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2020.9.18 緊急セミナー「災害廃棄物への対応」開催報告

2020.9.18 緊急セミナー「災害廃棄物への対応」開催報告

開催報告

災害廃棄物研究部会主催と災害報道を考える『関西なまずの会』共催により、緊急セミナー「災害廃棄物への対応~令和2年7月豪雨を受けて~」を開催した。国立環境研究所森朋子氏及び京都大学浅利美鈴氏が司会を務めて、話題提供3件及びパネルディスカッションを進行した。全国から研究者、メディア、行政、企業、NPO、市民等約150名の多様な方が参加した。

環境省松澤裕氏の挨拶の後、主催者を代表して浅利氏より災害廃棄物研究部会の活動として、令和2年7月豪雨被災地への現地支援と後方支援を展開し、そこで得られた成果の熟成を加速するため、防災の専門家及びマスメディアの方々とのパネルディスカッションを企画するに至ったことが説明された。

○話題提供「令和2年7月豪雨支援報告」

鈴木慎也(福岡大学)は、現地入りして仮置場視察、被災状況確認を行い、コロナ禍でWeb会議システムを使った中継により情報共有を実施したこと、防災科学技術研究所のSIP4Dや国土地理院浸水推定図から災害廃棄物発生推計量の情報提供したことが説明された。

多島良(国立環境研究所)は、Web会議システムに待機して情報共有・情報の交通整理を行い、今後手法をブラシュアップしていく方向性を説明した。

浅利美鈴(京都大学)は、現地入りして住民に必要な情報が伝わっていないことを感じ、正確で前向きな情報発信をするため、熊本県民テレビと同行取材を行い報道した。情報は一元化しつつ多様な方法で発信することが重要と説明した。

○話題提供「被災自治体間における災害時の支援状況」

宇田川真之(防災科学技術研究所)は、災害時の支援の全体像を紹介し、総務省の対口支援のスキームを紹介し、また、内閣府が発行した受援計画策定の手引きで廃棄物分野の重要性が認識されており、行政は廃棄物分野の受援シートを準備しておくといいと説明した。

ウェビナーQ&Aから、様々な応援スキームを調整する仕組みについて質問があり、令和2年7月豪雨では熊本県庁で内閣府が調整し、また県庁が差配したこと、総務省の対口支援で知事会や市長会の現地調整本部が重複排除や勢力配分を図っていることが回答された。

○話題提供「災害廃棄物…報道の”処理能力”を考える」

大牟田智佐子(関西なまずの会、㈱毎日放送、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科)は、災害時の報道は、災害廃棄物よりも人命に関わるニュースが優先されがちである。また視聴者には未経験の災害に対し想像力を持ってもらうことも必要だと説明した。

木戸崇之氏(朝日放送テレビ㈱、人と防災未来センター)は、マスメディアのエリア特性があること、都市部でスピード感が必要と考えると平時の啓発が課題であるとの説明があった。

○パネルディスカッション

神戸学院大学安富信氏が、マスメディアは災害廃棄物の惨状ばかりでなく、なぜそうなるかを考えて伝えてほしい。読売新聞安田信介氏は、専門家やNPOと議論して新聞の特性を生かした情報を充実させていくことが大切との発言があった。

Q&Aから、分別の重要性をどう伝えるか質問され、分別は行政だけでなく住民との協働になる。一方的にお願いするのではなく、なぜか分別が必要か、専門家が第三者として伝えることで行政・住民の間が密になると期待される。混合状態になると火災リスクが高くなること、また、高齢化が進んで仮置場へ持っていくことができない問題が顕在化しており、共助・公助の工夫が必要と回答があった。

今後、広報原稿ツールの効果的な活用方法の調査解析や、研修では行政職員だけでなくマスメディアや民間団体と一緒に考える重要性に触れられた。

廃棄物資源循環学会への提言として、時宜を得て、分別が復興を早めるという住民のメリットを発信することで、マスメディアの意識が変わる。積極的にマスメディアを利用してほしい、研究者と情報交換を継続していくことで深い報道ができるとされた。

セミナー動画(youtubeへのリンク

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