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No.3 情報技術による資源循環・廃棄物処理の新展開

平成30年5月 第29巻 第3号

目次

巻頭言

エネルギーシステムの転換と廃棄物エネルギーの潜在力……高村ゆかり 185
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特集 情報技術による資源循環・廃棄物処理の新展開

これからの循環型社会と情報技術 [2]……小岩真之・大沼康宏・谷山敬一・髙林祐也・切川卓也 188
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情報技術活用による3Rの推進・資源効率の向上と労働力不足・労働環境改善への対応 [4]……橋本征二 195
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廃棄物収集・エネルギー回収高度化への情報技術の活用 [6]……藤井 実 202
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廃棄物処理・リサイクル分野における情報技術活用――プラットフォーム構築について―― [8]……土井麻記子・中石一弘・小野田弘士 209
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産官学連携による資源循環分野IoT活用研究の可能性 [10]……吉識宗佳 215
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リユース・リサイクルにおける情報技術導入の効果 [12]……花田和己 223
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ごみ処理施設におけるICT, AI技術等の活用事例について [14]……竹田航哉・山本 浩・青木 勇・富岡修一・橋本隆史・川端 馨 228
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クラウドを活用した災害廃棄物処理――東日本大震災の復旧・復興支援におけるICTの活用事例―― [16]……大塚義一 237
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廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録

座談会:「廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録」を終えて……松藤康司 246
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平成29年度廃棄物資源循環学会セミナー報告

中小廃棄物処理施設における廃棄物エネルギー回収方策等に係る説明会の実施報告……早田輝信 256
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支部特集/支部だより

支部だより:関西支部の近年の活動状況…… 263
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書評

レナ・ドミネリ 著 上野谷加代子,所めぐみ 訳:グリーンソーシャルワークとは何か――環境正義と共生社会実現――……釜田陽介 265
松村幸彦,吉岡拓如,山崎亨史 著 日本エネルギー学会 編:シリーズ 21世紀のエネルギー 13 森林バイオマスの恵み――日本の森林の現状と再生――……水原詞治 266

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要旨

これからの循環型社会と情報技術

小 岩 真 之*・大 沼 康 宏**・谷 山 敬 一***・髙 林 祐 也****・切 川 卓 也*****

【要 旨】 情報技術の革新は,わが国の循環型社会の状況を大きく変えていく可能性をもつ。ライフサイクルの各段階で効率化や最適化が図られることにより,資源投入量や廃棄物発生量等を削減しながら生産性を大幅に向上させる可能性を有している他,廃棄物の適正処理,不法投棄の撲滅,リサイクルの高度化等を大幅に促進する可能性もある。
第1次から第3次までの産業革命が大量生産・大量消費型の社会を実現・発展させてきたのに対し,第4次産業革命は,大量生産・大量消費型の社会そのものを変革する可能性を有しており,現在,審議中の第四次循環型社会形成推進基本計画案でも,そのことが明記されている。
本稿では,2R (リデュース,リユース),リサイクル,適正処理 (一般廃棄物,産業廃棄物),災害時の廃棄物処理の各分野において情報技術の革新がもたらす可能性や現時点の施策等について,それぞれ個別に記載した。


キーワード:循環型社会,情報技術,第4次産業革命,資源生産性,第四次循環型社会形成推進基本計画

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.188-194, 2018
原稿受付 2018.5.21

* 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室
** 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課
*** 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課
**** 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室
***** 環境省 環境再生・資源循環局 環境再生事業担当参事官室 災害廃棄物対策室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室  小岩 真之

情報技術活用による3Rの推進・資源効率の向上と労働力不足・労働環境改善への対応

橋 本 征 二*

【要 旨】 本稿では,情報技術の活用が求められる背景を整理するとともに,3Rの推進・資源効率の向上と労働力不足・労働環境改善へ対応を対象として,現在考えうる情報技術の活用例についての概説を試みた。3Rの推進・資源効率の向上については,(1)製品の使用回避,(2)製品の共有,(3)製品のリユース,(4)製品の長期活用,(5)製品の使用ロス削減,(6)製品の省資源化,(7)容器包装の省資源化,(8)生産工程の省資源化,(9)再生資源の活用の9つのアプローチに分け,これに,(10)ごみの分別と(11)労働力不足・労働環境改善への対応を加えた計11の項目別に活用例を紹介した。しかしながら,アイデア出しはまだまだ途に着いたばかりであり,本稿で紹介した活用例以外にもさまざまな可能性と新たなビジネスチャンスが秘められていると考えられる。


