(新企画3)3.ごみ処理施設の基本 ①焼却施設について
焼却施設とは、ごみを高温で燃やして処理をする施設です。
ごみは高温で燃やすことで衛生的に処理をすることができます。
日本では明治時代のころ、まちかど等に積んでおいたごみが原因でネズミや蚊等が発生し、それが原因で伝染病が流行しました。
ごみを燃やすことでわたしたちは衛生的に暮らすことができています。
さらに、ごみを燃やすことによってごみの重さや体積を減らすことができます。
日本は、ごみを燃やしたあとの灰を埋め立てる最終処分場をつくる場所があまりないため、燃やして灰にすることでできるだけ体積を減らし、最終処分場を長く使うための工夫を行っています。
ものが燃えるしくみはつぎのとおりです。
まず、ものが燃えるのに必要な要素を見てみましょう。
ものが燃えるときには、つぎの空気、熱、可燃物の3つの要素が必要です。可燃物はごみにあたります。
焼却炉のなかに熱を発生させ空気を送り込み、そこに可燃物であるごみを投入することで燃え始めます。
■可燃物(ごみ)
焼却炉では、燃やして処理をするごみが可燃物になります。
燃えるごみ・可燃ごみ
■空気
焼却炉のなかには空気を送っています。
一部にごみピット内の臭い空気も利用しています。
空気
■熱
焼却炉のなかでごみを燃やしはじめるときには、灯油等の燃料を使って、温度をあげていき、高温の状態をつくります。
ごみを燃やす焼却炉には、いくつかの種類があります。
代表的な3つの焼却炉のしくみについて紹介しましょう。
■ストーカ式焼却炉
ストーカ式焼却炉は、焼却炉内の床に敷き詰められたストーカ(火格子)のうえをごみがゆっくりと送られながら燃やしていく焼却方式です。
ストーカは、階段状に敷き詰められていて、ごみを送るためにゆっくりと動いています。
ごみは、乾燥、燃焼、後燃焼の3段階の工程で灰になるまで燃やされます。
(おもな特徴)
・階段状のストーカ(火格子)によって完全燃焼します。安定的にごみを燃やし続けることができます。
・ごみを燃やすときの熱を利用して蒸気と電気をつくります。
・構造は比較的シンプルで、低コストでつくることができます。
・国内では、多くの施設でストーカ式焼却炉を採用しています。
■ガス化溶融炉(流動床式)
流動床とは、焼却炉のなかの高温に熱した砂に空気を送り込むことで流動させ、そこにごみを投入することで燃やす方式です。
(おもな特徴)
・ごみを1300℃の高温で燃やし(溶かし)て出る溶融物を冷やして固めたものを道路の舗装材等に再利用することができます。そのため、最終処分場に埋め立てる量を減らすことができます。この溶融物はスラグとよばれます。
・鉄やアルミ等の金属類を取り出して回収することができます。
・高温で処理を行うため、ごみの持つエネルギーだけでなく灯油等の燃料を使う必要があります。そのため、ストーカー炉に比べてより多くのCO2(二酸化炭素)が排出されます。
・高温で処理を行うため、たくさんの電気を効率よく作ることができます。
■ガス化溶融炉(シャフト式)
(おもな特徴)
・ごみを1800℃の高温で燃やし(溶かし)て出る溶融物を冷やして固めたものを道路の舗装材等に再利用することができます。そのため、最終処分場に埋め立てる量を減らすことができます。この溶融物はスラグとよばれます。
・ごみを燃やして溶かして固めてつくるスラグと資源として再利用できる金属類を分けて集めることができます。
・ごみを溶融する温度は1800℃と高温のため、補助燃料としてコークス等を使う必要があります。そのため、ストーカー炉に比べてより多くの二酸化炭素が排出されます。
ごみを燃やすと高温の熱が発生します。この熱を利用して蒸気や電気をつくることができます。
また、ごみのうち、生ごみ、紙類、木くず等は、バイオマスと呼ばれるごみで、燃やしても二酸化炭素の排出がゼロとみなされます。これをカーボンオフセットと言います。
つまり、二酸化炭素の排出量が少ないエネルギーであり環境にやさしい熱エネルギーの利用と言えます。
【ごみを燃やしたときに出る熱が蒸気や電気に変わるしくみ】
①850℃以上でごみを燃やします。熱が発生します。
②熱によってボイラ内の水管のなかの水が蒸気になります。
③蒸気は蒸気タービン発電機に送られるとタービンを回転させます。
④タービンが回転する力が発電機に送られて電気をつくります。
⑤蒸気は、熱交換によりお湯をつくるために利用されることもあります。
お湯はお風呂や温水プール等で利用されます。
ごみを燃やすと排ガスが発生します。
排ガスのなかには、有害な物質が含まれています。
有害な物質は、硫黄酸化物、塩化水素、窒素酸化物、ダイオキシン類、水銀等です。
■硫黄酸化物(SOx)
石油や石炭等を燃やすと発生します。大気汚染や酸性雨の原因になります。
■塩化水素(HCl)
刺激臭のある有毒な気体です。
■窒素酸化物(NOx)
物が高温で燃えるときに発生します。光化学スモッグの原因になります。
■ダイオキシン類
ダイオキシン類は、毒性の高い有機塩素化合物です。
油に溶ける性質をもっているため、生物のからだの中の脂肪に溶けて蓄積します。
焼却炉では850℃以上の高温でごみを燃やすことで、ダイオキシン類が分解されます。
■水銀
金属の一種で、蛍光灯や体温計等に使われています。
有機水銀は水俣病の原因になります。
■クロム
クロムのうち、6価クロムは有害物質に指定されています。
