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No.1 資源循環と脱炭素
 

No.1 資源循環と脱炭素

令和4年1月 第33巻 第1号

目次

年頭所感

国連人間環境宣言50周年を迎えて ――環境権のパラダイムシフトとサーキュラー・エコノミー―― ……大久保規子 1
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特集 資源循環と脱炭素

2050年脱炭素に向けた国内外の動向と資源循環……井上 雄祐 3
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2050年カーボンニュートラルに向けた廃棄物・資源循環分野における中長期シナリオについて……山田 浩司 7
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物質利用の革新的変化からカーボンニュートラル社会の実現に迫る……南齋 規介・渡  卓磨 17
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資源循環分野におけるバイオメタンおよびバイオメタネーション技術……小林 拓朗・倉持 秀敏 25
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資源循環廃棄物分野における温室効果ガスの排出と削減……矢野 順也・平井 康宏・酒井 伸一 35
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プラスチック素材の循環と脱炭素にむけた具体的な社会実装の取り組みについて……小林 拓矢・北村 誠基・宇佐美 実 46
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廃棄物焼却施設におけるCCUSへの取り組み……田中 朝都・小野 義広・横山 唯史・塚本 輝彰 54
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2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた廃油対策……佐藤 祐樹・池田 寿文・植田 洋行・川西 理史・大山 晟弥 62
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令和3年度第32回廃棄物資源循環学会研究発表会報告

研究発表会概要…… 70
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開催セレモニー・特別プログラム…… 74
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国際セッション報告…… 76
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施設見学会報告…… 77
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市民展示・環境学習施設展示報告…… 79
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市民フォーラム・環境学習フォーラム報告…… 81
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企画セッション報告…… 83
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環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告

令和3年度廃棄物処理システムにおける脱炭素化に向けた普及促進方策に係る第1回シンポジウム ……吉川 克彦 91
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廃棄物資源循環学会研究部会報告

環境学習施設研究部会「秋の視察研修会2021」報告 ……鈴木 榮一 93
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支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部活動報告 95
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書評

エリザベス・ラッシュ 著,佐々木夏子 訳:海がやってくる ――気候変動によってアメリカ沿岸部では何が起きているのか―― ……東條 安匡 97
平沼 光 著:資源争奪の世界史 ――スパイス,石油,サーキュラーエコノミー―― ……釜田 陽介 98
川尻 要 著:ダイオキシンと腸内細菌・「21世紀病」 ――共通の作用点からの考察―― ……藤森  崇 99
ジョージーナ・ウィルソン=パウエル 著,吉田 綾 監訳,吉原かれん 訳:
これってホントにエコなの? ――日常生活のあちこちで遭遇する“エコ”のジレンマを解決―― ……原田 浩希 100

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要旨

2050年脱炭素に向けた国内外の動向と資源循環

井 上 雄 祐*

【要 旨】 2050年カーボンニュートラルに向けて国内外で多くの制度や計画が動いていること,ならびに脱炭素における資源循環の位置づけや期待を概説した。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change) の第6次評価報告書 (AR6) は,20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は,人間が原因であることに議論の余地がないこと,世界の気温を1.5℃に抑えることで,近年発生している50年に一度と表現されるような極端な高温現象の発生する確率を30%程度減らしうる,と述べており,国際的な動きとしては,こうした見解に沿った取り組みが行われつつある。日本でも2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し,2030年度においても2050年目標と整合性のある目標で諸政策がすすめられつつある。あらゆる産業が脱炭素社会に向けた大競争時代に突入した今,プラスチック資源循環はじめ,脱炭素にとって不可欠な資源循環の深化を念頭においた技術・システム構築を目指すことが重要である。


キーワード:2050年脱炭素,気候変動対策,地球温暖化対策計画,資源循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.3-6, 2022
原稿受付 2021.12.24

* 環境省 地球環境局 総務課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省 地球環境局 総務課  井上 雄祐

2050年カーボンニュートラルに向けた廃棄物・資源循環分野における中長期シナリオについて

山 田 浩 司*

【要 旨】 廃棄物・資源循環分野においても,2050年温室効果ガス (GHG) 排出実質ゼロのための排出削減策の検討を早急に進めていくことが不可欠である。環境省では,対策強度に応じた複数のシナリオを設定し,2050年のGHG排出量を試算し,「廃棄物・資源循環分野における2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向けたシナリオ (案)」を策定した。本シナリオにより,2050年に向けて,プラスチック資源循環の進展等に加え,廃棄物処理施設においてCCUSを最大限導入できれば,廃棄物・資源循環分野で実質ゼロ,さらには実質マイナスを実現できる可能性があることが示唆された。同時に,これまでの計画等の延長線上の対策では,2050年までに廃棄物・資源循環分野の脱炭素化を達成するには不十分なことが明らかとなり,関係者が一丸となり,明確な展望と覚悟の下,相当な野心をもって取り組む必要があることが明らかとなった。廃棄物処理や資源循環分野における,より具体的かつ実効的な取り組みの検討を深めていく。


