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No.2 廃棄物資源循環分野における国際協力の近年の動向 (その2) 後発開発途上国支援
 

No.2 廃棄物資源循環分野における国際協力の近年の動向 (その2) 後発開発途上国支援

令和2年3月 第31巻 第2号

目次

巻頭言

サニテーション価値連鎖……船水 尚行 87
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特集 廃棄物資源循環分野における国際協力の近年の動向 (その2) 後発開発途上国支援

廃棄物資源循環分野における開発途上国支援とSDGsの取り組みに向けた課題……吉田 充夫 89
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アフリカ諸国に対する廃棄物分野でのプラットフォーム型支援体制 ――アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP) が目指すもの――……下平 千恵・近藤  整 100
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自治体による廃棄物分野途上国支援事業 ――特にACCPとの連携協力について――……森山 晴美 108
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スーダン国ハルツームにおける廃棄物管理事業強化の経験……石井 明男 118 
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アフリカ廃棄物管理実態調査と支援の課題……森  郁夫 125
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アフリカ諸国における福岡方式 (Semi-aerobic Landfill Concept) による技術移転 ――Lack of 6Msの下での埋立地改善技術――……松藤 康司 132
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パレスチナにおける廃棄物処分場環境監査マニュアルの作成……東條 安匡 141
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令和元年度廃棄物資源循環学会セミナー報告

プラスチック資源循環戦略実現に向けたバイオマスプラスチック・再生材利用の最新状況~バイオマスプラスチックの導入増に向けて (第一回)~……吉川 克彦 152
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廃棄物資源循環学会研究部会・支部交流セミナー報告

災害廃棄物研究部会・九州支部
「令和元年度 災害廃棄物処理に係る交流セミナー」報告……中山 育美 155
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支部特集/支部だより

支部だより:2019年度の東北支部活動報告…… 157
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支部だより:「令和元年度廃棄物資源循環学会関西支部 技術セミナー・施設見学会」報告…… 159
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書評

手塚治虫 著,手塚るみ子 解説,野上 暁 解題:手塚マンガでエコロジー入門……加茂  徹 161
中嶋亮太 著:岩波科学ライブラリー288 海洋プラスチック汚染――「プラなし」博士,ごみを語る――……原田 浩希 162
石 弘之 著:KADOKAWA/⻆川新書K-282 環境再興史 ――よみがえる日本の自然――……釜田 陽介 163
高月 紘 監修,WILLこども知育研究所 編・著:ごみはどこへ ごみのしょりと利用 (全3巻)
ごみを調べよう ごみのゆくえ 3Rでごみが生まれ変わる……Trencher Gregory Patrick 164

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要旨

廃棄物資源循環分野における開発途上国支援とSDGsの取り組みに向けた課題

吉 田 充 夫*

【要 旨】 これまで日本が過去30余年の間実施してきた廃棄物資源循環分野の主要政府開発援助 (ODA) 事業87案件をレビューした。その結果,都市の廃棄物処理の改善を課題とする初期の協力から,3Rを導入した循環型の総合的廃棄物管理の確立のための協力まで,全体として発展してきていることが認められた。今後はSDGsへの取り組みと協調して,ゴール11「住み続けられるまちづくり」およびゴール12「つくる責任つかう責任」の7ターゲットの達成に向けた重点的協力が必要である。これらは従来の支援協力が発展させてきた内容の延長上にあり,ゴール11に向けた取り組みは先取り的に実施してきたといえるが,ゴール12に向けた取り組みについては未だ初歩的な段階にある。2ゴール7ターゲットを横断的に捉え統合的に対処していく必要がある。本課題を達成するためには,過去の協力経験を踏まえた公的セクターへの能力向上支援に加え,資源循環や循環経済形成においての民間セクターとの新たな連携と協調が不可欠である。


キーワード:政府開発援助 (ODA),開発途上国,持続可能な開発目標 (SDGs),キャパシティ・ディベロップメント,循環経済

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.89-99, 2020
原稿受付 2020.2.7

* (一社)国際環境協力ネットワーク

連絡先:〒102-0074 東京都千代田区九段南1-5-6りそな九段ビル5F
(一社)国際環境協力ネットワーク  吉田 充夫

アフリカ諸国に対する廃棄物分野でのプラットフォーム型支援体制
――アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP) が目指すもの――

