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2019年4月9日 勉強会を開催しました

2019年4月9日 勉強会を開催しました

廃棄物資源循環学会 リサイクルシステム・技術研究部会 勉強会

「バイオベースプラスチックの現状と実用化への課題」

◆日時:4月9日(火)13:00~17:00

◆会場:産業技術総合研究所 臨海研究センター 別館11階 第1会議室

バイオベースプラスチックは、プラスチック資源循環戦略(案)の重点戦略において「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン」というマイルストーンが示されたことも受け、大変注目されています。今回の勉強会では、バイオベースプラスチックをテーマに2名の講師をお迎えしてご講演をいただきました。ご講演後には参加者との質疑が行われました。

 

 

■講演1 大阪大学 宇山浩教授

宇山先生からは、バイオプラスチックの種類と特性、世界と日本における普及状況、バイオプラスチックの生産システム、ポリ乳酸の特徴、微生物生産ポリエステル(PHA)、バイオプラスチックの製品等への利用状況等についてご紹介いただきました。

 

バイオプラスチックは、微生物によって生分解される「生分解性プラスチック」と、バイオマスを25%以上含有する「バイオマスプラスチック」の総称です。バイオマス資源を利用したプラスチックにも、生分解するものと、しないものがあり、それぞれの特徴を活かし、普及が進められています。

現状、世界のプラスチック生産量約3億トンに対して、バイオプラスチックの生産能力は1%未満であり、日本においては、生産量約1千万トンに対してバイオプラスチックの生産能力は約0.4%となっています。プラスチック資源循環戦略等でバイオプラスチック普及の目標値が示されましたが、生産設備の整備に時間が必要であり、目標とする生産量までには開きがあるのが現状です。

バイオマスプラスチックは企業のCSRとして利用されてきましたが、利用量が限られるため普及していないのが現状です。

日本におけるバイオマスプラスチックの利用用途としては、農業用資材として利用が進んでいます。

バイオプラスチックは、値段と性能によって用途が決まるため、環境に配慮した素材というだけでは普及しにくいのが現状です。また、これまでバイオマス由来のプラスチックの普及が進まなかった要因の一つが、石油由来のプラスチックに対して性能が低いことでした。しかし、バイオマス資源からバイオエタノールを生成し、エチレンを製造することで“モノマー”をバイオ化することが可能となり、バイオプラスチックの性能が向上し、普及が進んでいます。

PET原料であるエチレングリコールは主に石油由来ですが、“モノマー”がバイオ化したことで、PETは世界で最も普及しているバイオプラスチックとなっています。

最後には、研究内容、マイクロプラスチック問題等についてもご紹介いただきました。

 

■講演2 東京大学 平尾雅彦教授

平尾先生からは、バイオベースプラスチックのライフサイクル、ポリ乳酸(PLA)とその利用製品のライフサイクルアセスメント(LCA)事例、バイオベースポリエチレン(バイオPE)のLCA事例、石油代替の考え方、バイオベースプラスチックのライフサイクルアセスメントにおける課題についてご紹介いただきました。

 

バイオベースプラスチックは環境配慮材料として注目されていますが、資源採取から製造、使用、廃棄・リサイクルまでのライフサイクルから環境影響を評価しておく必要があります。ライフサイクルをすべて調査し、そこでの環境負荷を評価していくのがLCAの考え方で、バイオベースプラスチック製造のプロセスエネルギーには、主に化石燃料が利用されていることが、一つのポイントとなります。

トウモロコシ由来ポリ乳酸(PLA)とその利用製品のLCA評価の研究事例から、樹脂の利用用途、利用量に加え、生分解プラの場合は処分方法も考える必要があります。また、バイオベースポリエチレン(バイオPE)のLCA評価の研究では、ブラジルでの原料作物の生産~日本で利用する場合の複数シナリオでの評価から以下のような結果が得られました。

・バイオPEは、樹脂製造以降のプロセス変更なしに化石PETを置き換えることができる。

・化石PEからバイオPEへの置き換えによってGHG排出を削減することができる。この結論は、次に示す悪条件でも逆転しない。①余剰副生バイオマスを有効利用しない。②かん木草原から土地改変を行う。③バイオPEをブラジルから日本に輸送する。

・輸送の影響は比較的小さい。

・バイオエチレンの製造は、ナフサ分解によるエチレン製造に比べて、発酵・蒸留・脱水のプロセス条件が比較的にマイルドであり、エネルギー効率が高いと考えられる。

一方で、石油精製の工程では、沸点分留により重油~ナフサまでが必ず得られるため、単純に一部の石油由来エチレンをバイオ由来に置き換えても、分留で生じる石油由来エチレンが余ることになるため、石油精製システムの特徴を考慮したバイオマス利活用システムを設計する必要があります。

最後に、生産プロセス等の情報不足、従来プラスチックや他素材などの代替性についての評価方法、GHG排出・化石燃料消費以外の評価項目の考え方などバイオベースプラスチックのLCAに関しては、課題もあり、引き続き検討が必要です。

 

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