キーワード:2050年カーボンニュートラル,CCUS

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.7-16, 2022
原稿受付 2021.12.25

* 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課  山田 浩司

物質利用の革新的変化からカーボンニュートラル社会の実現に迫る

南 齋 規 介*・渡   卓 磨*

【要 旨】 日本はパリ協定に基づく温室効果ガス (GHG) の排出削減目標を引きあげ,2030年には総排出量を約7.6億tonに抑制し,2050年のカーボンニュートラル社会の達成を目指すと宣言した。日本のGHG排出の約20%を占める素材産業は,生産プロセスを再生可能エネルギー由来の電力導入により脱炭素化を図るのが難しい。昨今,物質効率戦略や物質バジェット戦略と称する,素材生産量の削減を通じてGHGの排出削減を狙うアプローチが注視される。物質消費の徹底的な効率化は高い排出削減効果を潜在的に有するが,気候2℃目標の達成に見合う物質消費は現状の半減が条件との推計もある。一方で,電気自動車等の脱炭素技術の普及によるクリティカルメタルと呼ばれる金属需要の高まりが予想され,物質利用の革新的な縮減と安定的増加の二面性に対処することがカーボンニュートラル社会の実現を近づける。


キーワード:素材産業,質効率戦略,物質バジェット,クリティカルメタル,資源ガバナンス

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.17-24, 2022
原稿受付 2022.1.24

* (国研) 国立環境研究所 資源循環領域 国際資源持続性研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研) 国立環境研究所 資源循環領域 国際資源持続性研究室  南齋 規介

資源循環分野におけるバイオメタンおよびバイオメタネーション技術

小 林 拓 朗*・倉 持 秀 敏*

【要 旨】 バイオガスを天然ガス相当の品質まで精製してできるバイオメタンは,ガスおよび運輸部門の脱炭素化への寄与が期待されている。有機性廃棄物のメタン発酵によって発生するバイオガスからCO2を分離する方法が,バイオメタン製造の主要な経路である。最近では,バイオガス中のCO2からのメタン合成を含むCO2リサイクル技術としてのバイオメタン製造にも関心が高まっている。バイオメタネーションは水素とCO2を原料としてバイオメタンを合成するメタン発酵技術の一つで,資源循環分野におけるエネルギー回収とシナジーが期待できるCO2リサイクル技術として認識されている。本稿では,バイオメタネーション技術に関する研究の最先端と課題について解説する。


キーワード:バイオメタン,バイオメタネーション,CCU,カーボンニュートラル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.25-34, 2022
原稿受付 2021.11.8

* (国研) 国立環境研究所 資源循環領域

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研) 国立環境研究所 資源循環領域  小林 拓朗

資源循環廃棄物分野における温室効果ガスの排出と削減

矢 野 順 也*・平 井 康 宏*・酒 井 伸 一**

【要 旨】 2050年の温室効果ガス (GHG) 排出実質ゼロあるいはその削減過程である2030年までの中長期を見通した取り組みが世界中で進みつつある。本報では脱炭素社会を睨んだ世界のGHG削減戦略を資源循環廃棄物分野を中心にレビューした。イギリスやアメリカ,ロンドンやトロント等,国や都市がさまざまな分野を包括した脱炭素計画を推進している。また,資源循環廃棄物分野の脱炭素計画としてもイギリスのSixth Carbon Budget ReportやボストンZero Waste計画等,国内外で定量的な削減シナリオが提示されはじめている。対策としては食品廃棄物を含む有機性廃棄物のリデュース,その他廃棄物の3R,廃棄物エネルギー回収,非CO2のGHG対策等があげられる。そして,GHG削減対策としてのバイオガス化に加えCCUSのLCA研究も増えつつある中,脱炭素社会を見据えたGHG定量化手法の議論の必要性に触れた。今後さまざまな都市や地域において適確な脱炭素計画の立案と推進が行われ,その効果を定量的に把握し検証,改善していくことが肝要となる。


