No.3 衣類とごみ ―おしゃれと環境―
平成22年5月 第21巻 第3号
目次
巻頭言
“ごみ”は小さな物語?……小澤紀美子 129
特集 : 衣類とごみ ―おしゃれと環境―
“衣”との付き合い方――これでいいの? 衣類のリサイクル――……岩地 加世 132
衣類の消費と廃棄・循環の実態と課題……木村 照夫 140
衣類におけるライフサイクルアセスメントの現状と課題……高田亜佐子・田原 聖隆 148
新段階の衣料品リサイクル……所 昌平 157
米国における環境配慮型ファッションの動向……田中めぐみ 169
「ゆるーい分別」と「輸出」が長ーく続けられるキーワード――愛知県津島市の故繊維リサイクル事業――……浅井 直樹 177
衣類などのリユースショップを資源に太陽光発電所作り……新藤 絹代 179
韓国の繊維系廃棄物のリサイクルの事情……金 相烈 183
創り手から見たエコとおしゃれの共生――UNSETSU INTERNATIONALデザイナー雲雪氏に訊く――……南 明紀子 186
活動レポート
カタログハウスの「エコひいき」活動……松尾 隆久 191
シンポジウム報告
平成21年度廃棄物資源循環学会主催シンポジウム報告――低炭素社会をめざす廃棄物処理のあり方――……企画運営委員会 195
書評
近藤加代子,谷 正和 編:循環から地域を見る――自然循環型地域社会のデザインに向けて――……浦邊 真郎 198
田中めぐみ 著:グリーンファッション入門――サステイナブル社会を形成していくために――……南 明紀子 199
要旨
“衣”との付き合い方―― これでいいの? 衣類のリサイクル――
岩地加世*
【要旨】今日,大量かつ廉価な衣料品が供給されている。不要となって家庭から排出される衣料品は年間1,644 千tonと推定され,リサイクル率は22%,残りの78%は処理処分されている。家庭内には死蔵衣服も多い。本稿では,衣料品の国内循環フローの特徴について廃棄物管理の視点から分析を行い,衣料品リサイクルに関する動向およびリサイクル最前線での情報を踏まえたうえで,家庭の衣料品への3R適用の課題について,また,“衣”についての取り組むべき方策について,考察を行った。
キーワード:衣類リサイクル,死蔵衣服,中古衣料,3R
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 132-139, 2010
原稿受付2010. 4. 26
* 環境カウンセラー 布遊び工房「桜梅桃李」主宰
連絡先:〒730-0047 広島市中区平野町8-8-906
衣類の消費と廃棄・循環の実態と課題
木村照夫*
【要旨】循環型社会形成の重要性からリサイクルを義務づける数多くの法律が施行されている中で,繊維製品に関してはいまだ法律が施行されていない。現在,回収された衣類廃棄物の大半は中古衣料,反毛およびウエスとしてリサイクルされているが,衣類に関するリサイクル率は20% 程度に留まっている。リサイクル率が低い大きな理由は繊維製品の多様性によるリサイクルの難しさにある。本稿では繊維製品の中でもわれわれに一番身近な衣類を対象に,リサイクルの現状と課題を整理している。さらに,筆者らの衣類廃棄物を用いた木材代替材料ならびに天然繊維複合材料としてのリサイクルの試みを紹介している。また,環境負荷の小さなリサイクルを推進する上でLCA解析が重要であること,ならびにリサイクル推進には技術開発のみでなく国民の意識改革が必要であることを述べ,教育用に作成された漫画本の反響についても言及している。
キーワード:衣類廃棄物,循環型社会,リサイクル,環境負荷,環境教育
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 140-147, 2010
原稿受付2010. 4. 1
* 京都工芸繊維大学大学院先端ファイブロ科学部門
連絡先:〒606-8585 京都市左京区松ヶ崎御所海道町一番地
京都工芸繊維大学大学院先端ファイブロ科学部門 木村照夫
衣類におけるライフサイクルアセスメントの現状と課題
高田亜佐子*・田原聖隆*
【要旨】私たちの生活において衣類は必要不可欠なものである。衣類は嗜好性の強い製品であるため,デザインや機能に比べ,その環境側面に注意を払う生産者,消費者は限られていた。また,日本では毎年約200万tonの使用済み繊維品が排出されているものの,そのリサイクル率は約11%にとどまっている。その一方で,政府は京都議定書の温室効果ガス削減目標を達成するためのひとつの方策として,ライフサイクルを通して排出される環境負荷を可視化する取り組みを始めた。
本稿では環境負荷を定量的に評価する指標であるライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)に着目し,衣類に関する既往文献をレビューし,その現状および課題を抽出した。今後,衣類のLCAが普及し活用される上で,その実施を助ける高い品質のバックグラウンドデータの整備が求められ,そのために既存のデータの精査およびカーボンフットプリント等による新たなデータの収集,分析が必要になる。
最後に,LCAで評価した環境負荷を購入時の判断に利用する方策として環境効率の導入を検討した。
キーワード:ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment:LCA),繊維,衣類,カーボンフットプリント
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 148-156, 2010
原稿受付2010. 4. 28
* (独)産業技術総合研究所
連絡先:〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1
(独)産業技術総合研究所 田原聖隆
新段階の衣料品リサイクル
所 昌平*
【要旨】日本の衣料品の供給量は約144万tonである。これに対して廃棄される量は約136万tonと推定されている。廃棄量のうち,リユース,リサイクルされているのは,30万ton程度に過ぎない。残るおよそ106万tonは一般の廃棄物(事業所の場合は産業廃棄物)として,焼却ないし埋め立て処理されている。衣料品のリユース・リサイクル率は約13%と,西欧などの先進国に比べて低いのが現状である。
地球温暖化が深刻化する中で,こうした「もったいない」状態から逸早く離脱し,省資源・省エネルギーを通して低炭素化・循環型社会形成は焦眉の急となっている。日本の繊維産業はその先駆者として,リサイクルや省資源にも早くから取り組んできた。衣料品を中心としたリサイクルなど3Rの取り組み状況をまとめた。
キーワード:易リサイクル,回収方法,再生用途,コスト負担,消費者への啓発
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 157-168, 2010
原稿受付2010. 4. 10
* (株)日本繊維新聞社
連絡先:〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-6-5 丸彦ビル
(株)日本繊維新聞社 所 昌平
米国における環境配慮型ファッションの動向
田中めぐみ*
【要旨】環境配慮型ファッションにおいて先行する米国の動向と欧米事例,環境配慮型ファッションの概要をまとめた。エコファッションの起源ともされる1960-70年代のヒッピーファッション,90年代の米アパレル・小売企業の環境・社会問題への目覚め,そして2000年代半ばに入りこれまでのエコファッションのイメージを覆すセンスの良い環境配慮型ファッションが登場し,さらに環境のみならず社会問題までを含んだサステナブルファッションが価格の高低問わずファッション業界全体に浸透するまで,時系列で米国サステナブルファッションの歴史と動向を追った。また,サステナブルファッションが抱える課題と日本のファッション業界が今後進むべき道を簡単に記した。
キーワード:米国,エコ,サステナブル,グリーン,ファッション
廃棄物資源循環学会誌,Vol. 21, No. 3, pp. 169-176, 2010
原稿受付2010. 3. 24
* Fashion Business Consulting, LLC
連絡先:1133 Broadway Suite 1605 New York NY 10010