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No.5 容器包装プラスチックのリサイクルと今後
 

No.5 容器包装プラスチックのリサイクルと今後

平成22年9月 第21巻 第5号

目次

巻頭言

廃棄物の適正処理処分への地盤工学技術者の役割……嘉門雅史 263

特集 : 容器包装プラスチックのリサイクルと今後

「プラスチック製容器包装の再商品化手法及び入札制度の在り方に係る取りまとめ案」について……近藤亮太 265
プラスチック包装・容器の歴史と機能……葛良忠彦 273
小売業界からみた容器包装プラスチックの3R……上山静一 281
消費者からみた容器包装プラスチックのリサイクル……中井八千代 288
横浜市におけるプラスチック製容器包装の分別・リサイクルの現状と課題……濵田雅巳 295
容器包装プラスチックリサイクルの現状……浅川 薫 300
容器包装プラスチックリサイクルによる環境負荷の削減効果……中谷 隼・平尾雅彦 309
容器包装等のプラスチックの3Rの課題と展望……森口祐一 318

報告

循環型社会に向けた一般廃棄物処理における都道府県の役割……小礒 明 328

支部だより

九州支部「九州支部 研究ポスター発表会―ある幹事の告白」 335
関西支部「法制度セミナー,総会」開催報告 336

書評

山谷修作 著:ごみ見える化――有料化で推進するごみ減量――……笹尾 俊明 338
(社)全国産業廃棄物連合会 編著:産業廃棄物最終処分場の環境管理――早期安定化と浸出水の適正処理に向けた維持管理――……友田啓二郎 339

要旨

「プラスチック製容器包装の再商品化手法及び入札制度の在り方に係る取りまとめ案」について

近藤 亮太*

【要旨】 容器包装リサイクル法に基づくプラスチック製容器包装廃棄物については,2000 (平成12)年度から,プラスチック製容器包装廃棄物をプラスチックの原材料として利用する材料リサイクル手法と,化学的に処理して化学原料として利用するケミカルリサイクル手法という2 つの再商品化手法によってリサイクルが進められてきている。
このプラスチック製容器包装廃棄物の再商品化手法および入札制度の在り方については,2009年9月の中間取りまとめを受けて2010年1月に中央環境審議会・産業構造審議会の合同会合にて検討が再開されたところ,今般取りまとめがされることとなったことから,その概要について紹介する。


キーワード:容器包装リサイクル法,プラスチック製容器包装,再商品化手法,材料リサイクル手法の優先的取扱い

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 265-272, 2010
原稿受付2010. 8. 6

* 環境省廃棄物・リサイクル対策部

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省廃棄物・リサイクル対策部  近藤 亮太

プラスチック包装・容器の歴史と機能

葛良 忠彦*

【要旨】 現在,包装材料として,プラスチックが主要な材料となっている。プラスチックが適用されている包装材料の形態は,フィルム包装,シート成形容器,射出成形容器,ブロー成形容器など,その種類は多様である。包装材料としてのプラスチックは,ガラス,金属,紙に比べて,その歴史は比較的新しい。フレキシブル包装としては,セロファンの単層フィルム包装から始まり,現在バリア包装として,多層フィルムが多用されている。シート成形容器は,スーパーマーケットでのプリパックに適用されるようになり,普及した。ブロー成形容器は,食用油,液体調味料の容器として適用されるようになり,現在では,飲料容器として地位を確立した。包装材料には,多くの機能が要求されるが,ガスバリア性は特に重要である。現在,種々のバリアー材料やバリア化の技術が開発されている。包装材料はその使命を終えると廃棄される。このため,3R (リデュース,リユース,リサイクル) を基本とする包装設計が行われている。


キーワード:フレキシブル包装,シート成形容器,ブローボトル,ガスバリア性,3R

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 273-280, 2010
原稿受付2010. 7. 29

