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12月4日開催 工場見学会報告

12月4日開催 工場見学会報告

1.はじめに
 東海・北陸支部にて令和元年12月4日(水)に見学会を開催し23名が参加した。今回は一般廃棄物を対象とした、焼却処理及び粗大ごみを破砕・選別処理する施設である松阪市クリーンセンターと、木質バイオマス発電施設である多気バイオパワーの二施設を見学した。これらの施設ではカーボンニュートラルな燃料(ごみ中に含まれるバイオマス分や木質バイオマス)による発電や、ごみを選別し資源化することで循環型社会の形成に寄与している。また、特徴のある先進的な取り組みも展開しているため、それらの取り組み状況も含め見聞を広めるために見学会を開催した。

2.松阪市クリーンセンター
 先に見学した松阪市クリーンセンターは三重県松阪市にあり、朝9時頃に名古屋駅をチャーターバスで出発し1時間半程度で到着した。同施設は200t/日(100t/24h×2炉)のごみ焼却能力と、20t/5hの燃えないごみ・燃えない粗大ごみ、および5t/5hの燃える粗大ごみの破砕選別能力を有しており、2015年3月20日に竣工している。
 現地に到着後、最初に会議室へ案内され、施設紹介映像を視聴した。その後、見学者用通路にて施設内を案内いただいた。見学者用通路には、見学窓や説明用パネルが設置されており、要所にて装置の機能や設備の使い方について説明いただいた。その際、参加者から多くの質問が寄せられたが、実際に運転している担当者の方からの説明もあり、参加者の理解が深まった。
見学者用通路から会議室に戻った後、見学窓からは見ることができなかった機器内部の様子などを、監視用ITVのライブ映像をモニターに映しながら、さらに説明いただいた。一通り理解したうえでの映像を使った説明は、効果的に内容が伝わるものであった。
また説明の中で、ごみとして出してはいけない鉄塊の混入により破砕機が故障したため、修理費用が必要となった事象の紹介があった。故障個所の写真や、鉄塊の実物も展示されており、ごみ分別の重要性がリアルに伝わる内容であった(図1参照)。
 さらに、余剰電力の取り扱いに関して説明いただいた。本施設には、定格出力3,500kWの蒸気タービン発電機が設置されており、場内消費電力を賄ったあとの余剰電力は松阪新電力に売却している。松阪新電力とは、松阪市や民間企業による出資により2017年11月に設立された地域新電力である。東海3県では、初の自治体が出資した地域新電力であり、余剰電力を市庁舎などの公共施設に供給している。
 この新電力事業により得られた事業利益は、松阪市の基金に寄付され、松阪市の地域活性化につながる事業等に活用されている。また、本事業を説明する資料として子供向けに作成されたパンフレットでは、ごみ処理と新しいエネルギー活用への繋がりが非常に分かりやすく説明されており、環境教育に生かせる教材となっていた。地域新電力の設立に関しても参加者から質問が寄せられ、参加者の関心を引く事例となっていた。

3.多気バイオパワー
 次に見学した多気バイオパワーは三重県多気郡にあり、松阪市クリーンセンターからバスで15分程度の距離であった。同施設では木質チップを燃料としたバイオマス直接燃焼方式(流動層エアーバブリング方式)を採用しており、燃料使用量は年間約75,000tとなっている。発電規模は6,750kWで、売電に際しては全量FIT制度を活用している。
設計、建設から運営まですべて中部電力グループの株式会社中部プラントサービスが手掛けている。同社の社会貢献の一環として、二酸化炭素削減による環境負荷低減や森林事業の活性化に寄与する施設となっており、2016年6月27日に竣工している。
 見学に先駆けPR館にて施設フローなどの施設概要について説明いただいた(図2参照)。燃料となる木質チップは、森林育成のために間引きされた間伐材や送配電線工事等で発生する伐採木材などが使用されている。また立地の優位性として、木質チップの供給者および送電線へのつなぎ込み設備が近いこと、沿岸部ではないが多気町が設置したタンクからの工業用水にて大量の水を確保できることが挙げられていた。さらに木質チップに関して、地域ごとの供給割合の変動や、水分率の監視状況などバイオマス発電特有の燃料事情についても説明いただいた。質問も活発に行われ、バイオマス発電の実情について理解が深まった。

 
 
松阪市クリーンセンター            多気バイオパワー

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