キーワード:シェアリング,リース,中古製品,リマニュファクチャリング,IoT (モノのインターネット)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.195-201, 2018
原稿受付 2018.5.8

* 立命館大学 理工学部 環境都市工学科

連絡先:〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1
立命館大学 理工学部 環境都市工学科  橋本 征二

廃棄物収集・エネルギー回収高度化への情報技術の活用

藤 井   実*

【要 旨】 気候変動を緩和するため,可燃性廃棄物からのエネルギー回収の高度化が求められている。また,少子高齢化等による労働人口の減少により,廃棄物分野においても,作業の効率化や省力化が求められている。このような課題に対応する上で,情報技術の活用が効果的なソリューションとなることが期待される。エネルギー回収の高度化には,産業施設との連携が有効である。廃棄物から製造する再生燃料を工場で化石燃料の代わりに用いることや,焼却炉で製造する蒸気を近隣の工場に供給することで,焼却発電の2倍程度の燃料消費削減が期待される。いずれの場合も,需給バランス調整が重要であるが,情報技術を活用することで容易になると考えられる。廃棄物の収集プロセスや,処理プロセスの作業の効率化や軽減にも,情報技術とロボット技術の組み合わせによって,大きな改善が期待できると考えられる。


キーワード:IoT (モノのインターネット),人工知能 (AI),エネルギー回収,廃棄物収集,産業施設

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.202-208, 2018
原稿受付 2018.4.23

*(国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境社会イノベーション研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境社会イノベーション研究室  藤井  実

廃棄物処理・リサイクル分野における情報技術活用――プラットフォーム構築について――

土 井 麻記子*・中 石 一 弘**・小野田 弘 士***

【要 旨】 廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会の低炭素化ワーキンググループ (WG) では,施設間における情報共有に着目し,2017(平成29)年度より,IoT技術を活用した資源循環実態データプラットフォーム (PF) の構築を提案している。WGでは,競争的資金の活用による低炭素化に向けた実証事業の企画・立案を行い,案件を形成する。また,低炭素化WG内にサブWGを組成し,低炭素化WGそのものは実証案件形成のゆりかごとしての機能を有する。このほか,資源循環実態データPFを検討する低炭素化WG内に横断的なタスクフォースを形成し,既存事例・ニーズ調査,マニフェストに関する調査,システム概念構築等の有用情報の収集と検証を行うなどにより,PF構築に繋げていく。


キーワード:IoT技術活用,低炭素化,施設間連携,廃棄物管理システム,プラットフォーム (PF)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.209-214, 2018
原稿受付 2018.4.16

* (株)エックス都市研究所 サスティナビリティ・デザイン事業本部
** (株)エックス都市研究所 環境エンジニアリング事業本部
*** 早稲田大学 大学院環境・エネルギー研究科

連絡先:〒171-0033 東京都豊島区高田二丁目17番22号 目白中野ビル6F
(株)エックス都市研究所 環境エンジニアリング事業本部  中石 一弘

産官学連携による資源循環分野IoT活用研究の可能性

吉 識 宗 佳*

【要 旨】 リサイクルビジネスでは,人口減少等の社会経済動向を受けて,今後効率化と付加価値創造の両面で生産性向上が必要となる。IoT,ビッグデータ,AI,ロボット等のテクノロジーは,生産性を向上させ成長を実現する有力なツールである。現在,廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会の場等で,産官学連携によるIoT活用の検討が進められている。本稿では,リサイクルビジネス事業者の課題と関連業界での活用の先行事例に基づき,これらテクノロジーの活用分野と普及に向けた課題,IoT活用研究の可能性について論じた。


キーワード:リサイクルビジネス,IoT (モノのインターネット)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.215-222, 2018
原稿受付 2018.4.16

