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No.4 使い捨ておむつ
 

No.4 使い捨ておむつ

令和4年8月 第33巻 第4号

目次

巻頭言

プラネタリーヘルスと資源の循環……渡辺 知保 255
PDF, 311KB

特集 使い捨ておむつ

総論:使用済み紙おむつをめぐる動向……松本 亨・藤山 淳史 257
PDF, 1.2MB

使用済み紙おむつの組成とごみ焼却処理に与える影響……大下 和徹・河井 紘輔 265
PDF, 1.8MB

使用済み紙おむつの再生利用等に関する取り組み……石井 颯杜 277
PDF, 950KB

環境に配慮した紙おむつ素材の開発動向……吉村 利夫・藤岡留美子 286
PDF, 460KB

自治体の紙おむつリサイクルの取り組みと地域資源循環……留中 政文・和田 充弘 292
PDF, 795KB

保育所における使用済み紙おむつ処理 ――おむつ持ち帰りからみる現状と課題――……三浦真希子・澤村 暢 297
PDF, 354KB

高齢者のQOLと紙おむつの使用抑制……内田 陽子・西本 祐也 303
PDF, 365KB

令和4年度廃棄物資源循環学会・春の研究討論会

総括報告…… 311
PDF, 137KB

企画セミナー報告…… 312
PDF, 688KB

会議報告

2022年度春の韓国学会 (KSWM) 共催報告……浅利 美鈴 317
PDF, 384KB

支部特集/支部だより

支部だより:第13回東北支部研究発表会の取り組み…… 319
PDF, 155KB

書評

田中修三 著:米軍基地と環境汚染 ――ベトナム戦争,そして沖縄の基地汚染と環境管理――……五十嵐敏文 320
インフォビジュアル研究所 著:図解でわかる14歳から知るごみゼロ社会……釜田 陽介 321
PDF, 227KB

要旨

総論:使用済み紙おむつをめぐる動向

松 本  亨*・藤 山 淳 史**

【要旨】 高齢化の進展とともに,使用済み紙おむつの排出量は年々増加傾向にある。使用済み紙おむつを再資源化する取り組みは端緒についたばかりで,ほとんど焼却処理されているのが現状である。本稿では,まず使用済み紙おむつの現状について,量的な側面と質的な側面から課題を整理し,国内外における使用済み紙おむつリサイクルの動向について概説した。次に,LCAを中心とした環境負荷の定量評価に関する研究事例を紹介した。さらに,近年,回収システム等に対して,利便性・効率性の向上とともに環境負荷低減という観点から情報通信技術の導入が実証された事例について紹介した。


キーワード:使用済み紙おむつ,リサイクル,環境負荷,情報通信技術

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.257-264, 2022
原稿受付 2022.8.3

* 北九州市立大学 環境技術研究所
** 北九州市立大学 国際環境工学部

連絡先:〒808-0135 福岡県北九州市若松区ひびきの1-1
北九州市立大学 環境技術研究所 松本 亨

使用済み紙おむつの組成とごみ焼却処理に与える影響

大 下 和 徹*・河 井 紘 輔**

【要旨】 本稿では使用済み紙おむつの組成を整理するとともに,それらがごみ焼却処理に与える影響を評価した。まず,使用済み紙おむつの組成は,概してパルプ,プラスチック,高吸水性樹脂 (SAP) の混合物に2~4倍の尿由来の水分とClが加わったものとみてよく,この結果は,三成分や元素組成,発熱量,バイオマス度の分析結果からも裏づけられた。
次に,2050年までの,プラスチック類や厨芥類を中心としたごみ削減が進む一方で,大人用使用済み紙おむつが増加していく場合の焼却施設への影響を推定したところ,割合が増加しても,ごみ質低下やCl源としての影響は限定的であり,感染性廃棄物となるリスクの観点からも焼却が堅持されるべきと考えられた。ただし,高齢化率の高い地域では,使用済み紙おむつに起因するNaや化石由来CO2のごみ全体への寄与率が,各々最大で50%,23%まで上昇することが予想され,リサイクルも選択肢の一つとなりうることが示唆された。


キーワード:使用済み紙おむつ,高吸水性樹脂 (SAP),ごみ焼却,低位発熱量,バイオマス度

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.265-276, 2022
原稿受付 2022.6.27

* 京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻
** (国研)国立環境研究所 資源循環領域

連絡先:〒615-8540 京都市西京区京都大学桂Cクラスター 1-3-463
京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 大下 和徹

使用済み紙おむつの再生利用等に関する取り組み

石 井 颯 杜*

【要旨】 高齢化に伴い,わが国における紙おむつの消費量は年々増加している。使用済み紙おむつの多くは焼却処分されているが,一部地域では殺菌等の衛生的処理をした上でパルプ等の再生利用や熱回収の取り組みが行われている。環境省では再生利用等の導入を検討する自治体への情報提供を目的として2020 (令和2) 年3月に使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドラインを公表した。ガイドライン公表後,自治体・民間事業者による実証事業や導入に向けた検討が行われており,紙おむつは再生利用等が可能であるという理解が広まるとともに関心が高まっているといえる。使用済み紙おむつの再生利用等が一般化した取り組みとなるためには,先進的な取り組みを行なっている自治体に次ぐ好事例が創出されるかが重要であり,紙おむつの再生利用等が当たり前の選択肢となる社会を目指し,再生利用等に向けた検討を後押しするための施策を引きつづき検討していく。


キーワード:紙おむつ,資源循環,カーボンニュートラル,マイクロプラスチック

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.277-285, 2022
原稿受付 2022.6.2