昭和50年代前半頃、東京都でクロムを製造している工場が、工場周辺に6価クロムを含む鉱さいを投棄したことから土壌が汚染され社会問題となり、産業廃棄物の埋め立て地が、安定型・管理型・遮断型(3.③最終処分場参照)に分けられるようになりました。肺がんを誘発すると言われています。
■鉛
古くから、さまざまな用途で世界中で使われてきた有害物質です。江戸~明治時代に、歌舞伎役者がおしろいとして使用していたことがあり、鉛中毒が発生しました。
現代では鉛を含む製品は減ってきていますが、電池やケーブル等は燃やさないで処理をするごみとして分別が必要です。
これらの有害な物質を取り除くために、焼却施設には排ガス処理設備を設置しています。
排ガス処理設備のおもな装置として、ろ過式集じん機(バグフィルタ)、触媒反応塔等があります。
こちらでは、焼却施設の基本的なしくみ等を説明しています。
写真で見る焼却施設の見学と合わせてご覧ください。
1.はじめに
焼却施設は、廃棄物を衛生的に処理するとともに、灰やスラグ(溶かした灰を冷却することで生成されるガラス状の粒子)にすることで容積を減らしたり、リサイクルしたりすることで最終処分場を延命化するための施設です。
焼却によって発生する排ガスには有害な物質も含まれているため、「写真で見る焼却施設の見学」の排ガス処理に記載されているとおり、様々な装置によりできるだけ排ガスをきれいにして大気に排出します。ただし、排ガスをきれいにするためには薬品等も使用するため、どこまできれいにするのかと、薬品の使用による環境負荷やコストの増大とのバランスに配慮する必要があります。有害物質の中でもダイオキシン類については、大気中に含まれるダイオキシン類は主に廃棄物の焼却施設由来であることから、ダイオキシン類対策特別措置法等に基づき、特に厳しく管理されています。ダイオキシン類は不完全燃焼により生成されやすいことと、高温により分解されることが知られているため、燃焼時の発生抑制や排ガスの温度管理が重要となります。なお、一般廃棄物の煙突から冬場等に白い煙のようなものが見えることがありますが、正常な運転時であれば水蒸気が湯気として見えているという現象となります。
また、資源循環に対しても積極的に取り組まれています。廃棄物に混入している有価金属類を取り出すことで、再び資源として使用するマテリアルリサイクルや、廃棄物を焼却する際に発生する熱を利用して発電や温浴施設等へ熱供給するサーマルリサイクルを実施している施設もあります。
2.焼却施設のしくみ
上述した焼却炉の種類について、さらに詳しく記述します。
(1)ストーカ式焼却炉
以前、学校ごとに設置されていた小型の焼却炉と同様の原理を利用したシンプルなしくみとなっています。
ごみピットで撹拌されたごみは焼却炉の乾燥段と呼ばれるエリアに投入されます。そこで、先に燃えているごみの熱によって乾燥され燃えやすい状態となります。その後燃焼段に送られると、焚火に薪をくべるようにごみが燃焼します。あらかた灰になったら後燃焼段と呼ばれるエリアで燃え残りをさらに燃焼させます。
(2)ガス化溶融炉(流動床式)
焼却炉の床に高温に熱した砂の層があり、その砂の層に下から空気が送り込まれることで砂は常にかき混ぜられています。この砂の層を流動床と呼びます。流動床にごみを投入しますが、短時間で処理しやすくするため、事前に破砕機によってごみを細かくしておく必要があります。
ガス化溶融炉では、ごみを燃やした後の灰を溶かしてスラグとするために、二段階に分けてごみを処理します。
第一段階では、ごみをガス化します。ごみが燃えるには酸素が必要ですが、あえて酸素が不足する状態で熱をかけることで、可燃物を一酸化炭素や水素等のガスに分解します。その際、ごみに混入している鉄やアルミ等の不燃物はガス化することなく、砂の下から取り出されリサイクルに回されます。
第二段階では、二次燃焼室と呼ばれる場所でガスは空気と混ぜられることで一気に燃やされます。その際、燃焼温度が高くなるため、ごみが燃えた後の灰は溶岩のようにドロドロに溶かされます。灰を溶かすための温度が足りない場合は燃料を投入して温度を上げることもあります。
溶かされた灰を水で冷やして固めると、ガラスを細かく砕いたようなスラグと呼ばれるものになります。スラグは道路をつくる時の材料等としても利用することができるため、その場合は最終処分場を使用することなくリサイクルされたことになります。
(3)ガス化溶融炉(シャフト式)
筒状の焼却炉に、石炭から作られるコークスをごみと一緒に投入することで、焼却炉だけでごみをスラグにする焼却方式です。
焼却炉では役割の異なる層に分かれており、上の層ではごみの乾燥や予熱が行われた後、ガスに分解されます。下の層では空気を送り込むことで、ごみが燃焼、溶融されます。その際、コークスから発生する熱も利用することで高い温度を出すことができるため燃えにくいごみでも安定的に焼却することができます。また、高い温度により、ごみに混入している金属類も溶かすことができます。溶けた金属類は、溶けた灰よりも重たいので焼却炉の底に溜まります。底から金属類を取り出すことで、灰が混じっていないリサイクルしやすい状態で回収することができます。
(4)ごみ焼却方式の比較表
焼却方式の検討を行う際に、比較検討される処理方式の一覧表はつぎのとおりです。
灰については溶融を行う場合と溶融を行わない場合の比較を、ストーカ式と流動床式で比較検討しています。