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2022年5月18日 勉強会を開催しました

2022年5月18日 勉強会を開催しました

廃棄物資源循環学会 リサイクルシステム・技術研究部会 勉強会

「情報技術を用いた最新のプラスチックリサイクル」

  • 日時:5月18日(水)13:00~17:00
  • 開催方法:ハイブリッド(会場&WEB併用)
  • 会場:早稲田大学リサーチイノベーションセンター(121号館)B1階コマツ100周年記念ホール

 持続可能な社会を実現させるためには、有限な資源を循環利用することが重要です。多種類の素材が組み合わされ、社会に広く拡散した使用済み製品から目的物を効率的に回収および再利用するには、情報技術が非常に強力なツールになると考えられます。
 今回の勉強会では、最新の情報技術を駆使して資源回収を検討されている企業の取組について、4名の講師の方々からご紹介していただきました。

講演1 「手段としてのテクノロジーとデジタル化の本質 ~みんなでボトルリサイクルプロジェクトを通じて~」

㈱digglue 代表取締役CEO  原 英之氏

 日用品メーカー大手4社が競合して、日用品の廃プラスチック容器を回収し、ボトル容器toボトル容器のリサイクルを目指す「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」を行っている。情報技術として、容器プラスチックのリサイクル流通情報についてトレーサビリティを行っている。
 トレーサビリティは、自社以外に周りの企業も巻き込んでデジタル化を促進する必要があり、導入を敬遠されているが、メリットとデメリットをよく吟味した上で、トレーサビリティの導入を検討する必要がある。例えば、トレーサビリティで活用されるブロックチェーンは、種類によって異なる性質をもつため、活用方法に応じてブロックチェーンの種類を鑑みる必要がある。デジタルにリサイクルの流通をシステム化することで、例えば人々の消費行動による環境への貢献度を可視化できるようになる。そうしたことが消費者の環境配慮へのインセンティブにもなる。


 質疑応答では、ビジネスモデルとして、どのように誰が利益を得られるのか。トレーサビリティでトレースする情報は具体的にどのようなものなのか。トレーサビリティに対する信頼性を高めるには何が重要か。といった質問が寄せられました。

講演2 「プラスチック資源循環プラットフォームの構築について」

三井化学㈱ 理事 デジタルトランスフォーメーション推進本部 企画管理部長 浦川 俊也氏

 三井化学(株)は、使用後のプラスチックを再資源化して循環させるために、「プラスチック資源循環プラットフォーム」を構築することを検討している。そこでは、プラスチックの製造、販売からリサイクル材までの各工程で用いる製造ロットやシリアルナンバーを基に、トレースキーコードを設け、一連の工程を紐づけすることで、トレーサビリティを担保する形となっている。
 現在、3社合同で計画を立て、令和3年度から実証試験を開始しているが、今後の展望としては、コンソーシアムを設立し様々な立場、同様のプラットフォームを求めている企業と話し合い、他企業を巻き込んだ日本単位でのプラットフォームを構築することを想定している。
 実証試験では、データの入力が実際に行われ、カスケード方式のトレーサビリティを持ったリサイクルプラスチックの販売が開始された。本プラットフォームを利用することで、リサイクル材の安全性の担保、システム管理による供給の安定性の向上、また、既存のプラットフォームの利用によるコストの削減といったメリットが期待される。


 質疑応答では、プラットフォーム内でシステムは統合するのか、トレースされる情報はどのようなものであり、だれが情報を引き出すのか、廃棄物におけるナンバリングはどのようにするのか、既存のシステムは活用しないのか、信用性はどのように担保するのか、費用は誰が負担するのかといった質問が寄せられました。

講演3 「IoT技術と環境配慮パッケージングGREEN PACKAGING 
           ~サーキュラーエコノミーの実現に向けて~」

大日本印刷㈱ Lifeデザイン事業部 IPCビジネスデザイン本部 環境ビジネス推進部長 加戸 卓氏

 大日本印刷(株)が独自で実施した生活者環境意識実態調査の結果を紹介し、消費者に伝わりづらい環境配慮の取組は、消費者が意識した行動に移してもらえていない傾向がみられた。
 大日本印刷(株)の取組として展開している環境配慮パッケージング「GREEN PACKAGING」では、バイオマスプラスチックや、単一素材を使用した製品製造を行っている。十分な機能を持たせるために、容器には複数の素材が用いられているが、単一素材に機能を付与することで、リサイクルを行いやすい容器の開発を目指している。
 容器のIoT技術として、デジマークバーコードについて紹介する。デジマークバーコードとは、バーコードを読み取りやすくするために容器全体にバーコードの機能がついており、この機能は破棄・破砕後もバーコードを読み取ることが可能となる。分別リサイクル処理を行う上で、材質等の正確な識別を可能にする技術である。


 質疑応答では、単一素材について、普及のための課題は何か、食品メーカーから要望はあるのかといった質問がありました。デジマークバーコードについては、デジマークに付与する情報はどのようなものが考えられるか、どこまで進んでいるのか等の質問がありました。

講演4 「資源循環構に向けた、デジタル技術を活用した静脈サプライチェーンデザイン」

レコテック㈱ 代表取締役  野崎 衛氏

 静脈物流においてもお金の流れを発生させ、資源価値として向上させることは重要である。レコテック(株)では、入手ルートを含めた都市ごみ資源の見える化を可能とする「資源循環プラットフォームPOOL」を用いて、廃棄物の資源価値を高める取組をしている。資源物流のトレースでは、トレースのシステムを構築すること自体ではなく、携わっている各工程の担当者がモノの流れをきちんと入力することが大きな課題となり、また、入力情報の正確性や価値をどのように担保するかが重要となる。
 現在、「POOL」では、資源価値が高いアパレル業界から排出されるプラスチックを対象に進めている。システム化することで、リサイクル材の質の安定、リサイクル製品価値の向上、選別機を必要としないことによるコストの削減等につながる。また、素材の含有割合を把握することにより、プラスチックへの適切な加工処理が可能となり、量産性の向上が見込める。
 プラスチックの焼却処理が今後減ることで、焼却炉での生ごみの割合が高くなり、焼却炉への負担が大きくなると考えられるため、廃プラスチックと生ごみの減量対策は、同時並行に行うべきである。


 質疑応答では、情報の秘匿性、容器へリサイクルされる上で品質に問題はないか、採算は取れている状態か等の質問がありました。

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