Japan Society of Material Cycles and Waste Management アクセス English
No.3 高齢者のストックごみ
 

No.3 高齢者のストックごみ

平成29年5月 第28巻 第3号

目次

巻頭言

地球温暖化対策の動きとバイオマスの利活用……末松広行 165
PDFはこちら

特集 高齢者のストックごみ

高齢者のストックごみ――特集にあたって――……山川 肇・渡辺浩平 168
PDFはこちら

自治体による高齢者のごみ出し支援の取り組み――支援タイプ別の事例と特徴――……小島英子・多島 良 177
PDFはこちら

モノをため込む心理:誰が,何を,なぜため込むのか?……池内裕美 186
PDFはこちら

いわゆる「ごみ屋敷」の実態とその背景に潜むもの……岸恵美子 194
PDFはこちら

高齢世帯における「退蔵物」の実態に関する研究……鈴木慎也・高田光康・沼田大輔・多島 良・立藤綾子・松藤康司 200
PDFはこちら

遺品整理における現状の問題点と今後の対応策……北村 亨 210
PDFはこちら

高齢者等に配慮したごみ収集と3Rの取り組み事例……當摩 卓 215
PDFはこちら

ストックごみの削減に向けた地域の取り組み……堀 孝弘・森下真紀 219
PDFはこちら

廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録

第14回:清掃こぼれ話……大澤利昭 226
PDFはこちら

平成28年度廃棄物資源循環学会セミナー報告

情報技術 (アプリ・IoT等) による資源循環・廃棄物処理事業の新展開……中村恵子・飯野成憲 233
PDFはこちら

水俣条約に対応した国内の水銀廃棄物対策と今後の課題……牛  鑫・高岡昌輝 237
PDFはこちら

会議報告

第4回3R国際学会 (インド・ニューデリー) の開催報告……浅利美鈴 240
PDFはこちら

支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部の活動報告…… 242
PDFはこちら

書評

小宮山 宏,山田興一 著:新ビジョン2050――地球温暖化,少子高齢化は克服できる――……山本和夫 244
小野俊太郎 著:「里山」を宮崎駿で読み直す――森と人は共生できるのか――……河村耕史 245
植田和弘 監修 大島堅一,高橋 洋 編著:地域分散型エネルギーシステム……加茂 徹 245
山崎達雄 著:ごみとトイレの近代誌……田中綾子 246

PDFはこちら

要旨

高齢者のストックごみ――特集にあたって――

山 川   肇*・渡 辺 浩 平**

【要 旨】 本稿では,将来,何かのきっかけで大量かつ一度に排出されるときに発生する問題の観点から,「家庭内に蓄積されている使わなくなったモノであって,潜在的なごみ」を「ストックごみ」と定義した。そして高齢者とかかわりの深いストックごみにより起こりうる課題として,いわゆる「ごみ屋敷」にかかわる問題,遺品整理等に伴う問題,空き家化への影響,3Rされにくいという問題を取りあげ,それぞれの問題の概況を整理した。あわせてストックごみを増やす「ため込み」の要因をごみの出しにくさの面と心理的・精神的要因に分けて概観した。最後に高齢者のもつ3Rに対するポジティブな面をどう活性化していくかという課題について指摘した。


キーワード:高齢化,退蔵,ごみ屋敷,遺品整理,リユース

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.168-176, 2017
原稿受付 2017.5.8

