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平成28年度関東支部施設見学会(川崎ゼロエミ工業団地)の開催報告
 

平成28年度関東支部施設見学会(川崎ゼロエミ工業団地)の開催報告

今年度は、神奈川県川崎市内の川崎ゼロ・エミッション工業団地内のコアレックス三栄(株)(難再生古紙リサイクル施設)及び川崎市浮島処理センター(一般廃棄物処理施設)の施設見学を行いました。

午前中は、川崎ゼロ・エミッション工業団地の川崎エコタウン会館において、川崎市 経済労働局国際経済推進室より「川崎エコタウンにおける資源・循環の取組みについて」説明いただき、コアレックス三栄(株)の施設見学を行いました。午後は、川崎市浮島処理センターにおいて、川崎市環境局生活環境部より「川崎市の循環型社会への取組みについて」説明いただき、浮島埋立事業所及び浮島処理センター(ごみ焼却施設、粗大ごみ処理施設)の施設見学を行いました。

【川崎エコタウン、ゼロ・エミッション工業団地】

1990年代、川崎市ではバブル経済の崩壊、情報・サービス業への産業構造の転換、アジア諸国の台頭などにより「臨海部の空洞化」、また廃棄物の社会問題化、地球温暖化、エネルギー消費などにより「新たな環境問題への直面」しており、1997年に通商産業省(現在:経済産業省)よりエコタウンプランの承認を受け、産業の活性化という側面で都市再生を進めてきました。川崎エコタウンは臨海部に立地していた既存企業を中心に推進し、事業活動から発生する排出物を原料・生産資源として利用する循環型・省資源型の「川崎ゼロ・エミッション工業団地」を整備しました。

今後は、川崎市のグリーンイノベーションの取組みの一環として資源循環の高度化などを進めていく予定とのことでした。また、エコタウン全体の定量的な評価については、個々の企業の協力が必要であるが、今後の課題とのことでした。

【コアレックス三栄(株)】

コアレックス三栄(株)は、難再生古紙を100%原料としたトイレットペーパーを生産する工場です。難再生古紙とは、ミックスペーパー(紙ごみ)、各種ラミネート包装紙、航空券・電車の切符、機密文書類(箱ごと未開封・無選別処理)などを指し、川崎市民から排出されるミックスペーパー(紙ごみ)やアルミ箔コーティングされている焼酎紙パックなども受け入れているとのことでした。

本工場ではこれらに含まれるホッチキスの針やクリップなどの金物、廃プラスチック、フィルム、ペーパースラッジなどは各行程で自動分離されており、毎月7,000トンの回収紙(難再生古紙等)が運び込まれ、溶解・精選・脱墨・洗浄・滅菌・漂白・抄紙・加工工程等を経て、一日に110万個のトイレットロールが生産されていました。

自動分離された金物類は売却、廃プラスチックなどはペーパースラッジを自社焼却処理する際の燃料の一部として利用されていました。また、焼却処理されたペーパースラッジ灰はセメントの原料として再利用されていました。さらに、本工場では一日に18,000トン程度の用水を使用していましたが、この用水として川崎市の下水道処理施設から排出される高度処理排水を利用されていました。

また、機密文書類は箱ごと未開封・無選別処理を行っているため、古紙以外の扇風機やモーターなどが混入している場合や本工場において処理できないレントゲンフィルムなどが混入することにより設備トラブルなどが発生することもあるとのお話もありました。

【浮島処理センター・浮島埋立事業所】

川崎市は政令市中7番目に人口が多く、最も狭い面積であり、現在でも人口増加が続いている市であるため、発生するごみの減量化が課題となっています。2003年度の焼却量は約50万トン/年でしたが、分別・再資源化や市長が委嘱したボランティアリーダー(町内会等の住民組織団体からの推薦)である廃棄物減量指導員との連携により、人口が増加している中2014年度は約37万トンまで削減できたとのことでした。そのため、現在、川崎市には王禅寺処理センター、橘処理センター(休止中)、堤根処理センター、浮島処理センターの4つの処理センターがありますが、ごみ減量化に伴い現在は橘処理センターを除く3箇所の処理センターにて処理を行っているとのことでした。加えて、ごみ減量化に伴い、最終処分場の残余年数は2005年時点では約23年間(2028年まで)でしたが、2016年時点では約40年間(2056年まで)に延命化されたとのことでした。また、収集・運搬には2箇所の中継輸送施設を活用し、鉄道輸送も行っていました。

浮島処理センターは、焼却処理能力900トン/日(300トン/日×3炉)であり、焼却排ガスは消石灰スラリーによる脱塩・脱硫反応塔を通過後にろ過式集塵器(バグフィルタ)により集塵され排出されていました。脱塩脱硫反応塔やろ過式集塵器等で集められた集じん灰(飛灰)は薬剤等により重金属類を安定化し、埋立処分されていました。また、焼却余熱利用として、廃熱ボイラーで発生した蒸気により発電を行い、処理センター内で使用するほか、余剰電力を電力会社へ売却されているとのことでした。(発電効率約7%、売電収入約5億円/年)

浮島埋立事業所では、市内4箇所(現在3箇所)の処理センターの焼却施設で発生する焼却灰等を埋立処分しており、浮島1期地区の埋立が終了したことから、平成11年3月に一般廃棄物の最終処分場が浮島2期地区に建設されました。埋立容量は約273万m3、埋立工法はフローティングコンベアシステム(FCS)を採用し、1日当たり約230トンの焼却灰を埋立処分されていました。本施設では、焼却灰等の廃棄物を海中に薄層散布し均一に埋立、それによって発生する余水は無害化処理を行った上で放流しているとのことでした。見学の際には、バスで移動し車内にて説明いただき、海中に投入している状況を見学することが出来ました。

 

【まとめ】

今回の見学会は8月末という時期的な要因と思われますが、募集から1週間程度で定員(30名)に達したため、見学先との調整の上、定員を40名へ増員しました。見学当日は運良く台風と台風の間の晴天でした。各施設では参加者から活発に質問が寄せられ、有意義な見学会であったものと感じます。今後の課題として、同様な時期に開催する場合、台風直撃による公共交通機関マヒ等も想定されるため、「中止・延期の判断基準を規定」し、緊急連絡方法を確保しておいた方が良いと思われます。また、今回は気温が高い状況下での見学が大半を占めていました。熱中症予防のための飲料水を用意するか、用意できない場合はあらかじめ案内時に水分を持参してもらうよう呼びかけることなどが課題として考えられます。

報告者:運営委員 金松雅俊、池本久利

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