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No.4 廃棄物関連CDM事業

平成21年7月 第20巻 第4号

目次

巻頭言

持続可能な廃棄物処理・資源循環システムとは……山本  攻 147

特集 : 廃棄物関連CDM事業

クリーン開発メカニズム(CDM)の仕組みと現状 [1]……小圷 一久・水野 勇史 149
コベネフィット・アプローチに関する日本の取り組みと今後の方向性 [2]……和田 篤也 158
廃棄物処理分野におけるCDM事業活動――現状と課題―― [3]……河井 紘輔・山田 正人 165
埋立処分場メタンガス回収プロジェクト開発への取り組み [4]……栗田 弘幸 171
マレーシア国廃棄物処分場におけるCDM準好気性埋立プロジェクト [5]……椿  雅俊・植野 修一・辻  芳伸 177
廃食用油を用いたバイオディーゼルプロジェクトと地方自治体レベルでの気候変動対策の可能性について [6]……宇高 史昭 183
開発途上国廃棄物分野における気候変動対策への支援協力の課題 [7]……吉田 充夫・森  尚樹 187

書評

福島清彦著:環境問題を経済から見る――なぜ日本はEUに追いつけないのか――……中村 一夫 197
武田浩美著:「環境経営」宣言――グリーン・ビジネス時代の幕開け――……高月  紘 198
渡辺信久,岸本直之,石垣智基編著:図説 わかる環境工学……井手 義弘 199

要旨

クリーン開発メカニズム(CDM)の仕組みと現状

小 圷 一 久*・水 野 勇 史*

【要 旨】 クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism:CDM) は,国連気候変動枠組条約下の京都議定書において市場メカニズムを活用した温室効果ガスを削減する仕組みとして導入された。本稿では,CDMプロジェクトが国連に登録されてクレジット (Certified Emission Reduction:CER) が発行されるまでの仕組みを概観し,これまでに国連に登録されたプロジェクトの種類や傾向,CERの発行量,国別分布等について,データを通して現状を報告する。また日本政府や企業等民間におけるCDMへの取り組みや活用事例について紹介するとともに,実施上の課題と今後についてまとめる。

キーワード:京都議定書,市場メカニズム,クリーン開発メカニズム (CDM)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.149-157, 2009
原稿受付 2009.6.8
* (財)地球環境戦略研究機関 (IGES)
気候変動領域 市場メカニズムプロジェクト
連絡先:〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
(財)地球環境戦略研究機関 (IGES)気候変動領域
市場メカニズムプロジェクト  小圷 一久

コベネフィット・アプローチに関する日本の取り組みと今後の方向性

和 田 篤 也*

【要 旨】 気候変動問題については,2007年12月の気候変動枠組条約第13回締約国会合 (COP13,バリ会合) から2008年7月の北海道洞爺湖サミットに至る過程で国際・国内問題として大きく取り上げられ,現在,2009年末のCOP15 (コペンハーゲン) で合意を目指している「2013年以降の次期枠組み」について精力的な国際交渉が展開されている。交渉においては先進国と途上国の間の隔たりは大きく,その進展は芳しくない状況にあるといわざるを得ない。特に途上国の次期枠組みへの参加問題がその大きな要因となっており,このような中,途上国にとっても温暖化対策に取り組むインセンティブがあるとして注目されている「コベネフィット・アプローチ」について,これまでの経緯や日本としての具体的な取り組み,さらには今後の方向性について紹介する。

キーワード:気候変動問題,コベネフィット・アプローチ,温暖化対策と環境汚染対策,クリーン開発メカニズム (CDM)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.158-164, 2009
原稿受付 2009.6.10
* 環境省 水・大気環境局 水・大気環境国際協力推進室
連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2

廃棄物処理分野におけるCDM事業活動――現状と課題――

河 井 紘 輔*・山 田 正 人*河 井 紘 輔・山 田 正 人

【要 旨】 廃棄物処理分野におけるCDM事業活動では,当初予測していたよりも大幅に下回るクレジットしか認証されない事態が頻発している。本稿では特に廃棄物処理分野において主要なCDM事業活動である埋立地ガス回収のCDM事業活動に焦点を当て,クレジット (CER; Certified Emission Redution,認証排出削減量) の発行状況やベースライン排出量の推計モデル式を紹介し,CER発行率の低迷の要因について考察した。埋立地ガス回収のCDM事業活動のCER発行率を整理すると中央値は26.7%であった。また,メタン排出量推計モデル式の選択によるCER発行率への影響は小さいが,パラメータの設定による影響が大きいと考えられた。CDM事業活動における温室効果ガス排出量の推計においては,信頼性が不明で限定的なデータやIPCC等のデフォルトパラメータに依拠せざるを得ないことが多い。現場の実情を反映した十分な検討を経ずにこれらを用いることにより,現実とはかけ離れた排出量を推計することにつながっていると思われる。

