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No.3 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性対策と資源管理
 

No.3 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性対策と資源管理

令和2年5月 第31巻 第3号

目次

巻頭言

「東京2020プラス1」を機に,CO2実質ゼロの世界を目指す……吉村 憲彦 167
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特集 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性対策と資源管理

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性と資源管理……荒田 有紀 169
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「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の成果と小型家電リサイクルにおけるレガシーの継承について……今井 亮介 177
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2050年CO2実質ゼロを目指す東京都の政策 ――東京2020大会のレガシー――……古澤 康夫 189
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1964年東京大会のごみ・し尿対策 ……稲村 光郎 198
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2012年ロンドン大会のインパクトと都市型地域循環共生圏の創造……崎田 裕子 205
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ポスト2020持続可能な循環型社会のあり方への提言……杉山 涼子 217
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支部特集/支部だより

支部だより:関東支部の2019 (令和元) 年度活動報告…… 222
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書評

松藤敏彦 著:科学的に見る SDGs時代のごみ問題……高田 光康 224
堅達京子,NHK BS1スペシャル取材班 著:脱プラスチックへの挑戦 ――持続可能な地球と世界ビジネスの潮流――……東條 安匡 224
川瀬宏明 著:地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題……釜田 陽介 225
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要旨

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の持続可能性と資源管理

荒 田 有 紀*

【要 旨】 東京2020大会は,持続可能な開発目標をはじめとする世界共通の課題解決に貢献する。5つの持続可能性の主要テーマを設定し,「持続可能性に配慮した運営計画」に基づく取り組みを進めている。資源管理分野においては,Zero Wastingを大目標に掲げ,資源を一切ムダにしない社会づくりに貢献する。紙製容器の使用等により世界的な課題である使い捨てプラスチックの使用削減を図る。調達物品の99%の再使用・再生利用に向け,レンタル・リースの活用,財産管理・処分手続の整備,後利用先の確保等を進めている。運営時廃棄物の65%の再使用・再生利用に向け,紙ごみや,従来は取り組みが進んでいない事業系の混合廃プラスチックのマテリアルリサイクル等を進める。メダルや表彰台等の物品に市民参加により集められた再生材を活用し,持続可能性への理解と行動を促進している。これらが「持続可能な社会のショーケース」となり,国際社会の歩みの規範となるよう今後も取り組みを進めていく。


キーワード:持続可能性に配慮した運営計画,資源管理,Zero Wasting,使い捨てプラスチック,持続可能な社会のショーケース

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.3, pp.169-176, 2020
原稿受付 2020.3.31

* (公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会 組織委員会 総務局 持続可能性部

連絡先:〒104-6119 東京都中央区晴海一丁目8番11号 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーY19階
(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会 組織委員会 総務局 持続可能性部  荒田 有紀

「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」の成果と小型家電リサイクルにおけるレガシーの継承について

今 井 亮 介*

【要 旨】 東京2020大会は,SDGs実現の観点を重視して企画されてきたところ,大会のレガシーとなるものの一つに,リサイクル金属によりメダルを製造する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」がある。本プロジェクトについては,小型家電リサイクル法の促進につながるものとして,環境省でも積極的に推進してきた。本プロジェクトの成果もあり,同法への関係主体の参加は大きく拡大してきたが,現在実施中の同法の施行状況に関する評価・点検の議論では,制度のさらなる推進に向けた対応として,回収量の増加,効率的なリサイクルの推進,新たな課題への対応の3つが示されている。「促進型」の制度として設計された本制度が本プロジェクトにより大きく進展したことを踏まえ,上記3つの対応を進めるとともに,本プロジェクトのストーリーを社会で共有しつつ,小型家電が消費者からリサイクラーに適切かつ確実に引きわたされる仕組みを作ることが求められている。


キーワード:使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律 (小型家電リサイクル法),メダルプロジェクト,都市鉱山リサイクル,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.3, pp.177-188, 2020
原稿受付 2020.5.22

