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平成30年度第3回勉強会を開催しました

平成30年度第3回勉強会を開催しました

廃棄物資源循環学会 リサイクルシステム・技術研究部会 第3回勉強会

「中国の廃棄物資源輸入禁止後の国際資源循環の現状」

◆日時: 12月5日(水)13:30~16:40

◆会場:日比谷図書文化館 スタジオプラス

 

第3回勉強会では、現在大変注目されている中国の輸入規制をテーマに、研究者と実務のそれぞれのお立場からご講演をいただきました。ご講演後には参加者との質疑が行われました。

また、場所を移しての意見交換会では、自然食材のおいしい料理にさらに会話がはずみ、参加者間で熱心な意見交換が行われました。

今回は非常にたくさんのお申し込みをいただき、満席でご参加いただけなかった方には、大変申し訳ありませんでした。

 

都築鋼産株式会社の梶様に、詳細な議事録を作成していただきましたので、ご承諾を得て掲載させていただきます。(梶様、どうもありがとうございました。)

 

■講演1 国立研究開発法人 国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 寺園淳氏

これまで、日本は鉄スクラップを中国と韓国、銅スクラップは殆どを中国へと輸出していました。

廃プラスチックは廃PE、廃PS、廃PET、廃PET含むその他プラに分けられ、2018年現在、中国ショックの影響により殆どの輸出がストップしている状況です。

そもそも、循環資源の輸出にはどのようなメリット・問題があるのでしょうか。

日本は国内の廃棄物を手放すことができ、輸入国(中国、香港など)にとっては資源を輸入することで国内の資源不足の解消に繋がります。しかし、それでは双方国内での3Rが進まず、輸出入を重ねることで国際的な移動量の把握が困難となり、密輸や不適切な処理、不適切なリサイクルが行われやすくなってしまいます。また、慢性化すると不正の発見も困難となります。

中国が廃プラの輸入を増加し始めたのは1990年代に入ってからでした。2000年代には日本の廃プラ輸出量も増加してきました。

廃PETの処理フローには破砕工程、洗浄・分別工程、熱処理(ペレット化)工程などがあり、排水の生じる選別や洗浄のプロセスの多さに比べ排水処理が確認できる施設はごく少数で、比較的大規模の企業だけが排水処理を行い、他所では汚水や残さがそのまま河川へ流れてしまっている状況にありました。

廃PET以外の輸入廃プラスチックは、日本国内で処理費のかかるロール状・フィルム状の副産物(端材)が多く存在していましたが、それらは現在国内で飽和し、大きな問題となっています。日本内では既に制限された廃プラを東南アジアへのシフトと国内でのサーマルリサイクルで対応する動きがありますが、東南アジアでも全体として輸入規制強化の流れがあり(インドネシアのみリサイクル産業活性化)、欧州などの輸出国は混乱しながらも脱プラスチックの運動が浸透しつつあります。

次に雑品スクラップとは、解体現場・工場・一般家庭から使用済みとなって排出される鉄・非鉄金属、プラスチック等を含む雑多な未解体・未選別のスクラップのことを言います。これらには有害物質管理・資源回収・火災防止といった3つの観点の問題があり、①Pb等の有害物質やフロンが適正管理されず輸出されてしまうこと、②国内でリサイクルするための法律が出来ている対象機器が資源として容易に輸出されてしまうこと、③船舶や港湾などの保管場所で火災が度々発生していることなどがあります。しかし、有害物質が基準以上に存在することの証明が難しいために、バーゼル法の対象でもなく、有価売却が可能であり、廃棄物処理法の規制対象でもないとして、二つの法律の規制をほとんど受けずに輸出されてきました。

