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No.6. 使用済自動車のプラスチック資源循環のこれから

令和7年12月 第36巻 第6号

目次

巻頭言

バイオマスのウソではない誤解……橋本 征二 445

特集 使用済自動車のプラスチック資源循環のこれから

自動車向け再生プラスチック供給体制の構築に向けた取り組みおよび自動車リサイクルを巡る政策動向 [1]……河田 陽平 447

欧州におけるプラスチック再生利用の動き ──自動車分野を中心に── [2]……粟生木千佳 455

使用済自動車に係る資源回収インセンティブ制度の概説 [3]……栗田  聡 465

解体業におけるプラスチック事前回収の事例紹介 [4]……小山 勝生・倉光紀一郎・髙瀬 大貴 475

ポストシュレッダーのプラスチック回収の試み [5]……山下 晴道・岩瀬 正美 482

プラスチック・マテリアルリサイクル量アップ実現に向けての取り組み [6]……磯野 正幸 493

資源循環と化学物質管理の視点に立った自動車リサイクル [7]……矢野 順也・高橋 正光・酒井 伸一 499

会議報告

第8回 SUMシンポジウム(SUM 2025)の報告……河井 紘輔 510
第11回 3R国際会議(3RINCs 2025)の報告……熊谷 将吾・平田  修・河井 紘輔 435

環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告

第1回 一般廃棄物処理分野における資源循環・脱炭素化に係るシンポジウム
第2回 一般廃棄物処理システムにおける施策に係るシンポジウム ──令和6年度第1回・第2回シンポジウム──……毛利 紫乃 512

支部活動報告

北海道支部「令和6年度廃棄物資源循環学会北海道支部見学会・研究発表会」開催報告…… 517
関西支部「大学生・大学院生のための施設見学・交流会2025」開催報告…… 519

書評

吉田充夫 著:流域コモンズを水銀汚染から守れ ──ウルグアイにおける統合的流域水質管理協力の20年──……日下部武敏 521
德永光俊 著:日本農史研究 上 「生きもの循環」と農法……加藤 雅彦 522

要旨

自動車向け再生プラスチック供給体制の構築に向けた取り組みおよび自動車リサイクルを巡る政策動向

河 田 陽 平*

【要旨】 2024年8月,「第五次循環基本計画」が閣議決定され,「循環経済への移行」が国家戦略に掲げられた。しかし,再生材の供給等,わが国における動静脈連携による取り組みは緒に就いたばかりである。一方,欧州において,自動車における再生プラスチック利用義務化が盛り込まれたELV規則案が提案されており,日本の製造業への影響も必至である。環境省では,「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」を立ちあげ,2025年3月,「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」を取りまとめた。2025年度は,関係者と連携して中長期ロードマップを策定し,自動車向け再生プラスチック供給体制の構築に向けて必要な取り組みの構想案を取りまとめる。また,2024年9月,法施行後20年目を迎える自動車リサイクル法について,環境省および経済産業省の合同会議が開催され,これまでの制度の施行状況の点検・評価と,制度を取りまく環境の変化への対応について議論を開始した。


キーワード:循環経済,ELV規則案,再生プラスチック,再プラ集約拠点構想,自動車リサイクル法

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.447-454, 2025
原稿受付 2025.10.6

* 環境省 環境再生・資源循環局 資源循環課 資源循環制度推進室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
 環境省 環境再生・資源循環局 資源循環課 資源循環制度推進室  河田 陽平

欧州におけるプラスチック再生利用の動き── 自動車分野を中心に ──

粟生木 千 佳*

【要旨】 本稿では,自動車分野を中心に欧州におけるプラスチック再生利用の動向について政策・取り組み・市場の観点から現況を整理した。EU循環経済戦略と2023年ELV規則案が,新車への再生材使用義務化を加速させている。自動車メーカーはケミカルリサイクルを含むインフラ構築や目標設定を推進しており,2022年の再生材採用率はELV規則案の目標(最大25%)に比べまだ低いが,取り組みが拡大していることが推察される。他方で,再生材の質・量,コスト,事業構造の複雑性に加えて,輸入の影響など多様な障壁や課題も存在する。これらの克服には,技術発展を取り入れながら,事業者に対するインセンティブや貿易・グローバル市場観点も組み入れた難易度の高い包括的,また柔軟性のある制度設計が求められるであろうと考える。日本において,経済影響と同時にプラスチック再生利用推進がもたらす社会影響のバランスも考慮した循環型社会を検討するうえでの考慮すべき動向といえる。


キーワード:プラスチックリサイクル,循環経済,再生材,自動車

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.455-464, 2025
原稿受付 2025.10.6

* (公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産ユニット

連絡先:〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
(公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産ユニット  粟生木 千 佳

使用済自動車に係る資源回収インセンティブ制度の概説

栗 田   聡*

【要旨】 2026年4月からの制度開始を目指して準備が進められている使用済自動車に関する資源回収インセンティブ制度は,自動車ユーザーが負担するリサイクル料金を原資に,解体工程や破砕工程で樹脂やガラス等の資源を回収した事業者に対して経済的インセンティブを付与する制度である。本制度が開始されることにより,これまで市場原理だけでは採算性が課題であった資源回収を促進し,回収された資源は再生材として活用され,国内資源循環の拡大やリサイクルの質の向上が期待されている。また,本制度は解体業者・破砕業者・再生材メーカー等がコンソーシアムを形成することで,適切かつ継続的に資源回収と再生利用がなされることを担保した信頼性の高い枠組みで運用されるとともに,回収された資源の種別や重量をはじめとした制度全般に係る情報については,自動車リサイクル情報システムで管理されることになる。