* (一社)資源循環ネットワーク 環境イノベーションラボ

連絡先:〒105-0004 東京都港区新橋2-5-6 大村ビル2F
(一社)資源循環ネットワーク 環境イノベーションラボ  吉識 宗佳

リユース・リサイクルにおける情報技術導入の効果

花 田 和 己*

【要 旨】 リコーグループでは長年主力事業 (製品) であるコピー機/複合機のリユース・リサイクル活動を積極的に行っている。この活動を効果的,高効率に展開するため,IoT技術を駆使し,製品導入時点からの稼働状況を把握したり,メンテナンス履歴等のデータ収集と管理を行っている。これらのデータを活用し,使用済み機器の回収状況予測,回収機の診断,効率的な保管管理等に展開することで再生製品の安定生産と供給を実現している。本報告では,データの活用事例とその効果について順を追ってご紹介する。


キーワード:回収予測,評価技術,診断技術,リユース,リサイクル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.223-227, 2018
原稿受付 2018.4.16

* リコーインダストリー(株) リユース・リサイクル事業部

連絡先:〒412-0038 静岡県御殿場市駒門1-10 御殿場RRセンター
リコーインダストリー(株) リユース・リサイクル事業部  花田 和己

ごみ処理施設におけるICT, AI技術等の活用事例について

竹 田 航 哉*・山 本   浩**・青 木   勇***・富 岡 修 一****・橋 本 隆 史*****・川 端   馨******

【要 旨】 ごみ処理技術の分野においては,1990年代から2000年にかけてインターネットを利用した遠隔監視システムや人工知能 (AI) による制御技術を適用してきており,運用を通じて継続的な改良等を行いながら発展してきた。しかし,最近の第4次産業革命ともいわれる情報通信技術 (ICT) の進展により,運転監視技術の高度化や,監視システムで蓄積したビッグデータをAI技術の活用により解析し,燃焼制御や運転支援,維持管理の最適化等に展開している事例が出てきており,新たな付加価値の創造の潮流となる気配がある。
そこで本稿では,(一社)廃棄物資源循環学会主催のセミナーで報告したICT,AI技術の活用事例を中心に,プラントメーカ各社の最新の取組状況ならびに技術概要について紹介する。


キーワード:ごみ処理施設,遠隔監視,人工知能 (AI),ビッグデータ

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.228-236, 2018
原稿受付 2018.4.16

* 川崎重工業(株) エネルギー・環境プラントカンパニー 環境プラント総括部 環境プラント部
** JFEエンジニアリング(株) 環境本部 開発グループ
*** (株)神鋼環境ソリューション 環境プラント技術本部 装置技術部
**** 新日鐵住金エンジニアリング(株) 制御技術部 技術企画室
***** (株)タクマ 環境本部 運営技術部
****** 日立造船(株) 環境事業本部 開発センター

連絡先:〒105-8315 東京都港区海岸1-14-5
川崎重工業(株) エネルギー・環境プラントカンパニー 環境プラント総括部 環境プラント部  竹田 航哉

クラウドを活用した災害廃棄物処理――東日本大震災の復旧・復興支援におけるICTの活用事例――

大 塚 義 一*

【要 旨】 東日本大震災から7年が経過するなか,“首都圏直下地震”や“南海トラフ地震”といった大規模災害の発生が危惧されている。大規模災害では被害範囲が広大で建物の倒壊・破損度合いが高くなるため,都道府県や市町村といった多数の行政区域で膨大・多種多様な災害廃棄物が短期間で発生する。また,大規模災害時の災害廃棄物処理は,被災地の迅速な復旧・復興へ向けた初期段階での重要な災害対応といえる。災害廃棄物処理事業を円滑に遂行するためには,処理体制の指導・助言・広域的な協力体制の確保,被害情報収集体制の確保,市町村・関係省庁・民間事業者団体との連絡調整等が求められる。本特集では,東日本大震災での約3年間にわたる建設業としての災害廃棄物処理をはじめ,復旧・復興事業へクラウドを用いたICTの適用事例を紹介する。適用事例では,機能要件として必要な複数のシステムを一元的に集約・管理する統合管理システムについても述べる。


キーワード:ごみ処理施設,遠隔監視,人工知能 (AI),ビッグデータ

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.3, pp.237-245, 2018
原稿受付 2018.4.16

* (株)奥村組 土木本部 土木部 環境技術室

連絡先:〒545-8555 大阪市阿倍野区松崎町2-2-2
(株)奥村組 土木本部 土木部 環境技術室  大塚 義一