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平成23年度 市民フォーラム

平成23年度 市民フォーラム

 

平成23年度 市民フォーラム

「市民フォーラム-ごみについて徹底討論しよう!!-」開催報告

年度テーマ:学びから実践へ!!

日 時:2011年9月3日(土)13:30~16:00

会 場:熊本大学工学部百周年記念館

参加者:59名

 

1.開催挨拶
主催者代表:廃棄物資源循環学会九州支部 支部及び本部理事 田中綾子
市民フォーラムの開会にあたり、廃棄物資源循環学会の活動の背景から、近年、とくに市民との交流を深めていく必要性についてふれられた。いわゆる、しきいの高い学会ではなく、市民の参画を促すために年一回の市民フォーラムを九州各地で開催する流れとなった。今回の熊本の開催において活発な討論を期待するとして開会の挨拶とされた。

 

2.話題提供要旨

(1)話題提供1 「みなまた環境塾の取り組み」
国立大学法人 熊本大学 特任教授 田中昭雄

水俣市と熊本大学が協働して5カ年事業でおこなってきた「みなまた環境塾」の取りくみについてご説明いただいた。

はじめに、水俣市の歴史のなかで、水俣病の背景と、それをきっかけに環境モデル都市へといたった経緯について説明があった。1908年の日本窒素肥料株式会社設立を契機に工業都市として発展し、町はうるおっていたさ中での水俣病発症により「人間性・環境よりも経済成長を優先させてしまった失敗」を経験した。水俣市は、それをバネにして1992年に「環境モデル都市づくり」宣言をし、環境基本条例を制定するなかでゴミを2分別から、一気に20分別に拡大した。2008年に「環境モデル都市」の認定が実現し、その後、ごみ分別は24種類に至り、2011年には日本で唯一の「環境首都」に認定された。

水俣市の環境歴史の整理の後、「みなまた環境塾」の取り組みについて説明があった。熊本市と水俣市が協働で、一般市民への環境に関する人材養成事業(5年事業)に着手し、今年が5年目であるとのこと。事業の目的は、「循環型社会の構築に貢献できる人材」「社会システムとライフスタイルを含めた環境保全の担い手」「みなまたから国内外に環境保全の大切さを発信する担い手」を育成することである。活動内容として、講義や個別課題対応型ゼミ、インターンシップやワークショップなどの各種イベントによる人材養成プログラムが紹介された。環境塾の卒塾生は「エコロマスター」の称号が得られ、その後の活動についても紹介があった。エコロマスター(塾生)は、くまもと環境賞や環境大臣賞の受賞や総務省の「ふるさと企業家」認定を受けるなど、継続した効果が生み出されている。

さいごに、田中教授の専門の観点から、水俣市のエネルギーフロー調査の紹介がなされ、投入資源を如何に減らしていくことが重要か、という提言がなされた。「リサイクルするから資源をたくさん使っていいということではない」という、これからのエネルギー政策にも通ずる貴重な提言であった。

(2)話題提供2 「ごみ減量のための実践的取組事例」
熊本市環境保全局 環境事業部 廃棄物計画課  濱野 晃

熊本市で取り組んできたごみ減量の活動事例について、具体的な取り組みのご説明をいただいた。はじめに、熊本市の一般廃棄物(ごみ)処理基本計画にもとづいたごみ減量化の実績について紹介があった。平成21年10月に家庭ごみの有料化に移行し、その後、ごみの分別についても7種19分別へ拡大した。これらの取り組みにより、リサイクル率については課題があるものの、減量化については十分な実績が得られているとのこと。

熊本市の「ごみゼロ・サポーター」について活動の紹介があった。平成17年1月にはじまった制度で、趣旨は、市民相互や市民と市役所の間において、ごみに関する様々な情報の共有を行なうことである。平成23年7月1日時点において、サポーター登録人数は1833名であり、その活動内容は、家庭や学校、職場におけるごみ減量化やリサイクルを推進すること、また、行政や市民団体が企画するリサイクル推進の取り組みに参加しごみに関する意見や情報を共有化していくことである。情報の共有のサポートとして、熊本市は「ごみゼロ・サポーター通信」を年4回発行しており、そこでは、ごみ減量やリサイクルに関する市民の様々な意見やアンケート結果などを掲載している。

実践的取組事例として、ダンボールコンポストの紹介があった。これは、公民館講座という形で始まっており、一回あたり40人程度に対して、コンポスト作りに必要な資材の提供や運用方法の説明がなされている。22年度は、16回開催で参加者594名、23年度は8月までに8回開催で参加者182名となっている。課題は、今後のダンボールコンポスト定着のためのフォローアップとのこと。

 

