- 学会誌・論文誌 - https://jsmcwm.or.jp/journal -

No.4 エシカル消費 (倫理的消費)

平成29年7月 第28巻 第4号

目次

巻頭言

廃棄物資源循環と倫理……金子栄廣 249
PDFはこちら [1]

特集 エシカル消費 (倫理的消費)

エシカル消費の序論 [2]……山本良一 251
PDFはこちら [3]

エシカル・コンシューマリズムの国際動向 [4]……中原秀樹 261
PDFはこちら [5]

資源のライフサイクルにおけるエシカル消費の役割 [6]……南斉規介 267
PDFはこちら [7]

2つの「市場」が動かすエシカル消費 [8]……河口真理子 275
PDFはこちら [9]

エシカルの認証制度 [10]……山口真奈美 286
PDFはこちら [11]

エシカルと環境経営 [12]……大道良夫 293
PDFはこちら [13]

調査報告

ごみはいつまでもごみじゃない
――ある途上国農村における地域密着型ごみマネジメントの実践事例――
……上村繁樹・大久保努・多川 正・大野翔平・荒木信夫 303
PDFはこちら [14]

廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録

第15回:「ごみこそわが命」と活躍した平山先生――筆者等へのご指導を中心に――……杉島和三郎 313
PDFはこちら [15]

平成29年度廃棄物資源循環学会・春の研究発表会報告…… 318

会議報告

韓国廃棄物学会 2017年春の年会の開催・参加報告……浅利美鈴 320
PDFはこちら [16]

支部特集/支部だより

支部だより:九州支部研究ポスター発表会・留学生等交流会開催報告…… 322
PDFはこちら [17]

書評

山谷修作 著:ごみゼロへの挑戦――ゼロウェイスト最前線――……早田輝信 323
PDFはこちら [18]

宮地泰介 編:どうすれば環境保全はうまくいくのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の進め方――……吉岡敏明 324
PDFはこちら [19]

要旨

エシカル消費の序論

山 本 良 一*

【要 旨】 エシカル消費という用語は明確に定義された一連の消費行動を指しているものではない。エシカル消費はエコロジカルな持続可能性から労働基準および人権に至る非常に広範な問題に配慮した消費をカバーするアンブレラ用語となっている。エシカル消費はいわゆる持続可能消費を含んでいる。この論説ではエシカル消費の拠って立つエシカル原則について,グリーン購入やフェアトレードのような伝統的なものばかりではなく,人工知能,ロボット,気候工学のような新たに出現しつつあるものについてもレビューを試みたい。


キーワード:エシカル消費,持続可能消費,エシカル原則,人新世

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.251-260, 2017
原稿受付 2017.5.30

* LCA日本フォーラム (JLCA)

連絡先:〒140-0002 東京都品川区東品川1-25-8
山本エコプロダクツ研究所  山本 良一

エシカル・コンシューマリズムの国際動向

中 原 秀 樹*

【要 旨】 エシカル・コンシューマリズムとは,地球規模の問題の解決策に参加する方法として,持続可能性,正義,公平性等の倫理的配慮に基づいて生産者と製品を選ぶ消費者の集団行動である。1980年代イギリス,ノルウエー,ドイツを中心とするEUの消費者・市民は,新たな活動の場で政治的意見を表明し,政治的影響力を発揮する方法を見出した。EU議会,UNEP,UNESCO,Consumer International等37カ国133機関からなる国際組織であるConsumer Citizenship Networkは,これらの新たな行動レパートリーを政治的消費主義と呼んでいる。これは,ボイコットやバイコット,市場慣行についての議論で政治的懸念を払拭するために市場を利用することである。政治的消費主義の狭義は,政治的あるいは倫理的配慮に基づいた生産者と製品の消費者の選択を指す。政治的消費者は,制度や市場慣行を変えるためには,特定の生産者や製品を選び,正義や公平性の検討,あるいはビジネスと政府の慣行の評価に基づいて選択を行うことである。


キーワード:エシカル・コンシューマリズム (倫理的消費主義),消費者市民,政治的意思決定,ボイコット,バイコット

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.261-266, 2017
原稿受付 2017.5.26

* (公財)地球環境戦略研究機関 (IGES)

連絡先:〒102-0093 東京都千代田区平河町2-3-18-303
中原 秀樹

資源のライフサイクルにおけるエシカル消費の役割

南 斉 規 介*

【要 旨】 本稿では資源利用に関する社会影響に目を向けてエシカル消費の役割について考えることを目的とし,資源のライフサイクル別に関連する社会的課題を定性的に調査した。資源採掘では,先住民の生活や文化,雇用等の問題があるが,鉱山の操業では「社会的操業許可」という概念の下,社会問題を事業リスクとして対応に努める。それを拡張した「責任ある採掘・鉱物」の考えでは,採掘以後のサプライチェーンを含めて社会影響の回避に取り組む。業界の事例では,労働者の人権を中心とした問題に多くの配慮がみられた。資源の循環段階では廃家電のスクラップを例にあげ,国内の事故や途上国での劣悪な作業環境下にある児童労働の実態に触れた。一方,消費と資源採掘や社会影響との定量的な関係について理解を助けるため関連する最近の研究事例を紹介した。最後に,資源集約財に関するエシカル商品の必要性とエシカル消費者の役割について述べた。


キーワード:社会的操業許可,責任にある鉱物,社会フットプリント,マテリアルフットプリント,知識ある参加者

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.267-274, 2017
原稿受付 2017.7.23