* 包装科学研究所

連絡先:〒247-0026 横浜市栄区犬山町61-4
包装科学研究所  葛良 忠彦

小売業界からみた容器包装プラスチックの3R

上山 静一*

【要旨】 容器包装リサイクル法が対象としているプラスチックのリサイクルについては,未だ多くの課題が顕在化し議論されている。本稿では消費者に最も近い位置の産業である小売業界の視点でこれまでの取り組みと最新状況,ならびに今後のあり方についてとりあげる。
容器包装の三大機能は内容物の保護,マーケティング機能としての情報提供,そして取り扱いの利便性であるが,その一方で単一素材化などの環境配慮の必要性も指摘されている。これらのバランスをどうとっていくのかという課題とともにリデュース施策の重要性も増加してきている。小売業界は40年程前から幾多の施策でこの問題に取り組んで来たが,常に地域の消費者,行政との連携を軸に展開し,社会の持続可能性を追求してきた。
現在の容器包装リサイクル法の課題は透明性,公平性の確保である。加えて再生プラスチックやバイオマスなどの植物由来プラスチックの普及を目指す企業に対するインセンティブ設計の必要性や,消費者への「環境配慮商品の選択への誘導策」の必要性に対する具体的制度設計の議論が今こそ求められている。


キーワード:DfE (環境配慮設計),連携,リデュース,グリーン購入,透明性・公平性

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 281-287, 2010
原稿受付2010. 7. 20

* 流通環境経営研究所(元イオンリテール(株) 常務取締役環境・社会貢献担当)

連絡先:〒362-0042 埼玉県上尾市谷津2-5-23-101
流通環境経営研究所  上山静一

消費者からみた容器包装プラスチックのリサイクル

中井 八千代*

【要旨】 現在の容器包装リサイクル法(容リ法) は,発生抑制と環境配慮設計に切り替えるインセンティブになっていない。使い終わった後の処理責任を事業者がきちんと果たし,その費用は製品価格に内部化し,買って使う消費者が負担する仕組みの構築が必要である。「環境を守るためのコスト」を,きちんと消費者にメッセージとして伝え(見える化),生産者と消費者が各々の環境配慮責任を分かち合い,持続可能な社会をつくっていきたい。現在,国では市民が参加しやすく,かつ効率のよいプラスチックの資源化手法,容器包装以外のプラスチックのリサイクルが検討されている。店頭回収の拡充,ソーティングセンターの導入など,自治体と事業者の役割分担と連携の新たな発展を求めたい。容器包装の3R を進める全国ネットワーク(3R 全国ネット) は,積み残した課題を今度こそ実現させようと,容リ法の再改正に向けての市民案を発表している。


キーワード:発生抑制ガイドライン,環境配慮設計,拡大生産者責任,ソーティングセンター,見える化

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 288-294, 2010
原稿受付2010. 7. 31

* 容器包装の3R を進める全国ネットワーク

連絡先:〒102-0083 東京都千代田区麹町2-7-3 半蔵門ウッドフィールド2F 市民立法気付
容器包装の3R を進める全国ネットワーク  中井 八千代

横浜市におけるプラスチック製容器包装の分別・リサイクルの現状と課題

濵田 雅巳*

【要旨】 横浜市では,G30 プランを策定し,市民・事業者との協働により,ごみの減量・リサイクルに取り組んだ結果,2009 (平成21)年度には2001 (平成13)年度に対して,目標を上回る42%のごみ減量を達成した。具体的な取り組みの一つに2005 (平成17) 年4月から全市展開を行った家庭ごみの分別収集品目の拡大があり,その中で容器包装リサイクル法に基づくプラスチック製容器包装の分別・リサイクルを行ってきた。そこで,取組開始後,5年が経過したが,本市におけるプラスチック製容器包装の分別・リサイクルの現状を紹介するとともに,顕在化してきた課題を整理し,解決に向けた方向性を示す。


キーワード:よこはまG30プラン,容器包装リサイクル法,プラスチック製容器包装

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 295- 299, 2010
原稿受付2010. 8. 3

