No.1 拡大生産者責任の国際動向―ガイダンスマニュアル改訂版を中心として―
平成30年1月 第29巻 第1号
目次
年頭所感
持続可能な社会の形成に向けた新潮流……貫上佳則 1
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特集 拡大生産者責任の国際動向 ―ガイダンスマニュアル改訂版を中心として―
拡大生産者責任政策の動向とガイダンスマニュアル改訂版 ――特集にあたって――……山川 肇・田崎智宏・堀田 康彦 3
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EPR政策の国際動向とOECDガイダンスマニュアルの改訂……山口俊太 6
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EPRガイダンス現代化とわが国の循環関連法……大塚 直 14
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EPRガイダンスマニュアル改訂版の評価と課題 ――経済学的視点から――……細田衛士 24
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EPR政策展開へのインセンティブとしての調整料金制度の考察 ――ガイダンス改訂版からの示唆――……山川 肇 34
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途上国におけるEPR (拡大生産者責任) 政策の展開……堀田康彦・小島道一 42
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多様な拡大生産者責任論と今後の政策議論に向けて……田崎智宏 49
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平成29年度第28回研究発表会報告
研究発表会概要…… 59
特別プログラム報告…… 62
国際セッション報告…… 64
施設見学会報告…… 66
市民展示・市民フォーラム報告…… 69
企画展示・環境学習フォーラム報告…… 70
企画セッション報告…… 72
廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録
第18回:環境衛生分野の国際協力に40年携わって……桜井国俊 81
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支部特集/支部だより
支部だより:関東支部 第28回研究発表会 (東京大会) を終えて…… 89
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書評
堀 正和,桑江朝比呂 編著:ブルーカーボン――浅海におけるCO2隔離・貯留とその活用――……釜田陽介 91
日本海洋学会 編:海の温暖化――変わりゆく海と人間活動の影響――……渡辺信久 92
石井明男,真田明子 著:JICAプロジェクト・ヒストリー・シリーズ クリーンダッカ・プロジェクト――ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録――稲村光郎…… 93
吉田文和 著:スマートフォンの環境経済学……近藤康之 94
要旨
EPR政策の国際動向とOECDガイダンスマニュアルの改訂
山 口 俊 太*
【要 旨】 世界の資源需要の増加に伴い,資源の生産・消費・最終処分に係る環境負荷は高まることが予想されることから,持続可能な物質管理,資源生産性,循環型社会・3R (Reuse, Reduce Recycle),循環経済 (Circular Economy) 等の一環として,各国における拡大生産者責任 (Extended Producer Responsibility:EPR) のさらなる発展と適用が期待されている。
OECDが,2001年にEPRのガイダンスマニュアルを発表し,2016年にガイダンスマニュアルの改訂版を発表するまで,OECD諸国を中心に数多くのEPR政策が導入・実施され,数多くの知見・経験が蓄積されてきた。また,近年では,多くの新興国と発展途上国においても,EPR政策の導入・実施が検討されている。他方で,EPR政策の導入・実施が進む中,新たな発見や課題も浮上している。
そこで本稿は,EPR政策の国際的な動向を中心として,ガイダンスマニュアル改訂の経緯,各国から寄せられた意見,ガイダンスマニュアル改訂版の概要,ネット販売とEPR等,日本以外の動向を中心に解説する。
キーワード:拡大生産者責任 (EPR),持続可能な物質管理,資源効率性,循環経済,3R
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.6-13, 2018
原稿受付 2017.11.28
* 経済協力開発機構(OECD) 環境局 環境経済統合課
連絡先:2, rue André Pascal-75775 Paris Cedex 16, France
経済協力開発機構(OECD) 環境局 環境経済統合課 山口 俊太
EPRガイダンス現代化とわが国の循環関連法
大 塚 直*
【要 旨】 本稿は,OECDの「拡大生産者責任・効率的な廃棄物管理のためのガイダンス現代化」(「ガイダンス現代化」) を踏まえつつ,日本のEPRの特色と今後の課題を論じる。
今後,日本でEPRに基づく制度設計を行う際に注目すべき課題点としては,第1に,《EPRは理念としては正しいが,その制度設計には精査が必要》であり,EPRの最も重要な目的であるDfEを実現するため,個々の生産者の製品設計に関する環境配慮と,リサイクル料金の設定を紐付ける (リンクさせる) (リサイクル料金を「調整料金」とする) べきである。第2に,金銭的責任を生産者に課する際には,生産者に税を課さない (不当な不利益は与えない) ことが必要となる。第3に,競争政策とEPRの統合の点は,わが国の3R制度の弱点である。なお,今後,ネット販売の増加,(製品によっては) わが国のメーカーのシェアの減少等が予想され,メーカー (や販売者) に対してDfEの意識を維持・向上させるために,リサイクル料金を前払い制にすることの検討が必要となろう。
キーワード:環境配慮設計 (DfE),リサイクル料金,調整料金,競争政策,ネット販売
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.14-23, 2018