* 京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
** 帝京大学 文学部社会学科

連絡先:〒606-8522 京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科  山川 肇

自治体による高齢者のごみ出し支援の取り組み――支援タイプ別の事例と特徴――

小 島 英 子*・多 島   良*

【要 旨】 高齢者のごみ出しをめぐる問題を整理し,自治体による支援の状況を全国アンケート調査 (有効回答:1,137) の結果から概観した。高齢者のごみ出し支援の導入率は,全世帯の収集を直営で行っている自治体が委託の自治体より高いこと,全世帯で戸別収集をしている自治体でも高齢者支援が必要であることなどを示した。ごみ出し支援のタイプを (A)直接支援型・直営タイプ,(B)同・委託タイプ,(C)コミュニティ支援型,(D)収集日以外でもごみが出せる仕組みに分類し,それぞれ自治体の事例を紹介した。また,各支援タイプの特徴を ①担い手の確保,②ごみの運搬範囲,③コストの内訳,④地理的なカバー範囲,⑤見守り・安否確認,⑥支援する側の副次的効果,⑦支援される側の意識の各観点から整理した。結果,高齢者のごみ出し支援に取り組む自治体は,現状の収集体制や地域の状況を踏まえ,各支援タイプの特徴を理解した上で,制度の設計を行うことが望ましいとの結論を得た。


キーワード:超高齢社会,一般廃棄物処理,ごみ出し,全国アンケート調査,事例調査

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.177-185, 2017
原稿受付 2017.4.20

* (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム研究室  小島 英子

モノをため込む心理:誰が,何を,なぜため込むのか?

池 内 裕 美*

【要 旨】 「ホーディング」(hoarding) とは,「他の人にとってほとんど価値がないと思われるモノを大量にため込み,処分できない行為」と定義され,1990年頃から臨床心理学や精神医学の領域において,特に強迫性障害 (OCD) の観点から多くの研究がなされている。しかしその一方で,ホーディング自体は誰にでも,すなわち非臨床的な人にもみられる,極めて日常的な行為であるという主張もある。
そこで本論では,より重篤な強迫的ホーディングと非臨床群を対象とした日常的なホーディングの両方に焦点を当て,ホーディングをめぐるさまざまな課題について既存研究を基に概説する。より具体的には,精神疾患や幼少期の家庭環境といったホーディングと関連する諸要因,ため込む人の特性,ため込む理由やその対象,さらにはホーディングのもたらす諸問題等について取りあげる。そして,最後にホーディングに陥らないための予防や対策について考察する。


キーワード:ホーディング,強迫性障害 (OCD),臨床群/非臨床群,ディオゲネス症候群,保有効果

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.186-193, 2017
原稿受付 2017.3.28

* 関西大学 社会学部

連絡先:〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35
関西大学 社会学部  池内 裕美

いわゆる「ごみ屋敷」の実態とその背景に潜むもの

岸  恵 美 子*

【要 旨】 いわゆる「ごみ屋敷」とは,ごみ集積所ではない建物で,ごみが積み重ねられた状態で放置された建物,もしくは土地を指す。居住者が自ら出したごみだけでなく,近隣のごみ集積所等からごみを積極的に運び込む「ため込み」の行為がある場合は,特に対応が困難である。いわゆる「ごみ屋敷」の人たちの多くは,セルフ・ネグレクトといわれる。筆者らは,文献検討と研究成果から,セルフ・ネグレクトを「健康,生命および社会生活の維持に必要な,個人衛生,住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること」と定義した。支援者が対応に困難を感じる事例は多いが,実際には,本人が「困りごと」を抱えているのである。「支援を求める力が低下,あるいは欠如している人」ととらえ,ごみを片づけることを目標とするのではなく,信頼関係を構築し,本人の「自己決定」を尊重し,安全で健康な生活へと導くことが支援として重要である。


キーワード:セルフ・ネグレクト,ごみ屋敷,高齢者虐待,背景,要因

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.194-199, 2017
原稿受付 2017.4.3

* 東邦大学 看護学部

連絡先:〒143-0015 東京都大田区大森西4-16-20
東邦大学 看護学部  岸 恵美子

高齢世帯における「退蔵物」の実態に関する研究

鈴 木 慎 也*・高 田 光 康**・沼 田 大 輔***・多 島   良**・立 藤 綾 子****・松 藤 康 司*

【要 旨】 退蔵物の実態をその理由とともに明らかにすることを目的に,数件の訪問調査ならびに1,037件分のインターネットアンケート調査を実施した。その結果,77.6%もの高齢世帯が少なくとも1つの退蔵物を保有していると同時に,多岐にわたる品目の退蔵が示唆された。多くの品目について,20~30%の高齢世帯が少なくとも1点を退蔵していたが,本調査結果では高齢世帯とそれ以外の世帯で大きな違いは確認されなかった。ただし,高齢世帯では“もったいない意識”が強いことと,子供の独立等により住居内スペースに余裕が生まれることを背景に,退蔵する理由はそれ以外の世帯と異なることが示唆された。品目によっては,体力的に厳しいことから,家族の合意が必要等の理由もあり,高齢世帯が多岐にわたる品目を退蔵することが示唆された。