下 平 千 恵*・近 藤   整*

【要 旨】 「アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP: African Clean Cities Platform)」は,アフリカの都市の廃棄物管理の知見の共有とネットワーキングを通じて廃棄物管理の底上げを図るべく2017年に設立された。加盟国・都市およびその趣旨に賛同する多様なステークホルダーとともに,相互の学び合いと横のつながりの強化,これをサポートする実践的なツールの開発や現場の取り組みの共有機会の提供を通じ,従来の開発協力の枠組みを超えた共創を生みだすことを意図した取り組みを展開している。本稿では,ACCPの特徴であるプラットフォーム型の支援の枠組みとその特徴や独自性,これまでの活動と成果を概括したうえで,今後の展望を述べる。


キーワード:アフリカ,廃棄物,環境管理,都市環境,知見共有

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.100-107, 2020
原稿受付 2020.2.14

* (独)国際協力機構 (JICA) 地球環境部 環境管理グループ

連絡先:〒102-8012 東京都千代田区二番町5-25二番町センタービル
(独)国際協力機構 (JICA) 地球環境部 環境管理グループ  下平 千恵

自治体による廃棄物分野途上国支援事業――特にACCPとの連携協力について――

森 山 晴 美*

【要 旨】 横浜市は1950年代以降の高度経済成長期に人口急増とそれに伴うごみの激増を経験した。社会問題となったごみ問題を解決するため,定時収集,全量焼却を実施していたが,長い間続いた大量消費・大量焼却からの脱却を目指し横浜G30プランを策定し,市民の協力の下,分別とリサイクルを徹底してごみ量の大幅削減に成功した。
現在,アフリカ諸国の多くが,かつての横浜市と同様の都市化の進展とごみの激増に苦しんでいる。そこで,横浜市は,かつての経験で得たノウハウをアフリカ諸国へ伝える支援を行っている。その基盤となっているのが環境省やJICA等と設立した「アフリカのきれいな街プラットフォーム」(ACCP) である。ACCPでの活動をはじめとする国際協力は,行政サービスとして直接的に市民に還元できる事業ではないが,活動を通じて行政自身の視野も広がり,ここで得られた学びを,国内外社会の情勢にあった政策展開に活かせると考える。


キーワード:廃棄物,自治体,アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP),国際協力

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.108-117, 2020
原稿受付 2020.2.7

* 横浜市資源循環局 政策調整部 政策調整課

連絡先:〒231-0013 横浜市中区住吉町1-13 松村ビル5階
横浜市資源循環局 政策調整部 政策調整課  森山 晴美

スーダン国ハルツームにおける廃棄物管理事業強化の経験

石 井 明 男*

【要 旨】 本稿では (独)国際協力機構 (JICA) が2010年から2017年までのスーダン国ハルツ―ムで廃棄物分野にて行った支援について記述した。この期間に,連邦環境局内に廃棄物行政を専門に取り扱う「廃棄物ユニット」が,ハルツーム州政府の中に廃棄物事業を実施する「清掃企業局 (KCC)」が設立され,収集現場でのごみ収集は州に新たに設けられた108区 (小規模行政区) 各々で実施することになった。埋立地は埋立地管理組織を作り,管理事務所を建設し活動した。
その他の活動では,住民啓発に力を入れ,市民向けのバスツアー,公開セミナー,メディア会議,大学での特別講義等を実施した。
また,マスタープランを作成した。内容は,①清掃事業実施組織の整備,②ごみ減量・リサイクルの推進,③コンテナ収集から定時定点収集への移行,④各郡に中継所建設,⑤埋立地の整備,⑥安全衛生作業の推進,⑦中間処理 (焼却炉) 導入の準備,⑧財務改善について記述している。


キーワード:途上国の廃棄物改善の能力開発,定時定点収集の導入,大都市行政と廃棄物管理,途上国の総合的な廃棄物改善,参加型廃棄物管理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.118-124, 2020
原稿受付 2020.1.23

