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No.6 カーボンニュートラル社会を支えるセメント・コンクリートの動向
 

No.6 カーボンニュートラル社会を支えるセメント・コンクリートの動向

令和5年11月 第34巻 第6号

目次

巻頭言

廃棄物の再定義?……梅田  靖 379
PDF, 266KB

特集 カーボンニュートラル社会を支えるセメント・コンクリートの動向

世界のセメント・コンクリート業界の脱炭素動向……野口 貴文 381
PDF, 1.4MB

革新的カーボンネガティブコンクリートの研究開発……坂井 吾郎・五十嵐数馬・小島 正朗 391
PDF, 1.0MB

コンクリート系廃棄物の資源循環とCarbon Poolコンクリートの開発……坂本  守 401
PDF, 642KB

セメント・コンクリート分野におけるCO₂固定量評価技術……山本 武志 407
PDF, 1.2MB

粒状化による残コンクリートの資源化……小山 明男 413
PDF, 1.5MB

残コン・戻りコンを活用したコンクリートブロックの高度利用に向けて……北垣 亮馬 422
PDF, 648KB

南アフリカ共和国における炭酸塩鉱物化技術の研究開発……飯塚  淳 428
PDF, 380KB

令和5年度廃棄物資源循環学会セミナー報告

令和5年度 第2回セミナー
廃棄物・土壌分野におけるPFAS問題の動向と最新の知見……中山 育美 432
PDF, 654KB

廃棄物資源循環学会研究部会報告

環境学習施設研究部会「秋の視察研修会2023」報告……鈴木 榮一 435
PDF, 757KB

支部特集/支部だより

支部だより:2022 (令和4) 年度の関東支部活動報告…… 437
PDF, 534KB

書評

宮永健太郎 著:持続可能な発展の話 ――「みんなのもの」の経済学――……原田 浩希 439
金山昇司 著:ゼロ・エミッション ――産廃会社が挑む地方創生――……東條 安匡 440
PDF, 176KB

要旨

世界のセメント・コンクリート業界の脱炭素動向

野 口 貴 文*

【要旨】 2050年カーボンニュートラルに向けて,セメント・コンクリートの炭酸塩化による大気中・排ガス中のCO₂ (二酸化炭素) の吸収固定効果に対する期待が高まっており,国内外でさまざまな研究開発・実用化が進められている。本解説では,建設業界およびセメント・コンクリート業界におけるCO₂排出の推移,カーボンニュートラル化に向けた方策の概要,コンクリートのライフサイクルの各段階における低炭素化・脱炭素化に向けた各種技術の概要,および人造炭酸カルシウム製混和材・骨材の開発,CO₂と反応して硬化する結合材を用いたコンクリートの開発,炭酸カルシウムコンクリートの開発等,セメント・コンクリートにかかわるCCUS (Carbon Capture, Utilization and Storage) の最先端技術の開発動向について紹介するとともに,コンクリートがカーボンニュートラル建設材料となるための要件を示す。


キーワード:カーボンニュートラル,コンクリート,CCUS (Carbon Capture, Utilization and Storage),炭酸カルシウム

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.381-390, 2023
原稿受付 2023.11.6

* 東京大学大学院 工学系研究科

連絡先:〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院 工学系研究科 野口 貴文

革新的カーボンネガティブコンクリートの研究開発

坂 井 吾 郎*・五十嵐 数 馬**・小 島 正 朗***

【要 旨】 鹿島建設(株),デンカ(株),(株)竹中工務店を幹事会社とし,44企業,11研究機関の全55団体からなるコンソーシアムが提案した,『革新的カーボンネガティブ (CN) コンクリートの材料・施工技術及び品質評価技術の開発』が, (国研) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) のグリーンイノベーション基金事業に採択された。コンクリート産業に係るすべての分野の会社が連携し,これまで各社が研究開発,社会実装してきた二酸化炭素 (CO₂) の削減・固定に資する環境配慮型コンクリートに関するさまざまな技術を融合させて,日本のコンクリートを変える意気込みで事業を推進している。本稿では,2030年までの長期にわたって開発を行う同事業において組成したコンソーシアムの体制,ならびに同開発の概要とこれまでの成果,そして今後の展望について述べる。


キーワード:グリーンイノベーション基金事業,CO₂,環境配慮型コンクリート,カーボンネガティブコンクリート,CUCO

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.391-400, 2023
原稿受付 2023.10.10

* 鹿島建設(株) 技術研究所
** デンカ(株) エラストマー・インフラソリューション部門
*** (株)竹中工務店 技術研究所

連絡先:〒182-0036 東京都調布市飛田給2-19-1
鹿島建設(株) 技術研究所  坂井 吾郎

コンクリート系廃棄物の資源循環とCarbon Poolコンクリートの開発

坂 本   守*

【要 旨】 (国研) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) のグリーンイノベーション基金事業にて開発に取り組んでいる「Carbon Poolコンクリート」は,コンクリート系廃棄物を資源循環して使用する新たなカーボンニュートラルコンクリートである。コンクリート塊は年間3,690万t,残コンクリート(残コン)・戻りコンクリート(戻りコン) は225万m3発生しており,セメント水和物を多量に含むことから二酸化炭素 (CO₂) の固定には有利な材料である。それぞれの材料には水分とともにCO₂ガス供給によって,ほぼ目標どおりの固定量を達成する見込みである。今後,さらに効率的な固定方法やコンクリートへの固定方法を検討していく予定であるが,単純に使用材料の固定量だけでなく,その処理方式,使用するCO₂の状態,処理プラントの適地選定等をLCAの観点から十分に評価して進める必要がある。


