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No.3 循環型社会を育むおもちゃ
 

No.3 循環型社会を育むおもちゃ

平成24年5月  第23巻 第3号 

目次

巻頭言

先  達……貴田晶子 179

特集 循環型社会を育むおもちゃ

おもちゃ(玩具)の循環社会での意義――こどもの発達と玩具での遊び――……西本 望 180
循環型社会の構築を目指す東京おもちゃ美術館の木育事業……馬場 清 190
おもちゃとおもちゃドクターを取り巻く環境について……嶋田弘史 198
循環型社会とプラントイ……前畑謙次 202
《かえっこ》――遊びの中で育まれる,リユースのこころ――……伊藤真理・白戸渓子・鈴木榮一・青海万里子・齋藤友宣 206
携帯電話の「おもちゃ」としての側面が3Rに及ぼす影響……村上(鈴木)理映・村上進亮 216
おもちゃの安全性……貴田晶子 230

技術報告

廃棄物熱分解発電プラントの開発……八太昭道 239

平成23年度企画運営委員会活動報告

1.市民と学生のためのセミナー
「現場から考える身近な製品のリユースとリサイクル」…… 244

2.廃棄物資源循環学会主催シンポジウム(廃棄物焼却研究部会共同開催)
低炭素社会をめざす廃棄物からのエネルギー回収――東日本大震災後の新たなエネルギー政策と方向性――…… 247

支部特集

平成23年度の東海・北陸支部の活動…… 250

書評

日置雅晴 著:拡大する放射能汚染と法規制――穴だらけの制度の現状――……向中野裕子 252
中村 修,遠藤はる奈 著:成功する「生ごみ再資源化」――ごみ処理コスト・肥料代激減――……中村一夫 253
竹ケ原啓介,ラルフ・フュロップ 著:ドイツ環境都市モデルの教訓……酒井伸一 254
井上美智子 著:幼児期からの環境教育――持続可能な社会に向けて環境観を育てる――……山川 肇 255

要旨

おもちゃ(玩具)の循環社会での意義――こどもの発達と玩具での遊び――

西 本   望*

【要 旨】 玩具 (おもちゃ) は,こどもの情緒的・認知発達において重要な役割を担っている。本稿では循環社会という視点において,玩具にどのような意味があるのかを論じる。
 こどもが玩具の最初にかかわる時期においては,おとな (たとえば親や教師など) がものの大切さやもののリサイクルの必要性を伝えることが有効となる。愛着が親子関係から仲間関係へ移行しはじめる前に,ぬいぐるみ玩具が喪失体験を補うものとして知られている。これらのものは,おとなになってもストレス解消の安定剤として玩具の秘められた機能である。模倣遊びの時期になると,玩具として廃物の利用が行われるようになる。幼児・児童期に保育・教育活動で廃品・廃物を取り入れた遊びをすることで,そのこどもが後に日常生活で物を再利用する可能性を高めることの一助となりうる。そのため廃品・廃物の提供者は廃品・廃物を活用する知識を必要とする。
 一方,障がい児を含めたあらゆるこどもに対する玩具としては,追加機能がある玩具を設定したりするなど,個々人に適するように容易に改造可能し,すべての人が利用できることが求められるであろう。


キーワード:愛着,遊び,玩具 (おもちゃ),こども,循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.3, pp.180-189, 2012
原稿受付 2012.5.8

* 武庫川女子大学文学部 

連絡先:〒663-8558 兵庫県西宮市池開町6-46
武庫川女子大学文学部 西本望

循環型社会の構築を目指す東京おもちゃ美術館の木育事業

馬 場   清*

【要 旨】 東京おもちゃ美術館で行っている木育事業は多岐にわたる。その目的は2つある。ひとつは木のもつ特質を活かして子どもたちの豊かな発達や大人の癒やし効果を保障していくこと。もうひとつは木や森に関心を持ち,循環型社会の構築に向けて,自ら考え行動する市民になること。そのためにもまずは「木のおもちゃ」と接する機会を多くし,木を好きになり,そこから木を暮らしに取り入れ,木や森に関心をもつようになることが大切である。こうした市民を育てるためにさまざまな働きかけを行うことで,一人でも多くの人が,賢い消費者に育ち,ひいては森林の持つ多面的機能が発揮されることにつながれば,循環型社会の構築への第一歩となると考えている。


キーワード:木育,木のおもちゃ,循環型社会,森林の多面的機能

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.3, pp.190-197, 2012
原稿受付 2012.4.24

* 認定特定非営利活動法人日本グッド・トイ委員会

連絡先:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-20 東京おもちゃ美術館
認定特定非営利活動法人日本グッド・トイ委員会 馬場清

