No.6 SDGs時代の循環型社会の指標と目標
平成29年11月 第28巻 第6号
目次
巻頭言
最終処分場の用地選定と合意形成……金子泰純 397
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特集 SDGs時代の循環型社会の指標と目標
「指標・目標」特集にあたって
――国内外の活動への参画経験から――……森口祐一 399
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わが国における持続可能な開発目標 (SDGs) の実施――環境政策および廃棄物政策に主眼をおいて――……瀬川恵子 403
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SDGsによるガバナンスの本質を踏まえた指標の役割と機能……蟹江憲史 412
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欧州の資源効率性・循環経済政策における指標と目標……粟生木千佳 420
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物質ストック・フローに着目したストック型社会構築に向けた指標……谷川寛樹・醍醐市朗・小口正弘・奥岡桂次郎・高木重定 431
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望ましい地域循環圏形成を支援する評価手法……松本 亨 438
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製造業における資源循環の指標と目標,目標達成に向けた取り組み……佐藤多加子 448
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産業,企業,製品に着目した指標とその基礎になる情報基盤……田原聖隆 455
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循環型社会形成に向けた新たな指標体系の提案……橋本征二 463
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廃棄物アーカイブシリーズ/『ゴミ戦争』の記録
第17回:廃棄物分野の人材養成と情報共有に関わって――過去50年を振り返って――……田中 勝 474
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平成29年度廃棄物資源循環学会企画セミナー報告
AI導入で資源循環・廃棄物処理に画期的変化が始まる……吉川克彦・中村恵子 480
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支部特集/支部だより
支部だより:東北支部「見学会」開催報告…… 485
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書評
関 博,井上武美,木村秀雄,秋山充良 著:社会基盤施設の建設材料――環境負荷軽減と資源の循環活用――……北條俊昌 487
外川健一 著:資源政策と環境政策――日本の自動車リサイクル政策を事例に――……加茂 徹 487
下村委津子,小鮒由起子,田中 克 編:森里海を結ぶ(2) 女性が拓くいのちのふるさと海と生きる未来……水口 保 488
要旨
わが国における持続可能な開発目標 (SDGs) の実施――環境政策および廃棄物政策に主眼をおいて
瀬 川 恵 子*
【要 旨】 SDGsの実施に関する日本政府全体の体制と指針の内容を紹介するとともに,わが国における環境政策・廃棄物政策におけるSDGsの実施の状況について概説した。わが国においては,2017年9月現在,SDGsに照らして環境基本計画および循環型社会形成推進基本計画の2つの計画の改訂が進められている。また,SDGs実施のための施策の事例として,ターゲット12.3に掲げられた食品廃棄物削減のための取り組みについて概説した。また,SDGsの複数目標の統合的実現・向上の事例として,廃棄物処理における温暖化対策についてもわが国の取り組みについて概説した。さらに,率先してSDGsの実施に取り組む企業等の事例を共有する場として環境省が行うステークホルダーズ・ミーティングにおける食品ロスに関する取り組みの情報交換についても紹介した。
キーワード:SDGs,廃棄物,3Rs (リデュース,リユース,リサイクル),食品ロス,温暖化
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.403-411, 2017
原稿受付 2017.10.2
* 環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課
連絡先:〒100-8975 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2 中央合同庁舎5号館
環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物適正処理推進課 瀬川 恵子
SDGsによるガバナンスの本質を踏まえた指標の役割と機能
蟹 江 憲 史*
