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No.5 炭素繊維強化プラスチック材料のリサイクル技術
 

No.5 炭素繊維強化プラスチック材料のリサイクル技術

平成25年9月 第24巻 第5号 

目次

巻頭言

「循環型社会」はもう時代遅れか?……細田衛士 341

特集 炭素繊維強化プラスチック材料のリサイクル技術

炭素繊維とCFRPについて……山口晃司 343
自動車のCFRPの現状と今後――CFRPリサイクルへの期待――……影山裕史 351
常圧溶解法によるCFRPリサイクル技術……柴田勝司 358
超臨界・亜臨界流体を用いるCFRPのリサイクル……岡島いづみ・佐古 猛 364
省エネ型熱分解法による長繊維リサイクル炭素繊維回収技術……板津秀人・神吉 肇・守富 寛 371
酸化物半導体の熱活性を利用したCFRPの完全分解とCFのリサイクル……水口 仁・塚田祐一郎・高橋宏雄 379
過熱水蒸気を利用したCFRPからの炭素繊維回収と繊維表面改質……和田匡史・田中 誠・河合和彦・北岡 諭・平 博仁・鈴木智幸 389

支部特集/支部だより

第3回関東支部セミナー開催報告――千葉県産業廃棄物処理施設見学会―― 395

書評

寺西俊一,石田信隆,山下英俊 編著:ドイツに学ぶ地域からのエネルギー転換――再生可能エネルギーと地域の自立――……近藤加代子 397

要旨

炭素繊維とCFRPについて

山 口 晃 司*

【要 旨】 炭素繊維の歴史と炭素繊維の製造方法について概要をまとめると同時に,炭素繊維が持つ機能について紹介する。また,炭素繊維を補強材とした炭素繊維複合材料の力学的特性,ならびにそれを3次元構造体にする成形方法に解説した。成形方法は,炭素繊維を連続繊維として適用できる方法と不連続繊維として適用できる方法に大別できる。一般的に,連続繊維を適用すると力学特性は向上するが生産性が落ち,不連続繊維を適用すると力学特性は低下するが生産性が向上することを報告する。


キーワード:炭素繊維,炭素繊維強化プラスチック (CFRP),製造方法,成形方法

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.343-350, 2013
原稿受付 2013.8.16

* 東レ(株) オートモーティブセンター (現在 東レ(株) ACM技術部)

連絡先:〒103-8666 中央区日本橋室町2丁目1番1号
東レ(株) ACM技術部  山口 晃司 

自動車のCFRPの現状と今後――CFRPリサイクルへの期待――

影 山 裕 史*

【要 旨】 トヨタ自動車(株)では地球環境問題に対し,炭素繊維強化プラスチック (CFRP) 化による車両の軽量化を推進している。当社初のCFRPボデー車のレクサスLFAの開発においては,CFRP材料の持つ一体成形性やデザイン自由度を取り入れることができ,軽量化だけでなく,剛性アップにも繋がった。一方,一般車両にCFRP技術を浸透させる手段として熱可塑CFRPの研究が始まり,今後の生産量増加が見込まれることから,CFRP材料の開発のみならず,CFRPリサイクル技術の早期開発と実用化が望まれる。CFRPのリサイクルのポイントは現在,CFRPからCF (Carbon-Fiber) をいかにエネルギーをかけずに低コストで分離できるかであり,燃焼や溶解法をはじめいろいろな手法が研究されている。また,車両からのCFRP部材の分離や,流通機構の構築等の大きな課題も控えていることから,今後の展開には,多くの機関等の連携や協力が必要になると思われる。


キーワード:炭素繊維強化プラスチック (CFRP),エコカー,リサイクル,コスト,LCA

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.351-357, 2013
原稿受付 2013.7.31

* トヨタ自動車(株) 材料技術開発部

連絡先:〒471-8572 愛知県豊田市トヨタ町1番地
トヨタ自動車(株) 材料技術開発部  影山 裕史

常圧溶解法によるCFRPリサイクル技術

柴 田 勝 司*

【要 旨】 常圧溶解法はリン酸三カリウムとベンジルアルコールを用いて,炭素繊維強化プラスチック (CFRP) のエポキシ樹脂 (EP) を解重合して可溶化し,炭素繊維とEP解重合物を分離回収する技術である。この方法によって,200℃,10hの条件で,使用済みテニスラケットから炭素繊維を回収し,それを不織布にして,CFRPに再利用した結果,新品と同等の機械的性質を有することがわかった。一方,回収した酸無水物硬化EP解重合物については,ジベンジルエステルとビス-ジオールが含まれていることがわかり,これらはいずれもEPの原料に再生できる可能性がある。現在は,回収CFと回収EPの用途開発を中心に研究を進めている。


キーワード:炭素繊維強化プラスチック (CFRP),リサイクル,常圧溶解法,エポキシ樹脂

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.358-363, 2013
原稿受付 2013.7.16

* 日立化成(株) 筑波総合研究所 リサイクル技術グループ

連絡先:〒308-8521 茨城県筑西市小川1500
日立化成(株) 筑波総合研究所 リサイクル技術グループ  柴田 勝司  

超臨界・亜臨界流体を用いるCFRPのリサイクル

岡 島 いづみ*・佐 古   猛*

【要 旨】 亜臨界・超臨界流体を用いて炭素繊維強化プラスチック (CFRP) 中のマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂を分解・除去し,炭素繊維を回収する技術を紹介する。超臨界水を用いた場合,380℃,25MPa,30分の条件で処理すると,マトリックス樹脂は低分子の水+メタノール可溶分まで分解した。また超臨界メタノールを用いた場合,酸無水物硬化エポキシ樹脂では270℃,10MPa,60分の条件で処理すると,エポキシ樹脂の骨格を有したメタノールに可溶な樹脂として回収することができた。一方,アミン硬化エポキシ樹脂の場合,アセトンを用いると320℃,20分の条件で圧力を1MPaまで低下してもエポキシ樹脂の分解率は100%を達成した。さらにこれらの条件でCFRPから回収した炭素繊維は樹脂等の付着物がなく,引張り強度もほとんど低下していなかった。また一例としてCFRPを超臨界メタノールで処理した後に回収した炭素繊維シートを用いて再生CFRPを作成したところ,ショートビーム試験による層間せん断強度の結果は,新品のCFRPとほぼ同じだった。


