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平成23年度 廃棄物資源循環学会九州支部総会・講演会・研究ポスター発表会・留学生等交流会・意見交換会

平成23年度 廃棄物資源循環学会九州支部総会・講演会・研究ポスター発表会・留学生等交流会・意見交換会

 

日時:平成23年5月14日 13:00~
会場:福岡大学七隈キャンパス文系センター4階

<総会>
総会の定足数65名に対し、正会員132名(総会出席者38名、委任状94名)の出席があり、総会が成立することが確認された。議事に先立ち、島岡副支部長が議長に選任された。議事録書名人として議長の他に乙間副支部長及び奥田監事が指名された。まず、1号議案「平成22年度事業報告」、2号議案「平成22年度収支決算」の報告が幹事からなされ、2号議案の監査報告が監事からなされた。質疑応答の後、1号議案、2号議案、及び監査報告書が承認された。次に、3号議案「平成23年度事業計画(案)」、4号議案「平成23年度収支予算(案)」が幹事から提示された。質疑応答の後、3号議案、及び4号議案が承認された。最後に、総会の審議事項ではないが、5号議案「平成23~24年度評議員(案)」が紹介された。

<講演会>
講師:甲斐 諭 教授 (中村学園大学流通科学部教授・九州大学名誉教授)
演題:資源循環型社会の構築と食品リサイクル
(1)日本の食糧消費構造の変化と食品ロス
ここ40年の食料消費支出割合の変化をみると、生鮮食品の割合が減少し、外食や調理食品の割合が増加している。国民一人当たりの供給熱量の推移はおおむね横這いであるのに対し、摂取熱量の推移は減少傾向にある。我が国では年間9000万トンの食品が供給されているが、その約21%(1900万トン)が廃棄されている。食品廃棄物には製造過程で発生する製造副産物や調理くずなど食用に供するに適さないものだけでなく、本来食べられるにもかかわらず廃棄される「食品ロス」が相当程度含まれている。食品ロスは年間約500~900万トンで、食用向け農林水産物の約5~10%、食品由来の廃棄物の約30~50%を占める。我が国は食料自給率が低い(約41%、2008年)にもかかわらず、食べ残しが多い。不必要な食糧輸入をもたらしている。「節食」が必要である。食品ロスの削減に向けて、関連事業者や消費者が一体となって取り組むべきである。
(2)福岡市における食品リサイクルの現況
平成20年度の福岡市の特定事業用建築物から発生する食品残渣の量は51千トン、そのうち6.1千トンが再資源化され、食品残渣リサイクル率は約12%である。福岡市およびその近郊にある食品リサイクル施設(5施設)が紹介され、福岡市における食品残渣の行方および食品リサイクルの課題について説明があった。
(3)焼酎粕の飼料化の努力と多頭畜産経営
畜産業における焼酎粕の有効利用事例が紹介された。焼酎粕には栄養が豊富に含まれており、焼酎粕は飼料として適している。通常500kgの牛には1日50kgの飼料が必要だが、牧草に焼酎粕を混合して作られた飼料の場合、1日バケツ1杯で十分な栄養を牛に与えることができる。焼酎副産物の飼料化処理の流れや大規模酪農経営の事例が紹介された。
(4)欧州における畜産副産物の有効利用についての説明があった。
我が国ではBSE(狂牛病)対策として肉骨粉の有効利用は敬遠され、肉骨粉は焼却処理されているが、欧州では肉骨粉は主に肥料としての有効利用が進められている。欧州ではEU1774(2002年)が制定され、畜産副産物はC1、C2、C3と分級され、それぞれの処理・利用規制が定められている。欧州における畜産副産物の処理事例(2社)が紹介された。我が国でも畜産副産物の有効利用を進めるべきである。
(5)食品リサイクルのための今後の課題
世帯食における食品ロス率は約4%であり、その内訳は食べ残し約1%、直接廃棄約1%、過剰除去約2%である。世帯食における食品ロスの約半分が過剰除去によるものである。世帯食において食品を使用せずに廃棄した理由として、「食品の鮮度低下・腐敗・カビ発生」に続いて、「食品の消費期限・賞味期限が過ぎた」が上位に位置している。飲食店における食品廃棄物の発生原因の約40%が「製造・調理過程(仕込みすぎ)」、約60%が「販売過程(顧客の食べ残し)」である。食品の納入期限や販売期限には「3分の1ルール」があり、賞味期限が9ヶ月の場合、納入期限は3ヶ月、販売期限は6ヶ月と機械的に設定されている。この「3分の1ルール」が食品廃棄物を増やす原因になっている。食品廃棄物の発生量を減らすことは十分に可能であり、そのために消費者や食品関連事業者が取り組むべきである。
食品リサイクルの推進のためには、①リサイクル事業者の育成、②リサイクル飼料の利用可能性追求、③リサイクル肥料の公共財化、④リサイクル農産物購入者の育成、⑤リサイクル円滑のための経済主体連携、⑥家庭、外食店、食品店での廃棄の見直し、⑦リサイクル資源の利用促進と安全確保のバランス等について検討し、食品リサイクルシステムを構築する必要がある。リサイクルの推進のためには「リサイクルの出口をしっかりさせること」が重要である。

