Japan Society of Material Cycles and Waste Management アクセス English
No.6 震災廃棄物のリサイクル―リサイクルシステム・技術研究部会特集―
 

No.6 震災廃棄物のリサイクル―リサイクルシステム・技術研究部会特集―

平成24年11月  第23巻 第6号

目次

追 悼

神山桂一先生を悼む……松藤敏彦 417

巻頭言

岩手県における災害廃棄物処理について……工藤孝男 419

特集 震災廃棄物のリサイクル―リサイクルシステム・技術研究部会特集―

宮城県における災害廃棄物処理の現状と課題……吉岡敏明・宮城英徳 421
震災廃棄物のリサイクルに関する現状と課題……久田 真・皆川 浩 429
震災廃棄物の破砕・選別技術について……三枝増之 437
石巻ブロックにおける災害廃棄物の処理状況について……青山和史 443
亘理処理区における災害廃棄物処理について……遠藤吉宣 453
震災廃棄物の焼却処理と焼却灰のリサイクル……宮越靖宏 460
震災木くずのパーティクルボードへのリサイクル
――“復興ボード”の生産と活用の支援――
……関野 登 468

行政報告

使用済製品からのレアメタル等のリサイクルについて……渡邊厚夫 476

支部特集

関西支部 支部設立10周年を迎えて…… 483
九州支部の取り組み・支部会員の拡大を目指して…… 486

書評

馬奈木俊介,豊澄智己 著:環境ビジネスと政策――ケーススタディで学ぶ環境経営――……三浦浩之 488

要旨

宮城県における災害廃棄物処理の現状と課題

吉 岡 敏 明*・宮 城 英 徳**

【要 旨】 2011年3月11日,東日本大震災によって発生した災害廃棄物は,地震動により生じた災害廃棄物もさることながら,津波により生じた災害廃棄物が圧倒的に多く,これに津波堆積物も加わり,過去にあった災害廃棄物処理の観点のみからの対応では困難になった。宮城県では,2011年3月に「災害廃棄物処理の基本方針」を策定し,処理にあたっての基本的方針を示したのを皮切りに,災害廃棄物処理指針や宮城県災害廃棄物処理実行計画等により,災害廃棄物については分別・破砕等の処理により可能な限り再資源化を図る計画や,その時々の災害廃棄物の推計量を発表してきた。これまでどのように災害廃棄物処理等に取り組んできて,このような状況下になっているのか,また,今後どのようにしてがれきを処理していくのか,震災直後から現在までの被災現場での状況を再確認しつつ,災害廃棄物処理の現状と課題を中心にして,今後の方向性について述べる。


キーワード:災害廃棄物,宮城県災害廃棄物処理実行計画,分別,再資源化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.421-428, 2012
原稿受付 2012.12.17

* 東北大学大学院環境科学研究科
** 宮城県環境生活部震災廃棄物対策課

連絡先:〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-07
東北大学大学院環境科学研究科  吉岡 敏明

震災廃棄物のリサイクルに関する現状と課題

久 田   真*・皆 川   浩*

【要 旨】 東日本大震災という諸々の難局にわが国が直面してからまもなく2年が経過しようとしている。この間に,震災の復旧・復興に関する数多くの議論がなされたが,それらの議論は未だに収束していないように見受けられる部分も多々ある。
震災廃棄物の処理に関しては,先の関東大震災,阪神大震災と比較しても遅々として進んでいない状況がマスコミを賑わしている。復旧・復興の第一段階であるがれきの処理は,2015年3月までに完了させなければならないという極めて過酷な状況があるのも実情であり,このような状況を鑑みると,震災廃棄物の処分は,わが国の喫緊の課題の一つであることに違いはない。
本稿は,東日本大震災から今日まで経過し,震災廃棄物の処理や有効活用 (リサイクル) に関する技術の現状と課題についてまとめたものである。


キーワード:東日本大震災,震災廃棄物,コンクリートがれき,がれき焼却残渣,津波堆積物

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.429-436, 2012
原稿受付 2012.10.29

* 東北大学大学院工学研究科

連絡先:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-06
東北大学大学院工学研究科  久田 真

震災廃棄物の破砕・選別技術について

三 枝 増 之*

【要 旨】 地震や台風による被害で,大量の震災廃棄物が発生する。これを迅速かつ適正に処理することが重要である。そのためには前処理として廃棄物を分別または破砕処理しなければならない。ここでは前処理としての破砕・選別設備について,東日本大震災と阪神淡路大震災を例に紹介する。


キーワード:震災,破砕,選別,ふるい分け,前処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.437-442, 2012
原稿受付 2012.11.13

