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No.2 固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel) の国際標準化の動向とその意義
 

No.2 固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel) の国際標準化の動向とその意義

令和5年3月 第34巻 第2号

目次

巻頭言

エネルギー危機の中でのカーボンニュートラル……山地 憲治 81
PDF, 291KB

特集 固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel) の国際標準化の動向とその意義

固体回収物燃料の標準化活動……棚瀬省二朗・吉田 諭史・渡辺 泰介・吉川 克彦 83
PDF, 590KB

固体回収物材料 (Solid Recovered Material) 規格開発の経緯
――エネルギー回収から再資源化価値評価への拡張――
……石垣 智基 91
PDF, 589KB

欧州におけるSRF/RDFの製造および利用状況と循環経済パッケージによる影響……河井 紘輔 97
PDF, 771KB(公開中)

固形燃料RPFの概要と今日的価値……吉武 和広・田墨 啓治 107
PDF, 891KB

セメント製造における固体回収物燃料 (SRF) 利用の現状と課題……和泉 一志・杉澤  建・石田 泰之 116
PDF, 972KB

SRFの安全な取り扱いと保管……渡辺 泰介 125
PDF, 268KB

トンネルコンポスト方式による一般廃棄物の固体回収物燃料化……鎌倉 秀行 129
PDF, 697KB

廃棄物資源循環学会若手の会セミナー報告

廃棄物資源循環学会ならびに環境技術学会「若手の会」合同セミナー
デジタル技術の環境分野への適用事例と課題……矢野 順也 135
PDF, 393KB

支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部活動報告…… 137
PDF, 130KB
支部だより:「令和4年度 廃棄物資源循環学会関西支部技術セミナー・施設見学会」報告…… 138
PDF, 497KB

書評

デイヴ・グールソン 著,藤原多伽夫 訳:サイレント・アース ――昆虫たちの「沈黙の春」――……吉田  綾 140
真鍋淑郎,アンソニー・J・ブロッコリー 著,増田耕一,阿部彩子 監訳,宮本寿代 訳:地球温暖化はなぜ起こるのか ――気候モデルで探る 過去・現在・未来の地球――……廣田 渚郎 141
五味泰平 著:珍道中!ごみ紀行……釜田 陽介 142
PDF, 237KB

要旨

固体回収物燃料の標準化活動

棚 瀬 省二朗*・吉 田 諭 史*・渡 辺 泰 介**・吉 川 克 彦***

【要旨】 廃棄物由来の固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel: SRF) は,廃棄物最終処分の削減のみならず,安価かつ安定的に大きな発熱量が得られ,石炭等の化石燃料を代替できるため,循環経済や脱炭素に資する有用な燃料資源として,国境を越えて使用されている。
 一方,SRFは,さまざまな性状を有するものがあり,燃料としての品質や製品安全性を規定する国際ルールの作成が急務となり,2015年にISOにおいて,SRFの国際標準化の専門委員会 (TC300) が設置された。原料廃棄物の受け入れから顧客拠点への製品搬入まで,SRFの製造・保管をカバーすべく,規格の開発が進められ,現在までに15の規格が交付されている。
 わが国は,古紙と廃プラスチックの組成制御で発熱量を制御できる,高品位なRPF (Refuse Paper and Plastic densified Fuel) のJIS規格を保有しており,RPFを対象に含めた規格の成立とJIS規格の考え方の各国への共有等,TC300において重要な役割を果たしてきた。
 本論文では,これらSRFの国際標準化の活動概要について報告する。


キーワード:固体回収物燃料,固体燃料,廃プラスチック,国際標準,循環経済

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.83-90, 2023
原稿受付 2023.2.1

* 環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室
** (株) エックス都市研究所 海外環境事業本部
*** (株) エックス都市研究所 環境エンジニアリング事業本部

連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館23階
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 循環型社会推進室  棚瀬 省二朗

固体回収物材料 (Solid Recovered Material) 規格開発の経緯
――エネルギー回収から再資源化価値評価への拡張――

石 垣 智 基*

【要旨】本稿では固形回収物材料 (SRM) に関する国際標準化の経緯と動向について解説した。SRM規格はISOの技術委員会 (TC) 300において開発がすすめられてきたが,当初のエネルギー回収用途に限定した規格から,原料価値および資源回収効果を含めた規格へと対象範囲が拡張された。SRMはより幅広い用途で利用されることが想定されており,国際規格の発行による市場の拡大が,廃棄物管理,気候変動,ならびにエネルギー利用の持続可能性を高めることが期待される。


キーワード:固形回収物材料,SRM,国際標準,ISO,資源価値

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.91-96, 2023
原稿受付 2023.2.9

* (国研)国立環境研究所 資源循環領域

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2

欧州におけるSRF/RDFの製造および利用状況と循環経済パッケージによる影響

河 井 紘 輔*

【要旨】本稿では,欧州におけるSRF/RDFの製造および利用状況と,EUの循環経済パッケージが欧州諸国の廃棄物管理政策に与える影響について整理した。欧州では埋立指令に従い,残渣ごみの前処理としてMechanical biological treatmentの導入が進み,SRF/RDFが製造されてきた。規格に準拠したSRFもある一方で,規格に準拠していないRDFが多く流通し,SRF/RDFは焼却施設で処理されるだけでなく,セメント産業等で代替燃料として利用されている。近年,イギリスからオランダ等北欧諸国へ多くのSRF/RDFが輸出されてきたのは,イギリスにおける埋立税と,北欧諸国における廃棄物焼却施設の余力が主な要因である。循環経済パッケージに基づき,EU加盟国では,有機ごみの分別収集を強化して残渣ごみからの徹底的な資源回収が求められている。