キーワード:廃棄物,クリーン開発メカニズム (CDM),埋立地ガス,認証排出削減量 (CER),FODモデル
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.165-170, 2009
原稿受付 2009.6.16
* (独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(独)国立環境研究所 循環型社会・廃棄物研究センター  河井 紘輔

埋立処分場メタンガス回収プロジェクト開発への取り組み

栗 田 弘 幸*

【要 旨】 清水建設が環境ビジョンの一施策として推進しているCDM/JIプロジェクトであるコーカサス,中東,中央アジア,東南アジア地域での埋立処分場メタンガス回収プロジェクトを紹介する。現在,3案件の国連登録を完了し,3案件を国連登録中である。

キーワード:埋立処分場メタンガス回収,京都議定書,温室効果ガス,クリーン開発メカニズム (CDM)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.171-176, 2009
原稿受付 2009.6.29
* 清水建設(株)
連絡先:〒105-8007 東京都港区芝浦1-2-3

マレーシア国廃棄物処分場におけるCDM準好気性埋立プロジェクト

椿   雅 俊*・植 野 修 一**・辻   芳 伸***

【要 旨】 準好気性埋立プロジェクトは,マレーシア国内で埋立完了後の廃棄物最終処分場(以下処分場とする)において,通気設備を増設することにより,処分場から排出される温室効果ガスの削減および処分場環境の早期改善を図ることである。本プロジェクトは,嫌気的状態にある廃棄物処分場に,鋼管ケーシング工法によって通気設備を設置することで,処分場を準好気的状態に改善する。これにより,処分場から排出されるメタンガスの量を抑制する。本プロジェクトを実施することによって,廃棄物処分場からのメタンガスや硫化水素ガスなどのガス発生量が削減でき,環境への負担が軽減できる。処分場において,爆発の危険性や有毒ガス発生の危険性がなくなる。浸出水の排水が改善されるため,準好気的な領域が拡大し,廃棄物の分解が促進されるとともに,浸出水の周辺環境への影響が軽減され,廃棄物処分場の安全閉鎖が早期に実現できる。

キーワード:マレーシア,準好気埋立,温暖化対策,CDM,コベネフィット
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.177-182, 2009
原稿受付 2009.6.10
* 東急建設(株) 土木総本部 環境技術部
** 東急建設(株) 建築総本部 建築技術部
*** 東急建設(株) 鉄道建設事業部 安全環境品質部
連絡先:〒150-8340 東京都渋谷区渋谷1-16-14
東急建設(株) 土木総本部 環境技術部  椿 雅俊

廃食用油を用いたバイオディーゼルプロジェクトと地方自治体レベルでの気候変動対策の可能性について

宇 高 史 昭*

【要 旨】 京都市において実施されている廃食用油を活用したバイオディーゼル燃料化事業の経験を基に検討された国際環境協力の取り組みより,気候変動対策と地域の環境問題等の改善 (コベネフィット) を同時に実現する可能性が明らかとなっている。また,カーボン・オフセット等の取り組みとの連携により,市民・企業等も巻き込んだ新たな気候変動対策に展開することも検討されている。

キーワード:地方自治体,国際環境協力,廃食用油,バイオディーゼル燃料 (BDF),コベネフィット
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.183-186, 2009
原稿受付 2009.6.29
* 京都市環境政策局地球温暖化対策室
(前 有限責任中間法人 イクレイ日本)
連絡先:〒604-8006 京都市中京区川原町通御池下ル 下丸屋町394番地 Y・J・Kビル3階

開発途上国廃棄物分野における気候変動対策への支援協力の課題

吉 田 充 夫*・森   尚 樹**

【要 旨】 JICAが実施する開発途上国廃棄物分野の気候変動緩和策に対する支援協力は,大きく4つに分けられる。すなわち,(1)埋立地の温室効果ガス排出削減支援,(2)中間処理による温室効果ガス発生ポテンシャル抑制支援,(3)廃棄物処理システム全体としての温室効果ガス排出抑制支援,(4)社会全体の廃棄物削減と低炭素化支援,である。CDM事業は主として(1)と(2)において実施されるが,開発途上国の持続可能な開発との両立を目指すとき(3)と(4)が必要となる。CDM事業を孤立的に実施するのではなく,途上国の包括的な廃棄物管理課題対処能力向上(キャパシティ・ディベロップメント)という課題の中に位置づけることが必要である。

キーワード:開発途上国,持続可能な開発,国際協力,キャパシティ・ディベロップメント
廃棄物資源循環学会誌,Vol.20, No.4, pp.187-196, 2009
原稿受付 2009.6.17
* (独)国際協力機構 (JICA) 国際協力専門員 (環境・廃棄物分野)
** (独)国際協力機構 (JICA) 地球環境部次長兼環境管理グループ長
連絡先:〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5
(独)国際協力機構  吉田 充夫