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No.4 海洋プラスチックごみ
 

No.4 海洋プラスチックごみ

平成30年7月 第29巻 第4号

目次

巻頭言

明日がわからんから始めたごみへの挑戦……松藤 康司 259
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特集 海洋プラスチックごみ

マイクロプラスチック汚染の現状,国際動向および対策……高田 秀重 261
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海洋プラスチックごみの発生・移動とその行方……磯辺 篤彦 270
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日本の海洋ごみ対策の現状と今後の課題……松﨑 裕司・佐藤佳奈子 278
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EUプラスチック戦略と関連の循環経済国際動向……粟生木千佳・森田 宜典 286
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使い捨てプラスチック政策の国際動向――欧州の取り組みを中心として――……山川  肇 294
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河畔におけるごみのポイ捨て対策――海洋ごみ問題を考える――……中俣 友子・阿部 恒之 304
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河川から考える海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック対策……二瓶 泰雄・片岡 智哉 309
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平成30年度廃棄物資源循環学会・春の研究発表会報告…… 317

会議報告

韓国廃棄物資源循環学会 2018年春の年会の開催・参加報告……浅利 美鈴 319
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平成30年度廃棄物資源循環学会企画セミナー報告

SDGsで世の中はどのように変わるのか……井出 留美 321
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平成30年度廃棄物資源循環学会 研究部会企画セミナー報告

IoTとAI等情報技術は何を生み出すか!……大西  悟 325
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支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部活動報告 328
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書評

松尾博文 著:「石油」の終わり――エネルギー大転換――……宮本  均 330
白井信雄 著:再生可能エネルギーによる地域づくり――自立・共生社会への転換の道行き――……中村 一夫 331
林 晃大 著:イギリス環境行政法における市民参加制度……進藤 眞人 332
荘林幹太郎,佐々木宏樹 著:日本の農業環境政策――持続的な美しい農業・農村を目指して――……釜田 陽介 333

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要旨

マイクロプラスチック汚染の現状,国際動向および対策

高 田 秀 重*

【要 旨】 プラスチックによる海洋汚染は21世紀に入り,マイクロプラスチック問題として新局面を迎えた。汚染は海洋表層水だけでなく,海底堆積物,海洋生態系全体に広がっている。プラスチックに含まれる有害化学物質はプラスチックを摂食した生物に移行していることも確認されている。リモートな海域ではその寄与が大きい可能性が示唆された。海洋環境中でプラスチックが長期間残留し,マイクロ化すると取りのぞくこともできないことから,国際的には予防原則的な対応がとられている。海洋プラスチックの主な汚染源は陸上で大量に消費される使い捨てプラスチックである。エネルギー回収も含めたプラスチックごみの焼却やリサイクルよりも,使い捨てプラスチックの削減が優先的に進めらている。解決策は,持続的で循環型の社会形成の中に位置づけ,温暖化等の環境問題全体の解決と調和させ,物質循環の視点から考える必要がある。


キーワード:海洋プラスチック汚染,使い捨てプラスチック,予防原則,リサイクル,バイオマスベースプラスチック

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.261-269, 2018
原稿受付 2018.6.7

* 東京農工大学 農学部 環境資源科学科 水環境保全学研究室/有機地球化学研究室

連絡先:〒183-8509 東京都府中市幸町3-5-8
東京農工大学 農学部 環境資源科学科 水環境保全学研究室/有機地球化学研究室  高田 秀重

海洋プラスチックごみの発生・移動とその行方

磯 辺 篤 彦*

【要 旨】 東アジアや東南アジアから発生する大型プラスチックごみ (マクロプラスチック) は,世界の合計値の55%を占める。マクロプラスチックの海洋での移動は海流と風による。海洋に流出したマクロプラスチックは,海岸に漂着したのち,紫外線や物理的な刺激によって破砕され,プラスチック微細片 (マイクロプラスチック) となる。海洋に浮遊するマイクロプラスチックは海流とストークス・ドリフトによって輸送されるが,生物付着に伴う沈降等,表層からのさまざまな消失過程を伴う。マイクロプラスチックの行方,すなわち海洋での移動や消失過程を包括する海洋プラスチック循環の全容は,まだ解明されていない。


キーワード:マクロプラスチック,マイクロプラスチック,海洋プラスチック循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.270-277, 2018
原稿受付 2018.5.31

* 九州大学 応用力学研究所

連絡先:〒816-8580 福岡県春日市春日公園6-1
九州大学 応用力学研究所  磯辺 篤彦

日本の海洋ごみ対策の現状と今後の課題

松 﨑 裕 司*・佐 藤 佳奈子*

【要 旨】 海洋プラスチックごみによる海洋生態系への影響が国際的に懸念されており,海洋ごみ問題は地球規模の重要課題となっている。日本では,2009(平成21)年に議員立法として成立した海岸漂着物処理推進法に基づき閣議決定された基本方針等に従い,海洋ごみ対策を推進している。環境省では,海洋ごみ対策として,回収処理および発生抑制対策,実態把握,国際連携に総合的に取り組んでいる。海岸漂着物処理推進法については,2018年6月に一部改正され,マイクロプラスチック対策が法律に初めて盛り込まれたほか,各種規定が追加された。また,循環基本法に基づく第四次循環型社会形成推進基本計画が同月に閣議決定され,「プラスチック資源循環戦略」を策定する旨が同計画に盛り込まれた。環境省としては,海洋ごみ問題の解決に向け,改正海岸漂着物処理推進法等に基づき,国内における各種対策および国際連携・協力をより一層推進していきたい。