キーワード:カーボンニュートラルコンクリート,CO₂固定,廃棄物,資源循環,LCA

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.401-406, 2023
原稿受付 2023.9.29

* (株)安藤・間 技術研究所 脱炭素技術開発部

連絡先:〒305-0822 茨城県つくば市苅間515-1
(株)安藤・間 技術研究所 脱炭素技術開発部  坂本 守  

セメント・コンクリート分野におけるCO₂固定量評価技術

山 本 武 志*

【要 旨】 セメント・コンクリート分野においても各種の二酸化炭素 (CO₂) 固定技術が開発途上にある。それに合わせてCO₂固定量評価技術も多くの機関で検討され,JIS化の段階にある。本稿では,示差熱―熱重量同時分析,湿式分析,全有機炭素計による分析,そしてクーロメーター法の概要とそれらの適用事例の提示,そして課題を示した。現状何れのCO₂固定量評価技術も一定の信頼性を担保した状態で定量することができるが,今後さらに多くの種類のCO₂固定材料およびコンクリートが開発されると考えられるため,試験方法の見直し等を含めたさらなる研究開発が必要である。


キーワード:CO₂,コンクリート,固定,評価,分析

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.407-412, 2023
原稿受付 2023.10.11

* (一財) 電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 構造・耐震工学研究部門

連絡先:〒270-1194 千葉県我孫子市我孫子1646
(一財) 電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 構造・耐震工学研究部門  山本 武志

粒状化による残コンクリートの資源化

小 山 明 男*

【要 旨】 年間100~200万m3が発生している残コンクリートの再資源化方法の一つに,粒状化再生骨材をコンクリートに用いる方法がある。RRCS ( (一社) 生コン・残コンソリューション技術研究会) では,全国の生コンクリート工場42工場において,粒状化再生骨材の普及を目指し,粒状化再生骨材に関する全国共通試験を実施した。その結果,粒状化再生骨材の物理的性質は,再生骨材L相当の規格値をほぼ満足することが確認できた。また,普通骨材を粒状化再生骨材に置換して製造したコンクリートは,粒状化再生細骨材の置換率が30%まで,粒状再生粗骨材の置換率が100%までであれば,圧縮強度の低下は小さいことがわかった。さらに,粒状化再生骨材の普及にあたっては,技術的な面だけでなく,粒状化するための施設や粒状化再生骨材コンクリートの製造施設およびその利用先等が課題であり,RRCSで提案している残コンクリートステーション構想について紹介する。


キーワード:コンクリート,リサイクル,残コンクリート,再生骨材

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.413-421, 2023
原稿受付 2023.10.2

* 明治大学 理工学部

連絡先:〒214-8571 神奈川県川崎市多摩区東三田1-1-1
明治大学 理工学部  小山 明男

残コン・戻りコンを活用したコンクリートブロックの高度利用に向けて

北 垣 亮 馬*

【要 旨】 建設工事現場で発生する「残コン・戻りコン」とは,発注された生コンクリート量が,必要量よりも多かったため,施工後に残余した生コンクリートのことを指す。生コンクリートの発注量が,必要量に対して不足すると,施工スケジュールに多大な影響を及ぼすため,その量に大小はあっても,完全にゼロにすることは難しいとされている。このため,コンクリート流通におけるサスティナビリティ,特に廃棄物の再資源化の視点から,解決するべき課題となっている。その再利用方法は,各社でさまざまな角度から検討されているが,そのうち一般的な方法の一つと考えられるのが,残コン・戻りコンを利用して,コンクリートブロックを作ることである。本稿では,これまでに発表してきた基礎調査を踏まえ,今後,残コン・戻りコンを高度利用するために必要な要因を解説する。


キーワード:残コン・戻りコン,コンクリートブロック,再資源化,標準化調査

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.422-427, 2023
原稿受付 2023.10.12

* 北海道大学大学院 工学研究院

連絡先:〒060-8628 北海道札幌市北区北13条西8丁目
北海道大学大学院 工学研究院 北垣 亮馬

南アフリカ共和国における炭酸塩鉱物化技術の研究開発

飯 塚   淳*

【要 旨】 南アフリカ共和国において地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) にて実施しているCarbon Removal and Environmental Remediation (CRER) プロジェクトの内容について紹介する。CRERプロジェクトは2021年度から5年間の実施予定で,南アフリカ共和国のセメント産業を主要なターゲットとし,二酸化炭素 (CO₂) の炭酸塩鉱物化技術,副産物を利用した環境浄化技術に関する技術開発を行なっている。SATREPSプロジェクトでは,相手国や若手の人材育成や技術の社会実装についても大きな目的の一つとなっている。本稿では,現地での活動の様子やプロジェクトから得られた学術的な成果について紹介する。


キーワード:CO₂,炭酸塩鉱物化,南アフリカ共和国,セメント産業,環境浄化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.34, No.6, pp.428-431, 2023
原稿受付 2023.10.4  

* 東北大学大学院 環境科学研究科

連絡先:〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6
東北大学大学院 環境科学研究科 飯塚 淳

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