【要 旨】 持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals:SDGs) の採択から2年余りが経って232のグローバル指標が決定したことで,目標,ターゲット,指標の三層構造が確立した。SDGsは法的枠組みではなく,目標とその進捗を測る指標によるシンプルな構造からなる新たなグローバル・ガバナンス手法であり,進捗測定は重要な柱である。その方法は,将来の行動強化を視野に入れながら,指標に基づいて進捗を測る国連事務総長のSDGs進捗報告書の他,「グローバル持続可能な開発報告書 (Global Sustainable Development Report:GSDR)」によるものがある。SDGsは環境,経済,社会の諸側面を包括的に行うがゆえに,多様な測定方法が可能となり,何を測定の目的とするのかにより指標も大きく変わってくる。SDGsは各ステークホルダーに独自の指標設定を推奨していることから今後,自律分散的なSDGsの性質を踏まえ,企業や自治体といった行為主体ごとに,比較可能かつ,次の政策や行動を導くような指標体系を設計していく必要がある。2030年へ向けた変革を導くカギは指標を策定するプロセスそのものにあるといってよい。
キーワード:SDGs,指標・目標,ターゲット,フォローアップとレビュー,目標ベースのガバナンス
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.412-419, 2017
原稿受付 2017.10.21
* 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
連絡先:〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322 湘南藤沢キャンパス ε205
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 蟹江 憲史
欧州の資源効率性・循環経済政策における指標と目標
粟生木 千 佳*
【要 旨】 本稿では,欧州における資源効率性・循環経済に関する指標や目標に関して包括的な理解を深めるため,議論の経緯や現在の検討状況,欧州各国の資源生産性指標の目標設定状況等を整理し,政策背景や指標体系の特徴等を分析した。
EUにおける指標と目標は,2005年天然資源の持続可能な利用に関する戦略から,2011年資源効率的な欧州・同ロードマップ,2014/2015年循環経済政策まで継続的に議論されている。最新政策の循環経済行動計画では,循環経済のためのモニタリング枠組みの開発が提案され,その後資源効率性スコアボードと原材料スコアボードに基づき,生産・消費,廃棄物管理,二次原材料,経済・競争力等の4分野10指標からなる指標体系案が示された。また,RMC算出・循環利用率の実験的算出といった循環経済促進のための新たな指標動向がみられる。資源生産性指標の目標設定は,国個別の事例は存在するが,EU総体での結論は出ていない。
キーワード:資源効率性,資源生産性,循環経済,物質フロー指標,モニタリング枠組み
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.420-430, 2017
原稿受付 2017.10.2
* (公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域
連絡先:〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
(公財)地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域 粟生木 千佳
物質ストック・フローに着目したストック型社会構築に向けた指標
谷 川 寛 樹*・醍 醐 市 朗**・小 口 正 弘***・奥 岡 桂次郎*・高 木 重 定****
【要 旨】 フロー型社会から脱却し,ストック型社会を目指すためには,社会の物質代謝,つまり,物質フローと物質ストックを把握する必要がある。環境省により推計されているわが国の物質フローは,主に投入と産出,蓄積純増,再利用から成り立っており,表裏一体となるべき物質ストックの全体像については触れられていない。本稿では,ストック型社会の構築に資する物質ストック・フロー分析を通じて,物質ストックの区分を示し,わが国の物質フローと物質ストックの状況を定量化し,さらに3つの物質ストック指標について検討を行った。その結果,1990年と2010年を比較すると,総物質投入量は6割程度に減少している一方,物質ストックは1.7倍に増加していることが明らかとなった。さらに,物質ストックに関する3指標を例示したが,ストック型社会構築までの道のりを端的に示す必要があり,あるべきストック型社会像と合わせて,今後も引き続き検討を行う必要がある。
キーワード:ストック型社会,循環型社会,物質ストック・フロー分析,資源生産性
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.431-437, 2017
原稿受付 2017.10.1
* 名古屋大学 大学院 環境学研究科 都市環境学専攻
** 東京大学 工学部 マテリアル工学科
*** (国研)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 基盤技術・物質管理研究室
**** みずほ情報総研(株) 環境エネルギー第1部
連絡先:〒464-8601 名古屋市千種区不老町D2-1 510
