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平成30年度関東支部講演会、研究発表会(工学院大学新宿キャンパス)の開催報告
 

平成30年度関東支部講演会、研究発表会(工学院大学新宿キャンパス)の開催報告

1.はじめに

平成31年3月8日(金)、工学院大学新宿キャンパスにおいて、支部会員同士の交流ならびに学生、若手研究者の研究発表の場を提供することを目的とした講演会・研究発表会を開催しました。

第1部の講演会・研究発表会では、工学院大学先進工学部環境化学科 稲葉敦教授より「プラスチックのLCA -リサイクルを中心に-」と題してご講演いただきました。続いて、関東支部に所属する大学、研究機関および民間企業による研究活動紹介を実施しました。講演会および研究活動紹介には100名近い方々にご参加いただきました。

第2部の研究発表会では、学生や若手研究者によるポスター発表を、第3部では意見交換会を催しました。

2.第1部:講演会・研究活動紹介

講師の稲葉教授から、「プラスチックのLCA -リサイクルを中心に-」と題してご講演いただきました。

はじめに「LCAとは従来の製品に対する評価対象製品の比較」であること、また、比較においては「幸せ(機能)同等の原則」により機能を同等として評価すること等、LCAの考え方をわかりやすくご紹介いただきました。例として、再生可能エネルギーを評価する場合に削減されたCO2量について、石炭火力発電を抑制したとするか、LNG火力発電を抑制したとするかで評価が大きく違ってくるので、そこを良く考える必要があるとご説明いただきました。

本題であるプラスチックリサイクルのLCAについては、評価をする際に「幸せ(機能)同等の原則」によりリサイクルによって削減されるエネルギーを適正に選定することが重要であることが説明され、例としてプラスチックをパレットに再生した場合、コークス原料化をした場合、焼却してごみ発電をした場合を取り上げてご説明されました。また再生プラスチックによる擬木について、多くはバージンプラスチックを代替したとして評価しているが、そもそも擬木はプラスチックで作るものなのか?という問題提起もされました。

最後に、LCAをめぐる現在の動きとして、様々な組織で温室効果ガス排出削減貢献量の算定が進行している状況や経済産業省から示されている「温室効果ガス排出削減量算定ガイドライン」およびCOP24公式サイドイベントでの展開等についてご紹介いただきました。

◆当日稲葉教授の講演資料はこちら

研究活動紹介としては、群馬県立産業技術センター/小松氏、株式会社環境管理センター/横田氏、株式会社タクマ/松田氏から、会社紹介及び研究活動について発表が行われました。

  

3.第2部:研究発表会

講演会終了後に開催された研究発表会では、学生16件、国際13件、社会人9件、計38件のポスター発表がなされました。発表は昨年に引き続き1部45分の2部構成でしたが、時間が短く感じられるほど熱気あふれる活発な議論が交わされている様子が見られました。また、研究発表会会場には企業展示ブースを設け、14の企業・団体から出展いただきました。

4.第3部:意見交換会

意見交換会には多くの方が参加され、今回会場を提供していただいた工学院大学建築学部 田村教授より乾杯のご挨拶をいただきました。また、会中に大迫政浩支部長より、7名の発表者に優秀ポスター賞が授与されました。

〇優秀ポスターの受賞者

【学生】

1) 水蒸気雰囲気下での急速加熱におけるマングローブの熱分解・ガス化特性、櫻井優矢(工学院大学大学院)

2) 木質バイオマス混焼による中小ごみ焼却施設での発電増強策の評価、中川裕衣(お茶の水女子大学)

3) 熱のカスケード利用を踏まえた下水汚泥固形燃料化システムのエネルギー収支解析、分部茉由子(お茶の水女子大学)

【国際】

4) Potassium removal from palm kernel shell by hydrothermal treatment: A preliminary study、Tsamara Tsani(東京工業大学)

5) Preference structure analysis of trash bin colors of PET bottle and CAN、Dilinazi Dilixiati(東京工業大学)

【一般】

6) 一般廃棄物焼却飛灰の鉱物学的不溶化に関する基礎的検討、北村 洋樹(国立研究開発法人 国立環境研究所)

7) 塩化揮発法による都市ごみ焼却灰の資源化、飯野 成憲(東京都環境科学研究所)

  

5.おわりに

昨年および一昨年の関東支部講演会・研究発表会は、一般企業に会場をお借りして開催しましたが、今回は3年ぶりに大学のキャンパスでの開催となりました。会場となった工学院大学新宿キャンパスは、JR新宿駅から徒歩5分とアクセス条件に恵まれたこともあり、大学や研究所等の研究機関だけでなく、民間企業や関係団体等から幅広く多数の参加者を得ることができ、若手研究者の交流や研鑽という会の目的を十分果たすことができたと感じました。

講演会では、稲葉教授のユーモアあふれるわかりやすいご講演に、一人の学生になった気持ちで、LCAへの理解を深めることができました。研究発表会では、非常に多くの方が参加され、会場が狭く感じるほどでした。また、意見交換会は60名を超える方々にご参加いただいて大いに盛り上がり、相互に理解を深める非常に良い場になったと感じました。

最後になりましたが、共催という形で講演会・研究発表会の開催にご協力いただきました工学院大学および会場関連にご尽力いただいた小林潤准教授、また、企業展示にご協力いただいた企業・団体の皆様、そしてご発表いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

報告者:運営委員 小竹茂夫、小野義広

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