Japan Society of Material Cycles and Waste Management アクセス English
No.1 最終処分場からのPOPsおよびその候補物質の浸出実態の把握手法および長期的な溶出予測手法の開発
 

No.1 最終処分場からのPOPsおよびその候補物質の浸出実態の把握手法および長期的な溶出予測手法の開発

令和3年2月 第32巻 第1号

目次

年頭所感

資源循環イノベーションの実現に向けて……中井徳太郎 1
PDFはこちら

特集 最終処分場からのPOPsおよびその候補物質の浸出実態の把握手法および長期的な溶出予測手法の開発

POPsを含有する廃棄物の関連動向と環境省の取り組み……寺西  制 3
PDFはこちら

新規/候補POPs (PCNs,HCBD,HBCDD,PFAS) 含有廃棄物処理の現状と今後の課題……梶原 夏子・松神 秀徳 8
PDFはこちら

廃棄物処分場浸出水中のPCNs,PFASs,HCBDおよびHBCD濃度の実態把握に向けた国内外における研究動向……矢吹 芳教・遠藤 和人 17
PDFはこちら

最終処分場浸出水中のPCNsおよびHCBDの効率的な分析手法の構築と濃度実態……伊藤 耕二・小野 純子 25
PDFはこちら

最終処分場の浸出水におけるPFASsおよびその前駆物質,HBCDにかかる分析法と濃度実態の整理……松村 千里・羽賀 雄紀 33
PDFはこちら

焼却残渣に含まれるポリ塩化ナフタレンに関する研究動向……水谷  聡・伊藤 耕二・矢吹 芳教 41
PDFはこちら

最終処分場からのPFASs,PCNsの長期的な排出予測に向けて……遠藤 和人・尾形 有香 50
PDFはこちら

令和2年度第31回廃棄物資源循環学会研究発表会報告

研究発表会概要…… 63
PDFはこちら

開催セレモニー・特別プログラム 65
PDFはこちら

国際セッション報告…… 67
PDFはこちら

緊急セミナー報告 70
PDFはこちら

市民展示・環境学習施設展示報告…… 71
PDFはこちら

市民フォーラム・環境学習フォーラム報告…… 73
PDFはこちら

企画セッション報告…… 75
PDFはこちら

環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告

令和2年度 中小廃棄物処理施設における廃棄物エネルギー回収方策等に係る第2回シンポジウム
中山間地域から考える地域循環共生圏の可能性――全国先進地及び京都におけるSDGs・資源循環分野の取り組み事例を中心に―……毛利 紫乃 83

PDFはこちら

令和2年度廃棄物資源循環学会セミナー報告

プラスチックの資源循環戦略実現に向けたバイオマスプラスチック・再生材利用の最新状況 ~バイオマスプラスチックの導入増に向けて (第2回)~……吉川 克彦 87

PDFはこちら

支部特集/支部だより

支部だより:九州支部の2020 (令和2) 年度活動報告…… 89

PDFはこちら

書評

染谷 孝 著:人に話したくなる 土壌微生物の世界……田中 綾子 91
磯辺篤彦 著:海洋プラスチックごみ問題の真実――マイクロプラスチックの実態と未来予測……東條 安匡 92
高田宏臣 著:土中環境――忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技……乾   徹 92
グンター・パウリ,マルコ・シメオーニ 著,枝廣淳子 監訳,日経ESG 編集:海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」……釜田 陽介 93

PDFはこちら

要旨

POPsを含有する廃棄物の関連動向と環境省の取り組み

寺 西   制*

【要 旨】 2004年に発効されたストックホルム条約では,残留性有機汚染物質 (POPs) を指定しており,その製造および使用の廃絶・制限,排出の削減,含有する廃棄物等の適正処理等が規定されている。POPsを含む廃棄物については,その国内における適正処理を推進するため,PCBについては特別措置法が制定されており,農薬類やPFOSについてはそれぞれの分解処理に係る要件等を記載した技術的留意事項を策定してきたところである。さらに,POPs廃棄物処理の制度的なあり方の検討を開始しており,具体的な制度を検討していくにあたって,その適切な位置づけや現状の取り扱い状況等の精査等をさらに進めることにより,検討を深めていきたいと考えている。また,臭素系難燃剤のPOPsを添加した廃プラスチックについては,その適正処理方法を定めること,および判別・分別に関する対応方策を検討していくことが必要と考えている。フッ素系界面活性剤のPOPsについては,今後のPFOAの国内規制を見据えて,適正処理方策や分析方法の整備等の必要な対応を検討していきたいと考えている。今後とも,実効的な政策形成のために,研究開発分野と連携させていただければと思う。


キーワード:残留性有機汚染物質 (POPs),ストックホルム条約,バーゼル条約,廃棄物処理政策

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.3-7, 2021
原稿受付 2020.12.16

* 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎 第5号館
環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課  寺西 制