《か え っ こ》――遊びの中で育まれる,リユースのこころ――

伊 藤 真 理*・白 戸 渓 子**・鈴 木 榮 一***・青 海 万里子****・齋 藤 友 宣*****

【要 旨】 《かえっこ》は,美術家の藤浩志氏が発案した,おもちゃを循環させる仕組みをもつ買い物遊びである。
 《かえっこ》の開催会場では,子どもたちが持ってきた「使わなくなったおもちゃ」を《かえっこ》のこども通貨「カエルポイント」で買い取る。子どもはその「カエルポイント」で会場にある「誰かが持ってきたおもちゃ」を買い,持ち帰ることができる。
 《かえっこ》が単純な物々交換ではなく,法定通貨の使用も伴わないこと,さらにイベントの趣旨に合わせたお手伝い体験やワークショップ体験などを,主催者が自由に組み合わせてカエルポイントを発行できる仕組みになっていることなどが魅力になり,全国にその開催者を増やしている。
 本稿では主に環境活動・環境教育として《かえっこ》を開催している施設・団体から,その開催の様子や《かえっこ》の有効性とその広がりについて報告してもらい,さらに《かえっこ》から見える日本のおもちゃの廃棄事情などにも触れたい。


キーワード:リユース,おもちゃ,子ども,環境活動,環境教育

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.3, pp.206-215, 2012
原稿受付 2012.5.10

* かえっこカエルクラブ
** 京エコロジーセンター (京都市環境保全活動センター)
*** 国崎クリーンセンター啓発施設「ゆめほたる」
**** 金沢エコライフくらぶ
***** 京都市ごみ減量推進会議

連絡先:〒413-0232 静岡県伊東市八幡野1754-66
かえっこカエルクラブ  伊藤 真理

携帯電話の「おもちゃ」としての側面が3Rに及ぼす影響

村 上(鈴木)理 映*・村 上 進 亮**

【要 旨】 携帯電話は,単なる「通話の道具」であったところにさまざまな機能が加わって「便利な多機能ツール」に発展し,さらに「おもちゃ」としての側面も兼ね備えたものに進化した。そのため携帯電話は,通話機能を使用しなくなった後にも,その他の機能を目的に二次利用され,結果としてデジタルカメラ等の消費財を代替している。このことは,資源利用量の抑制と,使用済み製品の排出抑制につながっている。他方で,携帯電話等からの資源回収も,資源利用量の抑制につながるが,二次利用すらされぬまま退蔵されている端末も多い。
 そこで,退蔵された小型家電からの効率的な資源回収を目指し,自治体等が小型家電を回収して,認定事業者が資源回収する法制度が検討されている。また,国内外で中古端末や部品リユースのビジネスも徐々に拡大しており,携帯電話の多機能化は,携帯電話の3Rに影響を与えているといえるが,不正利用や模造品製造などの課題も残されている。


キーワード:携帯電話,回収,3R,リサイクル,リユース

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.3, pp.216-229, 2012
査読付展望論文
原稿受付 2012.3.30  原稿受理 2012.6.4

* 筑波大学大学院生命環境科学研究科
「環境ディプロマティックリーダーの育成拠点」
(公財)地球環境戦略機関 持続可能な消費と生産グループ
** 東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻

連絡先:〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1 理科系棟A306-1
筑波大学大学院生命環境科学研究科  村上(鈴木) 理映

おもちゃの安全性

貴 田 晶 子*

【要 旨】 おもちゃの安全性の基準について,国内外の情報をまとめた。日本では主に3つの法律が関係している。食品衛生法は,幼児が口にする可能性のある製品に対する化学物質の基準を定めている。食品衛生法が,摂食のリスクを考えているのに対して,電気用品安全法や消費生活用品安全法では,身体への傷害を防ぐ目的で製品がつくられていることを保証するものである。電気製品としての玩具や遊具について規格基準を決め,それぞれPSEマーク,PSCマークを安全基準適合製品として認定している。(社)日本玩具協会は,国内外の安全性評価を取り入れた安全基準を設けており,適合製品にSTマークを認証している。国際的なおもちゃの安全性に関する規格基準として,ISO1824シリーズがあり,これは①機械的・物理的特性,②可燃特性,③化学特性についての基準を設けている。このもととなったのは欧州基準,EN71シリーズである。対象となるおもちゃの使用年齢,対象物質が,それぞれの地域で異なっている。有害化学物質として,日本の食品衛生法ではカドミウム,鉛,フタル酸エステル類が,欧州基準および国際基準では8種の重金属類が,また米国基準では鉛とフタル酸エステル類が取り上げられている。またおもちゃの使用年齢上限について,日本,欧州,アメリカで,それぞれ,6歳(食品衛生法),14歳,12歳と異なっている。2007年に中国製品のマスリコールが生じたことにより,おもちゃの安全性規格の国際的な整合の必要性の機運が高まっている。日本では,国際規格にある3種の安全性に関する特性は,異なる省で規制しており,おもちゃの安全基準は統合的ではない。製造が中国,発売元が世界の各国というおもちゃ市場では,国際的な安全性基準が適用されることが望ましい時代になっている。


キーワード:機械的・物理的特性,可燃性,化学特性,食品衛生法,EN71

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.3, pp.230-238, 2012
原稿受付 2012.5.13

* 愛媛大学農学部環境計測学研究室

連絡先:〒305-8506 愛媛県松山市樽味3丁目5-7
愛媛大学農学部環境計測学研究室 貴田晶子

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