キーワード:高齢世帯,粗大ごみ,退蔵物,アンケート調査

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.200-209, 2017
査読付展望論文 原稿受付 2017.2.27  原稿受理2017.4.24

* 福岡大学 工学部 社会デザイン工学科
** (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター
*** 福島大学 経済経営学類 経済分析専攻
**** 福岡大学 大学院工学研究科 資源循環・環境工学専攻

連絡先:〒814-0180 福岡市城南区七隈8-19-1
福岡大学 工学部 社会デザイン工学科  鈴木 慎也

遺品整理における現状の問題点と今後の対応策

北 村   亨*

【要 旨】 近年,長寿命化や高齢者のみの世帯の増加が進む中で,遺族にとって遺品整理が困難な状況が増えていると考えられ,それとともに遺品整理ビジネスが事業化されてきている。本稿では,遺品整理業者をめぐる状況および遺品廃棄物の運搬・処分と廃棄物処理法における業の許可との関係について述べるとともに,遺品廃棄物の運搬・処分を自治体の一般廃棄物処理計画の中に位置づける必要性を指摘した。その上で,対応の可能性として,①直営による運搬・処分,②一般廃棄物収集運搬許可業者による家庭系一時多量廃棄物の収集・運搬についての特例容認,③遺品廃棄物の収集・運搬に対する限定許可の付与,④一定の条件の下で,遺品整理事業者による遺品の収集運搬を例外的に容認する国のガイドラインの策定,の4つを示した。そして④のガイドライン素案を提案した。最後に高齢者の立場から,生前整理を容易にするための廃棄物行政上の課題について述べた。


キーワード:遺品廃棄物,遺品整理業者,廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (廃棄物処理法),許可業者,ガイドライン案

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.200-214, 2017
原稿受付 2017.5.23

* 北村行政書士・産廃コンサル総合事務所

連絡先:〒164-0001 東京都中野区中野4-6-10 富士コーポラス1-B
北村行政書士・産廃コンサル総合事務所  北村 亨

ストックごみの削減に向けた地域の取り組み

堀  孝 弘*・森 下 真 紀**

【要 旨】 京都市ごみ減量推進会議(ごみ減)では、家庭内に年々蓄積され、将来、何かのきっかけで排出される潜在的なごみを「ストックごみ」と呼んでいる。どのようなものが「ストックごみ」になり、どのような機会に排出されるのか、ごみ減会員を対象に調査し検討を進めたところ、大型の家具や家電に限らず日常的に購入する小型家電や衣料、書籍もストックごみになりうること、また排出される機会も本人死亡時などに限らず、人生のさまざまな場面で排出されることなどがわかった。さらには、「ストックごみ」排出時の適正処分やリユース可能性の追求にとどまらず、蓄積の防止を視野に入れた対策や啓発等が重要であるとの認識ももった。
本稿では、2015(平成27)年以降のごみ減の実施事業と、「できるだけ捨てない整理収納」をテーマに、ごみ減と協働事業に取り組んだNPO法人 暮らしデザイン研究所から、協働事業の内容と高齢期の心身変化等について報告する。


キーワード:ストックごみ,発生抑制,リユース,整理収納,高齢期の心身変化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.3, pp.219-225, 2017
原稿受付 2017.3.31

* 京都市ごみ減量推進会議
** NPO法人 暮らしデザイン研究所

連絡先:〒612-0031 京都市伏見区深草池内町13 京エコロジーセンター活動支援室内
京都市ごみ減量推進会議  堀 孝弘

ページの先頭に戻る