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No.5 災害廃棄物対策事例からの学び/災害廃棄物管理の進展と課題

令和元年9月 第30巻 第5号

目次

巻頭言

循環型社会形成に向けた経団連の取り組み……山田 政雄 301
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特集 災害廃棄物対策事例からの学び/災害廃棄物管理の進展と課題

近年の災害と災害廃棄物の適正処理に関する取り組みについて [2]……名倉 良雄 304
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災害廃棄物処理における地域間協調のあり方について [4]……浅利 美鈴・名倉 良雄・酒井 伸一 310
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広島県:平成30年7月豪雨による災害廃棄物処理の現状と課題 [6]……出口 裕也 320
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平成30年7月豪雨における災害廃棄物処理と中国四国地方環境事務所の取り組み [8]……大谷可奈子 328
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平成29年7月九州北部豪雨災害と小規模自治体における廃棄物処理 [10]……上村 一成 335
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平成30年北海道胆振東部地震による被災状況と復旧・復興支援について [12]……田中 敏明 346
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廃棄物資源循環学会研究部会報告

環境学習施設研究部会「春の視察研修会2019」 報告……花嶋 温子 354
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支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部活動報告…… 356
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書評

上田マリノ 著:エコ娘が聞く!環境世代へつなぐ女性39人……河口 純子 358
瀬口亮子 著:「脱使い捨て」でいこう!――世界で,日本で,始まっている社会のしくみづくり――……山川  肇 359
筧 裕介 著:持続可能な地域のつくり方――未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン――……石井 一英 360
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要旨

近年の災害と災害廃棄物の適正処理に関する取り組みについて

名 倉 良 雄*

【要 旨】 災害廃棄物は,一般廃棄物の処理責任を有する市区町村が主体となり迅速に収集・撤去し,適正に処理を完了させなければならない。しかし,ひとたび大規模な災害が発生すると,膨大かつ多様な災害廃棄物が一時に発生してしまう。このため,2018年度の災害では,研究・専門機関,関係業界団体等から構成される災害廃棄物処理支援ネットワーク (D.Waste-Net) の専門家を環境省職員とともに派遣し,災害廃棄物処理に関する助言や,仮置場の設置運営等の技術的な支援を実施した。災害廃棄物対策に関する取り組みとしては,災害廃棄物対策推進検討会の開催や地域ブロック協議会の設置,災害廃棄物処理計画の策定支援を行うなど,国レベル,地域ブロックレベル,自治体レベルで廃棄物処理システムの強靱化を進めている。


キーワード:災害廃棄物,仮置場,災害廃棄物処理支援ネットワーク (D.Waste-Net),災害廃棄物処理計画,地域ブロック協議会

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30, No.5, pp.304-309, 2019
原稿受付 2019.7.29

* 環境省 環境再生・資源循環局 環境再生事業参事官付 災害廃棄物対策室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省 環境再生・資源循環局 環境再生事業参事官付 災害廃棄物対策室  名倉 良雄

災害廃棄物処理における地域間協調のあり方について

浅 利 美 鈴*・名 倉 良 雄**・酒 井 伸 一***

【要 旨】 災害廃棄物対策において,発災時の支援を含む地域間連携・協調の取り組みには,進展がみられた。指針等での役割や体制の整理に加えて,複数の災害において,支援実績や教訓が蓄積されつつある。たとえば,初動時のプッシュ型支援が効果的に働いてきたこと,支援の内容はさまざまであり支援マネジメントが重要であることなどがあげられる。さらに,特に2018 (平成30) 年に相次いだ災害への支援の速報的情報から分析すると,今後検討が必要な視点も多い。たとえば,支援内容のミスマッチを避けるための事前受援計画が効果的であること,国による支援マネジメントにおいては拠点をどこに置くかも重要であることなどがあげられる。また,今後は,大規模災害のみならず,同時多発的・連続的な通常災害時においても,現在の体制では対応が不十分となる可能性があり,平時からの人材育成や地域ブロック内・間の連携体制検討に加え,司令塔機能を補完する仕組みも検討する必要がある。


キーワード:災害廃棄物,地域連携,平成30年7月豪雨,熊本地震,プッシュ型支援

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30, No.5, pp.310-319, 2019
原稿受付 2019.7.29

* 京都大学大学院 地球環境学堂
** 環境省 環境再生・資源循環局 環境再生事業担当参事官付災害廃棄物対策室
*** 京都大学 環境安全保健機構 附属環境科学センター

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学大学院 地球環境学堂  浅利 美鈴

広島県:平成30年7月豪雨による災害廃棄物処理の現状と課題

出 口 裕 也*

【要 旨】 2018 (平成30) 年7月に,広島県は記録的豪雨に見舞われ,県内の広範囲にわたって土砂災害や河川氾濫が発生した。これにより1万5千棟を超す住家被害と,推計129万tonもの災害廃棄物が発生した。県は,速やかな復興に向けて「広島県災害廃棄物処理実行計画」を策定し,2019 (令和元) 年12月までの完了を目標として定めており,現在は,市町や民間の廃棄物処理施設を活用することにより,災害廃棄物の処理を進めているところである。災害廃棄物処理の課題として,仮置場の確保・運営等において,平時の準備が適切に行われておらず,また初期対応の手続きが十分に整理されていなかった点があげられる。県はこれらの課題を踏まえ,「災害廃棄物処理に係る市町等初動マニュアル」を策定し,初動期における市町の役割等を明確にするとともに,市町職員等を対象とした図上演習等を実施している。