名古屋大学 大学院 環境学研究科 都市環境学専攻 谷川 寛樹
望ましい地域循環圏形成を支援する評価手法
松 本 亨*
【要 旨】 まず,国や自治体の循環型社会形成推進基本計画,さらに国から公開されているガイドラインや手引きにおいて,地域循環圏の評価がどのように扱われているか検証した。次に,地域循環圏の評価手法開発を行った研究のレビューを行い,物質の収支バランス,低炭素化,事業採算性,生態系サービスによる評価事例を紹介した。また,地域循環圏の一形態とされるエコタウンを対象とした研究では,CO2削減効果や立地自治体の域内循環率,調達と供給の物質移動距離が採用されていること,さらに指標の経時変化の要因分析が実施されていることを示した上で,地域循環圏にかかわる個別事業の効果を中長期に評価するためには必要な視点であると指摘した。環境面以外の副次的効果に着目した評価もあり,分別への住民の参加意識,施設の住民受容性,地域福祉力等が採用されている例を示した。最後に,今後の地域循環圏の評価指標・手法のあり方として,要件とともに実行可能性の面から考察した。
キーワード:地域循環圏,評価手法・指標,副次的効果,要件,実行可能性
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.438-447, 2017
原稿受付 2017.11.13
* 北九州市立大学 国際環境工学部 環境生命工学科
連絡先:〒808-0135 福岡県北九州市若松区ひびきの1-1 N431
北九州市立大学 国際環境工学部 環境生命工学科 松本 亨
製造業における資源循環の指標と目標,目標達成に向けた取り組み
佐 藤 多加子*
【要 旨】 気候変動対策や資源生産性の向上等の地球環境保全は,リコーグループが事業活動を通じて大きな貢献ができる分野である。われわれは,環境保全と事業成長を同時実現する「環境経営」の考え方を1998年に確立し,その実践のために社会全体の目標を認識し,自社の長期・中期・短期目標を設定,具体的な施策を展開している。本稿では資源循環にフォーカスし,指標,目標設定と目標達成のための具体的な取組事例について紹介する。
キーワード:資源循環,バックキャスティング,3Rs (リデュース,リユース,リサイクル)
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.448-454, 2017
原稿受付 2017.9.28
* (株)リコー サステナビリティ推進本部 環境推進室
連絡先:〒104-8222 東京都中央区銀座8-13-1
(株)リコー サステナビリティ推進本部 環境推進室 佐藤 多加子
産業,企業,製品に着目した指標とその基礎になる情報基盤
田 原 聖 隆*
【要 旨】 持続可能な開発目標 (SDGs) への対応や循環型社会形成が求められる中,達成度を評価する手法が必要となる。そこで評価手法となりうる環境効率指標,およびその基盤となる積み上げ法のデータベースであるIDEAの作成方法や特徴を述べるとともに,産業連関分析法の特徴等を紹介した。加えて,われわれが提案した環境効率指標とそれを用いた企業評価手法を示し,2005年のわが国の産業の環境効率指標 (CO2効率指標) の算出も行い,産業の特徴を定量的に示した。今後のSDGsや循環型社会形成の達成度の指標として活用され,新たな指標開発の一助になればと考える。
キーワード:LCA (ライフサイクルアセスメント),環境効率,インベントリデータベース,産業連関表
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.455-462, 2017
原稿受付 2017.10.9
* (国研)産業技術総合研究所 安全科学研究部門 IDEAラボ
連絡先:〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 つくば西
(国研)産業技術総合研究所 安全科学研究部門 IDEAラボ 田原 聖隆
循環型社会形成に向けた新たな指標体系の提案
橋 本 征 二*
【要 旨】 本稿では,循環基本計画における指標体系の課題を整理してこれに対応した指標体系を提案するとともに,現在検討されている次期循環基本計画の指針を例に,提案する指標体系を当てはめた次期計画の指標案について議論した。現行体系上の大きな課題として,①政策と指標の関連づけや,②「物質フロー指標」と「取組指標」の関連づけ等を指摘し,これに対応するため,ⓐライフサイクルの段階,ⓑ指標の種類,ⓒ政策の項目という3軸からなる指標体系を提案した。この体系を当てはめた次期計画の指標案では,その他の課題を含め具体的な対応例を示した。新たに設定したⓒ政策の項目は,今後次期計画の議論が進むにつれ変化すると考えられるが,指標体系としては政策と指標の関連づけが非常に重要である。今回検討した政策のより詳細な項目ごとに指標を設定することも考えられる。
キーワード:循環経済,SDGs,DPSIR,物質フロー指標,取組指標
廃棄物資源循環学会誌,Vol.28, No.6, pp.463-473, 2017
原稿受付 2017.10.3
* 立命館大学 理工学部 環境システム工学科
連絡先:〒525-8577 滋賀県草津市野路東1-1-1
立命館大学 理工学部 環境システム工学科 橋本 征二