キーワード:海洋ごみ対策,プラスチックごみ,マイクロプラスチック

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.278-285, 2018
原稿受付 2018.7.6

* 環境省 水・大気環境局 水環境課 海洋環境室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省 水・大気環境局 水環境課 海洋環境室  松﨑 裕司

EUプラスチック戦略と関連の循環経済国際動向

粟生木 千 佳*・森 田 宜 典*

【要 旨】 本稿では,EUプラスチック戦略,EU廃棄物改正指令内容や欧米企業動向を整理し,最近の循環経済関連国際動向について議論した。
プラスチック使用・生産増加の一方で,低リサイクル率や海洋環境への影響を背景に,発生抑制,再使用やリサイクルの大幅促進により環境影響を低減し,かつ,経済成長やパリ協定達成に向けた温室効果ガス (GHG) 排出削減につなげるEUの狙いが明確に反映された戦略といえる。これを,プラスチック容器包装材への高いリサイクル率を含む改正指令が支える。
戦略には,拡大生産者責任 (EPR) の活用,また,野心的な目標達成のため,企業による自主誓約キャンペーンの実施や,再生材の品質基準,再生材中の懸念化学物質対応,マイクロプラスチックの意図的利用や船舶・漁業具等の廃棄物管理対策,酸化型生分解性プラスチック制限,関連投資促進,EUリサイクル施設の認証等さまざまな取り組みや方向性が示された。これを受け,各種企業や業界団体が自主誓約等の対応を開始している。


キーワード:資源効率性,循環経済,3R,プラスチックごみ,容器包装廃棄物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.286-293, 2018
原稿受付 2018.6.5

* (公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域

連絡先:〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
(公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域  粟生木 千佳

使い捨てプラスチック政策の国際動向――欧州の取り組みを中心として――

山 川   肇*

【要 旨】 本稿では,欧州の動向を中心として,使い捨てプラスチック政策の最近の国際動向を整理した。EU諸国では,40枚/人・年以内 (2025年末) というレジ袋削減目標に向けた政策導入をほぼ終えており,現在はREACH規制によりマイクロビーズをどこまで幅広く禁止するか,レジ袋以外のプラスチック製の使い捨て製品・容器包装の削減をどこまでどのようにするかの調整段階に入っている。世界的にもレジ袋の禁止・課金政策は60カ国以上で導入されている。さらに近年,スリランカ,台湾,インド等で包括的な使い捨てプラスチック禁止政策が始まっている。日本も2018年の海岸漂着物処理推進法改正で取り組む意向は示したものの具体策はこれからである。プラスチック削減に向けて早急に大胆な取り組みが求められる。


キーワード:レジ袋,マイクロビーズ,プラスチックボトル,発生抑制,海洋プラスチックごみ

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.294-303, 2018
原稿受付 2018.6.28

* 京都府立大学大学院 生命環境科学研究科

連絡先:〒606-8522 京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科  山川 肇

河畔におけるごみのポイ捨て対策――海洋ごみ問題を考える――

中 俣 友 子*・阿 部 恒 之**

【要 旨】 本論は,著者が過去に行ったごみのポイ捨て対策のための研究 (実験室実験・現場実験) を紹介し,海洋ごみ対策に関してささやかな提言を試みたものである。実験室実験では,スライドを提示して一対比較でごみの捨てやすさを判断してもらった。現場実験では,宮城県仙台市と名取市の間を流れる名取川河畔に看板を設置し,ごみの量を実際に比較した。両実験とも,監視カメラの有無,先行ごみの有無,景観の違い (草むら・更地・花壇),看板の違い (無・目の絵・監視カメラ撮影画像) の4要因を検討した。その結果,監視性の確保,記述的規範への配慮,領域性の確保,情緒的ブレーキが有効なごみ対策になりうることが明らかになった。海洋ごみについても同様の対策が有効であると推測されるが,対策の対象地がごみに悩む現場にとどまらず,海の向こうにまで広がっていることが問題を複雑化している。


キーワード:監視性,領域性,割れ窓理論,規範

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.304-308, 2018
原稿受付 2018.5.31

* 東北文教大学短期大学部 子ども学科
** 東北大学大学院 文学研究科 心理学研究室

連絡先:〒980-8576 仙台市青葉区川内27-1
東北大学大学院 文学研究科 心理学研究室  阿部 恒之

河川から考える海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック対策

二 瓶 泰 雄*・片 岡 智 哉*

【要 旨】 本報では,海洋プラスチックごみやマイクロプラスチックの発生源と考えられる陸域・河川ごみの動態を示すために,多くの現地調査事例に基づいて,河川におけるごみ (川ごみ) の輸送状況やごみ組成を示すとともに,日本の河川におけるマイクロプラスチック汚染状況の実態を取りまとめた。その結果,川ごみは出水時に大量に輸送され,川ごみ全体の6%がプラスチック等の人工系ごみであった。マイクロプラスチックに関しては,全23河川で発見されたこと,流域の市街化が進んでいる河川のほうがマイクロプラスチック汚染が進んでいることも示された。さらに,海洋プラスチックごみおよびマイクロプラスチック対策としての河川におけるごみ捕捉技術の可能性について言及した。


キーワード:マイクロプラスチック,川ごみ,組成,人工系ごみ,川ごみ捕捉技術

廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.4, pp.309-316, 2018
原稿受付 2018.6.17

* 東京理科大学 理工学部 土木工学科

連絡先:〒278-8510 千葉県野田市山崎2641
東京理科大学 理工学部 土木工学科  二瓶 泰雄

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