雑品スクラップは、多様な品目を含む不均一な組成であり、全体としては非有害・非廃棄物と認識されていますが、中には有害・廃棄物を含むものがあり、廃棄物、有害物質ともにグレーゾーンの対象物が混在してしまっています。2017年6月、廃棄物処理法の改正によって「有害使用済み機器」の創設や保管基準等の義務付けがされました。もとより「319通知だけでは不十分」として廃棄物処理法の法的根拠を求める自治体も多く存在したもので、定義の困難な雑品スクラップに対して「有害使用済機器」を創設し、保管・処分に対して産業廃棄物に近い規制をかけたものです。同時期に改正されたバーゼル法改正でも「有害使用済機器」は規制対象とされ、これまで以上に規制対象を明確化できると期待されています。

今後、私たちはどのようにしていけばいいのでしょうか。まずごみを減らす為には、ペットボトル等は無闇に使わない・捨てない、家電は大事に長く使用することが大切です。そして、日本国内でのリサイクルには費用がかかるということにも自覚が必要です。近隣諸国と国際的なルールを設け、アジアの実情に適合した3R、廃棄物政策を支援する姿勢が必要です。

【質疑:1】

Q1:

(プラスチック削減の世界的な流れで)中国国内でのプラ排出が減少すれば、インドネシア等のアジア諸国に輸出を促したり、(輸入・リサイクルをしていた中国の企業がアジア諸国に)投資をしてプラ原料にまで加工してから中国でプラを受け付ける動きが出るのではないでしょうか。

A1:寺園氏

アジア諸国で加工してから中国へ輸入したいニーズはあります。また、中国は廃プラ排出を減らす姿勢を見せてはいますが、実際はまだまだ排出されるでしょう。(中国はリサイクル原料としての廃プラを輸入に頼ってきましたが、)中国でも他のアジア諸国でも、「ごみ」として集められていない廃プラが数多く存在しますので、収集システムを確立させて再利用するという認識を広めていく必要があると考えます。

Q2:

中国はリサイクル工場の稼動に伴って排水や残さを排出するといった懸念の他に、日本のおよそ1/20の人件費という側面も持っていて、日本国内で前処理の事業を始めつつある中国のリサイクル業者があるとのことですが、日本の内情はどの様なものですか?

A2:寺園氏

直接聞き取りができていませんが、そうした中国系リサイクル業者はあるようです。日本では排水や残渣を投棄はできないでしょうし、中国の作業者を連れてきて人件費を抑えたりするでしょうが、「事業」として考えられているので、ある程度の目途はあるのでしょう。日本国内でも輸出ができないことで、廃プラが逆有償や低価格になったりするなどの変化も影響するでしょう。

コメント1:

リサイクルするにあたり、プラ系は個別の製品ごとに追いかける必要があると感じます。細分化することでまだまだ見えてくるものはあり、実際塩ビは破砕すれば十分に製品に成り得ます。

 

■講演2 都築鋼産株式会社 取締役 穂積篤史氏

都築鋼産では,

産業廃棄物処理業・収集運搬業を中心として、一般廃棄物の収集運搬業や木チップ、RPF等の売買を行っております。群馬工場は館林工場、明和リサイクル工場からなり、中間処理施設として廃プラ類などの選別、破砕作業を行っております。埼玉リサイクル工場では木チップ、RPFの製造を行っており、中国ショックを受けて、明和リサイクル工場、埼玉リサイクル工場で搬入制限を設けておりました。今年は昨年に比べて廃プラの受入が増加傾向にあり、またロール状、フィルム状の破砕処理の難しいものも多く、「処理困難通知」をもってお断りをさせていただきました。続いていわゆる雑品スクラップという鉄・非鉄金属、プラ等を含む雑多な未開対・未選別のスクラップの注文が増加し、再度書面をもって受入をお断り申し上げた状況です。

中国は以前も、一度日本から廃プラスチックの輸入を一時停止したことがありました。いわゆる「2004年5月青島事件」です。正直、今回の規制もすぐに解除されるのではないかと甘く見ていた部分もあります。その後の再開では、日本より安い人件費をもってリサイクル事業を再開させました。過程で発生する残さは環境汚染問題として国際的に注目をされてきました。

