No.4 バイオマス系廃棄物のリファイナリー
令和3年7月 第32巻 第4号
目次
巻頭言
下水道が目指す資源循環……森岡 泰裕 253
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特集 バイオマス系廃棄物のリファイナリー
バイオリファイナリーの現状と課題――原料調達とその問題点――……中崎 清彦 255
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バイオエタノールの研究動向と今後の展望……坂西 欣也 264
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第1世代バイオディーゼル燃料から次世代バイオ燃料への展開……越川 哲也 272
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バイオメタン・バイオガス研究と応用の最新動向……朱 愛軍・覃 宇・謝 成磊・李 玉友 280
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脱炭素社会に向けたセルロースナノファイバーの利用……矢野 浩之 292
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水熱反応による液状飼料 (エコフィード) の製造……金子 光瑠・熱田 洋一・大門 裕之 300
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令和3年度廃棄物資源循環学会 春の研究討論会
総括報告…… 305
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企画セミナー報告…… 307
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会議報告
日韓交流25周年シンポジウム報告……河井 紘輔・中村 加奈 314
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支部特集/支部だより
支部だより:2020 (令和2) 年度の関東支部活動報告…… 316
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書評
江田健二,坂口幸雄,松本真由美 著:「脱炭素化」はとまらない! ――未来を描くビジネスのヒント――……渡辺 信久 318
田尾陽一 著:飯館村からの挑戦 ――自然との共生をめざして……東條 安匡 319
ポール・ホーケン 編著 江守正多 監訳 東出顕子 訳:DRAWDOWNドローダウン ――地球温暖化を逆転させる100の方法――……乾 徹 320
要旨
バイオリファイナリーの現状と課題――原料調達とその問題点――
中 崎 清 彦*
【要 旨】 バイオリファイナリーとはバイオマスを原料に汎用化学品・燃料を製造することをいう。バイオリファイナリーの研究が進んだ最初のきっかけは石油価格の高騰といわれている。その後,バイオリファイナリーのもつカーボンニュートラルの特性が注目されるようになり,さらに,2015年に国連サミットでSDGs (持続可能な開発目標) が採択されるとバイオリファイナリーはその複数の目標に関係し,SDGsの目標達成を支えるものとしても期待されるようになった。加えて,近年では生分解性プラスチックの利用を通してマイクロプラスチックによる海洋汚染問題の解決にも貢献するものと考えられている。上述のように,バイオリファイナリーにはさまざまな利点があるが,サトウキビやトウモロコシ等の食料と競合する農作物を用いたバイオエタノール生産以外のものは残念ながら広く普及しているとはいえない現状がある。バイオリファイナリーの普及には安価な原料を大量に調達し,安価な変換プロセスを開発することが極めて重要である。本稿では,バイオリファイナリーの原料として,未利用資源,資源作物,廃棄物を取り上げ,これらの原料を用いるときの問題点についてまとめた。
キーワード:バイオリファイナリー,資源,廃棄物,変換技術
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.255-263, 2021
原稿受付 2021. 5. 30
* 東京工業大学 環境・社会理工学院
連絡先:〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1
東京工業大学 環境・社会理工学院 中崎 清彦
バイオエタノールの研究動向と今後の展望
坂 西 欣 也*
【要 旨】 バイオエタノールは,運輸部門,特にガソリン車のCO2削減のため,主としてブラジルやアメリカでサトウキビ廃糖蜜やトウモロコシデンプンを原料として製造され,アジアや欧州諸国においても石油由来ガソリンへのブレンド用に広く利用されている。しかしながら,サトウキビやトウモロコシ等の食用原料からバイオエタノールを製造することは食料との競合や土地利用変化の問題等を引きおこすため,非食用のセルロース系バイオマス (たとえばバガス,稲わら,麦わら等の農業残渣や草本系バイオマス) や他の廃棄物系バイオマスからのバイオエタノール製造技術の開発と実用化が期待されている。本報では,上述したような点を踏まえて,バイオエタノールの増産に向けた非食用バイオマスからの製造プロセスの現況と課題を概説するとともに,バイオエタノールを基幹物質とする輸送用燃料や各種バイオプラスチック製品の合成プロセスの研究開発の状況と今後の展開を述べる。このような技術開発の実用化によって,2050年のカーボンニュートラル社会の実現につながることが期待される。