* 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室 石井 颯杜

環境に配慮した紙おむつ素材の開発動向

吉 村 利 夫*・藤 岡 留 美 子*

【要旨】 紙おむつは「育児と介護の必需品」とされている一方で,使用後は多量の水分を含んでいるにもかかわらず,ほとんどの自治体で焼却処理がなされており,二酸化炭素排出量からも環境負荷の大きい処理方法となっている可能性がある。これに代わる処理方法として,使用後の紙おむつから吸水部分 (吸水紙,綿状パルプ,高吸水性樹脂からなる) のみを分離して水洗トイレに流し,残りの水分を含まない紙おむつ本体を焼却する方法が考えられる。これを実現するためには高吸水性樹脂に生分解性を付与する必要がある。このような背景から,本稿では生分解性を有する高吸水性樹脂の研究開発状況を概説する。これまでにポリアミノ酸系や多糖類系で多くの研究例があり,それぞれの具体例を紹介する。


キーワード:紙おむつ,焼却処理,環境負荷,高吸水性樹脂,生分解性

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.286-291, 2022
原稿受付 2022.5.29

* 福岡女子大学 国際文理学部 環境科学科

連絡先:〒813-8529 福岡市東区香住ヶ丘1-1-1
福岡女子大学 国際文理学部 環境科学科 吉村 利夫

自治体の紙おむつリサイクルの取り組みと地域資源循環

留 中 政 文*・和 田 充 弘**

【要旨】 志布志市は,地域内に焼却施設がないため,隣接する大崎町とともに,一般廃棄物最終処分場において埋立処分を行なっている。最終処分場の埋立ごみを減らすため,「混ぜればごみ,分ければ資源」を基本に,27品目の分別収集を実施し,リサイクルしている。埋立処分量は減少しているものの,埋立ごみの約2割を使用済み紙おむつが占めていることから,使用済み紙おむつの再資源化が課題となっている。そこで,2016 (平成28) 年から官民連携して,使用済み紙おむつのリサイクル実証試験を開始し,地域で得られた資源を地産地消する実証試験に取り組んできた。この取り組みにより,地域の課題を解決し,最終処分場の延命化と二酸化炭素排出量の削減に貢献する。


キーワード:紙おむつ,リサイクル,志布志市,大崎町,地域資源循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.292-296, 2022
原稿受付 2022.5.30

* 志布志市市役所 市民環境課
** ユニ・チャーム(株) リサイクル事業推進室

連絡先:〒899-7492 鹿児島県志布志市有明町野井倉1756番地
志布志市市役所 市民環境課 留中 政文

保育所における使用済み紙おむつ処理――おむつ持ち帰りからみる現状と課題――

三 浦 真 希 子*,**・澤 村  暢*,**

【要旨】 保育所における使用済み紙おむつの処理方法については,国や自治体で明確な規定はない。本研究では,保育所における使用済み紙おむつの処理の現状について明らかにすることを目的とした。
質問紙調査の結果から,使用済み紙おむつの持ち帰りをしている保育所は26.5% (22/83) であった。持ち帰りをやめた場合,保護者や保育士の負担が軽減されるなどの利点がある一方で,保護者がおむつの使用枚数や便から子どもの体調管理ができない,費用面の問題,保管スペースや臭いの問題等が生じることがわかった。おむつ交換時の汚染状況調査からは,持ち帰りをしているかどうかにかかわらず,周囲への汚染が生じており,マニュアルを作成するなど施設で交換手順を標準化させる必要性が示唆された。
本研究から,保育所での使用済み紙おむつ処理の現状と課題が明らかとなった。今後は,廃棄物処理および,感染防止の双方の視点から対応することが求められる。


キーワード:おむつ,保育所,廃棄物処理,感染症対策,マニュアル

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.297-302, 2022
査読付展望論文
原稿受付 2022.5.13 原稿受理 2022.6.19

* 神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科
** 神戸常盤大学 ライフサイエンス研究センター

連絡先:〒653-0838 兵庫県神戸市長田区大谷町2丁目6-2
神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科 三浦 真希子

高齢者のQOLと紙おむつの使用抑制

内 田 陽 子*・西 本 祐 也**

【要旨】 超高齢社会のわが国では要介護高齢者や下部尿路症状をもつ高齢者も増加し,紙おむつの需要は高い。おむつを装着すると不快感があり,かつ,自尊心を傷つけられる可能性がきわめて高く,毎日の生活の質を損なうものである。排尿日誌や排便日誌を用いた適切な下部尿路症状や便秘・下痢のアセスメントが不必要なおむつの発生を抑制できると考えられる。また,おむつ外しの取り組みは報告されているが,完全に普及はされてない。筆者らの研究では,入院中の高齢患者に対して,おむつ外しが可能か,まずはアセスメントし,次にトイレ誘導や紙おむつに代わるパンツやライナーの選択,リハビリ,排便コントロール等の包括的な排泄ケアを実施した。その結果,対象とした高齢者全員が紙おむつからの脱却が可能となった。入院中におむつ外しを判断し,排泄ケアを多職種協働で実施することが,退院後のおむつ装着予防につながり,おむつ使用量の抑制につながる。


キーワード:高齢者,QOL,紙おむつ,おむつ外し,排泄ケア

廃棄物資源循環学会誌,Vol.33, No.4, pp.303-310, 2022
査読付展望論文
原稿受付 2022.5.9 原稿受理 2022.6.19

* 群馬大学大学院 保健学研究科
** 正務医院

連絡先:〒371-8514 群馬県前橋市昭和町3丁目39-22
群馬大学大学院 保健学研究科 内田 陽子

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