キーワード:炭素繊維強化プラスチック (CFRP),リサイクル,超臨界流体,亜臨界流体

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.364-370, 2013
原稿受付 2013.7.30

* 静岡大学大学院工学研究科

連絡先:〒432-8561 静岡県浜松市中区城北3丁目5-1
静岡大学大学院工学研究科 化学バイオ工学専攻
兼グリーン科学技術研究所  岡島いづみ

省エネ型熱分解法による長繊維リサイクル炭素繊維回収技術

板 津 秀 人*・神 吉   肇*・守 富   寛**

【要 旨】 輸送エネルギーの大幅な削減のため,自動車・航空機への利用拡大が期待されている炭素繊維強化プラスチック (CFRP) は,再生が難しく埋立処分されているのが現状である。本研究開発では,CFRP中の樹脂成分を炭素繊維回収のエネルギー源として徹底活用し,長繊維のまま省エネルギー性に優れた炭素繊維を回収する熱分解プロセスを開発し,1ton/日処理の見通しを得た。炭化炉の省エネ研究では,CFRP中樹脂の熱分解ガス・タール生成挙動および炭素収支から生成熱量から炭化炉に必要なエネルギーは賄えることを確認するとともに,実証小型炭化炉により過熱水蒸気投入等における灯油消費量が当初の約63%という省エネ削減を確認した。焼成炉では炭化炉廃熱利用やキルン排ガス熱循環等の改造を行い65%の省エネ削減を実現した。また,再生炭素繊維の評価ではリサイクル炭素繊維の新たな強度試験法を開発し,バージン炭素繊維に比して80%以上強度となることを確認した。


キーワード:炭素繊維強化プラスチック (CFRP),リサイクル炭素繊維,長繊維,熱分解,炭化・焼成

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.371-378, 2013
原稿受付 2013.8.7

* カーボンファイバーリサイクル工業(株)
** 岐阜大学大学院工学研究科

連絡先:〒505-0041 岐阜県美濃加茂市牧野1590番地1
カーボンファイバーリサイクル工業(株)  板津 秀人

酸化物半導体の熱活性を利用したCFRPの完全分解とCFのリサイクル

水 口   仁*,**・塚 田 祐一郎*・高 橋 宏 雄*

【要 旨】 筆者等が新規に開発した半導体の熱活性 (TASC) 技術を紹介し,リサイクルはおろか廃棄すら極めて困難とされる繊維強化プラスチック (FRP) を完全分解し,強化繊維を回収・リサイクルする技術を詳述した。本技術は,半導体を加熱すると出現する強力な酸化力により,ポリマーのような巨大分子をエチレンやプロパンのような小分子に裁断化し,酸素との反応で完全燃焼させるものである。本手法は100%乾式法であり,一滴の溶剤も使用しない。処理工程もシンプルでFRPのチップ化などの前処理も必要ない。さらに,本技術は各種VOCの完全浄化,悪臭,タバコ,ディーゼル排気ガスの浄化,バイオマス発電等で発生するタールの除去等にも有効であり,レア・アースやレア・メタルの回収にも効果がある。TASC技術は筆者等のアイディアに基づくMade in Japanの技術である。


キーワード:繊維強化プラスチック(FRP),半導体の熱活性,強化繊維の回収,メタルの回収,FRPの部分修復

廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.379-388, 2013
原稿受付 2013.6.24

* 信州大学繊維学部 Fii施設306
** (株)ジンテク

連絡先:〒386-8567 上田市常田3-15-1
信州大学繊維学部 Fii施設306  水口 仁

過熱水蒸気を利用したCFRPからの炭素繊維回収と繊維表面改質

和 田 匡 史*・田 中   誠*・河 合 和 彦*・北 岡   諭*・平   博 仁**・鈴 木 智 幸***

【要 旨】 炭素繊維強化プラスチック (CFRP) の製造コストの大幅削減と,今後顕在化するCFRP廃棄物量の急激な増大に対処するためには,低コストかつ高効率のCFRPリサイクル技術の確立が不可欠である。本研究では,過熱水蒸気処理による,「CFRP廃材からの炭素繊維の回収」と「繊維-樹脂間の密着性の向上」の可能性について検討した。その結果,樹脂部がポリアミド66のCFRPの場合,500℃以上の過熱水蒸気で短時間処理することにより,繊維の強度低下を抑えた連続繊維の回収が可能であることを示した。また,過熱水蒸気への窒素ガス添加は,600℃以上の高温処理に伴う繊維の強度低下の抑制と,繊維-樹脂間の密着性の向上に有効であることを示した。


キーワード:過熱水蒸気,炭素繊維強化プラスチック (CFRP),リサイクル,繊維表面改質
廃棄物資源循環学会誌,Vol.24, No.5, pp.389-394, 2013
原稿受付 2013.7.26

* (一財)ファインセラミックスセンター
** 大同大学工学部
*** (公財)科学技術交流財団

連絡先:〒456-8587 名古屋市熱田区六野2丁目4番1号
(一財)ファインセラミックスセンター  和田 匡史

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