キーワード:バイオエタノール,非食用バイオマス,ガソリン混合,バイオケミカル原料
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.264-271, 2021
原稿受付 2021. 5. 27
* (国研)産業技術総合研究所 つくば西事業所 エネルギー・環境領域
連絡先:〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1
(国研)産業技術総合研究所 つくば西事業所 エネルギー・環境領域 坂西 欣也
第1世代バイオディーゼル燃料から次世代バイオ燃料への展開
越 川 哲 也*
【要 旨】 地球温暖化,また,廃棄物処理といった環境問題に対しての意識の高まりにより,各国では循環資源となるバイオマスからのバイオディーゼル燃料の製造,技術開発が行われている。国内のバイオマス利活用事例としては環境事業として廃食用油を起源とする軽油代替燃料FAMEの製造研究があげられ,各所でバイオディーゼル燃料化事業が進められてきた。そこで,京都市での第1世代バイオディーゼル燃料 (FAME) 事業経緯と,近年の炭化水素燃料と同等の性質をもつ次世代バイオ燃料の製造開発について国内外を含めた動向,取り組みを紹介する。
キーワード:バイオディーゼル燃料,FAME (Fatty Acid Methyl Ester),炭化水素燃料,SAF,廃食用油
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.272-279, 2021
原稿受付 2021. 5. 25
* (株)レボインターナショナル
連絡先:〒612-8473 京都市伏見区下鳥羽広長町173
(株)レボインターナショナル 越川 哲也
バイオメタン・バイオガス研究と応用の最新動向
朱 愛 軍*・覃 宇*・謝 成 磊*・李 玉 友*
【要 旨】 脱炭素や循環型社会の実現のために,バイオマスの利活用がますます重要になってきている。近年メタン発酵によるバイオメタン生成とバイオガス発電が注目されている。本稿ではバイオガスの生成に関する研究動向を総括するために,まずデータベースWeb of Scienceを用いて,バイオガスに関する研究論文の年間発表状況をまとめた。次にメタン発酵技術に焦点を絞り,プロセスの効率化と安定化を向上させるためのさまざまな強化技術 (前処理,添加材および混合消化) をレビューした。また,筆者らが近年行なった都市廃棄物系バイオマス (生ごみ,下水汚泥および紙ごみ) の混合メタン発酵研究を紹介した。最後に,日本で実装化されているメタン発酵プラントの代表的事例を取りあげ,応用拡大の可能性を展望した。
キーワード:バイオガス,メタン発酵,生ごみ,下水汚泥,廃紙
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.280-291, 2021
原稿受付2021. 6. 22
* 東北大学大学院 工学研究科 土木工学専攻 環境保全工学分野
連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06
東北大学大学院 工学研究科 土木工学専攻 環境保全工学分野 李 玉友
脱炭素社会に向けたセルロースナノファイバーの利用
矢 野 浩 之*
【要 旨】 セルロースナノファイバー (CNF) は,木材等,植物バイオマスをナノレベルまで微細化して得られる軽量,高強度の産業資材である。砂糖ダイコンの搾りカスやバガス等バイオマス系廃棄物からの製造も可能である。大気中のCO2を吸収して作られるCNFは温室効果ガスゼロエミッションのキーマテリアルといえる。本稿では以下のキーワード,①高性能,②豊富で多彩な原料,③多様な用途,④コスト/パフォーマンス,⑤時間,⑥CO2削減,⑦持続性,に基づき脱炭素社会の構築に向けた未来型資源としてのセルロースナノファイバーの特徴について述べる。
キーワード:セルロースナノファイバー,CNF,木質バイオマス,材料,脱炭素社会
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.292-299, 2021
原稿受付2021. 5. 15
* 京都大学 生存圏研究所
連絡先:〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄
京都大学 生存圏研究所 矢野 浩之
水熱反応による液状飼料 (エコフィード) の製造
金 子 光 瑠*・熱 田 洋 一**・大 門 裕 之***
【要 旨】 液状飼料 (エコフィード) は環境や畜産農家,豚等に対して多くのメリットを有している。ここでは水熱反応を用いた有機性資源の液状飼料化技術を紹介する。この液状飼料化技術は従来の技術に比べてエネルギーや設備費が必要となるが,さまざまな有機性資源を活用でき高付加価値化した液状飼料を製造することができる。また昨今の持続性の向上・環境問題意識の高まりに対して破壊的イノベーション技術の一つになると期待されている。
キーワード:液状飼料,水熱反応,高付加価値,可消化率,消化阻害物質
廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.4, pp.300-304, 2021
原稿受付2021. 5. 28
* 豊橋技術科学大学 応用化学・生命工学系
** 豊橋技術科学大学 先端農業・バイオリサーチセンター
*** 豊橋技術科学大学 学生支援センター
連絡先:〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1
豊橋技術科学大学 学生支援センター 大門 裕之