キーワード:埋め立て,越境輸送,焼却,MBT,残渣ごみ

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.97-106, 2023
原稿受付 2023.2.24

* (国研) 国立環境研究所 資源循環領域

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2

固形燃料RPFの概要と今日的価値

吉 武 和 広*, ***・田 墨 啓 治**, ***

【要旨】 RPFが開発され1991年に事業が立ちあがってから30年が経過した。廃棄物処理や地球温暖化の課題は既にRPF開発当初においても存在していたが,近年の気候変動による災害の激甚化,プラスチックの負の側面の顕在化により,気候変動対策や循環型社会移行への動きが近年加速している。RPFもこれら変化とさまざまな政策,さらには国際紛争起因の社会情勢の変化で,その価値や扱われ方が変化してきた。今回,改めてRPFの燃料性状や品質,特徴を紹介し,RPFとその利用スキームであるエネルギーリカバリー,および温暖化ガス排出の実力値を事業者の視点から説明を行い現在のRPFの価値について言及する。また循環型社会に向けてケミカルリサイクルへの期待が高まっているが,ケミカルリサイクル原料面でRPFに寄せられている期待についても最後に触れる。


キーワード:RPF,固形燃料,エネルギーリカバリー,ケミカルリサイクル,SRF

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.107-115, 2023
原稿受付 2023.2.15

* (株) 関商店 RPF企画開発部
** (株) タズミ
*** (一社) 日本RPF工業会

連絡先:〒306-0213 茨城県古河市北利根14-1
(株) 関商店 RPF企画開発部  吉武 和広

セメント製造における固体回収物燃料 (SRF) 利用の現状と課題

和 泉 一 志*・杉 澤   建**・石 田 泰 之***

【要旨】セメント製造プロセスではさまざまな産業廃棄物を原燃料として利用しており,熱エネルギーはクリンカの焼成エネルギーの一部に,灰分は原料の一部として活用している。セメント産業ではSRFのうち主に廃プラスチックの破砕フラフ,RPF,廃タイヤチップ,下水汚泥炭化物,木くずチップなどを大量に利用しているが,SRFのもつ熱エネルギーポテンシャルは高く,セメント産業におけるSRFの利用による石炭利用の削減は,CO2の排出量低減に寄与する。一方,SRFに含まれる塩素や少量成分の影響は無視できないため,適切な管理の下,持ちこまれる塩素分や少量成分が製造プロセスやセメントの品質に影響を与えないような工程としている。また,セメント製造におけるSRF (SRFに相当する廃プラスチックの破砕フラフ) を利用することによるCO2の排出量について,LCA手法に基づく算定モデルによりCO2排出削減効果を評価した結果,SRFの循環利用によってセメント製造プロセス全体のCO2排出量原単位の約1割にあたる削減効果が確認された。


キーワード:サーマルリサイクル,資源循環,CO2排出量,LCA

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.116-124, 2023
原稿受付 2023.1.27

* 太平洋セメント (株) 環境事業部 営業企画グループ
** 太平洋セメント (株) 中央研究所 資源・環境研究部 環境技術チーム    
*** 太平洋セメント (株) 中央研究所 資源・環境研究部

連絡先:〒112-8503 東京都文京区小石川1-1-1
太平洋セメント (株) 環境事業部 営業企画グループ  和泉 一志

SRFの安全な取り扱いと保管

渡 辺 泰 介*

【要旨】 SRF (固体回収物燃料ともいう) は,発熱,発火の可能性があり,原料保管,製造,製品の貯蔵と保管の工程で,安全管理が重要となる。日本での事故例,性状管理,発熱発火の危険性を示しつつ,日本での安全管理対策を示す。加えて,SRFの安全な取り扱いと保管に関するISO規格である,ISO 21912 SRF ― Safe handling and storage of solid recovered fuelの概要と日本の貢献を示す。


キーワード:SRF,ISO 21912,安全な取り扱い

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.125-128, 2023
原稿受付 2023.1.31

* (株)エックス都市研究所 海外環境事業本部

連絡先:〒171-0033 東京都豊島区高田2-27-22 目白中野ビル6階

トンネルコンポスト方式による一般廃棄物の固体回収物燃料化

鎌 倉 秀 行*

【要旨】 香川県三豊市にあるバイオマス資源化センターみとよでは,日本初となるトンネルコンポスト方式によるごみ処理を行なっており,一般家庭等から排出される燃やせるごみを微生物を用いて発酵乾燥し,選別することで固体回収物燃料原料にリサイクルしている。この原料を固形回収物燃料製造工場で製品化し石炭代替燃料として最終的に販売している。
 本報ではトンネルコンポスト方式の経緯や処理フローやその特徴を紹介し,一般廃棄物を固体回収物燃料化することによる脱炭素効果や今後の展望についてまとめる。


キーワード:トンネルコンポスト方式,一般廃棄物処理,固体回収物燃料,燃やせるごみの再資源化,脱炭素化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.2, pp.129-134, 2023
原稿受付 2023.1.31

* (株) エコマスター

連絡先:〒768-0104 香川県三豊市山本町神田30番地1

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