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No.3 ICT(情報通信技術)と循環型社会
 

No.3 ICT(情報通信技術)と循環型社会

平成25年5月 第24巻 第3号 

目次

巻頭言

「モッタイナイ」と「イタダキマス」……高見澤一裕 167

特集 ICT(情報通信技術)と循環型社会

情報通信技術(ICT)の利活用による環境負荷低減への貢献……杉山泰之 169
インターネット取引における非対称情報と評判システムについて……伊藤孝行 177
携帯電話を利用したリユースの実態――(株)モバオクの事例――……南 明紀子 183
資源循環におけるICTシステムの実際と都市向けシステムの展望……木通秀樹・武藤一浩 187
電話・インターネットに関する機器・設備の3R……山川 肇 196
ICTを活用した低環境負荷型(持続可能な)開発……山中敦之 202

平成24年度企画運営委員会活動報告

廃棄物資源循環学会セミナー
固定価格買取制度(FIT)と廃棄物を含むバイオマス発電の今後 214

支部特集/支部だより

平成24年度の東海・北陸支部の活動 218
関西支部「市民と学生のためのセミナー」報告 219

書評

内藤幸穂 著:環境工学より見た放射能リスク今昔……酒井 伸一 221

要旨

情報通信技術(ICT)の利活用による環境負荷低減への貢献

杉 山 泰 之*

【要 旨】 情報通信技術ICT(Information and Communication Technology)が進展し,ICT機器の増大により電力消費量など環境負荷も増加傾向にある。その一方で,ICTサービスの利活用により,スマートグリッドに代表されるエネルギー利用の効率化,生産活動の効率化,ヒトやモノの移動の減少,情報を電子化することによるモノの生産抑制などが図られ,社会全体の環境負荷を低減する効果が期待されている。ICTは,資源エネルギー消費量の増大を抑えながら,私たちの生活を豊かにできる可能 性のある技術である。ICTと地球環境問題との関わりを,グリーンICT (Green ICT) と呼び,特に,ICT自らが環境負荷に与える影響を低減する側面を,「Green of ICT」,ICTの利活用によって,社会全体の環境負荷低減に貢献する側面を「Green by ICT」と呼んでいる。本稿では,ICTを最大限に活用することで,私たちのライフスタイルを変革し,持続可能な社会の実現に貢献していく可能性について紹介する。


キーワード:情報通信技術,グリーンICT,環境負荷削減,CO2削減,省エネルギー

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.3, pp.169-176, 2013
原稿受付 2013.4.19

* NTT環境エネルギー研究所 グリーンマテリアルプロジェクト

連絡先:〒 243-0198 神奈川県厚木市森の里若宮3-1
NTT環境エネルギー研究所 グリーンマテリアルプロジェクト  杉山 泰之

インターネット取引における非対称情報と評判システムについて

伊 藤 孝 行*

【要 旨】 インターネット取引が普及している。一般に中古品などの取引においては情報の非対称性によるモラル・ハザードや逆選択という問題が生じることが知られている。インターネットの取引は,非常に便利な反面,買い手と売り手の距離が離れており顔も見えないため,より注意が必要とされている。たとえば,買い手が想定した質の商品が売り手から送付されない,という状況は,モラル・ハザードの1つである。また,アカロフが示した中古自動車の市場の分析では,買い手が商品の質の情報を持たないため,結果的には質の低い中古品のみが市場に残るという逆選択の状況が示唆されている。インターネット上では,評判システムによって,売り手の信頼を確保する仕組みが提供されている。また,近年の研究では,専門家に正しく質を申告させるオークションの理論設計などが行われている。


キーワード:インターネット中古市場,情報の非対称性,モラル・ハザード,逆選択,評判システム

原稿受付 2013.5.29
廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.3, pp.177-182, 2013

* 名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻/情報工学教育類

連絡先:〒466-8555 愛知県名古屋市昭和区御器所町
名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻/情報工学教育類  伊藤 孝行

資源循環におけるICTシステムの実際と都市向けシステムの展望

木 通 秀 樹*・武 藤 一 浩*

【要 旨】 ICタグ等を利用した高度な資源循環のICTシステムが実用段階に入っている。韓国では40万世帯を対象としたICタグによる資源回収システムが導入され,中国においても,バーコードを用いた大規模な資源循環が進められている。国内では,ICタグによる全国的な,建設廃棄物資源循環の新たな仕組みが構築され,経営改善の効果も得られはじめている。
 しかし,都市向けの資源循環システムには課題が多く,成果が上がりにくい構造がある。本報告では,このような課題への対応方法として,需要家を起点として事業関係者が協調して運営する資源循環のICTシステムの概要を示す。


キーワード:ICタグ,ICTシステム,分別,需要家起点,生態系

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.3, pp.187-195, 2013
原稿受付 2013.5.10

* (株)日本総合研究所 創発戦略センター

連絡先:〒141-0022 東京都品川区東五反田2-18-1
(株)日本総合研究所 創発戦略センター  木通 秀樹

電話・インターネットに関する機器・設備の3R

山 川   肇*

【要 旨】 ICTの発達により,コミュニケーションの手段は多様化してきており,コミュニケーションを支える新旧の機器・設備について,あらためて廃棄物・3Rを考えることも必要だと考えられる。本稿では,電話・インターネットの動向とそれを支える設備の概略を確認した上で,電話網に関する撤 去通信設備および関連廃棄物,公衆電話,固定電話機・ファクシミリ,携帯電話・PHSの端末機器,およびパソコン・回線終端装置などの3Rの状況について概略を述べる。


キーワード:撤去通信設備,公衆電話,固定電話,パソコン,回線終端装置

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.3, pp.196-201, 2013
原稿受付 2013.5.20

* 京都府立大学 生命環境学部

連絡先:〒606-8522 京都府京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学 生命環境学部  山川 肇

ICTを活用した低環境負荷型(持続可能な)開発

山 中 敦 之*

【要 旨】 情報通信技術 (ICT) を活用した低環境負荷型 (持続可能な) 開発の可能性については,未だコンセンサスがあるとはいえない。ICTの環境インパクトはポジティブな点 (特にエネルギー,温室効果ガス低減,その他),およびネガティブな点 (電気電子機器廃棄物 (E-waste) による汚染やICT機器による電力需要の増大に対する懸念) の両方がある。どちらにとってもICTは飛躍的な変革を可能にするツールであり,社会・経済・ガバナンス活動に対し大きなインパクトを与えている。同様に,ソーシャルメディアや他のICT ツールが効果的な情報共有や社会価値,社会関係の変革を促しており,人間の活動そして環境に大きな影響を与えている。
 本稿はこれらのICTがもたらす影響に焦点を当て,開発途上国での活用例なども含めてICTを活用した低環境負荷型・持続可能な開発の可能性を考察する。


キーワード:ICT,環境負荷,革新的なツール,持続可能な開発,開発途上国

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.3, pp.202-213,2013
原稿受付 2013.4.17

* ルワンダ青年ICT,ルワンダICT商工会議所アドバイザー(ICTと開発コンサルタント)

連絡先:Nyarutarama & Kacyiru, Kiagli, Republic of Rwanda
Atsushi Yamanaka
 

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