Japan Society of Material Cycles and Waste Management アクセス English
No.2 気候変動枠組条約におけるコベネフィットメニューの新潮流
 

No.2 気候変動枠組条約におけるコベネフィットメニューの新潮流

平成28年3月 第27巻 第2号

目次

巻頭言

気候緩和問題から廃棄物資源循環学への期待……松岡 譲 101
PDFはこちら

特集 リサイクルを成長産業とするための戦略

気候変動への効果的な適応策のあり方について…………肱岡靖明 103
PDFはこちら

パリ協定――2020年以降の国際制度の概要と残された課題――……亀山康子 109
PDFはこちら

京都議定書第一約束期間におけるわが国の温室効果ガスインベントリとその後の展開について……酒井広平 117
PDFはこちら

気候変動対策の開発途上国との協力メカニズムに関する新潮流――二国間クレジット制度(JCM)と都市間連携の意義――……元田智也 123
PDFはこちら

廃棄物・リサイクル分野における緩和策と適応策の今後の動向……植田洋行・榎 剛史・松岡夏子 133
PDFはこちら

「気候変動」に対して,地球市民の行動はどうあるべきか……高月 紘 139
PDFはこちら

廃棄物アーカイブシリーズ 『ゴミ戦争』の記録

第7回:岩井研のごみに係る開発・研究の歩み――「ゴミ戦争」勃発ごろまで――……浦邊真郎 147
PDFはこちら

支部特集/支部だより

支部だより:中国・四国支部の活動状況…… 153
PDFはこちら

支部だより:関西支部「技術セミナー(講演会・施設見学会)」開催報告…… 155
PDFはこちら

書評

鮎川ゆりか 著:これからの環境エネルギー――未来は地域で完結する小規模分散型社会――……高見澤一裕 159

水川薫子,高田秀重 著:環境汚染化学――有機汚染物質の動態から探る――……鈴木 剛 160

PDFはこちら

要旨

気候変動への効果的な適応策のあり方について

肱 岡 靖 明*

【要 旨】 地球温暖化の進行を押しとどめるためには,温室効果ガス (GHG) を削減する「緩和」に加えて,気候変動による影響に対処する「適応」も重要である。COP21 (国連気候変動枠組条約第21回締約会議) で採択された「パリ協定」では,世界共通の長期気候安定化目標として2℃目標が示されたのみならず1.5℃目標へも言及され,緩和策のさらなる推進を目指すとともに,適応策に関しても適応の長期目標の設定および各国の適応計画プロセスと行動を実施することが含まれた。日本においては2015年11月27日に「気候変動の影響への適応計画」が閣議決定された。適応計画は,将来の気候変動とその影響の不確実性下で策定しなくてはならないため,さまざまな困難が予想される。自治体が適応を効果的に進めていくためには,①リスク評価と優先順位づけ,②既存施策と適応の統合,③リスクコミュニケーションの構築,④ソフトとハード対策を組み合わせた低コストの実現が鍵となる。今後,自治体が民間や市民を巻き込んで適応計画を立案して実施することで,安心・安全な社会の構築が進むことを期待する。


キーワード:気候変動,影響評価,適応計画,自治体

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.103-108, 2016
原稿受付 2016.2.1

* (国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境都市システム研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 環境都市システム研究室  肱岡 靖明

パ リ 協 定――2020年以降の国際制度の概要と残された課題――

亀 山 康 子*

【要 旨】 気候変動問題は,世界が直面する喫緊の課題である。国際的な取り組みが叫ばれるようになった1980年代以降,30年近くかけて国際社会での取り組みが議論されてきたが,京都議定書が採択された1997年以降,新たな枠組みの形成に関する国際交渉は停滞を続けていた。そのような状況下,2015年末に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議 (COP21) で合意されたパリ協定は,2020年以降すべての国が参加する国際制度として,久しぶりに本問題に対する国際的な取り組みを前進させた歴史的な帰結となった。本稿では,気候変動に対する今までの国際的取組の歴史を概観し,2012年から今回のCOP21に至るまでの主な争点を説明する。また,これらの争点を乗り越えて合意されたパリ協定の概要を述べ,合意が達成される可能性を高めた要因を整理した上で,最後に今後の課題を論じる。


キーワード:気候変動,COP21,パリ協定,国際制度,約束草案 (排出量目標)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.109-116, 2016
原稿受付 2016.1.29

* (国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 持続可能性社会システム研究室

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 社会環境システム研究センター 持続可能性社会システム研究室  亀山 康子

