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No.5. リユース・シェアリングと循環経済
 

No.5. リユース・シェアリングと循環経済

令和7年9月 第36巻 第5号

目次

追悼

武田信生先生を悼む……高岡 昌輝 367

巻頭言

廃棄物資源循環分野における人材育成……﨑田 省吾 369

特集 リユース・シェアリングと循環経済

循環経済に向けたリユースの展開 ──類型・促進策・環境負荷──……田崎 智宏 371

シェアリングとリユース・循環経済……天沼  聰・加藤 貴博・寺重 沙織 379

リユースと法律 ──リユース事業者との関係を中心に──……手塚 一郎 387

消費者のリユース選択率の現状と欧州のリユース目標の事例……山川  肇 395

メーカー・小売業・廃棄物関連業のリユース市場への参入とビジネスモデル……佐藤 秀平 404

海外のリユース促進施策とリユースビジネス……喜多川和典 412

自治体によるリユースの取り組み ──神奈川県座間市の事例──……中川 浩次・斎藤  基・北沢  寛・山口 真司 420

EV用リチウムイオン電池のリユース ──現状と今後の展望──……福代 和宏 426

会議報告

第6回 IWWG−ARBシンポジウム(IWWG−ARB 2025)の報告……渡辺 浩平・河井 紘輔 433
第11回 3R国際会議(3RINCs 2025)の報告……熊谷 将吾・平田  修・河井 紘輔 435

支部活動報告

九州支部の2024年度活動および2025年度総会報告…… 438
関西支部「廃棄物法制度に関するセミナー及び支部総会」開催報告…… 440

書評

井出留美 著:私たちは何を捨てているのか ──食品ロス,コロナ,気候変動──……黄  仁姫 441
大川真郎 著:よみがえる美しい島 ──産廃不法投棄とたたかった豊島の五〇年──……阿部 清一 442

要旨

循環経済に向けたリユースの展開── 類型・促進策・環境負荷 ──

田 崎 智 宏*

【要旨】 国際的に展開している循環経済の取り組みと併行して,国内でもリユースの取り組みが少しずつ進展している。リユースは3Rにおいてはリサイクルよりも優先的に取り組むべきとされることから,近年展開してきた各種のリユース活動に着目して,リユース取組の類型,促進策の種類と展望,環境負荷との関係を述べた。


キーワード:循環型社会,サーキュラーエコノミー,3R,シェアリング,環境負荷

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No5, pp.371-378, 2025
原稿受付 2025.7.30

* (国研) 国立環境研究所 資源循環領域

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研) 国立環境研究所 資源循環領域  田崎 智宏

シェアリングとリユース・循環経済

天 沼   聰*, **・加 藤 貴 博*, ***・寺 重 沙 織*

【要旨】 本稿は,シェアリングエコノミーの概念と社会的意義を概観し,循環経済との関係性を検討するものである。デジタル技術の進展により個人間取引が拡大し,遊休資産やスキルの活用を通じて資源の有効利用や環境負荷削減に寄与する点が強調されている。国内のシェアリングエコノミー市場規模は2024年度に約3兆円に達し,CO2削減や廃棄物抑制といった環境的効果も報告されており,循環型社会の実現に資する可能性が注目される。こうした状況を踏まえ,本稿では制度的背景・具体事例・普及上の課題を整理し,シェアリングエコノミーが循環型社会に果たしうる役割を多面的に論じる。


キーワード:シェアリングエコノミー,資源循環

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.379-386, 2025
原稿受付 2025.9.18

* (一社) シェアリングエコノミー協会 資源循環推進研究会,** ㈱ エアークローゼット,*** ㈱ ジモティー

連絡先:〒102-0093 東京都千代田区平河町2-5-3 MIDORI. so NAGATACHO
(一社) シェアリングエコノミー協会 資源循環推進研究会  寺重 沙織

リユースと法律── リユース事業者との関係を中心に ──

手 塚 一 郎*

【要旨】 本稿ではリユースと法律の関係をリユース事業者の視点から整理する。循環型社会形成推進基本法(循環基本法)は,廃棄物のうち有用なものを「循環資源」とし,循環資源を製品としてそのまま使用することなどを「再使用」と定義する。リユース市場は2024年に約3.5兆円へ拡大し,商取引・消費者保護との関係も重要である。環境関連法では,法規制との兼ね合いから「廃棄物該当性」が主要論点であり,資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)や特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)等もリユースを含意するが,遵守コストや不適正処理リスクが課題である。近年は廃棄物該当性の判断基準の客観化が進展している。非環境関連法では,古物営業法や犯罪による利益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)が盗品流通やマネー・ロンダリング等を防止し,不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)や特定商取引に関する法律(特定商取引法),消費者契約法等が取引適正化を担う。個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)や製品安全規制も関係する。リユースは環境負荷低減と経済活動の両立に資するが,包括的な「リユース促進法」も検討の余地がある。


キーワード:リユース,再使用,廃棄物該当性,循環基本法,古物営業法

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.387-394, 2025
原稿受付 2025.9.3

* 清和大学 法学部

連絡先:〒292-0043 千葉県木更津市東太田3-4-5 
清和大学 法学部  手塚 一郎

消費者のリユース選択率の現状と欧州のリユース目標の事例

山 川   肇*

【要旨】 循環経済が進められる中で,リユースの促進が大きな課題となっている。しかしながら,その実態は必ずしも明らかになっていない。本稿では,消費者のリユース選択率に関する情報を収集し,概観した。その結果,入手時では,乗用車,住宅は4〜5割程度だが,それ以外の製品についてはおおむね1割前後であった。一方,排出時は乗用車は約8割だが,家具(テーブル・デスク),携帯電話,日本酒は2割前後,衣類,家電とビールは1割前後であった。さらなるリユース促進が必要だと考えられるが,日本ではリユースの目標はほとんどない。その一方で近年欧州諸国ではリユース目標が設定されつつある。本稿ではベルギー・フランダースの包括的目標,フランスの衣類・リネン・靴,家具,容器包装,オランダの衣類,スペインの家電の製品ごとの目標についてその目標値と指標,用いるデータの概要を報告した。