* 横浜市資源循環局総務部

連絡先:〒231-0013 横浜市中区住吉町1-13 松村ビル5階
横浜市資源循環局総務部  濵田 雅巳

容器包装プラスチックリサイクルの現状

浅川 薫*

【要旨】容器包装リサイクル法において再商品化義務が課されている4品目のうち,未だ課題が多いプラスチック製容器包装のリサイクルに関し現状を紹介する。そのために,プラスチック製容器包装リサイクルについて,公益財団法人容器包装リサイクル協会が実施している事業の中での位置づけやリサイクルに関する実績データを示すとともに,リサイクルの現場に近い見方からの問題点を抽出する。そして,次期法改正に向けた課題と展望を述べる。


キーワード:容器包装リサイクル法,プラスチック製容器包装,材料リサイクル,ケミカルリサイクル,拠出金制度

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 300-308, 2010
原稿受付2010. 8. 12

* 公益財団法人日本容器包装リサイクル協会 プラスチック容器事業部

連絡先:〒105-0001 東京都港区虎ノ門1丁目14番1号
公益財団法人日本容器包装リサイクル協会 プラスチック容器事業部  浅川 薫

容器包装プラスチックリサイクルによる環境負荷の削減効果

中谷 隼*・平尾 雅彦**

【要旨】容器包装プラスチックのリサイクルの意義や材料リサイクルの優先的な取り扱いへの疑問に応えるためにも,材料リサイクル,ケミカルリサイクル,エネルギー回収といったさまざまなリサイクル手法による環境負荷や資源消費の削減効果を客観的に評価することが求められている。本稿では,これまでの容器包装プラスチックリサイクルのライフサイクル評価(LCA:Life Cycle Assessment)の事例をレビューして,さまざまなリサイクル手法による二酸化炭素(CO2)排出の削減効果について考察した。その中で,システム境界や代替される製品の設定によって評価結果が影響されることに言及し,容器包装プラスチックリサイクルのLCA評価に残された課題について述べた。


キーワード:材料リサイクル,ケミカルリサイクル,ライフサイクル評価(LCA),システム境界,代替される製品

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 309-317, 2010
原稿受付2010. 8. 19

* 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻
** 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻

連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 中谷 隼

容器包装等のプラスチックの3R の課題と展望

森口 祐一*

【要旨】容器包装リサイクル法の完全施行により,PET ボトル以外のプラスチック製容器包装の分別収集,再商品化が開始されてから10 年余りが経過した。2006(平成18)年の法改正時の懸案課題をうけて行われてきた再商品化手法の評価,容器包装以外のプラスチックのリサイクル,リサイクルフローの透明化などの一連の検討の経緯をまとめるとともに,プラスチックの3R に関する主な論点を整理した。この整理を踏まえ,リサイクル手法に応じた分別・選別・識別が必要であること,家庭系の廃プラスチックを用途と性状の2 つの軸から整理した場合,現行制度によるプラスチック製容器包装に該当するか否かという視点とは異なる分別の切り口がありうることを示した。また,この考え方をもとに,家庭系廃プラスチックの分別,再商品化に関する4 種類の試行的シナリオを各々の利点および問題点とともに例示した。


キーワード:容器包装,プラスチック,リサイクル,再商品化,分別収集

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 318-327, 2010
原稿受付2010. 8. 27

* (独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター  森口 祐一

循環型社会に向けた一般廃棄物処理における都道府県の役割

小礒 明*

【要旨】わが国では,一般廃棄物の処理は市区町村の固有事務とされ,一般廃棄物中の再生資源の事業も原則として市区町村が行っている。再生資源が広域的に移動している現状では,循環型社会の構築に向けて,都道府県の役割が重要になってくると考えられる。都道府県を対象に行ったアンケート結果などを踏まえながら,今後,都道府県において,地域循環圏づくりの推進と,再生資源の広域的循環圏の構築が円滑に行われるよう,新たな仕組みを視野にいれた取り組みをわが国も進めるべきである。


キーワード:廃棄物処理法,都道府県,市区町村,一般廃棄物処理,広域

廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 5, pp. 328-334, 2010
原稿受付2010. 6. 28

* 桜美林大学環境研究所

連絡先:〒194-0294 東京都町田市常磐町3758
桜美林大学環境研究所  小礒 明

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