京都議定書第一約束期間におけるわが国の温室効果ガスインベントリとその後の展開について

酒 井 広 平*

【要 旨】 日本の温室効果ガス(GHG)排出量は,京都議定書第一約束期間の5カ年平均 (2008~2012年度) で基準年比1.4%増加 (12億7,600万ton(CO2換算)) となった。これに森林等吸収源と京都メカニズムクレジットを加味すると,基準年比8.7%の減少となり,京都議定書 (第一約束期間) の目標 (基準年比6%減) を達成することとなった。
日本の廃棄物分野の算定で主に利用される「廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量調査報告書」は温室効果ガスインベントリへの利用や削減目標の達成度評価を目的の一つとして整備され,とりまとめ時期が早期化されてきた。この廃棄物統計整備の経験がアジア地域において活かされ,温暖化対策と3Rの両方の取り組みが推進されることを期待したい。


キーワード:京都議定書,第一約束期間,温室効果ガス(GHG)排出量,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.117-122, 2016
原稿受付 2016.2.1

* (国研)国立環境研究所 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス

連絡先:〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
(国研)国立環境研究所 地球環境研究センター 温室効果ガスインベントリオフィス  酒井 広平

気候変動対策の開発途上国との協力メカニズムに関する新潮流
――二国間クレジット制度 (JCM) と都市間連携の意義――

元 田 智 也*

【要 旨】 クリーン開発メカニズム (CDM) の教訓を活かして新たに日本政府とパートナー国との間で進められている「二国間クレジット制度 (JCM)」を活用することにより,民間セクターによる開発途上国での気候変動対策の促進が期待される。この新たな制度であるJCMでは,優れた技術の展開による世界全体での気候変動対策を進めることを志向している。さらに,合わせて温室効果ガス (GHG) 排出源として大きな部分を占める都市における対策を,JCMを活用した民間セクターでの取り組みと,地方自治体レベルでの協業,すなわち都市間連携による促進とを合わせて進めることで,効果的な対策が積極的に進められることが期待されている。


キーワード:気候変動対策,二国間クレジット制度(JCM),民間プロジェクト,炭素クレジット,都市

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.123-132, 2016
原稿受付 2016.1.30

*(公財)地球環境センター(GEC) 大阪本部 国際協力課

連絡先:〒538-0036 大阪府大阪市鶴見区緑地公園2-110
(公財)地球環境センター(GEC) 大阪本部 国際協力課  元田 智也

廃棄物・リサイクル分野における緩和策と適応策の今後の動向

植 田 洋 行*・榎   剛 史*・松 岡 夏 子*

【要 旨】 わが国は京都議定書第一約束期間の温室効果ガス(GHG)削減目標を達成し,今後は,2030年度を目標年次とした新たな削減目標の達成に取り組んでいくこととなる。2015年末のCOP21で採択されたパリ協定では,各国におけるGHG排出量の削減だけでなく,各国の適応計画に基づく適応策の実施も求められており,廃棄物・リサイクル分野においても,重点的に取り組むべき緩和策および適応策について,あらためて検討することが必要となっている。特に,適応策は気候変動の影響に対して脆弱な途上国において重要な取り組みであり,廃棄物・リサイクル分野におけるわが国の技術と経験を活かし,戦略的に国際貢献を広げていくことが期待される。


キーワード:廃棄物・リサイクル分野,適応,緩和,地球温暖化対策,約束草案

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.133-138, 2016
原稿受付 2016.2.25

*三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 環境・エネルギー部

連絡先:〒105-8501 東京都港区虎ノ門5-11-2 オランダヒルズ森タワー
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 政策研究事業本部 環境・エネルギー部  植田 洋行

「気候変動」に対して,地球市民の行動はどうあるべきか

高 月   紘*

【要 旨】 気候変動に取り組む「地球市民」のために,参考になると思われる事柄について,項目別に記述した。まず,最近開催された「日独温暖化防止シンポジウム」におけるドイツの地方自治体の取り組みを紹介した。ここでは,国,地方自治体,市民の三者がいかに方向性を一にして取り組むことが重要かを指摘した。また,同シンポジウムでは筆者は温暖化防止に廃棄物対策が重要かを述べ,京都市における最新の廃棄物の取り組みを紹介した。つぎに,市民がライフスタイルを変更することが,どの程度温暖化防止に効果があるかを,負荷の大きい生活と環境配慮型の生活でのCO2排出量を比較計算することによって評価を行った。さらに,現在では畜産業がもたらす温室効果ガスが膨大になっていることに言及し,食物に関わるカーボンフットプリントを紹介するともに,われわれ地球市民は温暖化防止のために食生活も見直すべきであることを述べた。


キーワード:地球市民,ドイツの取り組み,ライフスタイルの変革,食生活の見直し

廃棄物資源循環学会誌,Vol.27, No.2, pp.139-146, 2016
原稿受付 2016.1.25

* 京エコロジーセンター

連絡先:〒603-8404 京都市北区大宮中林町53-1 シャインズフラッツ207 ハイムーン工房  高月 紘

ページの先頭に戻る