キーワード:リユース率,2R,拡大生産者責任(EPR),リユース促進政策

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.395-403, 2025
原稿受付 2025.9.19

* 京都府立大学大学院 生命環境科学研究科

連絡先:〒606-8522 京都市左京区下鴨半木町1-5
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 山川 肇

メーカー・小売業・廃棄物関連業のリユース市場への参入とビジネスモデル

佐 藤 秀 平*

【要旨】 本稿では,近年急成長を遂げる日本のリユース市場において,メーカー,小売業,廃棄物関連業がどのように参入し,それぞれがどのようなビジネスモデルを構築しているかを明らかにする。特に拙著『リユースビジネスの教科書』の内容を基礎に,リユース導入タイプや実装時の留意点を整理し,代表的な企業事例を通じて成功要因を分析する。また,ICT・AI技術の進展により,査定業務や真贋判定の自動化が進む中,リユース市場に与える技術的影響と将来展望についても論じる。加えて,自治体や官民連携による地域循環型リユースモデルの取り組みも紹介する。


キーワード:リユース,循環型経済,AI査定,自治体連携,二次流通

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.404-411, 2025
原稿受付 2025.9.8

* ㈱ NOVASTO(2025年10月より ㈱RECOREに社名変更)

連絡先:〒564-0051 大阪府吹田市豊津町9-22-7F
㈱RECORE  佐藤 秀平

海外のリユース促進施策とリユースビジネス

喜多川 和 典*

【要旨】 欧州を中心とした海外におけるリユース促進施策とリユースビジネスの現状を概観する。EUではリユースがサーキュラーエコノミーの中核的施策と位置づけられ,廃棄物管理階層でもリサイクルより上位に置かれている。欧州各国では法的目標値の設定,リユースショップやセンターの設置,税制優遇や公共調達での優先等,多様な推進策が展開されている。消費者の信頼醸成のため,品質保証や情報提供,認証制度の整備も進んでいる。食品容器分野ではデジタル管理やデポジットを活用したリユースサービスが拡大している。今後はデジタルプロダクトパスポート導入による製品履歴の可視化や信頼性向上も期待される。一方で,オンライン取り引きの消費者保護や法的保証の徹底等,課題も残る。リユースは資源循環・環境負荷低減・雇用創出の観点から今後ますます重要となる。


キーワード:サーキュラーエコノミー,リユース,デポジット,容器包装,DPP(Digital Product Passport)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.412-419, 2025
原稿受付 2025.7.11

(公財) 日本生産性本部 コンサルティング部 エコ・マネジメント・センター

連絡先:〒102-8643 東京都千代田区平河町2-13-12
(公財) 日本生産性本部 コンサルティング部 エコ・マネジメント・センター   喜多川 和典

自治体によるリユースの取り組み── 神奈川県座間市の事例 ──

中 川 浩 次*・斎 藤   基*・北 沢   寛*・山 口 真 司*

【要旨】 座間市は,市内にごみ焼却施設が所在しないため,隣接する海老名市,綾瀬市と3市で構成する高座清掃施設組合が運営する高座クリーンセンターで,可燃ごみ,不燃ごみおよび粗大ごみの一部を処理している。2019(令和元)年度に更新した同センターの焼却炉の処理量が比較的少ないことから,3市では焼却量を削減するために,リユース・リサイクルの取り組みを進めている。2025(令和7)年現在,可燃ごみの量は減少傾向を示しているものの,依然として焼却炉のひっ迫が続いていることから,さらなる取り組みの推進や新たな施策の実行が必要となっている。座間市が実施する種々の取り組みが横展開することにより,他自治体におけるリユース推進の一助となれば幸いである。


キーワード:リユース,座間市,焼却量削減,循環経済,資源物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.420-425, 2025
原稿受付 2025.7.29

* 座間市 くらし安全部 リユース推進課

連絡先:〒252-8566 神奈川県座間市緑ケ丘一丁目1番1号
座間市 くらし安全部 リユース推進課  山口 真司

EV用リチウムイオン電池のリユース── 現状と今後の展望 ──

福 代 和 宏*

【要旨】 近年,電気自動車(EV)の普及拡大に伴い,使用済みEV用リチウムイオン電池(LiB)の発生量が急増している。これに対応するため,EV用LiBのリユース(再利用)に注目が集まっている。EV用LiBは,車載用途で容量低下がみられても,SOH(State of Health)が70〜80%程度であれば,定置型蓄電池等,他用途へのリユースが可能である。リユースには,十分な量の中古LiBの確保,適切な診断・選別技術,コストの低減が不可欠である。本稿では,EV用LiBのリユースプロセスや流通状況,実証事例について概説し,今後の課題や市場展望について論じる。リユース推進は資源循環の促進および廃棄物削減に貢献し,持続可能な社会の実現に寄与することが期待される。


キーワード:電気自動車(EV),リチウムイオン電池(LiB),リユース,SOH(State of Health)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.36, No.5, pp.426-432, 2025
原稿受付 2025.8.13

* 山口大学大学院 技術経営研究科

連絡先:〒755-8611 山口県宇部市常盤台2-16-1
山口大学大学院 技術経営研究科   福代 和宏

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