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No.6 循環型社会,低炭素化に応える都市ごみ焼却処理―焼却研究部会特集―
 

No.6 循環型社会,低炭素化に応える都市ごみ焼却処理―焼却研究部会特集―

平成22年11月 第21巻 第6号

目次

巻頭言

多様な熟練者たちの再結集を……浦邊真郎 343

特集 : 循環型社会,低炭素化に応える都市ごみ焼却処理―焼却研究部会特集―

特集にあたって……武田信生 345
分別等の取り組みが焼却処理におけるごみ量・ごみ質へ及ぼす影響……西谷隆司・山内淳行・永山貴志 347
ごみ発電の観点からみたごみ処理の広域化……小北 浩司・増田 孝弘 358
循環型社会,低炭素社会に対応した都市ごみ中間処理方式……高岡昌輝・増田孝弘 368
新エネルギー導入推進におけるごみ発電の位置づけと課題……前田 洋・山形成生 380
都市ごみ焼却・発電施設運営事業におけるリスク分担……西野雅明・近藤 守 387
都市ごみ焼却施設の窒素酸化物自主規制値緩和による発電量向上に関する検討……古林通孝・安田直明 395

書評

吉村忠与志,吉村嘉永,本間善夫,村林眞行 著:物質循環の化学 地球的視点からの化学をめざして……滝上英孝 404
泉谷眞実 編著:エコフィードの活用促進――食品循環資源飼料化のリサイクル・チャンネル――……田頭成能 404

要旨

分別等の取り組みが焼却処理におけるごみ量・ごみ質へ及ぼす影響

西谷 隆司*・山内 淳行**・永山 貴志***

【要旨】 わが国では,経済成長が進む中で急速に増大し続ける都市ごみを適切に処理するために,焼却処理がその中心的な役割を担ってきた。しかし,資源の消費と環境の負荷への限界が意識され,社会の持続的発展が危ぶまれるに至り,それまでの社会全体のシステムの転換が迫られることとなった。各自治体においても,分別等の導入が急速に広がった。焼却ごみの量と質も,導入された分別等の施策に応じて変化することとなり,ごみ焼却施設の役割についても,システム全体の中で検討される必要がでてきた。そこで,分別等を先進的に取り組んでいる自治体でのごみ量やごみ質の変化を整理し,分別等の施策が焼却ごみにどのような影響を及ぼすのか推計した。その結果,今後10年で,焼却ごみ量は20%程度の減量となり,その組成については可燃ごみが減少するが,発熱量は8,000kJ/kg程度までの減少にとどまると見込まれた。


キーワード:都市ごみ焼却施設,分別回収,ごみ量,ごみ質,発熱量

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.347-357, 2010
原稿受付 2010.10.15

* 大阪市立環境科学研究所
** 中日本建設コンサルタント(株) 環境技術本部
*** (株)クボタ 環境リサイクルプロジェクトチーム

連絡先:〒543-0026 大阪市天王寺区東上町8-34
大阪市立環境科学研究所 西谷 隆司

ごみ発電の観点からみたごみ処理の広域化

小北 浩司*・増田 孝弘*

【要旨】 都市ごみ処理が循環型社会・低炭素社会に貢献するためのひとつの手段として,ごみ発電があげられる。ごみ発電の総発電能力は年々向上しているものの,2008年度時点で1,615MWにとどまっており,高効率ごみ発電の導入によるさらなる総発電能力の向上が望まれている。高効率ごみ発電のひとつの手段として,広域化による施設の集約が考えられるが,一方で,広域化には地域性や制度面などのさまざまな課題もある。
本稿では,ごみ処理の広域化に関して,ごみ発電の視点に重きを置いた望ましい姿を提示するとともに,現実面の課題の整理を試みた。また,近畿2府4県をモデル地域とし,広域化の検討を行った結果,中継輸送が必要になるものの発電量,CO2排出削減量,コストの面でメリットがあることがわかった。


キーワード:ごみ発電,広域化,中継輸送

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.358-367, 2010
原稿受付 2010.10.15

* (株)タクマ
連絡先:〒660-0806 兵庫県尼崎市金楽寺町2-2-33

(株)タクマ プロジェクトセンター環境技術1部2課 小北 浩司

循環型社会,低炭素社会に対応した都市ごみ中間処理方式

高岡 昌輝*・増田 孝弘**

【要旨】 本論では,都市ごみとして排出されるごみをいかに中間処理していくのかについて述べている。最初に,焼却技術について比較的最近の高度化,先端化事例を紹介し,各技術がどこまでCO2排出削減に寄与できるのかを述べた。次に,現在の都市ごみという枠組みの中で,どのように分別し,中間処理していくことが都市ごみ処理システムの中でエネルギー,コスト面から望ましいかをLCAの考え方を適用して議論した。資源化やメタン発酵といった焼却以外の中間処理を組み合わせることで,処理コストは最大2割程度上昇するが,エネルギー消費量は最大4割程度改善し,CO2排出量はプラス側 (排出) から大きくマイナス側 (削減) に改善する結果となり,中間処理の複合化の効果を確認した。次に,現在の都市ごみの中間処理の枠組みを広げると,どのような技術システムが可能であるかを考えるため,廃棄物の枠組みの変更や処理施設の共同化・複合化によるシステムの効率を上げる試みについてレビューした。最後に中間処理残渣の資源化についての現状と今後の課題を示した。