原稿受付 2017.12.23
* 早稲田大学 法学部
連絡先:〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
早稲田大学 法学部 大塚 直
EPRガイダンスマニュアル改訂版の評価と課題 ――経済学的視点から――
細 田 衛 士*
【要 旨】 Lindhqvistが2000年にEPRに関する優れた本を出版して以来,EPRに関する研究が進むと同時に実際に政策として導入されるようになった。さらに2001年にOECDがEPRに関するガイダンスマニュアルを出版することによって,各国でのEPRの施策化が加速されるようになった。2016年にはOECDによってEPRの改訂マニュアルが刊行されることになったが,これはLindhqvistおよびOECD (2001) を発展させたものであり,EPRの新しい地平を示すとともに乗り越えるべき課題を提示している。本稿は,経済学的観点からこの改訂マニュアルを吟味検討し,EPRによって可能となる3Rの新たなる展開の可能性を明らかにする。それとともに,EPRに固有の課題についても言及する。
キーワード:拡大生産者責任 (EPR),環境配慮設計 (DfE),生産者責任機構 (PRO),生産部連鎖
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.24-33, 2018
原稿受付 2017.12.14
* 慶應義塾大学 経済学部
連絡先:〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
慶應義塾大学 経済学部 細田 衛士
EPR政策展開へのインセンティブとしての調整料金制度の考察 ――ガイダンス改訂版からの示唆――
山 川 肇*
【要 旨】 本稿では,OECDが2016年に公表した拡大生産者責任 (EPR) のガイダンス改訂版のうち,5章の「拡大生産者責任における環境配慮設計へのインセンティブ」の概要を紹介した。ガイダンス改訂版では,これまでのEPR制度はDfEに対するインセンティブが不十分であると評価しており,その改善可能性を検討している。本稿ではガイダンス改訂版の内容と関連して,EPRの環境配慮設計 (エコデザイン,DfE) への影響を評価する際の留意点,日本の家庭系パソコンおよび家電4品目のリサイクル制度の個別生産者責任 (IPR) 的要素とDfEに対するインセンティブについて検討した。さらに,フランスの調整料金制度 (エコ調整) の事例を紹介し,種々の環境配慮インセンティブをもつEPR政策への日本での展開可能性について若干の考察を行った。
キーワード:拡大生産者責任(EPR),個別生産者責任(IPR),調整料金制度,エコ調整,環境配慮設計(DfE)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.34-41, 2018
原稿受付 2018.1.4
* 京都府立大学 大学院生命環境科学研究科
連絡先:〒606-8522 京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 山川 肇
途上国におけるEPR (拡大生産者責任) 政策の展開
堀 田 康 彦*・小 島 道 一**
【要 旨】 2001年に,OECD (経済開発協力機構) が拡大生産者責任 (EPR) 政策の政府向けガイダンスマニュアルを発表して以来,EPRの原則に基づいた使用済み製品の引き取り・リサイクル政策は,導入国数,政策の対象とする製品ともに拡充してきている。不適切な廃棄物管理やインフォーマルなリサイクル活動による環境負荷や社会問題に直面してきた途上国では,EPR政策の導入がある種の希望をもってみられてきた。本論文では,アジア新興国・途上国でのEPR政策の展開を紹介し,途上国でEPR政策を導入する上での課題を整理する。その上で,OECD政策ガイダンス改訂版はこれらの途上国の抱える課題にどう応えているかを論じる。最後に,途上国のリサイクル政策へのEPR適用の経験から何が学べるのかについて,論じる。
キーワード:拡大生産者責任 (EPR),経済協力開発機構 (OECD),途上国,インフォーマルセクター
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.42-48, 2018
原稿受付 2017.11.30
* (公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域
** 日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所
連絡先:〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
(公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域 堀田 康彦
多様な拡大生産者責任論と今後の政策議論に向けて
田 崎 智 宏*
【要 旨】 廃棄物・リサイクル政策のうえで重要な概念として世界的に用いられてきた拡大生産者責任 (EPR) には多様な考え方があり,意見対立が生じやすい。本稿では,多様な認識がもたらす政策対話上の混乱について整理を行ったうえで,EPRの目的・論拠・適用範囲の認識に違いがあること,EPR導入の野心度と想定する政策アプローチによって制度設計が異なること等の多様な認識の現状を説明した。今後の政策対話においては,①「EPR」という用語使用,②対策実施に対する建設的雰囲気の醸成と制度モニタリング,③論点の明確化,④政策目的と効果に基づく各主体の対応範囲の設定に留意することが望まれる。最後に,OECDが推奨するEPRの対象品目拡大の議論のため,今後検討すべき品目として太陽光パネル,電池,船舶,処理困難物と有害廃棄物,紙おむつの5品目を例にあげ,それぞれの製品特性等をふまえた制度設計上の留意点を論考した。
キーワード:拡大生産者責任 (EPR),リサイクル,製品スチュワードシップ,3R,政策対話
廃棄物資源循環学会誌,Vol.29, No.1, pp.49-58, 2018
原稿受付 2017.11.30
* (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター
連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 田崎 智宏