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2020年1月20日勉強会を開催しました

2020年1月20日勉強会を開催しました

廃棄物資源循環学会 リサイクルシステム・技術研究部会 勉強会

「プラスチックのケミカルリサイクルの新しい挑戦」

  • 日時:1月20日(月)13:30~17:00
  • 会場:JFEエンジニアリング東京本社会議室 丸の内トラストタワーN館19階

最先端の動向が注目される「廃プラスチックのケミカルリサイクル」について
ごみを資源として有効活用する技術の概要を講師のお二方に解説いただきました。

講演1 「プラスチックのガス化 水素、アンモニア製造実用展開」

昭和電工㈱川崎事業所 KPR推進室長  栗山 常吉 様

国内の使用済プラスチックの総排出量は約900万tと言われ、昭和電工ではその内の約6万tをケミカルリサイクルしています。これは、アンモニア製造設備で原料として利用していた都市ガスの代わりに、使用済みプラスチックを利用するもので、既存のアンモニア製造プロセスの手前に、使用済みプラスチックの破砕成形・ガス化から成るリサイクルプロセスを設置しています。

KPR(ガス化手法)に必要なごみ減容成形品(RPF)は、自治体が収集した使用済みプラスチックを破砕・分別し、減容成形機によって製造します。この成形プラは低温ガス化炉と高温ガス化炉を通り、水素と一酸化炭素の合成ガスとなります。このガスと空気(窒素)を反応させ、年間約6万tのアンモニアを生成しています。反応中で生成する二酸化炭素は、隣接する工場でドライアイスや飲料用液化炭酸ガスとして出荷されます。また、破砕工程等で回収される金属類や、ガス化炉で回収されるスラグも、資源として再利用しています。

また、川崎市と連携して「低炭素水素発生技術実証事業」の取り組みを進めています。使用済みプラスチック由来の低炭素水素を活用し、環境負荷の少ない低炭素社会の実現を目指すもので、2017年から水素ステーションを設置するとともに、2018年開業のホテルに水素を供給し、燃料電池でホテルのエネルギーの約3割に相当する電気と熱(お湯)を賄う取組を開始しました。

廃棄されたプラスチックを日常生活へ循環する“リサイクルの輪”を創出し、廃棄物原料を使用する世界で唯一のプラントとして、新たな低炭素資源循環システムの展開に貢献していきます。

質疑(概要)

【質疑1】
ケミカルリサイクル収率の考え方について。
【回答1】
1tのプラからアンモニアが何トンできるかという考え方である。

【質疑2】
原料プラを、容器包装から産業廃棄物まで広げた場合の影響について。
【回答2】
プラに含有される窒素は、すべてアンモニアの構成物質となる。硫黄や塩素は除去工程を設けている。

【質疑3】
原料として利用できるプラの組成の制約について。
【回答3】
溶融温度が600℃以下であれば、硬質も含めてガス化可能である。

【質疑4】
多層フィルムやラミネート材などのガス化可能性について。
【回答4】
ラミネートされたアルミ程度は流動砂の入替で対応可能であるが、交換頻度を抑える意味で投入物のコントロールが必要。

【意見5】
混合禁忌物のハードルが以前より低くなっていると感じた。

【意見6】
以前より相当低い温度でアンモニアが生成可能となったと感じた。今後は触媒も有効利用できるよう検討してみてはどうか。

【質疑7】
容リ制度がなくなった場合の対応について。
【回答7】
容リ法の影響力は非常に大きく、頼っている状況にあるが、どのような場合でも廃プラ処理は我々の責務だと考えている。

講演2 「“ごみ”をエタノールに変換する資源循環の新たな形」

積水化学工業㈱ 課長 小西 千晶 様

国内で排出される可燃ごみは、年間約6,000万tであり、そのエネルギー量はカロリー換算で約200兆kcalに及ぶといわれています。この量は国内で用いられる石油原料(ナフサ)のおよそ2倍の量に値するにも関わらず、その多くが焼却、埋立処分に留まっていました。そこで、ごみは極めて潤沢豊富な資源であるという考えのもと、2017年12月に、ごみ処理施設に収集された“ごみ”を、ガス化によりCOとH2に分解し、微生物によって“エタノール”へと変換させる技術を、米国ランザテック社との共同開発により実現・実証しました。

ごみは種々雑多で成分・組成が大きく変動することから、扱いが困難だと考えられていましたが、化学的組成を単一に変換する技術として「ガス化」を採用することで、分別せずに低酸素状態でごみをCO、H2といった分子レベルにまで分解し、ごみが有する豊富なエネルギーを損なうことなく、特性を均質化することが可能です。

積水化学工業では、ガス中の夾雑物質をリアルタイムで徹底的に除去するガス精製技術と、ごみ組成の変動にアジャストしてエタノールを生産する培養コントロール技術を確立しました。また、ごみ処理施設特有のリスクに対応するため、万が一エタノール生成工程に必要な環境が変化してしまった場合には、当該の微生物を仮死状態にして対応、対処するなど、安定した生産技術を確立しています。

このシステムの実用化に向けて、20t/日規模の実証事業を岩手県内で計画しています。ここで出来たエタノールは、プラスチックの原料とすることで完全なリサイクルを目指す本来の目的だけでなく、自動車燃料や地域と提携した実証事業でも使用したいと考えています。エタノール生成以外にも、様々な観点からの付加価値創出を拡げ、化石資源に依らない資源循環システムの創生を目指します。

質疑(概要)

【質疑8】
COの投入時、微生物による取り込みに適した組成比率の調整の有無について。
【回答8】
反応塔は、上段でCOを消費しきれるように径や高さを設定しているが、CO濃度を高めてエタノール生成を優先しているため、完全に反応はしていない。

【質疑9】
自治体と連携した一般廃棄物処理に加え、将来的な産業廃棄物事業者との提携の可能性について。
【回答9】
一廃と産廃のメリット・デメリットを加味して、パートナーを検討していきたい。

【質疑10】
自治体に対するガス化システム導入の促進と、ランニングコストについて。
【回答10】
ストーカ炉とガス化炉の導入コストの違い、改質後のガス洗浄コストを検討する必要がある。

【質疑11】
エタノールの生成に必要な酸素基(O)はどこから供給されるのか。
【回答11】
嫌気環境で餌となるCOを投入している。

【質疑12】
具体的な忌避物質と、プラント内の洗浄について。
【回答12】
窒素酸化物とBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)が忌避物質である。微生物が生存可能な環境まで洗浄している。

【質疑13】
CO以外に微生物に与える物質について。
【回答13】
ビタミン類、ミネラル分など。

【質疑14】
エタノールを生産する微生物について。CO2を利用できる微生物は見つかっていないのか。
【回答14】
微生物のベンチャー企業である米国ランザテック社が自然界から採取した微生物で、遺伝子組換え等はされていない。CO2を餌とする微生物の話は、今のところ聞いていない。

【質疑15】
事業化に必要な規模は。
【回答15】
ごみの場合、150~300t/日程度。プラスチックの場合はより小規模で可能である。

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