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No.5 マテリアルフロー・アカウンティング
 

No.5 マテリアルフロー・アカウンティング

平成21年9月 第20巻第5号

目次

巻頭言

失敗に学ぶ……樋口壯太郎 203

特集:マテリアルフロー・アカウンティング

特集号編集にあたって……吉岡 敏明 205
廃棄物産業連関分析を応用したトップダウン型MFAモデルの開発……中島 謙一・中村慎一郎・松八重(横山) 一代・近藤 康之・長坂 徹也 206
リサイクル物のトレードフロー……原田 幸明 212
素材資源のストックアカウンティング……松野 泰也 221
社会基盤素材を介したサブスタンスフロー……松八重(横山) 一代・中島 謙一・中村愼一郎・長坂 徹也 227
携帯電話のフローとそこに含まれる金属の資源性……村上 進亮 237
鉄鋼業における廃プラスチック,木質バイオマスのリサイクル……加藤 健次・髙橋 正光 245

総説

物質フロー分析の近年の動向と課題……醍醐 市朗・橋本 征二 254

書評

尾崎弘之 著:次世代環境ビジネス――成長を導き出す7つの戦略――……和田 安彦 264
石田秀輝 著:自然に学ぶ粋なテクノロジー――なぜカタツムリの殻は汚れないのか――……高岡 昌輝 264
山本良一,鈴木淳史 編著:エコイノベーション――持続可能経済への挑戦――……田崎 智宏 265

要旨

廃棄物産業連関分析を応用したトップダウン型MFAモデルの開発

中島 謙一*・中村 慎一郎**・松八重(横山) 一代***・近藤 康之**・長坂 徹也***

【要旨】 近年,リサイクル資源を含めた資源の需給構造,および国際的な物質バランスを定量化するための手法として,マテリアルフロー分析 (MFA) が有益とされている。MFAは,製品の組成情報,産業部門における素材消費量などを積み上げる積み上げ型 (Bottom-up approach) のMFAと,各種の統計類を活用したトップダウン型 (Top-down approach) のMFAの2つに大別される。
 本稿では,トップダウン型のMFA手法として,廃棄物産業連関 (WIO) 分析モデルに立脚したMFAの理論モデルであるWIO-MFA (Waste Input-Output Material Flow Analysis) モデルについて紹介するとともに,塩化ビニル (PVC) のマテリアルフロー分析への適用を紹介する。

キーワード:マテリアルフロー分析 (MFA),産業連関分析,金属,プラスチック,塩化ビニル (PVC)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.206-211, 2009
原稿受付 2009.7.31
* (独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
** 早稲田大学政治経済学術院
*** 東北大学大学院環境科学研究科
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター 中島 謙一

リサイクル物のトレードフロー

原田 幸明*

【要旨】 各金属のトレードフローを示した。データは国連貿易統計 (Comtrade) より得,輸入国側の
データを基に2国間のフローを把握し,その大きなものから国示した。また,輸出,輸入量の大きい国々とその量を示した。ほとんどの金属の国際的なトレードフローの中で日本が重要な位置にあることが示された。また中国の位置の増大や東欧北欧南欧へのフローの拡大など,20世紀後半の米日独の3局構造からの変化が起きてきていることが明らかとなった。

キーワード:トレードフロー,物質フロー,国際競争力,工業材料,工業製品
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.212-220, 2009
原稿受付 2009.7.31
* (独)物質・材料研究機構 材料ラボ
連絡先:〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1

素材資源のストックアカウンティング

松野 泰也*

【要旨】 近年,世界,とりわけ発展途上国における,鋼材等の素材の需要が急激に増加している。天然資源の消費を抑制し,循環型社会形成を推進するためには,使用済み製品からの素材の回収・リサイクルが重要である。そのような背景のもと,対象とする地域における素材の回収ポテンシャルを検討するために,製品として使用されている素材の蓄積量を推計する「素材ストックアカウンティング」が注目されている。素材ストックアカウンティングには,大別して1)トップダウン手法 (Top-down Approach) と2)ボトムアップ手法 (Bottom-up Approach) の2通りの手法がある。トップダウン手法では,素材の用途別消費量,貿易に関する経年データ,および製品の寿命分布を用いて推計する。一方,ボトムアップ手法では,対象とする地域での製品保有数と製品の素材使用原単位から推計を行う。本論文では,素材のストックアカウンティングの手法を説明し,事例研究を紹介する。

キーワード:素材ストックアカウンティング,トップダウンアプローチ,ボトムアップアプローチ
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.221-226, 2009
原稿受付 2009.7.22
* 東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻
連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1