新規/候補POPs (PCNs,HCBD,HBCDD,PFAS) 含有廃棄物処理の現状と今後の課題

梶 原 夏 子*・松 神 秀 徳*

【要 旨】 残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約の対象物質は,2004年の条約発効以降も次々と追加されてきた。条約上では,(1) 廃絶対象物質 (条約附属書A),(2) 製造・使用制限対象物質 (附属書B),(3) 意図的でない生成による放出削減対象物質 (附属書C) の3つに分類され,締約国はその分類に応じた対応が求められる。本稿では,条約新規対象/候補物質のうち,ポリ塩素化ナフタレン (PCNs: polychlorinated naphthalenes),ヘキサクロロブタジエン (HCBD: hexachlorobutadiene),ヘキサブロモシクロドデカン (HBCDD: hexabromocyclododecane),有機フッ素化合物 (PFAS: per- and polyfluoroalkyl substances) に対象を絞り,含有廃棄物の種類や処理実態,循環・廃棄過程における管理方法の基本的な考え方について概説する。


キーワード:POPs含有廃棄物,循環資源,低POPs含有量,ダイオキシン様活性

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.8-16, 2021
原稿受付 2020.12.16

* (国研) 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 基盤技術・物質管理研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研) 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 基盤技術・物質管理研究室  梶原 夏子

廃棄物処分場浸出水中のPCNs,PFASs,HCBDおよびHBCD濃度の実態把握に向けた国内外における研究動向

矢 吹 芳 教*・遠 藤 和 人**

【要 旨】 われわれの生活から排出されるごみは中間処理を受けた後,廃棄物処分場に埋め立てられる。廃棄物の最終処分場は,都市鉱山と称され注目されているように,さまざまな物質の蓄積場所となり,POPs等の化学物質についても例外ではない。過去に,あるいは現在の中間処理を経て埋め立てられたこれらの化学物質は,長期にわたり最終処分場浸出水中から検出される可能性を有している。国内や海外の先行研究をレビューした結果,PFOAやPFOSを含むPFASsについては,最終処分場浸出水中から数千ng/Lのオーダーで検出される可能性があること,HBCDおよびHCBDについては,数十ng/Lの低濃度の報告にとどまっていること,PCNsについては,濃度実態の把握がほとんど進んでいないことが明らかとなった。また,POPsの中でも水処理が困難なPFASsの除去として,活性炭吸着,光触媒およびRO膜処理が有効であることも報告されている。しかしながら,POPsの浸出水中の濃度実態の把握および処理過程での消長に関する研究結果が十分に蓄積されていないことは大きな課題であり,長期間にわたり廃棄物処分場のPOPsに関する安全性を確保するためには,排出される浸出水,浸透水およびその処理水についての実態把握・モデル構築が必要である。


キーワード:廃棄物処分場,POPs,浸出水,水処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.17-24, 2021
原稿受付 2020.12.07

* (地独) 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 環境調査グループ
** (国研) 国立環境研究所 福島支部 汚染廃棄物管理研究室

連絡先:〒583-0862 大阪府羽曳野市尺度442
(地独) 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 環境調査グループ  矢吹 芳教

最終処分場浸出水中のPCNsおよびHCBDの効率的な分析手法の構築と濃度実態

伊 藤 耕 二*・小 野 純 子*

【要 旨】 ポリ塩化ナフタレン (PCNs) およびヘキサクロロブタジエン (HCBD) は,溶媒やゴム製品等の添加剤として用いられてきた。これらの物質は,COP7以降,新たにPOPsに指定されたが,いまだに意図的・非意図的を問わずさまざまな工業製品中に残留して最終処分場に廃棄されている可能性は高い。さらにPCNsはPCBと構造が類似であり,燃焼副生成物として焼却残渣中にも含まれている。最終処分場の長期的な適正管理に資するため,これらPOPsの処分場浸出水中における濃度実態と排水処理過程での消失過程を明らかにした。全国各地で実態を効率的に把握するため,分析手法の構築にあたっては既に基準値等があり測定頻度の高い分析項目 (ダイオキシン類,VOCおよび1,4-ジオキサン) と統一の方法で同時に分析可能な手法開発を目指した。浸出水のPCNs濃度は数pg/L~数百pg/L,HCBDはMDL (0.015μg/L) 未満であった。PCNsは排水処理で除去され放流水では数pg/Lに減少した。


キーワード:ポリ塩化ナフタレン,ヘキサクロロブタジエン,最終処分場浸出水,分析法,排水処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.25-32, 2021
原稿受付 2020.12.4

* (地独) 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 環境調査グループ

連絡先:〒583-0862 大阪府羽曳野市尺度442
(地独) 大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 環境調査グループ  伊藤 耕二

