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No.3 サステイナブルなサイクル・シティ―自転車と3R―
 

No.3 サステイナブルなサイクル・シティ―自転車と3R―

平成23年5月 第22巻 第3号

目次

巻頭言

今後の廃棄物・資源循環政策について……南川 秀樹 193

追悼

寄本勝美先生を偲んで……山本 耕平 195

特集:サステイナブルなサイクル・シティ――自転車と3R――

「サステイナブルなサイクル・シティ ―自転車と3R―」にあたって……山川 肇 199
自治体の自転車レンタル・シェアリング事業……中井 八千代 200
安全なサイクルシティに向けて……小林 成基 204
放置自転車の再生事業……藤井 清 215
小荷物集配業務への展開――エコ配の事例――……二村 毅 217
ライフサイクルアセスメントによる都市内移動手段のCO2排出量評価――自転車は地球にやさしい乗り物か?――……加藤 博和・山本 充洋・柴原 尚希 220
自動車からレンタサイクルを含めた公共交通への転換――京都市桂坂地域の事例――……矢野 晋哉・井尻 憲司・永田 盛士・鈴木 春菜・藤井 聡 228
電動アシスト自転車の動向と可能性……太田 志乃 236
自転車 その光と影……佐々木 雅一 244

シンポジウム報告

平成22年度廃棄物資源循環学会主催シンポジウム報告――リサイクルからリユースへ――……企画運営委員会 250

支部だより

東北支部「山形地区講演会」開催報告…… 253
東海・北陸支部「市民フォーラム」開催報告…… 254

支部特集

東海・北陸支部「ものづくり」と「ひとづくり」の変革に向けて…… 255

書評

田中 勝,大野正人 編:ごみ収集――理論と実践――……長谷川一樹 257
トリストラム・スチュアート 著中村 友 訳:世界の食料ムダ捨て事情……中村 一夫 258

要旨

安全なサイクルシティに向けて

小林 成基*

【要旨】 東日本大震災を契機に,日本人は新しいライフスタイルへの転換を余儀なくされている。新しいライフスタイルの一翼は,自転車が担うことになるであろうと考える。燃料を使わずに移動や運搬が可能な自転車は,さまざまな問題を抱えつつも,被災地で活躍している。被害を受けなかった,あるいは被害が少なかった地域では,自転車を利用することでエネルギーを節約するほか,自転車を被災地に送るという形の支援が行われている。
視点を都市に移せば,都市の自転車利用環境は危険に満ちていて,不慣れな自転車通勤者の増加はさまざまな問題を起こしている。そうした問題の原因の多くはわが国の法律や制度にある。しかし,為政者のみならず国民の多くが,原因がつくり出す構造的な問題について正確に現状を把握しておらず,誤った既成概念にとらわれている。本稿ではそうした「勘違い」の構造と実態を明確にし,これからの街づくりに必要だと考える海外の事例を紹介し,その政策や意識について私見を述べた。


キーワード:東日本大震災,自転車,自転車安全利用五則,道路交通法,弱者優先・公共優先

廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.204-214, 2011
原稿受付2011. 4. 27

* 特定非営利活動法人自転車活用推進研究会

連絡先:〒166-0011 東京都杉並区梅里2-6-3
特定非営利活動法人自転車活用推進研究会  小林 成基

ライフサイクルアセスメントによる都市内移動手段のCO2排出量評価――自転車は地球にやさしい乗り物か?――

加藤 博和*・山本 充洋*・柴原 尚希*

【要旨】 人間活動起源CO2排出量の約2割を占める運輸部門を低炭素化するためには,各交通システムのCO2排出量を適切に評価していく必要がある。本稿では,低炭素な移動手段といわれる自転車およびLight Rail Transit (LRT) を取り上げ,それらが乗用車に比べどの程度のCO2削減効果を有するかを,ライフサイクルアセスメント (LCA) を適用して評価している。分析の結果,自転車を車両とインフラから構成されるシステムとしてとらえる場合,そのライフサイクルCO2は乗用車の走行によるCO2に比べ人kmベースで83〜96%低くなった。しかし,既存道路上に自転車専用レーンやLRTを整備する場合,乗用車からある程度の割合で転換が生じなければ,逆にCO2排出量が全体で増加してしまうことが示された。また,LRTよりも電動アシスト自転車の人kmあたりCO2排出量の方が小さいことも明らかになった。


