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No.6 最終処分にむけた減容化・安定化体化技術と最終処分構造

令和4年11月 第33巻 第6号

目次

巻頭言

遊動時代の循環社会を築く……山極 壽一 415
PDF, 336KB [1]

特集 最終処分にむけた減容化・安定化体化技術と最終処分構造

中間貯蔵施設に搬入された除去土壌等の減容・再生利用技術開発等の今後の取り組み [2]……馬場 康弘 417
PDF, 1.2MB [3]

放射性物質に汚染された土壌と廃棄物の減容化処理技術と今後の課題 [4]……有馬 謙一・遠藤 和人・大迫 政浩 423
PDF, 1.7MB [5]

廃棄物のセメント固化・固型化技術 [6]……芳賀 和子・渋谷 和俊・大杉 武史・山田 一夫 435
PDF, 1.3MB [7]

放射性セシウムを含む廃棄物の固型化マトリックスとしてのジオポリマーの適用性 [8]……佐藤  努・大矢 裕介・Chaerun Raudhatul Islam・黒田 知眞・中林  亮・工藤  勇・加藤 和茂・谷口 雅弘 448
PDF, 776KB [9]

イオンクロマトグラフィーによる飛灰水洗液中の放射性セシウム除去と使用済みセシウム吸着剤の安定化―― [10]……市川 恒樹・山田 一夫 456
PDF, 844KB [11]

安定化体を対象とした最終処分施設構造の検討にむけた技術的課題 [12]……乾   徹 467
PDF, 1.2MB [13]

廃棄物資源循環学会若手の会セミナー報告

新たなエネルギー資源を求めて ――創エネルギー技術開発の取り組み――……藤原  大 477
PDF, 412KB [14]

廃棄物資源循環学会研究部会報告

環境学習施設研究部会「秋の視察研修会2022」報告……鈴木 榮一 479
PDF, 734KB [15]

支部特集/支部だより

支部だより:東海・北陸支部の活動報告 (2022年度)…… 481
PDF, 184KB [16]

書評

大塚 直,諸富 徹 共著:持続可能性とWell-Being ――世代を超えた人間・社会・生態系の最適な関係を探る――……後藤 尚弘 482
更科悠介 編:使い捨てない未来へ プラスチック「革命」2……釜田 陽介 483
野村総合研究所 編:カーボンニュートラル……原田 浩希 484
細田衛士 著:循環経済 ――理論分析と応用――……沼田 大輔 485
PDF, 318KB [17]

要旨

中間貯蔵施設に搬入された除去土壌等の減容・再生利用技術開発等の今後の取り組み

馬 場 康 弘*

【要旨】 11年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が放出され,広域的に環境が汚染された。
環境省では,土壌等の除染や汚染廃棄物の処理を行なっており,除去土壌や放射能濃度が10万Bq/kgを超える廃棄物を中間貯蔵施設に輸送している。中間貯蔵施設に搬入されたものについては,中間貯蔵開始後30年以内に県外で最終処分することが法律に定められている。その実現に向けては,最終処分量の低減を図ることが重要であるため,減容技術の開発や除去土壌の再生利用に関する実証事業を実施している。実証事業の成果については,公開の場で議論を行なっている。今後,2024年度を戦略目標として,基盤技術の開発を進めるとともに,最終処分場の必要面積や構造について実現可能ないくつかの選択肢を提示する。その上で,2025年度以降に最終処分場に係る調査検討・調整などを進めていく。中間貯蔵施設に搬入された除去土壌等の県外最終処分を確実に実現する必要がある。


キーワード:中間貯蔵施設,県外最終処分,除去土壌の再生利用,除去土壌の減容技術,戦略目標 (2024年度)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.417-422, 2022
原稿受付 2022.10.3

* 環境省 環境再生・資源循環局

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省 環境再生・資源循環局 環境再生事業担当参事官室  馬場 康弘

放射性物質に汚染された土壌と廃棄物の減容化処理技術と今後の課題

有 馬 謙 一*・遠 藤 和 人**・大 迫 政 浩*

【要旨】福島第一原発事故に由来する放射性物質に汚染され中間貯蔵施設に搬入された除去土壌や廃棄物のうち,放射能濃度が高いものを含め再生利用が難しいものは県外最終処分の対象となる。そのため減容化処理に関するさまざまな研究が行われており,焼却残渣に対しては高温での溶融処理が採用され,実施設も稼働している。本記事では,溶融処理から発生した飛灰の減容化技術とマスバランス計算について概説し,異なる処理技術を組み合わせた複数の減容化プロセスを想定した計算を実施した。その結果,飛灰を洗浄して減容化すると安定化体は焼却残渣の1/1,000から1/10,000程度になり,放射能濃度は1千万から1億Bq/kg程度になると試算された。一方で,スラグ,洗浄残渣,洗浄廃液等の二次生成物も発生するので配慮が必要である。今後は現在国が進めている実証試験等を踏まえた検証を行うとともに,本計算手法による試算が国の技術戦略目標の策定に活用されることが期待される。


キーワード:放射性物質,飛灰,吸着,減容化,マスバランス

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.423-434, 2022
原稿受付 2022.10.4