(3)話題提供3 「福岡市西区における人材育成と地域への展開について」
福岡市西区役所 地域整備部 生活環境課 重岡昌代

福岡市西区が実施している人材育成と地域への展開についてご説明いただいた。
はじめに、環境問題の変遷の説明があった。かつての公害問題に対して法規制で対処する時代は終焉し、今日は、「生活スタイル」に直結した地球温暖化など、加害者と被害者がイコールとなる環境問題に移行した。このような環境問題に対処するためには、その解決策を行政主導で市民に働きかける従来方式ではなく、行政と地域の市民がいわゆる「共働」で取り組んでいくスタイルが重要となってきている。西区では、この考えのもと、「地域環境サポーター育成講座(7期生までに140名が修了)を開催していることの説明があった。これは、西区が重点的に取り組む「環境を守る人づくり・地域づくり事業」の一つとして意欲的な人材の発掘と育成を行い環境活動の輪を地域に広げる試みであり、講座は一方的な教育ではなく、受講生自らが「気づき、実感し、実行する」をモットーに進められてきた。受講生の感想アンケートでは、「楽しかった」「出会いがあった」「行動するぞ」「スタッフがいい」「もっと続けて」というような好評を得ており、「もうちょっと講習を受けたいなー」という思いこそが、結果として継続的活動に繋がっている。

講座修了生の様々な活動が紹介された。一例として、5校区とスーパー4店舗で取り組む「地域ぐるみでマイバック持参率100%大作戦」では、貸出用エコバックを募ったところ、市民から1000枚の提供を受け、マイバックを忘れた人も不愉快にならないような配慮のもと順調に取組が進んだ。このときの課題として、40歳以下のマイバック持参率が低いというアンケート結果が得られており、若い世代や環境無関心層などへの啓発や気づきについて作戦展開していくとのこと。

 

3.会場からの意見及び自由討論要旨

ごみの減量化において有料化の効果をどう評価するかについて、質疑応答がなされた。昼間のピーク電力単価が高くなるように、ごみの有料化においてもその価格設定によってはある程度の減量化は期待できるが、市民にとってはやらされている感があり、反発を誘発する。やはり、市民の自発性による減量化の取り組みが第一であり、ごみ有料化は二次的な手段ではないかという考え方が示された。

話題提供のなかで、40歳以下のマイバック持参率が低いという事例が示されたことについて、本来、その世代では、環境教育の流れにより環境知識や情報はむしろ多いと推察されるが、そのあたりの矛盾についての議論がなされた。コメンテーターからの回答としては、知識があることも重要だが、行動に移すための思いの差が、結果として表れているのではないかという示唆があたった。

水俣市の24分別回収後のリサイクルルートについての質問や、その際のリサイクル業者の引き取り価格の妥当性についての質疑応答があった。水俣市にはびんのリータナブルを提言した企業などもあり、リサイクル業者は充実している。また、分別の精度もよいことから引き取り価格が比較的高いことが示された。また、資源としての売却額は地域の自治会に還元され、資源循環と環境保全に有効活用されていることの紹介がなされた。その一方で、水俣市では減量化について一定のレベルまで来て収束しており、今後は資源の消費抑制に踏みこむことの必要性の提言があった。

環境教育やごみ情報の共有及び発信についてインターネットの活用の位置づけについて議論がなされた。3人のコメンテーターからそれぞれの回答がなされた。立場や観点の違いはあるものの、いずれの回答も地域市民のいわゆる「口コミ」による情報の広がりが重要であるとの考えであった。

話題提供において、ペルーで水銀による水俣病と類似した事例の紹介がなされたことについて、社会的な背景や今後の展開について質疑応答がなされた。ペルーの発症の事例は、貧困地域の金の回収作業に伴うローカルな事例で、水俣病とは社会的構図が違う。しかし、対策も含めて貢献できることもあるので今後とも情報を収集していきたい旨、回答がなされた。

意見交換会の終盤では、会場からの意見として、「もったいない」というマインドのうすれの話題提供があった。従前に話題となった若年層の環境教育による知識の習得もさることながら、60歳代の高齢者の人たちの「もったいない」という感覚こそが資源浪費の抑制につながるものであり、ごみ減量化の次なる施策としては「もったいない」という感覚を復活させることも一手ではないか。

 

4.閉会挨拶
主催者事務局代表:廃棄物資源循環学会九州支部 幹事長 柳瀬龍二

市民フォーラムのねらいは、まさに「学びから実践」にあったことに対して、今回、十二分な議論が展開された。環境保全活動や資源循環型社会づくりの活動を進めていくにあたり、その活動の定着率が求められていく中で、ひとつの方向性が示されたということでフォーラムの締めくくりがなされた。

(報告者:九州支部幹事 高木修一)

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