キーワード:中間処理,焼却,メタン発酵,共同処理,CO2削減

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.368-379, 2010
原稿受付 2010.10.15

* 京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻 環境デザイン工学講座
** (株)タクマ

連絡先:〒615-8540 京都市西京区京都大学桂 (C1棟)
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻 環境デザイン工学講座 高岡 昌輝

新エネルギー導入推進におけるごみ発電の位置づけと課題

前田 洋*・山形 成生**

【要旨】 CO2排出量を削減し地球温暖化を防止するため,新エネルギーの導入が推進されている。「ごみ発電」もその一つと位置づけられ,様々な技術開発や施設整備のための助成制度の拡充によりその高効率化が図られている。本項では,現在導入されている新エネルギー導入推進のための取り組みについて紹介するとともに,発電コストという観点から新エネルギー導入推進におけるごみ発電の位置づけと今後ごみ発電を普及させていく上での課題について述べる。


キーワード:新エネルギー,ごみ発電,発電コスト

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.380-386, 2010
原稿受付 2010.10.15

* 大阪ガス(株)
** (株)神鋼環境ソリューション

連絡先:〒651-0072 神戸市中央区脇浜町1-4-78
(株)神鋼環境ソリューション  山形 成生

都市ごみ焼却・発電施設運営事業におけるリスク分担

西野 雅明*・近藤 守**

【要旨】 DBO (Design Build Operation) による廃棄物処理施設整備事業が増加している。本報告では,2008年から2009年にかけて発注された主要な案件における官民のリスク分担について調査するとともに,ごみ量やごみ質の変動などが運営事業に及ぼす影響について具体の試算を行った。
リスク分担調査において,個別のDBO案件の契約条件ではすべての案件でごみ収集責任は官が担い,発電による売電収入は民間事業者とされていた。また,ごみ量やごみ質の変動リスクについては計画の範囲内では基本的に民間事業者のリスクとされていたが,詳細条件について規定されているケースは少なかった。
一方,ごみ量やごみ質の変動が運営事業に及ぼす影響を試算した結果から,ごみ質 (発熱量) が10%増加した場合には運営事業費はほとんど変化しないが,10%減少した場合は約8%悪化し,ごみ量が15%減少した場合には運転パターンにより7〜12%悪化することがわかった。また,これらの悪化の主要因は,売電収入の減少および助燃用燃料費の増大によるものであった。
リスク分担の現況および試算結果を踏まえ,持続的な運営事業実現に向けたいくつかの提案を示した。
安定した運営事業実現のためには,具体の運営事業において官民協力して想定されるリスクの程度を把握し,解決策を見出していかねばならない。

キーワード:廃棄物処理施設,DBO (Design Build Operation),リスク分担,運営事業,廃棄物発電

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.387-394, 2010
原稿受付 2010.10.2

* JFEエンジニアリング(株)
** 日立造船(株)

連絡先:〒230-8611 横浜市鶴見区末広町二丁目1番地
JFEエンジニアリング(株)  西野 雅明

都市ごみ焼却施設の窒素酸化物自主規制値緩和による発電量向上に関する検討

古林 通孝*・安田 直明**

【要旨】 都市ごみ焼却施設の発電量向上策の一つの考え方として,窒素酸化物自主規制値緩和を取り上げ,窒素酸化物排出濃度の違いによる周辺環境への影響の度合いと,期待される発電増加量や温室効果ガス削減効果について整理した。
 都市ごみ焼却施設からの窒素酸化物排出濃度は,触媒脱硝装置などを採用しなくても,100〜120ppm程度が期待される。そこで,簡易な大気拡散計算により,国内の建設予定施設の周辺地域の大気環境濃度を推算したところ,排出濃度が50ppm (触媒脱硝装置を採用) から120ppm (触媒脱硝装置を不採用) に緩和されても,二酸化窒素の環境基準に対して,1〜4%程度の増加にとどまることが推測された。また,施設規模150ton/day\_mls00d7\/2炉の都市ごみ焼却施設について,自主規制値が50ppmから120ppmまで緩和されると,発電量として2,205MWh/年の増加が見込め,この発電増加量は1,237ton/年の二酸化炭素削減量に相当することが推察された。


キーワード:都市ごみ焼却施設,窒素酸化物,自主規制値緩和,発電量向上

廃棄物資源循環学会誌,Vol.21, No.6, pp.395-403, 2010
原稿受付 2010.10.2

* 日立造船(株) 事業・製品開発本部技術研究所 環境・ソリューション技術グループ
** (株)IHI環境エンジニアリング エンジニアリング部

連絡先:〒551-0022 大阪市大正区船町2-2-11
日立造船(株) 事業・製品開発本部技術研究所 環境・ソリューション技術グループ 古林 通孝

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