キーワード:資源循環廃棄物分野,脱炭素社会,温室効果ガス,ライフサイクル分析

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.35-45, 2022
原稿受付 2022.1.26

* 京都大学 環境科学センター
** (公財) 京都高度技術研究所

連絡先:〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学 環境科学センター  矢野 順也

プラスチック素材の循環と脱炭素にむけた具体的な社会実装の取り組みについて

小 林 拓 矢*・北 村 誠 基*・宇 佐 美  実**

【要 旨】 近年環境問題に対しての意識の高まりにより,さまざまな環境関連の取り組みが検討されている。一方で,そのような取り組みを持続可能なものにするためにはビジネスとしての成立が不可欠と考える。伊藤忠商事 (株) はマーケットインの環境ビジネスを標榜しており,顧客とともにバイオプラスチック,リサイクル,リユースなどさまざまな取り組みを実ビジネスとして成立,社会実装を進めているが,こうした取り組み事例について紹介したい。また,これら取り組みにおいてビジネス上どのような点が障害となりうるのか,われわれが現場にて直面している問題についても共有できればと考えている。


キーワード:マーケットイン,リサイクル,バイオマス,リユース,マスバランス

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.46-53, 2022
原稿受付 2021.12.14

* 伊藤忠商事 (株) 化学品部門 化学品プロジェクト推進室
** 伊藤忠商事 (株) 化学品部門 リーテイル・資材部

連絡先:〒107-8077 東京都港区北青山2-5-1
伊藤忠商事 (株) 化学品部門 化学品プロジェクト推進室  小林 拓矢

廃棄物焼却施設におけるCCUSへの取り組み

田 中 朝 都*・小 野 義 広*・横 山 唯 史*・塚 本 輝 彰*

【要 旨】 2050年カーボンニュートラルに向けて,(一社) 日本環境衛生施設工業会の会員企業は廃棄物焼却施設におけるCCUSへの取り組みを行なっている。最初に,燃焼排ガスへの二酸化炭素回収プロセス検討への取り組みとして,化学吸収法およびその商業機稼働事例を紹介し,廃棄物焼却施設への二酸化炭素回収プロセス適用例を紹介した。次に,佐賀市清掃工場において排ガスから二酸化炭素を回収,利用する設備が世界初の試みとして2016 (平成28) 年から稼働している事例,クリーンプラザふじみにおいて排ガスから二酸化炭素を回収するプロセスの実証実験への取り組みを紹介,および回収した二酸化炭素を水素と反応させ合成メタンを商用化規模での製造を実証する「清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業 (環境省委託事業)」を紹介した。


キーワード:廃棄物焼却施設,二酸化炭素回収,二酸化炭素利用,炭素循環,メタネーション

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.54-61, 2022
原稿受付 2021.12.16

* (一社) 日本環境衛生施設工業会 技術委員会

連絡先:〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町2-8-4 日本橋コアビル
(一社) 日本環境衛生施設工業会 技術委員会  田中 朝都

2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた廃油対策

佐 藤 祐 樹*・池 田 寿 文**・植 田 洋 行***・川 西 理 史***・大 山 晟 弥***

【要 旨】 廃溶剤・廃潤滑油・廃食用油等からなる産業廃棄物の廃油は年間300万tonほど排出されており (2018年度),うち約42%が燃料に再生され,残りは焼却処理されている。石油を起源とする廃油由来のCO2排出量は約980万tonCO2であり (2018年度),廃棄物分野の温室効果ガス排出量の約25%を占める。このことから,2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け,廃油に対するCO2排出削減対策の検討優先度は相当に高いといえる。燃料に再生された廃油は代替した重油・軽油相当分のCO2排出削減に貢献しているものの,一方で大半の溶剤・潤滑油は石油を原料に製造されており,カーボンニュートラル化の観点から,再生燃料としての利用分を含む廃油全体からのCO2排出量を削減する対策を抜本的に考えていく必要がある。
本稿では廃溶剤・廃潤滑油それぞれのリサイクルの現状を整理するとともに,今後の廃油全体のカーボンニュートラル化に向けた対策の展望を整理する。


キーワード:廃油,廃溶剤,廃潤滑油,カーボンニュートラル,リサイクル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.1, pp.62-69, 2022
原稿受付 2022.1.5

* 日本溶剤リサイクル工業会
** 全国オイルリサイクル協同組合
*** 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (株)

連絡先:〒105-8501 東京都港区虎ノ門5-11-2 オランダヒルズ森タワー22階
三菱UFJリサーチ&コンサルティング (株)  植田 洋行

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