* 八千代エンジニヤリング(株) 事業統括本部海外事業部 都市環境部

連絡先:〒111-8648 東京都台東区浅草橋5-20-8 CSタワー
八千代エンジニヤリング(株) 事業統括本部海外事業部 都市環境部  石井 明男

アフリカ廃棄物管理実態調査と支援の課題

森   郁 夫*

【要 旨】 今,多くのアフリカの国々は高い経済成長と急激な都市化の中にあり,廃棄物問題が深刻になりつつある。わが国は,TICADの枠組みの下,アフリカ諸国に継続的に経済支援を行っており,廃棄物も支援分野の一つとなっている。支援の一環として,「アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP)」が日本の環境省等により設立された。ACCPは,アフリカ諸国が互いに情報を交換して廃棄物管理を改善することを支援するとともに,改善ニーズとドナー支援のマッチングを促進することを目的としているが,多くのアフリカの国々では廃棄物管理情報が欠如しており,情報の収集と整理が必要であったことから,JICAは廃棄物管理実態調査を実施した。これにより,浮かび上がってきたアフリカ諸都市の廃棄物問題の傾向や特色が,「アフリカ廃棄物管理データブック」として取りまとめられた。


キーワード:アフリカのきれいな街プラットフォーム (ACCP) 加盟国・加盟都市,フォーカルポイント,廃棄物管理情報

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.125-131, 2020
原稿受付 2020.1.27

* (株)エックス都市研究所 国際コンサルティング事業本部

連絡先:〒171-0033 東京都豊島区高田二丁目17番22号 目白中野ビル6階
(株)エックス都市研究所 国際コンサルティング事業本部  森 郁夫

アフリカ諸国における福岡方式 (Semi-aerobic Landfill Concept) による技術移転――Lack of 6Msの下での埋立地改善技術――

松 藤 康 司*

【要 旨】 昨今,地球温暖化の下で,多くの国々において大規模な災害が発生し大きな社会問題となっている。特に,近年急激な都市化と人口増加の著しいアフリカ地域において廃棄物問題が深刻化し,廃棄物の埋立地への技術対応が求められている。
しかし,高度成長期の下では,廃棄物対策への政策の優位性は低く,依然としてLack of 6Ms (金・物・人・維持・管理・やる気の不足) の状況で,多くの埋立地はオープンダンピングが一般的で,このような埋立地は,異常気象の豪雨によって環境汚染や崩落事故が多発し,社会問題となっている。
こうした中で,筆者らはUN-HABITAT福岡事務所から,「福岡方式による埋立地の技術支援」の要請を受け,現在アフリカ地域で複数の埋立地の改善事業を行っている。本稿では,ケニアにおける「福岡方式による埋立処分施設建設事業」とエチオピアにおける「崩落事故現場における廃棄物埋立地緊急改善事業」の技術移転事例を紹介する。


キーワード:アフリカ,福岡方式,準好気性埋立,技術移転,埋立地修復

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.132-140 2020
原稿受付 2020.1.29

* (NPO) SWAN-福岡

連絡先:〒814-0012 福岡市城南区友丘1丁目18-26-9
(NPO) SWAN-福岡  松藤 康司

パレスチナにおける廃棄物処分場環境監査マニュアルの作成

東 條 安 匡*

【要 旨】 パレスチナはイスラエルとの長い間紛争状態にあり,これまで廃棄物管理行政とその適正な履行にさまざまな問題を抱えてきた。しかし,2000年代後半から,廃棄物収集が普及し,3つの埋立地も稼働するようになった。埋立地は世界銀行や日本が建設し,構造や運営はそれぞれ国際的な基準に従うものである。ただし,実際にはさまざまな課題が生じており,埋立地の適正管理を実現するマニュアルが求められていた。本稿では,JICAプロジェクトにおいて筆者が作成した埋立地環境監査マニュアルについて記述した。廃棄物埋立地に関する基準や指針が存在しない状況で,初めに監査を実施する上での基準を作る必要があった。ただし,乾燥地であるパレスチナでは,各国の基準を安直に引用することは難しく,さまざまな工夫が必要であった。特に,浸出水管理,環境モニタリング,安定化,覆土実施,悪臭等については,こうした地域の特性に応じた指標づくりが必要である。


キーワード:パレスチナ,廃棄物埋立地,環境監査,乾燥地域,基準

廃棄物資源循環学会誌,Vol.31, No.2, pp.141-151, 2020
原稿受付 2020.2.2

* 北海道大学大学院 工学研究院 環境創生工学部門

連絡先:〒060-8628 札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学大学院 工学研究院 環境創生工学部門  東條 安匡

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