* (国研)国立環境研究所 資源循環領域
** (国研)国立環境研究所 福島地域協働研究拠点

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 資源循環領域  有馬 謙一

廃棄物のセメント固化・固型化技術

芳 賀 和 子*・渋 谷 和 俊*・大 杉 武 史**・山 田 一 夫***

【要旨】セメントは硬化後の物理的および化学的性質が安定しているだけでなく,安価かつ取り扱い性に優れた固型化材料であり,処理設備も簡便で経済的であることから,セメントによる固化・固型化技術は廃棄物の安定化処理に広く適用されている。
本報では,廃棄物のセメント固化・固型化処理技術の現状として,福島第一原子力発電所事故由来の廃棄物のセメント固型化に関する検討,低レベル放射性廃棄物のセメント固化処理の現状,焼却灰のセメント固化技術について紹介し,セメント固化体における重金属の固定化と溶出機構に関する既往の研究成果について概説する。


キーワード:廃棄物,焼却灰,セメント,安定化,固型化・固化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.435-447, 2022
原稿受付 2022.10.3

* (株)太平洋コンサルタント ソリューション営業部
** (国研)日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所
*** (国研)国立環境研究所 福島地域協働研究拠点

連絡先:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町2-9 コンフォール安田ビル3F
(株)太平洋コンサルタント ソリューション営業部  芳賀 和子

放射性セシウムを含む廃棄物の固型化マトリックスとしてのジオポリマーの適用性

佐 藤   努*・大 矢 裕 介**・Chaerun Raudhatul Islam**・黒 田 知 眞***・中 林   亮***・工 藤   勇****・  加 藤 和 茂*****・谷 口 雅 弘*****

【要旨】 福島第一原子力発電所の内外で放射性セシウムを含む廃棄物が発生している。これらの廃棄物を安全に保管・運搬・処分するために,どのように処理し安定化体化するのかが大きな課題となってくる。近年,セメントと同じ無機系材料であるジオポリマーが新しい固型化材として注目されるようになってきた。そこで本稿では,放射性セシウムを含む廃棄物の固型化マトリックスとしてのジオポリマーとその適用性について解説し,セシウムを含む廃棄物の固型化に関するわれわれのグループによる研究事例を紹介する。


キーワード:固型化,ジオポリマー,処分,セシウム,放射性廃棄物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.448-455, 2022
原稿受付 2022.10.11

* 北海道大学 工学研究院
** 北海道大学 工学院
*** (一財)電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部
**** 富士電機(株) 発電プラント事業本部
***** 大成建設(株) 原子力本部

連絡先:〒060-8628 北海道札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学 工学研究院  佐藤 努

イオンクロマトグラフィーによる飛灰水洗液中の放射性セシウム除去と使用済みセシウム吸着剤の安定化

市 川 恒 樹*,**・山 田 一 夫**

【要旨】中間貯蔵施設に集積された膨大な量の放射性セシウム(Cs) 汚染廃棄物等を数千分の1~数万分の1に圧縮して最終放射性廃棄物とする超減容化プロセスは,①放射性Cs汚染廃棄物を熱処理してCsを発生飛灰側に移すことにより廃棄物からCsを除去し,②生じたCs濃縮飛灰を水洗してCsを水洗液側に移し,③フェロシアン化遷移金属をCs吸着剤とするイオンクロマトグラフィーによってCsを水洗液から吸着剤側に移し,④最後に使用済みCs濃縮吸着剤を固型化・安定化して最終廃棄体とする,という4つの単位プロセスから構成される。ここではイオンクロマトグラフィーによるCs除去に関して,①飛灰水洗液の溶液組成から吸着剤の飽和Cs吸着量を算出する方法,②イオン交換体であるCs吸着剤がCs+イオンを特異吸着するメカニズム,③Cs除去用イオンクロマトグラフィーの機能について,イオン交換反応の物理化学に基づいて解説した。また,使用済みCs吸着剤を固型化・安定化して最終処分する手法についても,処理・処分シナリオの多面的評価を含めて解説した。


キーワード:放射性セシウム汚染廃棄物,減容化,イオン交換,フェロシアン化遷移金属,固型化処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.456-466, 2022
原稿受付 2022.9.19

* 北海道大学 名誉教授
** (国研)国立環境研究所 福島地域協働研究拠点

連絡先:〒002-0853 北海道札幌市北区屯田3条8丁目1-27
北海道大学 名誉教授  市川 恒樹

安定化体を対象とした最終処分施設構造の検討にむけた技術的課題

乾     徹*

【要旨】 福島第一原子力発電所事故により発生した大量の除去土壌や焼却灰等を対象として,減容化処理やその結果生じる放射性セシウム(Cs) 濃度の低い土壌等を再生資材として利用する戦略,技術システムの検討が現在進められている。一方で,放射性Cs濃度の高い処理副生成物や土壌等を最終処分する施設構造の検討も併せて重要となる。本稿では最終処分施設構造の検討に資する基礎情報を提示する観点から,環境省等で検討されてきた除去土壌等の県外最終処分にむけた戦略,各シナリオにおいて想定される最終処分対象物の量や放射性Cs濃度をレビューする。続いて,既存の遮断型最終処分場や浅地中ピット処分における封じ込め・漏洩防止の考え方や安全性評価の概要を示し,最終処分施設構造の検討にむけた今後の技術的課題を示す。


キーワード:最終処分施設,除去土壌,放射性物質汚染廃棄物,コンクリート構造,ベントナイト混合土

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.6, pp.467-476, 2022
原稿受付 2022.11.18

* 大阪大学 大学院工学研究科

連絡先:〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
大阪大学 大学院工学研究科  乾 徹