キーワード:自動車リサイクル,樹脂リサイクル,資源回収,資源循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.465-474, 2025
原稿受付 2025.9.29

* (公財)自動車リサイクル促進センター
 連絡先:〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 日本自動車会館11階
 (公財)自動車リサイクル促進センター  栗田 聡

解体業におけるプラスチック事前回収の事例紹介

小 山 勝 生*・倉 光 紀一郎**・髙 瀬 大 貴**

【要旨】 自動車におけるリサイクル分野では,金属回収に加えプラスチックの再資源化が重要課題となっている。本稿では,西日本オートリサイクル㈱(WARC)による自動車由来樹脂の事前回収および再資源化の取り組みを報告する。WARCは手解体と自動車解体機を併用し,PP樹脂を中心にバンパーや内装部品を高精度に回収している。2018年度の実証事業では専用破砕・粉砕設備を導入し,異材除去精度の向上と安定した再生材供給体制を構築した。中型解体機の導入により回収効率は向上したが,異材除去・処理コストの高さが採算性を圧迫しているなどの課題もみえた。今後はインセンティブ制度や易解体設計の推進,異材除去の自動化・効率化を通じ,マテリアルリサイクルの拡大と資源循環型の自動車リサイクルの実現を目指す。


キーワード:自動車リサイクル,自動車解体,プラスチック,樹脂回収

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.475-481, 2025
原稿受付 2025.10.31

* 西日本オートリサイクル㈱,** 西日本オートリサイクル㈱ 技術課
 連絡先:〒808-0021 福岡県北九州市若松区響町1-62 
 西日本オートリサイクル㈱ 技術課  倉光 紀一郎

ポストシュレッダーのプラスチック回収の試み

山 下 晴 道*・岩 瀬 正 美**

【要旨】 自動車向け再生プラスチックの需要が高まる中,使用済自動車由来プラスチックの供給増が課題となっている。供給増には,解体時回収(BST)とシュレッダー後回収(PST)の両輪での取り組みが重要であり,特にPSTは量的ポテンシャルが大きい。豊田メタル㈱および㈱プラニックがPSTによるCar to Carの促進を行なっている。これら取り組みは,将来の自動車向け再生プラスチックの「供給<需要」への対策として必要であるが,今後は産官学連携による技術・市場創出と,「供給>需要」となる過渡期への対応が求められる。


キーワード:ポストシュレッダー(PST),再生プラスチック,Car to Car,ASR

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.482-492, 2025
原稿受付 2025.10.1

* ㈱プラニック,** 豊田メタル㈱

連絡先:〒437-1623 静岡県御前崎市港6178-1
㈱プラニック 山下 晴道

プラスチック・マテリアルリサイクル量アップ実現に向けての取り組み

磯 野 正 幸*

【要旨】 本稿は,プラスチック再生コンパウンダーであるいその㈱が,国の「2030年までに再生利用(マテリアルリサイクル)を倍増」という目標達成に向け,新たに推進している2つの事業について解説する。
 第一の事業は,「Car to Carリサイクル事業」である。これは廃車(ELV)由来のプラスチック部品を,再度自動車部品として利用可能な高強度の再生プラスチック原料に変換する事業である。
 第2の事業は,「Film to Filmリサイクル事業」である。これは食品包装等に使われる多層複合フィルムを,再度フィルムとして利用可能な再生原料にリサイクルする画期的な取り組みである。
 弊社は,これらの事業を通じて,環境問題への貢献と新たな産業の創出を目指している。


キーワード:マテリアルリサイクル,Car to Carリサイクル,Film to Filmリサイクル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.493-498, 2025
原稿受付 2025.10.6

* いその㈱

連絡先:〒461-8630 愛知県名古屋市東区相生町55番地
いその㈱  磯野 正幸

資源循環と化学物質管理の視点に立った自動車リサイクル

矢 野 順 也*・高 橋 正 光**・酒 井 伸 一**

【要旨】 本稿は,使用済自動車(ELV)リサイクル制度の比較,解体調査に基づく実態把握や将来推定を踏まえて,自動車プラスチックの循環利用に向けた課題と展望を整理した。日欧比較では,日本はASR処理と追跡管理に優位性を有する一方,プラスチックを含む素材のマテリアルリサイクル率の向上が課題にあることを示した。また,解体調査を通じて素材構成を明らかにするとともに,電装品等の化学分析から多様な資源性物質だけでなく難燃剤を含む化学物質も含有される実態を紹介した。さらに,精緻解体調査に基づくELV由来プラスチックの回収・循環利用の量的ポテンシャルの将来推定を行い,Car to Carの回収ポテンシャルは,欧州ELV規則案の基準 (3〜5%)を満たしうることを示した。日本市場特有の要因を踏まえつつ,PP以外のプラスチック樹脂素材も視野にいれたCar to Carを目指すことや,産官学コンソーシアムで議論されているX to Carの検討,上流から下流までを統合した循環設計が不可欠となる。


キーワード:使用済自動車,プラスチック,物質フロー,化学物質,解体調査

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.6, pp.499-509, 2025
原稿受付 2025.12.18

* 京都大学 環境安全保健機構 環境管理部門,** (公財)京都高度技術研究所

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町 
 京都大学 環境安全保健機構 環境管理部門  矢野 順也