最終処分場の浸出水におけるPFASsおよびその前駆物質,HBCDにかかる分析法と濃度実態の整理

松 村 千 里*・羽 賀 雄 紀*

【要 旨】 有機フッ素化合物に関しては,Stewerdship Programによる自主規制やストックホルム条約への登録以降,環境中あるいはヒト血清中における濃度は減少傾向にある。PFOAの減少に伴いPFHxAの増加が報告されている。前駆物質では,Orbitrap-MSを用いて海水からN-MeFOSAとN-EtFOSAの検出事例もあるが,多くは,5:2 Ketone,5:3 FTCA,6:2 FTOH,6:2 diPAP,6:2 FTSが検出されている。最近では,GenXの汚染実態や検出事例も報告された。
一方,最終処分場におけるヘキサブロモシクロドデカン (HBCD) の調査事例は,ほとんどないのが現状であるものの,<0.0025~9ng・L-1の濃度範囲であった。また,下水処理場では,流入水<0.4~400ng・L-1,放流水は0.14~18ng・L-1の濃度範囲であり,処理に伴い濃度レベルが減少していた。
今後は,処分場浸出水等さまざまな水試料を分析することで,問題点を整理し,分析法および調査法マニュアルを作成する予定である。


キーワード:最終処分場,PFASsおよびその前駆物質,HBCD,分析法,濃度実態

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.33-40, 2021
原稿受付 2020.12.14

*(公財) ひょうご環境創造協会 兵庫県環境研究センター 水環境科

連絡先:〒654-0037 兵庫県神戸市須磨区行平町3-1-18
(公財) ひょうご環境創造協会 兵庫県環境研究センター 水環境科  松村 千里

焼却残渣に含まれるポリ塩化ナフタレンに関する研究動向

水 谷   聡*・伊 藤 耕 二**・矢 吹 芳 教**

【要 旨】 廃棄物の焼却残渣および工業的加熱プロセスから発生する残渣 (セメントキルンでの飛灰やクリンカー,鉄鋼や非鉄金属の二次精錬から発生する残渣) に含まれるポリ塩化ナフタレン (PCNs: polychlorinated naphthalene) に関する研究動向をまとめた。また著者らが行なったPCNsの研究結果も併せて述べた。残渣中に含まれる濃度は,一部の試料を除いて,同じようなレベルであった。同族体・異性体分布に基づいて統計的解析を含めて多くの検討が行われていたが,製品系と燃焼系のPCNsを完全に区別することや,塩素化反応経路を特定することは難しいようであった。ダイオキシン対策として行われている加熱脱塩素化処理はPCNsの分解,脱塩素化,毒性の低減に有効であることが示唆された。ごみ焼却におけるPCNsの排出係数の報告値は1~48,600μg ton-1と幅が広く,さらなる検討が必要である。


キーワード:ポリ塩化ナフタレン (PCNs),焼却残渣,同族体・異性体分布,加熱脱塩素処理,排出係数

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.41-49, 2021
原稿受付 2021.1.11

* 大阪市立大学大学院 工学研究科 都市系専攻
** (地独)大阪府立環境農林水産総合研究所 環境研究部 環境調査グループ

連絡先:〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
大阪市立大学大学院 工学研究科 都市系専攻  水谷 聡

最終処分場からのPFASs,PCNsの長期的な排出予測に向けて

遠 藤 和 人*・尾 形 有 香**

【要 旨】 残留性有機汚染物質 (POPs) に追加されたPFOAやPFOS等のペルおよびポリフルオロアルキル物質類 (PFASs) および,ポリ塩化ナフタレン類 (PCNs) の最終処分場からの長期的な排出予測を行うため,排出実態調査の状況や,移動性に大きく影響する吸着能について,炭素鎖,塩素数を意識した文献調査を実施した。PFASsについては,フッ素テロマーアルコール類 (FTOHs) からの生物学的な分解経路についても調べ,最終処分場内で生成される可能性について知見を集めた。その結果,塩素数が大きいPCNsや長鎖PFASsは最終処分場内に蓄積する可能性が示唆され,塩素数が小さいPCNsや短鎖PFASsは比較的早期に浸出水として排出される可能性があると考えられている。また,最終処分場内のような嫌気性環境下では,炭素数8以下のペルフルオロアルキル酸類 (PFAAs) が生成される可能性があることから,PFOAやPFOSだけでなく,前駆物質も含んだ網羅的な調査研究が必要である。


キーワード:PFASs,PCNs,最終処分場,吸着能,前駆物質

廃棄物資源循環学会誌,Vol.32, No.1, pp.50-62, 2021
原稿受付 2021.2.1

* (国研)国立環境研究所 福島支部 汚染廃棄物管理研究室
** (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 国際廃棄物管理技術研究室

連絡先:〒963-7700 福島県田村郡三春町深作10-2
(国研)国立環境研究所 福島支部 汚染廃棄物管理研究室  遠藤 和人

ページの先頭に戻る