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災害廃棄物オンラインセミナー開催報告

災害廃棄物オンラインセミナー開催報告

災害廃棄物オンラインセミナー~災害時に発生する廃棄物について考えよう~ 開催報告

令和2年1月14日(木)に災害廃棄物オンラインセミナーをオンライン (ZOOM)により開催した。セミナーには民間事業者、研究者及び自治体関係者など55名が参加した。当学会九州支部の二渡支部長の挨拶に始まり、3名の講師より災害廃棄物処理に係る講演をしていただいた。質問等はその都度チャットで受け付け、全ての講演終了後、質問ごとにそれぞれの講演者が回答する形で行われた。

【プログラム】
15:00~15:10 開会挨拶 北九州市立大学 二渡 了 氏
15:10~15:25 講演1 「被災地(自治体)の取り組み」
大牟田市環境部 片山 聖一 氏
15:25~15:40 講演2 「収集・運搬の支援活動」
(公財)ふくおか環境財団 福重 孝之 氏
15:40~15:55 講演3 「専門家の支援活動」
福岡大学工学部准教授 鈴木 慎也 氏
15:55~16:20 質疑応答及び意見交換
16:20~16:25 学会九州支部活動紹介
16:25~16:30 閉会挨拶 九州大学 島岡 隆行 氏

【講演1:令和2年7月豪雨による災害廃棄物の処理について】
片山 聖一 氏(大牟田市環境部環境業務課)
片山氏の講演は、令和2年7月に大牟田市で発生した豪雨災害事例に関するものであった。まず、被災区域と災害の状況について、深刻な被害状況を写真で紹介された。次に仮置場の設置・運営に関して、どこでどういう風に受け入れたか、発災二日後に浸水が解消した直後から順次受け入れを開始したが、様々な問題が発生し閉鎖・開設と混乱した様子がよく分かった。また、分別についても他の事例を参考にしたが、実際に受け入れてみると可燃ごみに不燃物が多く混じり最終的に人海戦術で手選別を行ったとのことだった。課題としては、迅速な仮置場の開設と人員の確保、便乗ごみや自己搬入できない市民への対応、閉鎖時期と閉鎖後の原型復旧などであった。また、仮置場での対応を統一するためにマニュアルの準備が必要だったとの報告を受けた。

【講演2:災害ごみの収集・運搬支援活動】
福重 孝之 氏(ふくおか環境財団)
ふくおか環境財団は、福岡市と支援活動の協定を締結しており、被災自治体から福岡市に支援要請があった場合には福岡市と共に収集運搬支援に対応している。近年の支援実績は平成28年の熊本地震をはじめ、毎年発生している風水害の被害を受けた九州圏内および東広島市への支援である。これらの活動事例の中では、勝手仮置き場のごみの収集運搬、福岡県朝倉市では一次仮置き場から清掃工場への運搬を行ったとのことで、仮置き場に山積みされたごみを手作業でパッカー車に積込むには作業が難しく、クレーン付きトラックが良いことなどが示された。熊本県人吉市の事例では収集運搬作業において、災害ごみを投棄するための搬入待ち時間が長く、効率良く被災エリア内のごみを運び出すには仮置き場での搬入待ち時間を短縮させることが重要との意見であった。功を奏した方法として、人吉市が行った路上ごみ一掃作戦は業者ごとに担当エリアを割り振って、収集時に細かい分別をせずにごみを被災エリアから仮置き場まで運び出す作戦が展開され、作戦前に比べ格段に速い効率的な作業となり被災エリアから災害ごみを素早く持ち出すことができたとの報告であった。

【講演3:専門家の支援活動】
鈴木 慎也 氏(福岡大学工学部)
活動は、廃棄物資源循環学会のメンバーとしての支援や平時に研修・講演などを通じて国や自治体と連携をとりながら事前の準備づくりを手伝っている。令和2年7月豪雨では現地に入り、人吉市・芦北町の支援として情報提供や発生量の推計などを行った。人吉市の場合、初動期には仮置き場の搬入が20秒で1台のペースで捌けないと計算であり、効率化が不可欠である。仮置き場は1か所だが広大なスペースがあったので、ファーストレーンを作り予め分別積載した車を優先的に流すなど工夫されていた。芦北町では小規模の仮置き場が6カ所用意されていたが、短期間でいっぱいになりごみも分別されない状況になったため一時受け入れを停止するなど混乱した。仮置き場はレイアウトが大事である。小規模の自治体では人員不足があるので、災害支援を進めるうえでは、自衛隊などとの連携や人材バンクの活用などが必要である。

【質疑応答】
Q1大牟田市では災害ごみの出し方の周知方法は何か。

A1市ではホームページ、FM放送、メール配信(登録者)を行った。その他、仮置き場に搬入した市民がSNSを使って情報提供を行ったようである。

Q2一次仮置き場で混載物搬入可能なら災害復旧のスピードが早まるか。

A2混載で受け入れられるのであれば、スピードは早まるだろう。しかし、片付けごみは、被災地だけで処理するのは不可能なので、広域的な対応をする必要がある。

Q3人吉市では仮置き場設置を3日ほどかけて整備したかったとあるが、実際の工程はどうなったのか。

A3実際は、早急な災害ごみの受入れが必要となり2日で仮置き場を開設している。例えば、足場がぬかるむため、鉄板を敷いて足場を固めるが、その鉄板の確保などが必要であり、そういう準備期間が必要であった。

Q4仮置き場は、広大な1か所とした方が良いか小さくても複数カ所とした方が良いか?

A4一長一短ある。経験的には小さめ複数カ所の場合動線が確保しづらく一時的に機能停止する。器材・人員も多く必要。おそらく初動期においては広い一カ所の方がベター。出来れば、中間の広さを数カ所設けると良い。

Q5場所の選定や関係者の連携など自治体が平時に行っておくべきことは何か。

A5舗装されている広い駐車場は、自衛隊や警察の車両基地になる。事前に計画しておいても場合によっては使えないこともあることを考慮する必要がある。予備知識として、平時から使える場所を見つけておくことが大事。

Q6被災エリアから素早く災害ごみを持ち出すにはどのような方法が好ましいか。

A6仮置き場の搬入待ち時間を短くするために仮置き場の運営をスムーズにすることがポイント。広くても仮置き場の投棄ステージの数を多くしないと渋滞する。平時から小さな公園でもよいので場所を選定しておいて、市民に分別方法と併せて周知しておくと良いのではないか。

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