それらを踏まえ、廃プラスチック処理の動向と予測は以下の通りです。

■RPF・・・製紙会社減産に伴い販路の縮小、バイオマス発電増設に伴い販路微増傾向にある。ただし製品スペックから塩素、硫黄の除去がどこまで出来るかが問題。処理費高騰により販路の期待はできるが期待は薄い。

■セメント原料・・・現在余力はなく、拡大に向けた動きはありそうだが微増程度。

■マテリアルリサイクル・・・第三輸出国は持続性が無く、廃止の可能性大。輸出業者が国内ペレット工場への移行(中国資本)容リ(その他プラ)ペレットや高品質ペレットの需要は高いが、残さ処理費高騰及び受入の確保が困難である。

■ケミカルリサイクル・・・現在余力は無く、受入制限も継続、容リ撤退による余力が微増。ASRの受入継続、SRはNG。

■焼却(単純焼却、サーマルリサイクル、廃棄物発電)・・・熱量調整が必要な為、受入制限継続、SR受入制限及び処理費も高騰している。

■埋立

安定型:増設が少なく処分価格高騰、中間処理(破砕)残さの返品増大。

管理型:汚泥の受入減少、燃え殻の受入増大、SRの受入制限及び処分費高騰。

■雑品処理問題

規制前に有価売却していたものを、規制後は廃棄物として処理するといった逆転現象が起こっています。スクラップ業者が処理受託し、シュレッダーダストとして焼却、埋立の対応をしていますがこれまでの中国規制などの背景から、今後第二波があるのではないかと思います。

【質疑2】

Q3:

廃プラはリサイクルに拘らず、単純に焼却処理をして良いのではないかと感じます。また、その際固定買取制度FITの導入も検討できるのではないでしょうか。

A3:穂積氏

仰るとおりですが、現在国内の焼却施設自体が減ってきており、廃プラの発生に処理が追いつかない状況にあります。また、PKSの発電も利益の部分から実行が困難だと考えます。

Q4:

最後のスライド「廃プラ処理の動向と予測」に挙げられた中で、技術的に新しいものはありますか。

A4:穂積氏

特にございませんが、新技術という観点から、処理会社の立場としては、中でも生分解プラ等の見た目での判断が難しいものの導入に懸念があります。新技術といっても現在対応するにも中途半端な処分・処理となり兼ねないからです。

Q5:

規制された国内の産業廃棄物は、一体何処へ流れているのでしょうか。

5A:穂積氏

弊社を含む中間処理施設・処分場に搬入することが難しい場合は、基本的には排出者のもとで引取待ちをするか、正規ではないルートにも流れている可能性もあります。

Q6:

RPF生産にあたって塩ビの選別作業があるとのことですが、どのように行っていますか。

A6:穂積氏

事前に廃棄物データシートの提出を求めており、あくまでも塩ビの混入は無いということ前提ですが、実際問題まれに混入がみられます。検査方法は目視、蛍光X線照射等行っております。

Q7:

中国国内への輸入制限がかかっていますが、中には溢れた廃棄物を有価で買い取る中国のバイヤーも一部に存在しています。有価買取となると、マニフェストの発行も必要がなく、廃棄物(=有価物)の行方も追跡ができません。こういった問題についてどうお考えでしょうか。

A7:穂積氏

何故そのような売買が行われるかというと、中国国内の循環資源供給が需要に追いついていないため、自国のマテリアル回収のみならずそのようなルートで日本の資源を入手しているからです。各国が国内でのマテリアル回収を行うしくみ作りは勿論のこと、輸入出を記録するようなシステムで対応することも検討していく必要があると感じます。

Q8:

ペレットの輸出は今後ございますか。

A8:寺園氏

混合ペレットは需要はほとんどありませんが、PPペレットやPSペレットは十分に需要があると考えます。

Q9:

新技術に関して、今後新たに投資を検討しても良いと感じるものはありますか。

A9:寺園氏

コストの問題は勿論ありますが、マテリアルリサイクルにおいて、現在よりも細やかな分別を行い、再利用できるシステムの構築に期待をしています。

以  上

記録 都築鋼産株式会社 梶 希帆氏

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