* 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室  今井 亮介

2050年CO2実質ゼロを目指す東京都の政策——東京2020大会のレガシー——

古 澤 康 夫*

【要 旨】 東京都は2019年12月に『ゼロエミッション東京戦略』,『プラスチック削減プログラム』等を策定・公表した。これらは東京2020大会の『持続可能性に配慮した運営計画』が掲げたゴールTowards Zero Carbon (脱炭素社会の実現に向けて) 等を受けつぎ,世界の気温上昇をプラス1.5℃に抑えることを追求し,2050年にCO2実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現することを目指すものである。『プラスチック削減プログラム』では,CO2実質ゼロのプラスチック利用 (カーボン・クローズド・サイクル) を目指して,2030年までに東京都が展開するリデュース・リユース・水平リサイクル推進の施策を掲げた。東京2020大会を機に,私たちは「地球規模で考え足元から行動する」ことをもう一度考える必要がある。


キーワード:ゼロエミッション東京戦略,プラスチック削減プログラム,カーボン・クローズド・サイクル,レガシー

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.3, pp.189-197, 2020
原稿受付 2020.3.30

* 東京都 環境局 資源循環推進部

連絡先:〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1
東京都 環境局 資源循環推進部  古澤 康夫

1964年東京大会のごみ・し尿対策

稲 村 光 郎*

【要 旨】 東京都は戦災からの復興を狙いオリンピック招致を行った。その東京大会開催 (1964) の準備にあたっては,「関連事業」として,オリンピックを第一目標とするものではない,長期計画のための施策を選定し,巨費を投じた。その中で清掃局に係るいくつかの事業を,外国人の視線を意識した衛生と美化の観点から「関連事業」に選定した。それは,①それまで都民から問題視されてきた不規則で不衛生,かつ自動車交通や防火にも問題のあった収集体制を,可搬型の容器を利用した定期的な収集方式に改めること,②東京都区部の下水道普及率が20%台で,多くの家庭ではし尿汲取りが行われていたため,便所の水洗化へ金銭的支援をすること,③道路や河川が汚れていたため,清掃を強化することであった。この間および翌年の全国的状況とも照らしあわせれば,大会開催は,東京都の現在にまでつながる廃棄物行政の始まりであった。


キーワード:オリンピック,復興,容器収集,定時収集

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.3, pp.198-204, 2020
原稿受付 2020.3.31

* 稲村技術士事務所

連絡先:〒191-0032 東京都日野市三沢1-20-21
稲村技術士事務所  稲村 光郎

2012年ロンドン大会のインパクトと都市型地域循環共生圏の創造

崎 田 裕 子*, **

【要 旨】 2012年にロンドンで開催されたオリンピック・パラリンピック競技大会 (ロンドン2012大会) は,五輪史上初めて持続可能性を重視して開催された。ここでは「持続可能性」と「ごみゼロ」に向けた取り組み,そして当時のロンドン市の廃棄物政策との関連を追うとともに,レガシーとして取り組まれている「食品ロス削減」に向けた動きを紹介する。
また,SDGsの実現に貢献すると宣言した東京2020大会の持続可能な運営に向けて,外部専門家として「街づくり・持続可能性委員会」に参加したことから,「持続可能性ディスカッショングループ (DG)」および「資源管理ワーキンググループ (WG)」の議論で重視した点と,レガシーとしての「都市型地域循環共生圏」創造の道筋を,主に「食品ロス削減」を具体例に展望する。
新型コロナウイルス感染症への対応で2021年夏に延期された今,まず世界的な蔓延をともに抑え,その上で与えられた時間を活かして準備の質を高めてゆきたい。


キーワード:ロンドン2012大会,東京2020大会のレガシー,持続可能性,都市型地域循環共生圏,食品ロス削減

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.3, pp.205-216, 2020
原稿受付 2020.4.4

* (NPO) 持続可能な社会をつくる元気ネット
** SAKITA Office

連絡先:〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-12-7-807
SAKITA Office  崎田 裕子

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