Japan Society of Material Cycles and Waste Management アクセス English
No.2 高含水率有機系廃棄物処理の最新技術と挑戦
 

No.2 高含水率有機系廃棄物処理の最新技術と挑戦

令和6年3月 第35巻 第2号

目次

巻頭言

地方創生に向けた持続可能社会のデザイナーのアプローチ……中石 一弘 87

特集 高含水率有機系廃棄物処理の最新技術と挑戦

バイオマスの活用をめぐる動向と取組の方向性について……渡邉 泰夫 89

これまでのバイオマス系廃棄物利用と将来的な普及のための取り組み……高見澤一裕・中崎 清彦 99

メタン発酵技術に関する近年の動向……金子 光瑠・大門 裕之 107

有機系廃棄物肥料化の実例について……伊藤あゆ美・鈴木 邦彦 114

有機性廃棄物の発生と利用そして評価方法――窒素を中心として――……三島慎一郎 121

高含水率有機系廃棄物からのりん回収技術の現状と展望……土手  裕 129

高含水率有機廃棄物の固体燃料化――汚泥の乾燥および炭化の技術動向――……小林 信介 135

廃棄物資源循環学会若手の会セミナー報告

廃棄物資源循環学会ならびに環境技術学会「若手の会」合同セミナー
分散型汚水処理システムの脱炭素化
――CH₄/N₂O 排出抑制,CO₂ネガティブエミッションに着目して――……矢野 順也 143

支部特集/支部だより

支部だより:関西支部「廃棄物法制度に関するセミナー及び支部総会」開催報告…… 145

書評

笹尾俊明 著:循環経済入門――廃棄物から考える新しい経済……淺木 洋祐 147
原田浩二 編著:これでわかるPFAS汚染――暮らしに侵入した「永遠の化学物質」――……渡辺 信久 148

要旨

バイオマスの活用をめぐる動向と取組の方向性について

渡 邉 泰 夫*

【要旨】 2009年6月にはバイオマス活用推進基本法が制定 (同年9月施行) され,同法に基づき,バイオマス活用推進基本計画が閣議決定され (2010年12月),2022年9月には第3次の基本計画が閣議決定されている。
 第3次バイオマス活用推進基本計画では,「バイオマスの活用の推進に関する施策についての基本的な方針」,「国が達成すべき目標」等がとりまとめられている。経済性が確保された一貫したシステムを構築し,地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す「バイオマス産業都市」の取組が進められているところであり,近年注目を集めている下水汚泥資源については,その肥料利用の拡大に向けて,農林水産省・国土交通省・農業分野・下水道分野の関係者が連携して取り組んでいる。
 バイオマスの活用の推進に向けて,バイオマス活用推進基本計画等を踏まえて,関係者が連携し,引き続き着実に取り組む。


キーワード:バイオマス,バイオマス活用推進基本法,バイオマス活用推進基本計画,バイオマス産業都市,下水汚泥資源

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.89-98, 2024
原稿受付 2024.1.25

* 農林水産省 大臣官房 環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室 (2024年4月1日より (独)水資源機構 経営企画部)

連絡先:〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
農林水産省 大臣官房 環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室  渡邉 泰夫

これまでのバイオマス系廃棄物利用と将来的な普及のための取り組み

高見澤 一 裕*,**・中 崎 清 彦***, ****

【要 旨】 (一社) 廃棄物資源循環学会バイオマス系廃棄物研究部会が過去20年にわたり実施した小集会,年次大会におけるバイオマス関連の発表,廃棄物資源循環学会英文誌 (Journal of Material Cycles and Waste Management, JMCWM) に掲載されたバイオマス関連の論文を調査し,バイオマス系廃棄物利用の現状と課題について検討した。現在までのところ,社会に実装されたバイオマス利用技術の数は限られており,バイオマス利用技術の普及を促進するための課題として,均質で十分な量の原料供給,効率的で経済的な変換技術の開発,そして経済性の確保の諸問題を解決する必要があることを明らかにした。また,これらの課題に対処し,バイオマス系廃棄物利用を普及させるための取り組みとして,分子生物学を用いたコンポスト化やバイオガス化のような複雑な微生物システムの解析,バイオマス系廃棄物から直接電気エネルギーを取り出す微生物燃料電池,藻類を用いたバイオジェット燃料の製造等,新しい変換技術に関する研究と,これらの技術だけでなく,経済的実現可能性や環境への影響評価等を含む包括的な研究が実施されてきている調査結果をまとめた。


キーワード:バイオマス系廃棄物,変換技術,社会実装,経済性評価,環境影響評価

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.99-106, 2024
原稿受付 2024.1.19

* 岐阜大学 名誉教授,** 愛知文教女子短期大学,*** 東京工業大学 名誉教授,**** 創価大学 プランクトン工学研究所

連絡先:〒192-8577 東京都八王子市丹木町1-236 
創価大学 プランクトン工学研究所  中崎 清彦

メタン発酵技術に関する近年の動向

金 子 光 瑠*・大 門 裕 之*

【要 旨】 近年,温室効果ガス排出量の低減や持続可能な開発目標の達成に向けて,再生可能エネルギー技術の開発と普及が強く求められている。再生可能エネルギー技術の一つであるメタン発酵技術は長年研究が行われてきており,技術として確立するには十分な知見がある。そして近年では次世代シーケンス技術の低価格化と高度化が進んだことで,メタン発酵プロセスに関与する微生物群と微生物間の電子移動について解明されつつあり,メタン発酵分野のさらなる発展が期待されている。本稿では,近年で著しく技術開発が進んでいるメタン発酵技術について述べる。ここでは,国内初の縦型乾式メタン発酵システム,小規模廉価型メタン発酵システム,メタン発酵システムの経済性を高める発酵助剤,発酵効率が向上する発酵触媒,さらにバイオメタネーションの促進に向けた電圧印加と水素利用について紹介する。