<研究ポスター発表会・留学生等交流会>
平成22年度から開始された第2回「研究ポスター発表会」は、九州支部会員の所属研究室の学生を中心に24件の発表がなされた。さらに、平成23年度から外国人留学生と学生をはじめとする日本人研究者との交流促進を図る目的で「留学生等交流会」が開始され、4件のカントリーレポートの発表がなされた。会場内では常に活発な質疑応答がなされ、大盛況であった。
発表者及び発表タイトルは下記の通りであった。なお、ポスター番号の頭が「P」のものは研究ポスター発表会、「CP」のものは留学生等交流会のポスター発表である。

P-1 武川 将士(熊本大学)
SNAP法による高濃度NH4-N含有廃水の窒素処理に関する研究
P-2 坂田 明光(福岡大学)
リン添加浸出水の循環による埋立廃棄物の分解促進効果に関する研究 ◎
P-3 横畑 一也(九州大学)
一般廃棄物焼却灰由来の腐植物質と重金属の錯体形成 ◎
P-4 Manju Gurung(佐賀大学)
Adsorptive recovery of precious metals using persimmon tannin gels
P-5 池永 和敏(崇城大学)
マイクロ波を活用した廃棄物の資源化に関する研究
P-6 Do Phuong Khanh(熊本大学)
Wastewater treatment by upflow anaerobic sludge blanket reactors using PVA gel carrier
P-7 喜多村 広輝(九州大学)
有機性廃棄物埋立地内の汚濁物質挙動の送気による影響解析
P-8 小林 亮(福岡大学)
埋立地における浸出水の簡易浄化法に関する研究
P-9 Lai Minh Quan(熊本大学)
Immobilization of anammox sludge for enhancement of nitrogen removal from anaerobic digester liquor
P-10 高橋 麻由(九州大学)
植物を介した埋立ガス放出量と土質特性の関連性に関する研究 ◎
P-11 久保田 玲奈(佐賀大学)
食品廃棄物を用いた高品質家禽用発酵飼料の香気成分
P-12 楊 嘉春(熊本大学)
High-rate nitrogen removal by anammox process under ambient temperature
P-13 Kandula Jayakody(九州大学)
Temporal Changes in Pore Size Distribution and Water Retention in Simulated Solid Waste Landfill under Settlement
P-14 河島 弘治(福岡大学)
ダイオキシン類の微生物分解に及ぼす土壌成分の阻害影響
P-15 松尾 亮佑(九州大学)
海面埋立地における集水管の合理的設計に関する研究
P-16 馬 永光(熊本大学)
Nitrogen removal performance of a hybrid anammox reactor
P-17 高浜 祥紀(佐賀大学)
食品廃棄物による高品質家禽用発酵飼料の開発(2)卵質改善効果
P-18 Irwan Ridwan Rahim(九州大学)
Municipal Solid Waste Management in Makassar city, Indonesia
P-19 李 志剛(熊本大学)
Start-up and treatment capability of a stirred tank anammox reactor using PVA gel beads as biomass carriers
P-20 Vo Anh Thy(九州大学)
Study on the bottom ash from the medical waste incineration in Ho Chi Minh City, Vietnam
P-21 吉岡 宏樹(福岡大学)
費用負担の有無がペットボトルのリサイクル行動に与える影響 ◎
P-22 李 雪(九州大学)
中国の石炭灰に含まれる有害物質含有量の把握
P-23 太田 哲(熊本大学)
SNAPプロセスの実用化に向けたスケールアップに関する研究
P-24 Nithiya Arumugam(九州大学)
Solid waste Management in Malaysia: Emphasis on recycling and Biomass cycle in Oil Palm Industry ◎
CR-1 Kanawut Inkaew(九州大学)
Approach to Rubber Latex Sludge Utilization in Thailand
CR-2 Narumon Thimthong(九州大学)
Organic waste in Thailand and its management
CR-3 Pavel Ehler(九州大学)
Solid waste management in the Czech Republic: Progress and results after 21 years of economic and social changes
CR-4 Nguyen Ha Thi Hoa(九州大学)
Solid Waste Management in Industrial Zones, Vietnam Report 2009

◎は優秀ポスター賞

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