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No.2 ごみ処理事業における民間活用の現状と課題

平成24年3月  第23巻 第2号 

目次

巻頭言

震災廃棄物の迅速処理……萱場 道夫 123

特集 ごみ処理事業における民間活用の現状と課題

廃棄物処理施設における民間活力の活用に関する動向について [1]……浦邊 真郎 125
都市ごみ焼却施設運営の民間委託について [2]……寺嶋 均 131
自治体におけるPFI事業導入事例について――「長岡市生ごみバイオガス化事業」の事例から―― [3]……瀧本 秀樹 141
PFI (BTO) によるごみ処理施設建設・運営事業の特徴と今後の課題――御殿場市・小山町広域行政組合のケーススタディー―― [4]……藤吉 秀昭 146
ごみ処理施設の官民連携事業における契約・法律上の問題点……髙橋 玲路 154
PPP事業におけるプロジェクトファイナンスの役割……石川 裕康 159
民営化におけるリスク・保険アドバイザーとしての保険ブローカーの役割……丹野 泰 164
独立採算型の事業運営を見込んだ今後の一般廃棄物処理施設の運営管理について [5]……小林 千尋 168

支部だより

関西支部「市民と学生のためのセミナー」開催報告…… 172

支部特集

北海道支部の活動…… 173

書評

植田和弘,梶山恵司 著:国民のためのエネルギー原論……橋本 征二 175

要旨

廃棄物処理施設における民間活力の活用に関する動向について

浦 邊 真 郎*

【要 旨】 ごみ処理施設の整備・運営におけるPFI/PPP事業の動向を,他の公共施設との相違に触れながら,性能発注方式など基本的な特徴について述べた。ごみ処理施設に対するPFI/PPP事業は,この10年余の経験しか無く,より詳細な検討事項の精査とその適正な評価が必要であるが,今後とも社会的な要因 (地方財政や技術者不足,人口減少等) により,さらにPFI/PPPを活用する施設数は増加すると考えられる。


キーワード:ごみ処理施設,設計・建設・運営管理,PFI,PPP

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.2, pp.125-130, 2012
原稿受付 2012.2.21

* 大阪工業大学工学部,(株)アーシン

連絡先:〒532-0011 大阪市淀川区西中島5-9-1 新大阪花村ビル802
(株)アーシン  浦邊 真郎

都市ごみ焼却施設運営の民間委託について

寺 嶋   均*

【要 旨】 地方公共団体の財政がひっ迫するにともない,民間活力を導入して経済性を確保するため,一般廃棄物処理施設の運営を直営から民間に委託することが進行しつつある。また,近年さらに経済性を確保するため,従来の短期運転委託から長期包括的運営委託に変更する事例が出てきている。長期包括的運営委託の導入に際しては以下の点に特に留意すべきである。

① 廃棄物処理施設の運営について理解力のあるアドバイザリーコンサルタントを,プロボーザル方式により選定・契約すべきであること
② 要求水準書は,作業安全と安定稼働性ならびに耐用性の確保を重視して作成すること
③ 総合評価競争入札における入札価格と非価格要素 (運営業務の品質等) に対する評価点配分は,価格の割合を30%以下に抑える必要があること
④ 総合評価には,廃棄物処理施設の現場実務を経験した専門家を参加させること


キーワード:都市ごみ焼却施設,運転,運営,民間委託,長期包括的

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.2, pp.131-140, 2012
原稿受付 2012.2.3

* 一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会,(株)東京エコサービス (第三セクター)

連絡先:〒114-0024 東京都北区西ヶ原4-55-4

自治体におけるPFI事業導入事例について――「長岡市生ごみバイオガス化事業」の事例から――

瀧 本 秀 樹*

【要 旨】 「長岡市生ごみバイオガス化事業」は,再生可能なエネルギーの確保を実現することを目的に,設計・建設から運営・維持管理までを一括でPFI事業として発注された。メタン発酵槽で生ごみを分解処理する際に発生するバイオガスを燃料として発電を行い,得られた電力,熱エネルギーおよび処理過程で発生する発酵残渣を有効利用して,本施設は地域環境にやさしい循環型社会に貢献した「全国最大規模」のエコ施設を目指す。


キーワード:全国最大規模,バイオガスエンジン,メタン発酵槽,発電

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.2, pp.141-145, 2012
原稿受付 2012.2.3

* JFEエンジニアリング(株)アクア事業部プラント技術部水処理技術室

連絡先:〒230-8611 横浜市鶴見区末広町二丁目1番地
JFEエンジニアリング(株)アクア事業部プラント技術部水処理技術室  瀧本 秀樹

PFI (BTO) によるごみ処理施設建設・運営事業の特徴と今後の課題――御殿場市・小山町広域行政組合のケーススタディー――

藤 吉 秀 昭*

【要 旨】 市町村のごみ処理施設の建設および運営の事業は民間活力を生かしたPPP手法が増えている,とりわけ資金調達を民間に頼る必要のないDBO方式が多くなっている。そのようななかで御殿場市・小山町広域行政組合はPFI/BTO方式を選択した。またその事業範囲に焼却した後の残渣 (焼却灰と飛灰) の資源化まで含め,しかもその資源化を外部の民間施設でおこなうことも可能としたことが大きな特徴となっている。事業範囲として外部の資源化企業および最終処分業者を利用し適切にそれらの事業者を管理監督する機能を民間事業者に委託することで,市町村のごみ処理事業は資源化の促進,最終処分場問題からの解放,行政経費の節約等が期待できる。実際のVFM (Value For Money) は計画時より大きく35%削減できた。しかしながら,20年に及ぶ長きにわたってこのような外部民間委託のごみ処理資源化事業に落とし穴はないのか? 多くのリスクが考えられるためその対応については十分な対策を打っていく必要がある。提案された計画どおりに無事安全に安定して清掃事業が遂行されるには,今後の事業モニタリングと官民の適切なパートナーシップの形成に負うところが大きい。


キーワード:ごみ処理,PFI,BTO,VFM,SPC

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.2, pp.146-153, 2012
原稿受付 2012.2.8

* (財)日本環境衛生センター

連絡先:〒210-0828 川崎市川崎区四谷上町10-6
(財)日本環境衛生センター  藤吉 秀昭

独立採算型の事業運営を見込んだ今後の一般廃棄物処理施設の運営管理について

小 林 千 尋*

【要 旨】 テスコ(株)は,長年に渡り一般廃棄物処理施設の運転管理,補修工事を通じて廃棄物施設運営に携わってきた。近年,国内の一般廃棄物排出量は3Rの推進などにより減少傾向が著しい。将来に渡って持続可能な一般廃棄物処理施設の運営を継続するためには,適切な受益者負担が必要となってくるのではないだろうか。また,既存ストックの有効活用という意味では処理量の減少に伴い,負荷が少なくなった処理施設において産業廃棄物などを受け入れ,処理手数料を得ることにより,住民負担の軽減に繋げることも手法として検討できるのではないだろうか。


キーワード:一般廃棄物,処理手数料,運営

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.2, pp.168-171, 2012
原稿受付 2012.2.1

* テスコ(株)

連絡先:〒160-0016 東京都新宿区信濃町34番地
テスコ(株)   小林 千尋