社会基盤素材を介したサブスタンスフロー

松八重(横山) 一代*・中島 謙一**・中村 愼一郎***・長坂 徹也*

【要旨】 膨大な量で社会蓄積が進む社会基盤金属素材は,銅線等の一部の導電材料や特殊用途を除けば,純金属の形態で存在していることは稀であり,大部分の社会基盤金属素材は何らかの他元素を含んだ合金の形で社会に存在し,使用されている。このことは,基盤金属素材の循環利用に伴って,随伴元素による汚染の問題,合金元素の散逸が起こり得ることを示唆している。このようなリスクを極小化するための基本情報として,基盤金属素材バルクだけでなく,随伴元素の挙動についても同時に十分に把握しておくことが重要である。本稿では,社会基盤金属素材として鉄鋼に注目し,わが国の鉄スクラップの循環の現状について,鉄鋼バルクのマテリアルフローと随伴元素のサブスタンスフローの両観点から分析を行った結果について述べる。

キーワード:サブスタンスフロー分析 (SFA),鉄鋼リサイクル,スクラップ,レアメタル
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.227-236, 2009
原稿受付 2009.8.12
* 東北大学大学院環境科学研究科
** (独)国立環境研究所
*** 早稲田大学政治経済学術院
連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-11-1005
東北大学大学院環境科学研究科  松八重 一代

携帯電話のフローとそこに含まれる金属の資源性

村上 進亮

【要旨】 本稿では,マテリアルフローアカウンティングの中でも,その基礎情報を与えるものとして重要な位置にある,使用済み製品フローの捕捉について,携帯電話などを事例に検討を行った。より具体的には,携帯電話で良く話題に上る退蔵されているストックも含めた推計手法の整理を行った。それと同時に,家電リサイクル法対象品目を事例に,国際資源循環等のいわゆる見えないフローの捕捉に関しても議論を行った。また,携帯電話のデータについて,そこに含有される金属について資源性の観点からその価値を検討することで,こうした機器に含まれる貴金属類のリサイクルの重要性を再認識しつつ,その価値が消費者の考える価値と乖離している可能性を示唆した。

キーワード:使用済み電子機器,退蔵,携帯電話,都市鉱山,貴金属
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.237-244, 2009
原稿受付 2009.7.31
* 東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻
連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1

鉄鋼業における廃プラスチック,木質バイオマスのリサイクル

加藤 健次*・髙橋 正光**

【要旨】 わが国は原料をすべて輸入に依存して,年間1,420万tonのプラスチックを製造し,1,000万tonの廃プラスチックを排出している。また,これ以外に150万tonのプラスチックくずを海外に輸出している。現在,廃プラスチックは73%が有効利用されているが,さらに有効利用を進めるべきである。一方,木質バイオマスは国内に豊富な資源があるにもかかわらず,その供給の77%を輸入材に頼り,残廃材の半分が廃棄されている。鉄鋼業にはこれらの資源を大量に有効利用するインフラや技術がある。その1つである新日本製鐵(株)のコークス炉化学原料化法による廃プラスチックのリサイクルは実用化から10年目を迎え,累積で約120万tonの廃プラスチックを処理した。バイオマスの有効利用には,集荷システムの確立やコストに大きな課題があり実用化に至っていないが,廃プラスチックと同様に鉄鋼業で化石燃料の替りに大量に使用され,循環型社会の構築や地球温暖化防止に貢献できると期待される。

キーワード:廃プラスチック,木質バイオマス,有効利用,鉄鋼業
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.245-253, 2009
原稿受付 2009.7.31
* 新日本製鐵(株)
** (株)神鋼環境ソリューション
連絡先:〒651-2241 神戸市西区室谷1丁目1番1号
(株)神鋼環境ソリューション 髙橋 正光

物質フロー分析の近年の動向と課題物質フロー分析の近年の動向と課題

醍醐 市朗*・橋本 征二**

【要旨】 物質フロー分析の近年の動向と課題について,対象物質,対象空間スケール,対象時間スケール,物質ストック,データ整備・推計手法,政策利用の6つの切り口から論じた。近年の動向として,対象が個別の物質や製品へと拡大していること,空間スケールが国レベルから世界レベル,地域レベルへと多様化していること,時間スケールがより長期になっていること,物質ストックへの関心が高まっていること,推計手法では産業連関分析の援用などが見られるようになっていること,マクロな物質フロー情報の政策利用が活発になりつつあることなどがあげられる。資源循環・廃棄物管理に関連する今後の研究課題としては,金属素材のような複数の元素が複合された物質の分析上の取り扱い,間接輸出入の推計,将来の物質フローの予測,物質ストックの廃棄物管理・資源再活用上の評価,共通の用語に基づくデータベースの整備,物質フロー指標が持つ課題への対応などがあげられる。

キーワード:産業エコロジー,産業代謝,物質フロー分析(MFA),サブスタンスフロー分析(SFA),持続可能な資源管理
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.5, pp.254-263, 2009
原稿受付 2009.8.3
* 東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻
** (独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科 マテリアル工学専攻 醍醐 市朗

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