キーワード:平成30年7月豪雨,災害廃棄物,災害廃棄物処理実行計画,初動マニュアル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30, No.5, pp.320-327, 2019
原稿受付 2019.7.31

* 広島県 環境県民局 循環型社会課

連絡先:〒730-8511 広島市中区基町10番52号
広島県 環境県民局 循環型社会課  出口 裕也

平成30年7月豪雨における災害廃棄物処理と中国四国地方環境事務所の取り組み

大 谷 可奈子*

【要 旨】 平成30年7月豪雨災害では,西日本各地で多大な被害が発生した。環境省では,発災直後に被災自治体に対する現地支援チームを岡山県,広島県,愛媛県に派遣し,本省職員および各地方環境事務所職員との連携により,支援活動を行ってきた。また,中国四国地方環境事務所においては,2018年3月に策定した「大規模災害発生時における四国ブロック災害廃棄物対策行動計画」において広域連携体制を構築し,今回の災害において,この計画に基づく支援を実施したところである。本稿では,四国地方において特に被害が大きかった愛媛県での災害廃棄物処理の概要と環境省支援チームの活動内容について振り返るとともに,中国四国ブロックにおける災害廃棄物対策の今後の対応について紹介する。


キーワード:災害廃棄物,平成30年7月豪雨,中国四国地方環境事務所,環境省現地支援チーム,仮置場

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30,No.5, pp.328-334, 2019
原稿受付 2019.7.30

* 環境省 中国四国地方環境事務所 四国事務所 資源循環課

連絡先:〒760-0019 香川県高松市サンポート3-33 高松サンポート合同庁舎南館
環境省 中国四国地方環境事務所 四国事務所 資源循環課  大谷 可奈子

平成29年7月九州北部豪雨災害と小規模自治体における廃棄物処理

上 村 一 成*

【要 旨】 平成29年7月九州北部豪雨において,朝倉市は,未だかつてない規模の被害を被った。2012 (平成24) 年7月の九州北部豪雨の経験を踏まえ,独自の災害廃棄物処理マニュアルを整備し,災害廃棄物処理の肝ともいえる一次集積場も合併前の市町ごとに3カ所確保していた。しかし,今回の災害規模は,その想定をはるかに上回っていた。災害対策本部は,人命救助,道路啓開物の除去,避難所対応,インフラの応急復旧等に翻弄され,人口約5万4千人の小規模自治体は,大混乱に陥った。このような中,災害廃棄物の処理は,かなり厳しいものであった。しかしながら,環境省をはじめとする多くの方々のさまざまな支援と市民の皆さんの理解と協力をもって,何とか乗り越えることができた。本稿では,今回の災害の特徴を踏まえながら,通常時の廃棄物処理スキームと比較しつつ,災害廃棄物に対する平時からの備えから処理,そして課題を明らかにすることで,今後の大規模災害廃棄物対策に寄与することを願って紹介するものである。


キーワード:大規模災害,災害廃棄物,平成29年7月九州北部豪雨,福岡県朝倉市,災害廃棄物処理計画

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30, No.5, pp.335-345, 2019
原稿受付 2019.7.30

* 福岡県 朝倉市 保健福祉部 こども未来課

連絡先:〒838-8601 福岡県朝倉市菩提寺412-2
福岡県 朝倉市 保健福祉部 こども未来課  上村 一成

平成30年北海道胆振東部地震による被災状況と復旧・復興支援について

田 中 敏 明*

【要 旨】 2018 (平成30) 年9月6日3時7分に北海道胆振地方中東部を震源にマグニチュード6.7を観測し,厚真町では北海道で初めて最大震度7が観測された。この地震により,多くの人的被害,財産被害 (家屋の倒壊や家財道具の損壊) および地盤の液状化が生じた。また,北海道全域に及ぶ大規模停電 (ブラックアウト) が起き,固定電話サービス,携帯電話サービスに支障が生じ,通信状況が混乱した。この地震により平常時の廃棄物量とは比べものにならない量の災害廃棄物の処理を行わなければならない中,限られた人員で対応しなければならない状況であった。本稿では,災害廃棄物の処理ならびにその後の被災自治体の災害等廃棄物処理事業費の申請等について述べる。


キーワード:北海道胆振東部地震,災害廃棄物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.30, No.5, pp.346-353, 2019
原稿受付 2019.8.9

* 北海道 環境生活部環境局 循環型社会推進課

連絡先:〒060-8588 札幌市中央区北3条西6丁目
北海道 環境生活部環境局 循環型社会推進課  田中 敏明