キーワード:メタン発酵,小規模廉価型,発酵助剤,直接異種間電子移動,電圧印加技術

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.107-113, 2024
原稿受付 2024.2.14

* 国立大学法人 豊橋技術科学大学 応用化学・生命工学系

連絡先:〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ケ丘1-1 
国立大学法人 豊橋技術科学大学 応用化学・生命工学系  大門 裕之

有機系廃棄物肥料化の実例について

伊 藤 あゆ美*・鈴 木 邦 彦*

【要 旨】 農林水産省は,みどりの食料システム戦略において,有機農業に取り組む面積の割合を2050年までに全耕地面積の25% (100万ha) へ拡大することを目指している。これにより国内における肥料の生産・確保,とりわけ未利用の有機系廃棄物を肥料として有効活用する検討が活発化している。このような背景を受けて (株) 小桝屋が循環プロバイダーとして有機系棄物処理と有機質肥料の製造を行なっている実例をあげる。加えて,有機質肥料を適切に利用してもらえるための独自のノウハウを紹介する。


キーワード:リサイクラー,堆肥,肥料,品質管理,吸引通気式堆肥化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.114-120, 2024
原稿受付 2024.2.16

* (株) 小桝屋 営業開発部

連絡先:〒454-0011 愛知県名古屋市中川区山王4-7-21 
(株) 小桝屋 営業開発部  伊藤 あゆ美

有機性廃棄物の発生と利用そして評価方法――窒素を中心として――

三 島 慎一郎*

【要 旨】 食料自給率低下と食料輸入の増加による日本への窒素流入の増加は,国内の環境に影響を与えうる。よって,畜産,食品産業と食生活からの有機性廃棄物の排出と成分の資源量をとらえ,国内で地理的な偏りが生じているかを明らかにしていく必要がある。有機性廃棄物をすべて堆肥化した場合,国内には3.3〜6.5 Tg窒素が供給可能であり,3.7 Tg窒素の化学肥料需要に匹敵するかそれ以上が存在する。これを利用するには,窒素以外の肥料成分に関しても考慮して利用する必要がある。また,国内で不均一に発生することも考慮する必要がある。こうした肥料成分利用の評価法としては,肥料成分の投入と収穫の差である収支,数理モデルによる窒素溶脱の推測といったものがある。有機農業は有機性廃棄物を使う一つの方向であるが,過大な期待をせず,地域にあるさまざまな肥料資源の量的把握から展開を考える必要がある。


キーワード:農業利用,食品廃棄物,家畜排泄物,下水汚泥,窒素

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.121-128, 2024
原稿受付 2024.2.9

* (国研) 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門

連絡先:〒305-8604 茨城県つくば市観音台3-1-3
(国研) 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門  三島 慎一郎

高含水率有機系廃棄物からのりん回収技術の現状と展望

土 手   裕*

【要 旨】 りんは肥料,工業用原料に用いられる重要な資源であるが,りん鉱石の生産量は年々減少している。流動性を増す国際情勢のなかでりん鉱石の全量を輸入に頼っている現状では,国内における廃棄物からのりん回収がますます重要となっている。下水汚泥中のりんは,脱水前消化汚泥や脱水ろ液からのMAPによる回収や,ケイ酸カルシウム系回収剤による回収,下水汚泥焼却灰を直接肥料あるいは酸抽出/晶析により肥料原料として回収されている。家畜ふん (牛,豚,鶏) からは,堆肥炭化,焼却灰を直接肥料あるいは酸抽出/晶析により肥料原料として回収されている。今後のりん回収技術の開発に際し,家畜ふんの収集システムの整備,人口減少への対応等が必要である。


キーワード:りん資源,りん回収,下水汚泥,家畜ふん

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.129-134, 2024
原稿受付 2024.2.15

* 宮崎大学 工学部 工学科

連絡先:〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1
宮崎大学 工学部 工学科  土手 裕

高含水率有機廃棄物の固体燃料化――汚泥の乾燥および炭化の技術動向――

小 林 信 介*

【要 旨】 本稿では高含水率有機廃棄物である汚泥の固体燃料化技術,「乾燥」と「炭化」について概説を行う。水を多く含む汚泥を固体燃料化するためには,いかに効率的に水を除去するかが課題であり,また汚泥に含まれる可燃分(有機物) を失わないように燃料としての質(発熱量) を向上させるのかが鍵となる。現時点において,固体燃料化は汚泥利用技術として決してメジャーではないものの,汚泥を適切に処理しながら全量を有効利用するために基盤となる技術である。近年では固体燃料化時におけるエネルギー効率向上のため,さまざまな装置やプロセスが開発されているのに加え,従来プロセスを融合した新しい乾燥プロセスや炭化プロセスが提案されはじめている。本稿ではそれらの技術について紹介する。


キーワード:汚泥,固体燃料化,乾燥,炭化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.35, No.2, pp.135-142, 2024
原稿受付 2024.1.18

* 東海国立大学機構 岐阜大学大学院 工学研究科

連絡先:〒501-1193 岐阜市柳戸1-1
東海国立大学機構 岐阜大学大学院 工学研究科  小林 信介

ページの先頭に戻る