* 近畿工業(株) 開発部

連絡先:〒673-0443 兵庫県三木市別所町巴20番地
近畿工業(株) 開発部  三枝 増之

石巻ブロックにおける災害廃棄物の処理状況について

青 山 和 史*

【要 旨】 2011年3月11日に発生した東日本大震災により,これまでに経験したことのない大量の災害廃棄物が発生した。特に今回の震災では津波による被害が甚大で,災害廃棄物に加え,わが国初めてともいえる津波堆積物も処理する必要がある。鹿島建設(株)など9社で構成する特定共同企業体は,東日本大震災により石巻ブロック (宮城県石巻市,東松島市,女川町) において発生した約312万tonの災害廃棄物,約29万m3の津波堆積物の処理業務を受託した。石巻市内の二次仮置き場に中間処理施設を整備し,現在災害廃棄物等の破砕・選別・洗浄・焼却処理を行っている。2012年5月から処理を順次開始し,9月からほぼ全施設が本格稼動を開始した。本稿では,石巻ブロックにおける災害廃棄物処理の現状と,処理が進むにつれて見えてきた課題について報告する。


キーワード:混合廃棄物,破砕選別,津波堆積物,土壌洗浄,焼却灰造粒固化

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.443-452, 2012
原稿受付 2012.11.16

* 鹿島建設(株) 石巻ブロック災害廃棄物処理JV事務所

連絡先:〒986-0841 宮城県石巻市雲雀野町2-15-3
鹿島建設(株) 石巻ブロック災害廃棄物処理JV事務所 青山 和史

亘理処理区における災害廃棄物処理について

遠 藤 吉 宣*

【要 旨】 2011年3月11日に発生した東日本大震災により,宮城県亘理町に発生した災害廃棄物は53万6千ton,津波堆積物は50万m3に及んだ。震災発生から3年以内に処理事業を終えることが国の方針となっているため,2014年3月末までに廃棄物処理業務を終えなければならない。さらに,処理において徹底したリサイクル,ならびに最終処分量の減容化が求められている。本報文では実施設計から処理実施に至る段階で改善した災害廃棄物の選別処理設備と処理フローの概要,および成果について述べる。


キーワード:津波,災害廃棄物,混合ごみ,混入土砂,選別

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.453-459, 2012
原稿受付 2012.10.31

* 大林・戸田・鴻池・東洋・橋本・深松・春山・特定業務共同企業体
亘理廃棄物処理JV工事事務所

連絡先:〒989-2331 宮城県亘理郡亘理町吉田字砂浜外
大林・戸田・鴻池・東洋・橋本・深松・春山・特定業務共同企業体
亘理廃棄物処理JV工事事務所  遠藤 吉宣

震災廃棄物の焼却処理と焼却灰のリサイクル

宮 越 靖 宏*

【要 旨】 東日本大震災から1年7箇月が経過した被災地では,各地で震災廃棄物の処理が進められている。都市ごみ焼却プラントメーカである当社は,現地の被災状況も未だ明らかになっていない震災発生直後から仮設焼却炉による処理計画に着手した。処理計画や実際の処理を進める中で明らかになったことは,津波の影響により複雑化した震災廃棄物を適正に処理するには,焼却処理と同等もしくはそれ以上に破砕・選別等の前処理のプロセスが重要であるということである。また,逼迫する埋立処分場の現状に鑑み,リサイクルの最大化が求められたこともこれまでの災害廃棄物処理とは一線を画すことになっている。本稿では,宮城東部ブロックを例に,震災廃棄物の焼却処理における課題と対策,現在の稼動状況,さらには現在計画中の焼却灰の再生処理について報告する。


キーワード:震災廃棄物,仮設焼却炉,破砕・選別処理,リサイクル,造粒固化処理

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.460-467, 2012
原稿受付 2012.10.30

* JFEエンジニアリング(株) 震災復興事業部

連絡先:〒230-8611 神奈川県横浜市鶴見区末広町2-1
JFEエンジニアリング(株) 震災復興事業部  宮越 靖宏

震災木くずのパーティクルボードへのリサイクル――“復興ボード”の生産と活用の支援――

関 野   登*

【要 旨】 岩手県沿岸の震災木くずのうち,燃料やパーティクルボード (PB) の原料にリサイクルしやすい「柱材・角材」は約24万ton発生した。この24万tonのうち2012年8月末までに処理できたのは約3万tonである。セメント焼成燃料,ボイラー燃料,そしてボード原料がその内訳であり,3万tonの約1/5が“復興ボード”へとマテリアルリサイクルされた。本稿では,岩手県の震災木くずのリサイクル事例 (PB原料および燃料利用) として,震災直後から始めた岩手大学と岩手県立大学を中心とする“復興ボード”の生産・活用の支援の経緯と体制,“復興ボード”の生産状況および活用状況を紹介するとともに,今後の本格的な活用に向けた展望を述べる。


キーワード:震災木くず,リサイクル,パーティクルボード,復興ボード,復興住宅

廃棄物資源循環学会誌,Vol.23, No.6, pp.468-475, 2012
原稿受付 2012.10.23

* 岩手大学農学部

連絡先:〒020-8550 岩手県盛岡市上田3-18-8
岩手大学農学部  関野 登

ページの先頭に戻る