* (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際資源循環研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際資源循環研究室  南斉 規介

2つの「市場」が動かすエシカル消費

河 口 真理子*

【要 旨】 社会の持続可能性を高めるためには,企業のサプライチェーンを通じた環境社会配慮が不可欠だが,そのためには消費者と投資家からの働きかかけが必要である。エシカル消費が拡大すれば企業はエシカル商品開発に努力するし,ESG投資の一環でサステナブルなサプライチェーンを投資家が評価するようになれば,企業は経営戦略の一環として取り組む。エシカル消費,ESG投資いずれも日本での普及度は低いものの,最近いずれも注目度が上がっている。エシカル消費という言葉は知らなくても,環境や社会に配慮した買い物に賛同する消費者は6割以上にのぼる。ESG投資は日本版スチュワードシップ・コード (SSC) とコーポレート・ガバナンスコード (CGC) 導入により,2014年から2016年にかけて7倍以上に急拡大。しかし世界シェアでは2%にすぎない。ESG投資は倫理感ではなく運用パフォーマンス向上につながるとされ年金基金等,長期投資家の関心が高いことから今後も拡大が期待される。


キーワード:サステナブルなサプライチェンーン,ESG (Enviroment, Social, Governance) 投資,エシカルマインド,SDGs (Sustainable Devel),長期的企業価値

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.275-285, 2017
原稿受付 2017.5.31

* (株)大和総研 調査部

連絡先:〒143-0015 100-6756 東京都千代田区丸の内1-9-1 グラントウキョウノースタワー
(株)大和総研 調査部  河口 真理子

エシカルの認証制度

山 口 真奈美*

【要 旨】 エシカルな製品を生産し,消費者にどのように選択してもらうのか。その選択の基準の一つに認証やラベルがある。オーガニックやフェアトレードのみならず,農業・森・海・繊維・日用品等の分野で,世界的にもさまざまな認証・ラベルが存在するが,内容や透明性・信頼性の点からも個々に特徴や違いがあり,エシカル認証という包括した一つの認証・ラベルが運用されているわけではない。一方,エシカルファッションで注目されるオーガニック製品では,認証制度が存在し,オーガニックコットンを中心に,認証が繊維業界で活用され,エシカル消費に一定の役割を担いはじめている。サプライチェーンにおける課題解決が求められる今,環境や社会に配慮した,エシカルにまつわる認証制度について,国際的に普及しつつある第三者認証を中心に紹介し,日本でも衣食住全般へ少しずつ広がりをみせている認証・ラベルが果たす役割について考察する。


キーワード:エシカル,認証,ラベル,オーガニック,サプライチェーン

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.286-292, 2017
原稿受付 2017.6.27

* (株)Control Union Japan

連絡先:〒105-0003 東京都港区西新橋3-19-14 東京建硝ビル7F
(株)Control Union Japan  山口 真奈美

エシカルと環境経営

大 道 良 夫*

【要 旨】 近江商人の商人道徳「三方よし」の思想は,CSRの本質的な精神である。そして,「三方よし」の思想はすべてのエシカルな精神にも通ずる。
滋賀銀行は,CSRを「社会の持続可能な発展のために,社会の一員である当行が果たすべき責任」と位置づけ,「環境」「福祉」「文化」を3本柱としたCSR活動をいち早く展開してきた。特に,琵琶湖畔に本拠を置く企業の社会的使命として,経営に環境を取り込んだ「環境経営」を銀行経営の要諦と位置づけ,経済の血液である「金融」の役割を通じて持続可能な社会づくりに貢献する「環境金融」の実践を通じ,「環境」と「経済」の両立に取り組んできた。


キーワード:エシカル,近江商人の商人道徳「三方よし」,持続可能な社会,環境金融,お金の流れで地球環境を守る

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.293-302, 2017
原稿受付 2017.5.25

* (株)滋賀銀行

連絡先:〒520-8686 大津市浜町1番38号
(株)滋賀銀行  大道 良夫

ごみはいつまでもごみじゃない
――ある途上国農村における地域密着型ごみマネジメントの実践事例――

上 村 繁 樹*・大久保  努*・多 川   正**・大 野 翔 平***・荒 木 信 夫****

【要 旨】 インドネシア,ジョグジャカルタのスクナン村では,住民による革新的なごみマネジメント・システムが運営されている。住民は,家庭ごみを,プラスチック,紙,金属・ガラス,生ごみに分別し,資源ごみは売却され,生ごみはコンポストにされて肥料として利用されている。また,プラスチック袋等のごみから作られた工芸品 (エコ雑貨) を生産・販売するなど,さまざまな工夫を凝らしたリサイクル活動がなされている。この活動によって,村に収入が入るだけではなく,村の生活環境も大幅に改善された。本稿では,この地域密着型ごみマネジメント・システムの詳細を紹介するとともに,途上国の農村における廃棄物管理のあり方について考察する。


キーワード:地域密着型ごみマネジメント・システム,スクナン村,コンポスト,農村,開発途上国

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.4, pp.303-312, 2017
原稿受付 2017.3.23  原稿受理 2017.5.19

* 木更津工業高等専門学校 環境都市工学科
** 香川高等専門学校 建設環境工学科
*** 香川高等専門学校 専攻科
**** 長岡工業高等専門学校 環境都市工学科

連絡先:〒292-0041 千葉県木更津市清見台東2-11-1
木更津工業高等専門学校 環境都市工学科  上村 繁樹