キーワード:運輸交通部門,拡張ライフサイクル環境負荷(ELCEL),感度分析,自転車,Light Rail Transit(LRT)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.220-227, 2011
原稿受付 2011.5.23

*名古屋大学大学院環境学研究科

連絡先:〒464-8603 名古屋市千種区不老町C1-2 (651)(工学研究科9号館内)
名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻 都市持続発展論講座  加藤 博和

自動車からレンタサイクルを含めた公共交通への転換――京都市桂坂地域の事例――

矢野 晋哉*・井尻 憲司**・永田 盛士***・鈴木 春菜****・藤井 聡*****

【要旨】 本稿では京都市において実施された,電動アシスト付き自転車を用いたレンタサイクルの実証実験と,一人ひとりの交通手段選択に心理学的手法を用いて働きかけることで自家用車からレンタサイクルを含む公共交通への転換を促すモビリティ・マネジメント施策の実施結果を報告する。
まずレンタサイクル実証実験の結果,レンタサイクルが,少ない車両を多数の人間で利用できる都市の自転車利用に適したシステムであることと,その需要が存在することが実証的なデータから確認できた。また自転車利用者は「自転車や電動アシスト付きレンタサイクルを利用していきたい」という利用意図が活性化されていることも確認できた。
次にモビリティ・マネジメント施策の結果,自家用車からレンタサイクルを含めた公共交通への利用交通手段の転換が確認できたことから,モビリティ・マネジメントという心理的な手法が有効であることが確認できた。


キーワード:レンタサイクル,モビリティ・マネジメント

廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.228-235, 2011
原稿受付 2011.4.19

* (社)システム科学研究所
** 国土交通省近畿運輸局交通環境部環境課
*** 京都市都市計画局歩くまち京都推進室
**** 山口大学大学院理工学研究科
***** 京都大学大学院都市社会工学専攻

連絡先:〒604-8223 京都市中京区新町通四条上ル小結棚町428 新町アイエスビル
(社)システム科学研究所 矢野 晋哉

電動アシスト自転車の動向と可能性

太田 志乃*

【要旨】 グローバルに拡がる環境配慮に向けた取り組み,そして日本国内では天災影響も含めて,石油依存の「乗り物」から電気を動力源とする「乗り物」に注目が集まっている。その中でもモーターを駆動源とする電動アシスト自転車は,子供から大人まで男女を問わず人気が高まっている「乗り物」であり,日本の自転車メーカー,電機メーカーを中心に世界に先駆けた普及が開始されている。電動アシスト自転車は,利用者の便に供するのみならず,災害時の移動手段に加え,電源として使用される可能性も高まっており,国内では災害避難時の活用としても実用化が高く望まれている。今後は電動アシスト自転車を中心に,より広いケースでの利用設定が国内企業を中心に検討されており,新ビジネスとして国内から世界に向けて発信する時を迎えている。


キーワード:電動アシスト自転車,新産業,環境,災害時利用,技術的融合性

廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.236-243, 2011
原稿受付 2011.4.22

* 一般財団法人 機械振興協会経済研究所

連絡先:〒105-0011 東京都港区芝公園3丁目5-8
一般財団法人 機械振興協会経済研究所  太田 志乃

自転車 その光と影

佐々木 雅一*

【要旨】 市場規模2,000億円足らずの自転車産業が,私たちにとって利便性の高い交通手段である自転車を送り出している。その一方で,利便性が高い結果として駅前等の放置自転車問題を産み出し,多くの自治体は対策部局を設置し,見回りや撤去といった対策を強いられている。放置自転車の行方は,産廃として処理,鉄屑として払い下げ,さらに専門業者への払い下げ等,いくつかのルートがあるが,多くは国内で鉄源として再資源化が行われている。また,廃棄自転車の7割強は,自治体の清掃部局が粗大ごみとして処理を行っている。しかし,自転車の再資源化を考える上で重要な点は,かさばるために運搬面で困難が生じることである。易解体性と製品安全性の間で,簡便な解体方法が求められている。最近は電動アシスト車が原付の販売台数を追い越した事実があり,これを皮切りに抜本的な自転車の見直し,再定義によって,産業としての新しい局面が期待される。


キーワード:放置自転車,鉄源,運搬,易解体性,共同利用

廃棄物資源循環学会誌,Vol.22, No.3, pp.244-249, 2011
原稿受付 2011.4.21

*大阪経済法科大学,(有)グリーン戦略研究所

連絡先:〒606-8203 京都市左京区田中関田町40
(有)グリーン戦略研究所  佐々木 雅一

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