげ,最近,注目されているPFASの熱処理特性とその課題について言及する。
キーワード:窒素酸化物,酸性ガス,水銀および水銀化合物,ダイオキシン類,PFAS
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.48-57, 2025
原稿受付 2024.12.2
* 北海道大学大学院 工学研究院,** ㈱プランテック,*** (独)環境再生保全機構 環境研究総合推進部
連絡先:〒060-8628 北海道札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学大学院 工学研究院 黄 仁姫
焼却残渣の適正管理から見た焼却処理── 焼却飛灰を中心に ──
水 谷 聡*・肴 倉 宏 史**
【要 旨】 廃棄物の焼却処理に伴って排出される焼却残渣,特に焼却飛灰(ばいじん)の性状は,焼却処理のさまざまな因子の影響を受けている。本論では最初に,最終処分される焼却飛灰は,焼却炉・排ガス処理・集塵システム・安定化処理方法の影響を受けた複雑な混合物であることを示した。続いて,①焼却されるごみ質,②焼却炉形式(ストーカ炉/流動床炉),③集塵装置の種類(電気集塵機/ろ過式集塵機),④熱回収装置の有無,⑤排ガス処理方法と使用される薬剤,の違いが,焼却飛灰に与える影響について,主に溶出挙動等,適正処理・処分の視点から解説した。また,焼却飛灰中の重金属類の安定化処理方法として,薬剤処理,セメント固化処理,炭酸塩化処理を取りあげて紹介した。最後に,焼却処理を考えるにあたっては焼却飛灰の最終処分について考慮することが重要であることを述べた。
キーワード:焼却飛灰,最終処分,灰の管理,溶出特性,固化/安定化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.1, pp.58-67, 2025
原稿受付 2025.1.22
* 大阪公立大学大学院 工学研究科,** (国研) 国立環境研究所 資源循環領域
連絡先:〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
大阪公立大学大学院 工学研究科 水谷 聡